音楽メディア・フリーマガジン

THE SUN60℃

今ここにしかない衝動を結晶化したような輝きを放つ蒼き名盤

THESUN60C2010年に地元の習志野市で集まった仲間により結成された、THE SUN60℃。翌年にはボーカルが突如失踪するという大事件に見まわれるなど、数々のトラブルを乗り越えて初のミニアルバム『太陽の犬』を完成させた。THE BLUE HEARTSなどの日本語ロックに影響を受けつつ、古き良き洋楽ロックやブルースの匂いも漂わせる今作。その初期衝動に満ち溢れた生々しいサウンドは、今この瞬間にしかない輝きを放っている。

 

 

 

 

 

 

●前のボーカルが2011年に失踪したそうですが…。

コウ:自分たちもビックリしました。元々4人組だったんですけど、ライブの前日に急に連絡がつかなくなって。本番にも来なかったので結局、3人だけでライブをやることになったんです。そのまま1年近く連絡が取れなくなって、失踪しちゃったんですよ。今はもう帰ってきて、仲良くしていますけどね(笑)。

●そこでコウくんがギターボーカルにチェンジしたと。

コウ:元々、僕がメインで曲を作っていたのもあって、そこから3人で活動を始めて。でもやっぱり4人編成でやりたかったので、Ba.ジュンに加入してもらいました。

●まさに波瀾万丈な感じがします。

コウ:波瀾万丈ですね。僕らは本当に問題続きで、必ず何かトラブルが起きるんです。今年は台風がたくさん来ましたけど、今回のレコーディング日程にほぼ重なっちゃって…。M-2「台風28号」を録っている時に、ちょうど本当の台風28号が来ていたんですよ(笑)。

●ある意味、持っているというか(笑)。

コウ:いや、でも本当にどうしようもなくて。今日もせっかくのインタビューなのにジュンは寝坊して来ないし、G.金子に至っては音信不通ですからね。

●また失踪!?

コウ:さすがに失踪ではないと思うんですけど、連絡が取れないんですよ(笑)。変な話、もうライブでメンバーが誰かいないのは慣れっこで。メンバーが来ないので弾き語りでライブしたりとか、その場にいる知り合いに手伝ってもらったりとかばかりですね。

●無茶苦茶ですね(※実際はもっとダメダメなエピソードも出ましたが、諸事情によりカット…笑)。そもそも、バンドを始めたキッカケは何だったんですか?

コウ:僕らは元々、音楽をやっていなかった人間の集まりなんですよ。楽器を触ったこともなかったし、本当にゼロからのスタートで。元々、音楽は好きでTHE BLUE HEARTSとかを聴いてはいたんですけど、高校3年生の文化祭で友だちからバンドのボーカルをやらないかと誘われて。その時のライブをちょうど金子が見ていて「バンドを組みたい」と言ってきたので、ジョージも誘って結成しました。

ジョージ:僕もTHE BLUE HEARTSが好きだったので、参加したんです。

●サウンド的には、昔のロックンロールやブルースの匂いもします。

コウ:入り口はTHE BLUE HEARTSだったんですけど、そこからどんどん掘り下げていって。今では、昔のロックばかり聴いていますね。元々、今流行っているような音楽に対して、白い目で見ていたところはあったので。バンドをやるなら、もっとストレートに昔ながらの音楽をやりたいねと話していたんです。

●あと、歌詞の世界観が泥臭いのも特徴かなと。

コウ:僕の人生観がそういう感じなんですよ。「今どきの歌詞じゃないね」とよく言われますけど(笑)。とにかく僕が曲を作る時は泥臭くてキャッチーというのを心がけていて、キレイ事な感じにはしたくないんです。

●1曲目の「チャッキーとビリー」から、まさにそんな感じですよね。

コウ:この曲は自分が今思っている不満とかが詰まった曲なんです。昔のロックには政治的な批判や金持ちに対する偏見みたいな歌詞が多いんですけど、そこにすごく共感できる部分があって。たとえば120円の缶ジュースでも「こんなに美味しい飲み物があるんだな」っていう感動が味わえるのに、実際に2万ドルとか5000ポンドのお金を手にしたら退屈で平凡なんじゃないかということを思ったので歌詞にしました。

●M-5「Mr.Mountain」で“油にまみれたあんた”という歌詞があるのも、労働者的なイメージなのかなと。

コウ:これは一番最初に作ったオリジナル曲で、実は極楽とんぼの山本圭一さんについて歌っているんですよ。僕は山本さんが大好きなので、早く芸能界に帰ってきてほしいなという気持ちを歌にしようと思って。山本さんの愛称が“山さん”だから「Mr.Mountain」という曲名にして、歌詞の内容も全部あの人についてなんです。“油にまみれた”というのは、『めちゃイケ』で山本さんが演じている“油谷さん”というキャラクターからですね。

●そういうことか(笑)。M-3「ロマンスチック」だけは、他の曲とちょっと違う雰囲気が違うような…。

コウ:僕は恋愛系の歌詞が全く書けなくて、この曲だけはジョージが作った曲なんですよ。ウチのバンドに何曲かあるラブソングは大体、ジョージが書いています。

ジョージ:僕はドラム以外にギターも弾くので、メロディの強い曲が好きで作っていたりして。この曲はわりとぼやかしている感じですけど、自分の恋愛観が出ているような歌詞も書きますね。

●どの曲もキャッチーというのは一貫している。

コウ:やっぱりキャッチーさはすごく意識していますね。だから、僕らの曲はサビの繰り返しが多かったりするんですよ。最近はもう少し凝った構成の曲もできているんですけど、今回は1stミニアルバムということであえて初期に作った曲ばかりを集めたんです。とにかく「下手で若いけど、泥臭くて良いじゃん」という部分を出せたらなという感じで、この5曲を選びました。

●確かに拙ない部分もあるんだけど、ちゃんと音楽を聴いている姿勢が音に表れているというか。

コウ:そこは僕もジョージもすごく気を付けていたところで。昔ながらのロックンロールの匂いを残しつつ、ありきたりの青春パンクみたいなコード進行は使わないように気を付けながら作っていますね。

●初期の曲を集めたということは、他にも曲はある?

コウ:曲はかなりありますね。というか、今作に入っている曲の中には最近のライブであまりやっていないものもあるので、久々にやる感じもあって。

●ライブの印象は作品と違ったりするんでしょうか?

コウ:もしかしたら、もっと「下手だな」と思うかもしれない(笑)。でも今作を作ったことで自分たちのプラスになる面はかなり多かったんです。レコーディングを通して、演奏面も格段にレベルアップしましたね。僕らは元々ライブバンドなので、ライブのほうが確実に良いものが見せられると思っています。

ジョージ:今まであやふやにしたままだったところもレコーディングで見直したことでカチッと固まって、格段に良くなったんです。自分らしさも出せているし、良い意味での“下手くそさ”が出せた作品なので、できるだけ多くの人に聴いてもらいたいですね。

Interview:IMAI

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