音楽メディア・フリーマガジン

Yohei Nakamura

不器用な生き方だからこそ輝かせられる希望の歌がある

 現在公開中の映画『アベックパンチ』の主題歌「Freedom」が配信で話題を呼んでいるシンガーソングライター、Yohei Nakamura。元々はボーカルグループのメンバーとしてデビューした彼はその解散後、2007年にソロ活動を開始した。一度は歌う意味を見出せなくなっていたところに始まり数々の挫折を乗り越えて今、再び先を見据えて動き始めた彼の歌は真にポジティブな光を放っている。

Interview

●Yoheiさんは元々、ボーカルグループのメンバーとして活動されていたそうですね。

Yohei:2007年の3月にそのグループが解散した時は正直、もう音楽をやめようと思っていたんですよ。尾崎豊やTHE BLUE HEARTSが僕の原点なんですけど、元々は彼らを見て"こんなカッコ悪い生き方がカッコ良くなるんだ!"と感じた経験がすごく衝撃的で"俺もこれがやりたい"と思って、音楽を始めたんです。でも当時は自分が歌うことの意味がわからなくなっていて…。

●そこから再び歌い出したキッカケは?

Yohei:僕の師匠的な方が解散直後に、イベントに誘ってくれたんです。最初はもう音楽をやめるつもりだったので出演を断っていたんですけど、そのイベントの日がたまたま4/12で、僕の誕生日だった。僕のことを気にかけて誘って頂いたし、そういう巡り合わせもあったのでやろうと思ったのかな。1人でやり始めたのは、そこからですね。

●ライブでやる曲はあったんですか?

Yohei:曲はなかったんですけど、その1ヶ月後くらいにも神戸でライブに誘われていたので、そこに向けてギターを練習したり曲を作っていったんです。グループ時代はほぼ曲を作っていなかったんですけど、他人の曲を歌うことで自分の良さを引き出すにはどうするべきかわかったところもあるし、それが今の曲にも反映されていて。色んなことがあって今、良い形で音楽と関われているかなという気がします。

●ソロで歌い始めてからは順調だった?

Yohei:今までもCDを出させてもらったりとか色んなことをやってきたんですけど、自分の中ではもっと大きな規模でやりたいという気持ちがあって。活動をする上で浮き沈みは当然あるし、今はまだ底だと思っているんですよ。歌い続けていくためには、ここから上がっていくタイミングがないと続けられない。そこで、今年3月に渋谷O-EASTでワンマンライブをすることに決めたんです。

●いきなり大きな規模でやることに決めたと。

Yohei:今まで自分がライブをしていたハコの5倍くらいのキャパシティだから、さすがに自分でも無謀だなとは思ったんです。でも頑張れば何とかなるとわかる程度のことだけをやっていては見えないような、もっと先を見たいなと思って。たまたまそのライブの予定日が前のグループが解散した日で会場も同じだったので、これも何かの巡り合わせかなということでやることにしました。

●自分をステップアップさせる意図があった。

Yohei:そこに向けて色んな人を巻き込んだり、ストリートライブもやりまくって、何とか形になりそうな状態にはもってきていたんです。そこで3/11の東日本大震災があって…中止になってしまった。最初はまたやり直せばいいと思っていたんですけど、時間が経つにつれてヘコんできて。

●実感が湧いてきたというか。

Yohei:ライブができないことよりも、そこで落ち込んでいる自分にヘコんだんです。観る人に何かしらプラスの影響を与えようと思って音楽をやってきたのに、震災で苦しんでいる人たちを目の前にして俺は自分のことで落ち込んでいる。結局、自分のことしか考えていないんだと思って、そこでもう一度"ダメかも"となったんです。

●再び音楽をやめようと思った?

Yohei:でも震災後に初めてやったワンマンライブで喜んでくれているお客さんを見て、目の前にいる人だけならとりあえず元気にすることができるから、それをちょっとずつやっていこうと思えて。そこで気持ちがフラットになっているところに、今回の主題歌を歌うお話を頂いたんですよ。

●決まった時はどんな心境だったんですか?

Yohei:震災の被害にあった人たちもいる中で"何度でもやり直せるんだ"っていうことを、まず自分がやり直すところから見せていきたいなと思って。映画の主題歌を歌わせて頂くことで、以前の僕を知っている人がたまたま見かけて「Yoheiはまだ頑張っているんだな」と知ってもらえたりもする。とりあえずは、観ている人がポジティブになってくれたらいいなという気持ちで今はやっています。

●今回の「Freedom」は、映画に出演している女優の水崎綾女さんと一緒に歌われていますが。

Yohei:今まではレコーディングで女性と一緒に歌ったことはなかったので、そこも新鮮で良かったですね。今回のPVも、映画と同じロケ地で撮ったりもしていて。6/11に新木場の1st RINGでPVの公開撮影も兼ねてフリーのワンマンライブをやったんですけど、震災からちょうど3ヶ月後に「今日は楽しかったな」と思ってもらえたらいいなという気持ちもあったんです。

●お客さんに参加してもらうことで元気にもできる。

Yohei:僕自身もワクワクするようなことをやっていたら、周りも元気になると思うんですよ。自分が頑張ることで、"あいつも頑張っているんだから頑張ろう"と勇気づけられたらうれしいですね。このことをキッカケにして、また次のステップにいけるようにしたいなと思っています。

●ライブでも「Freedom」をやっている?

Yohei:普段のライブでは、1人で歌っています。ライブ自体も弾き語りだったり、バンドだったりで編成が毎回違うんですよ。そういうところも"Freedom"なので(笑)、ライブも一度観に来て欲しいですね。

Interview:IMAI

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