音楽メディア・フリーマガジン

TëKMO+「サウンド設計室」第8回|教材は『Our Journey』 ――歩くようなテンポなのに、なぜこんなに前へ進む? 都会を旅する“ジャズファンク”の設計図

3rd Album『CONTINUE?』収録曲

今回の教材は『Our Journey』。

この曲をひと言で表すなら、

「自分の耳を信じて街を歩く、ジャズファンク×ヒップホップのアーバン・アンセム」

テンポは112 BPM。

これは、テンポが速い曲ではありません。ミドルテンポ、と呼ばれる速さ。

それなのに聴いていると、不思議なくらい前へ前へと進んでいく。

電車で一気に目的地へ向かうというより、イヤホンをつけて、自分の足で街を歩いているような感覚。

『Our Journey』では、その“歩き続ける感覚”を、リズム、ハーモニー、そして楽曲の空間そのもので作っています。

今回は、TëKMO+の中でも少し異色な「ジャズファンクとヒップホップの境界線」を紐解いていきます。

0|今月の問い

なぜ『Our Journy』は、速くないのに

「前へ進んでいる」ように感じるのか?

音楽で疾走感を出そうとすると、普通はテンポを速くしたくなります。

でも『Our Journey』はその逆。

テンポそのものは約112 BPM。

ちゃんと足元を確認しながら歩ける速さです。

それでも曲が止まって聴こえないのは、

ビートの中に細かな“前進する力”が仕込まれているから。

さらに、曲が進むにつれて音の景色そのものが少しずつ広がっていきます。

つまりこの曲は、

「速さ」で旅を表現しているのではなく、「グルーヴ」と「景色の変化」で旅を表現している。

ここが大きなポイントです。

1|結論:「歩き続けたくなる」3つの仕掛け

『Our Journy』の前進感を作っているのは、大きく分けて3つ。

① 112 BPMの中に仕込まれた、ジャズファンクとヒップホップのグルーヴ

② 明るさと少しの陰りを行き来する、大人っぽいハーモニー

③ 曲が進むほど音の景色が広がっていく、立体的なアレンジ

この3つが重なることで、

走ってはいない。

焦ってもいない。

でも、確実に昨日とは違う場所へ向かっているような、

そんな『Our Journey』独特の“旅の速度”が生まれています。

2|楽曲の構造を深掘りする3つの設計ポイント

設計ポイント①

リズム&ベース:「ドン・ドン」と進むのではなく、“隙間”で前へ進む

まず注目したいのがリズムです。

『Our Journey』は、大きな拍をしっかり感じとれるようになっています。

でも、その間に細かなアクセントが入ってくる。

これがジャズファンクやヒップホップでよく感じる、

「ビートの”隙間”が気持ちいい」という感覚につながっています。

ドラムが全部の場所を埋め尽くすのではなく、音を置くところと置かないところを作る。

そして、その隙間をベースが縫うように動いていく。

特に面白いのは、ベースがキックとずっと同じ場所にいるわけではないところ。

キックと一緒に地面を踏む瞬間もあれば、次の拍へ少し先回りするように動く瞬間もある。

この小さな“食い込み”が、「次へ行こう」という推進力を作っています。

テンポそのものを速くしなくても、16分音符の細かな動きによって身体は前へ進んでいく。

これが『Our Journey』のグルーヴの正体です。

 

設計ポイント②

ハーモニー:明るいのに、少しだけ影がある

もうひとつ、この曲に独特の都会感を与えているのがコードの響きです。

全体としては、D♭メジャーと、そのすぐ隣にあるB♭マイナーの色を行き来するような響きを持っています。

専門的に言えば、この2つは使っている音の多くを共有しています。

だから、「明るい!」

から突然、

「暗い……」

に変わるわけではありません。

明るい景色の中に、ほんの少し影が差す。

心地よいの温度変化を感じられると思います。

これが『Our Journey』に歌詞にもすごく相性が良くて、

「この道でいいんだろうか」と思う瞬間もある中で、

それでもまた歩く。

『Our Journey』のコード感には、そんな迷いと前向きさが同時に入っています。

ただ明るい応援歌にしなかったことで、曲に“大人のリアリティ”が生まれているんです。

 

設計ポイント③

アレンジ:曲が進むほど「街が広がっていく」

そして今回、音源を細かく聴いていて特に面白かったのがここ。

『Our Journey』は、曲が進むにつれて音の横幅が変わっていきます。

Aメロ付近では、ボーカルやリズムの中心が比較的まとまっていて、音像もタイト。

イメージするなら、

まだ狭い路地を歩いている感じです。

そこからサビへ向かうにつれて、鍵盤やギター、コーラスなどの音が左右へ広がっていく。

視界が開けて、街の景色が一気に広がるような感覚です。

さらに面白いのが終盤。

2:18前後からは、それまで以上に音の横幅が広がり、高い音域の成分も増えていきます。

単純に「最後だから音量を大きくする」だけではありません。

音を明るく、広くする。

だから最後の展開では、

「同じ場所をぐるぐる回っている」のではなく、

ちゃんと遠くまで来たように感じる。

イントロではまだ街の一角にいた主人公が、曲の最後には少し高い場所から景色を眺めている。

そんな映像すら浮かんできます。

タイトルが『Our Journey』であることを考えると、この音像の変化そのものが“旅”になっているんです。

3|歌とサウンド:「自分の耳が選ぶbeat」を信じる

この曲の核にあるのが、「自分の耳が選ぶbeat」という感覚。

周囲が選んだ正解ではなく、自分が気持ちいいと思ったビートを信じる。

これは、音楽の話だけではないと思います。

仕事でも、人生でも、活動でも、

「普通はこうする」

「この年齢ならこうする」

「成功するならこうする」

みたいな正解は、たくさんあります。

でも結局、自分の人生を最後まで聴いていられるのは自分だけ。

だから、自分がちゃんと身体を揺らせるbeatを選ぶ。

『Our Journey』では、そのメッセージを強く叫ぶのではなく、

少し力を抜いたグルーヴの上に乗せています。

そこがこの曲の格好いいところ。

「俺について来い」ではない。

「俺はこっちへ行くけど、一緒に歩く?」

くらいの距離感なんです。

4|今日の“懐かしい音”の正体

正体:90年代アシッドジャズの「都会を歩けるファンク」

今回聴き比べてほしいのは、

Jamiroquai『Virtual Insanity』

https://www.youtube.com/watch?v=4JkIs37a2JE

ジャズの少し複雑なコード感。

ファンク由来のベースとドラム。

そして、その上に乗る都会的でクールなボーカル。

こうした要素を「難しい音楽」としてではなく、ちゃんとポップミュージックとして聴かせる。

この感覚は『Our Journey』にもつながっています。

特に共通しているのが、

“グルーヴそのものが風景を作っている”

ところ。

ギターやシンセで派手な景色を描く前に、ベースとドラムを聴いただけで、すでに街を歩いている感じがする。

そこへジャズ的なコードの色彩が加わることで、

普通のファンクより少し知的で、

普通のポップスより少し路地裏っぽい。

そんなアーバンな質感が生まれます。

5|今夜の“耳トレ”――今回は「景色の広がり」を聴こう

曲の最初と、2:18前後の終盤を聴き比べてみてください。

チェックするのはひとつだけ。

「音の景色は、どちらが広く感じる?」

最初は音がタイト。ドラムとベースでリズム感を作っていますが、

終盤になると、グルーブの上に左右へ広がる音が増えて、景色が一気に大きくなります。

イヤホンで聴くと、より分かりやすいはずです。

音量ではなく、“音の広さ”を聴く。

これだけ意識して、もう一度聴いてみてください。

6|まとめ

『Our Journey』は、

猛スピードで夢へ向かう曲ではありません。

立ち止まることもある。

迷うこともある。

でも、自分の耳が選んだbeatを信じて、また一歩進んでいく。

その姿を、112 BPMのヒップホップ的なグルーブ感で、

ジャズファンクをおもわせるのベースとハーモニー、

そして少しずつに広がりを見せるアレンジで描いた曲です。

速く進むことだけが、前進ではない。

誰かが決めた道を歩くことだけが、正解でもない。

昨日より少しだけ先へ行けたなら、それも立派な旅です。

ドラムが足取りを作り、ベースが次の一歩を促し、

鍵盤やギターが街の景色を描き、その真ん中をボーカルが歩いていく。

そんな4人の音が重なって、『Our Journey』は今日も続いていきます。

自分の耳が選んだbeatを信じて。

次は、どこへ行こうか。

文:MAKIO (TëKMO+ Bass,Vocal)


作品とライブの案内

3rd Album『CONTINUE?』全国発売中!

『surface tension』『24/7』『navyblue』『くるりってさ。』『blind start』などを収録。

配信で聴く:
https://pcim.lnk.to/continue

販売元購入サイト:
https://pcimusic.com/s/pec/item/detail/TKMO-0003?ima=4016

タワーレコード:
https://tower.jp/search/item/T%C3%ABKMO%EF%BC%8B

楽天ブックス:
https://books.rakuten.co.jp/rb/18420063/?l-id=artistpage-item

 

ONE-MAN LIVE情報

2026年11月27日(金)

渋谷gee ge

「TëKMO+ サウンド設計室 -共同作曲編-」

https://www.tekmoplus.com/blank-6/tappuritekumovol-3-saundosekkeishitsu-kyodosakkyokuhen

 

2027年2月27日(土)

みなとみらいブロンテ

TëKMO+ ONEMAN LIVE
“RëLOAD”

~5TH ANNIVERSARY~

https://sieg-en.zaiko.io/ja/e/tekmoplus-reload

TëKMO+「サウンド設計室」 第7回|教材は『surface tension』 ――“冷たい水面”の下で、飽和寸前の心が躍る「限界バランスの美学」

3rd Album『CONTINUE?』収録曲
この曲を聴く → https://pcim.lnk.to/continue

この曲をひと言で表すなら、

「コップの縁で今にも溢れそうな感情を、クールなシンセと極上のリズムで踊らせる、都会派エレクトロ・ロックポップ」

タイトルの「surface tension」とは、日本語で「表面張力」のこと。

水がコップのふちギリギリまで満ちたとき、こぼれ落ちる寸前で保たれている緊張状態のことを表していて、

日常のなかで抱え込んだ不安や、言えなかった言葉の数々が「飽和寸前」になりながらも、決して自暴自棄にはならず、音楽の中で保たれている。

今回は、そんなTëKMO+ならではの繊細な音の設計図を紐解いていきます。

0|今月の問い

「今にも溢れそうな“ギリギリの感情”を歌っているのに、

なぜがノれてしまうのはなぜ?」

1|結論:気持ちよさを生む「表面張力」の3大要素

『surface tension』の気持ちよさを生み出しているのは、次の3つの要素です。

① 緊張感をキープし続ける、正確なドラミングとうねるを加えるベースライン

② 冷たく透き通るピアノとシンセの“水面”

③ 「飽和寸前」「高鳴る心臓」の言葉をグルーヴに変えるボーカル

この3つの層が絶妙に拮抗することで、ただ切ないだけでも、ただ派手なだけでもない、「限界ギリギリの緊張感が、なぜか快感に変わる」という、魔法のような音楽体験が生まれています。

2|楽曲の構造を深掘りする3つの設計ポイント

設計ポイント①

リズム&ベース:限界ギリギリを支える「器と重力」のグルーヴ

感情が今にも溢れ出しそうな曲で、バックの演奏まで感情任せに荒ぶってしまうと、楽曲全体が混沌としたロックサウンドになってしまいます。

しかし、『surface tension』の土台には、”冷静さ”が宿っています。

まずはドラムが正確で無駄のないビートをキープし続けます。

これがまさに、**「水をこぼさない強固なコップの縁」**の役割を果たしています。

そして、その規律あるドラムの上で、ベースがかつ緻密にうねり回ります。

ドラムが器の形を守り、そのなかでベースが動き続けることで、まるでグラスのなかの水が揺れ動くような、グルーヴが生まれているのです。

「足元はタイトに引き締め、低音の躍動感で心臓を揺らす」

このリズム隊の絶妙なコントロールがあるからこそ、聴いた瞬間に自然と体が揺れてしまうほどのノリの良さが成立しています。

設計ポイント②

シンセ&エレピ:夜景のように滲み、光る「冷たい水面」の質感

『surface tension』のイントロと楽曲全体を包み込んでいるのは、80年代のソフィスティ・ポップや、現代のシティ・ポップにも通じる、涼やかで美しいキーボードサウンドです。

少しフィルターがかかったような、透き通るシンセサイザー。

その音色は、歌詞に登場する「冷たい水」や「水面に映る自分」そのものです。

さらに、コード楽器としてエレピ、つまりエレクトリック・ピアノを重ねることで、冷たさのなかにも、夜の街灯が滲むような温度感を加えています。

シンセだけでは、無機質で冷たい印象が強くなりすぎてしまう。

そこへエレピの柔らかな響きが重なることで、どこか人の体温を感じさせるサウンドに仕上がっています。

このシンセとエレピが描く“表面のクールさ”があるからこそ、リスナーは都会的な洗練を味わいながら、深く曲の世界へと引き込まれていくのです。

設計ポイント③

歌詞&ボーカル:「飽和寸前」の言葉をダンスフロアへ連れ出す

この曲の歌詞には、日常のなかで心を圧迫していく、リアルな感情の断片が散りばめられています。

出ない言葉ばかりが きしついて
今も夢の中 溢れてしまいそう

高鳴る心臓の音
溢れさせるほどの冷たい水
水面に映る自分を涙で
眺めてるんだ

構わないと言うのなら……
ギリギリにして

言葉だけで読めば、切実で張り詰めた「飽和寸前」のメッセージなんだけど、

この感情を過剰な叫びとして表現するのではない。

メロディのアクセントと16ビートのリズムに、言葉を正確に噛み合わせながら歌い上げています。

切実な歌詞でありながら、歌のリズムは軽やかに。

聴き手を感情の重さに沈み込むのではなく、その感情を抱えたままビートに乗せていくイメージ。

ただの悲観や弱音で終わらせず、

「ギリギリの自分すらも、リズムに乗せて楽しむ」

というポップスとしてのポジティブな転換こそが、この楽曲最大のハイライトです。

3|今日の“懐かしい音”の正体

正体:音楽的な”熱”と”冷たさ”の黄金比

今回紹介する楽曲は、

TM NETWORK『Get Wild』(1987年)

https://www.youtube.com/watch?v=r107W1YXrSM

『surface tension』の大きな魅力である、「夜の都会を思わせるクールで透き通ったシンセサイザーのデジタルな音色」と、「その上で、孤独や痛みを抱えながらも、立ち止まらずに熱く駆け抜ける4つ打ちのビートとベース」という黄金バランス。

この「冷たい街の音(シンセ) × 生身の人間が走る熱い鼓動(リズムと歌)」という構造は、日本の1980年代後半に誕生したポップ・ダンスミュージックの金字塔、TM NETWORK『Get Wild』 のDNAと強く結びついています。

4|今夜の“耳トレ”――1分でできる!

「冷たい水面=シンセ」と「熱い心臓=ビート&ベース」の温度差を聴き分けてみよう

① イントロ

イントロの盛り上がる部分、5秒〜15秒までを全身で受け止めて、この楽曲の気持ちよさを感じてみてください。

② Aメロに入ったら

今度は意識を「一番低い音(「ドン・ドン」というバスドラム)」へ移します。

バスドラムが一音一音を押出しながら、曲に推進力を与えている様子が聴こえてきます。

③ Bメロで展開が動き出す

単調だったAメロから、Bメロに展開した瞬間、ベースが大きく動き出します。

大きな円を描きながら、サビに向かう高揚感を感じてみましょう!

④ サビで全部が合流する!

  • クールなシンセ・ピアノ
  • 躍動するドラム・ベース
  • 限界ギリギリの心情を歌うボーカル

この3つが同時に重なります。

それぞれ異なる温度を持った音がぶつかり合い、曲タイトルのとおり、音楽全体の“表面張力”がピンと張る。

その瞬間の快感を体感してみてください。

5|まとめ

『surface tension』は、日常のなかで誰もが味わう、

「心が溢れそうになる限界の瞬間」

を、決して壊すことなく、音楽のグルーヴへと変えてくれる曲です。

正確なドラムがコップの縁を支え、ベースが低音で心を躍らせる。

シンセとエレピが都会的な夜の光を映し出し、ボーカルが飽和寸前の思いをメロディとして放つ。

この4つの歯車が組み合わさることで、ただのおしゃれな楽曲を超えた、

「聴いたあとに、少しだけ自分の境界線を広げられる一曲」

に仕上がっています。

イヤホンで味わう緻密なサウンド体験はもちろん、ライブ会場の生音で、この“限界のグルーヴ”を体感したとき、音楽の見え方はさらに大きく「くるり」と変わるはずです。


作品とライブの案内

3rd Album『CONTINUE?』全国発売中!

『surface tension』『24/7』『navyblue』『くるりってさ。』『blind start』などを収録。

配信で聴く:
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タワーレコード:
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ONE-MAN LIVE情報

2026年8月21日(金)

月見ル君想フ

TëKMO+ ONEMAN LIVE
“summer pulse”

~テクモと騒ぐ夏~

https://7057.zaiko.io/e/tekmo0821

TëKMO+ サウンド設計室 — てくもと学ぶ“懐かしい音”の正体 — 第6回「blind start」—冷たいサウンドの上で、心臓が暴れ出す

今回取り上げるのは、3rd ALから「blind start」。

この曲をひと言で表すなら、冷たいエレクトロのサウンド上で、感情を熱くする曲です!

打ち込みのシーケンス、4つ打ちのビート、鋭いシンセサウンド。
そこだけを切り取れば、かなりクールで硬質な楽曲に聴こえるんですが、この「blind start」は、ただのエレクトロロックでは終わりません。

暴れるピアノ、ベースのうねり、ドラムの押し引き、そして限界まで前に出てくるボーカル。
機械的に整えられた枠の中で、生身のバンドサウンドが鼓動を与えるような楽曲になっています!

この「冷たさ」と「熱さ」のぶつかり合いこそが、「blind start」の一番おいしいところです。

1) 今月の問い

なぜ「blind start」は、イントロから一気に身体を持っていかれるのか?

ポイントは、曲の始まり方にあります。冒頭のサウンドは、い少しレンジを狭めたような、フィルターがかかったような質感から始まります。

わかりやすく言うと、最初は音の景色が少し曇っている。視界が狭い。まだ全貌が見えない、そんなイメージ。

「blind start」というタイトルにある“blind”という言葉とも、ここがとてもよく噛み合っています。何かが見えていないような状態を表していますね。

そしてドラムのカウントとともに、音の視界が一気に開ける。狭かった景色が、急にフルカラーで広がる。

この瞬間に、リスナーはただ曲を“聴き始める”のではなく、曲の中へ“放り込まれる”感覚になります。

 

2)設計ポイント①

引き算から爆発へ、計算されたセクション展開

「blind start」は、セクション(Aメロ・Bメロ・サビ)ごとの温度差の作り方を緻密に計算しています。

Aメロでは、あえて音数を絞り、派手なシンセや大きな展開を抑えています。
ただし、曲の勢いが落ちているわけではありません。低い場所でうねるベースと細かい16ビートのノリが、内側でずっとエンジンを回し続けている。表面はクールなのに、足元ではすでに走り出しているような緊張感を感じてもらえるはず。

そこからBメロに入ると、走っていたビートが「ドーン」と突き放され、ピアノやシンセの響き一気に広がります。

リズムの抜き差しや一瞬のブレイクによって、サビ直前の「来るぞ」という期待感を丁寧に作っているのもポイントです。

そしてサビ、ここまで抑えていたエネルギーが一気に解放されます。
80年代ファンクやシンセポップを思わせる鮮やかな上モノ、現代的な4つ打ちの推進力、低音で暴れるベース、そして前に突き抜けるボーカル。ここで「メロディを聴かせる曲」と「身体を踊らせる曲」が完全に重なります。

Aメロで削り、Bメロで焦らし、サビで爆発させる。
この流れがあるから、「blind start」はただ派手なだけではなく、聴き手の身体を自然にサビへ連れていく楽曲になっています。

 

3)設計ポイント②

「グリッド」と「グルーヴ」の話

ここで少しだけ専門的な話をします。

音楽制作では、DAW(コンピュータ)上のマス目に合わせて音を並べることがあります。
このマス目のことを、ざっくり「グリッド」と呼びます。

グリッドにピタッと合った音は、正確で、強くて、気持ちいい。特にエレクトロやダンスミュージックでは、この正確さが大きな武器になります。

しかし、人間の演奏はそこに少しだけ揺れがあります。
ドラムやピアノのタメ、ベースの弦を弾く強さ。ギターのカッティングの速度。ボーカルが言葉を前に押し出すニュアンス。

これらの揺れが、いわゆる「グルーヴ」を作っていんです!

「blind start」は、このグリッドとグルーヴの境目を面白く作っています。

曲全体はきれいに制御されているのに、その中で人間の演奏がかなり暴れている。だから、冷たくも聴こえるし、熱くも聴こえる。整っているのに、どこか必死。この矛盾が、曲の中毒性になっています。

“心臓 鳴らす”は、ただの歌詞ではなくサウンドの合図

この曲の中心にある歌詞は、やはり「心臓 鳴らす」という言葉です。このフレーズは単なるメッセージとして置かれているだけではありません。

サウンド全体で心臓を鳴らしにいく。

ドラムキックが心拍を刻むように、ベースは血流のように走り、ピアノやシンセがそれらに有機的な色彩を与えています。

そしてボーカルの「鳴らせ」という声が、頭を起こしにきます。

つまり「心臓鳴らそう」は、歌詞の中だけの言葉ではありません。アレンジそのものがその言葉を証明しているからこそ、この曲は、理屈で聴く前に身体が反応する。
“考えるより先に鳴る”という状態を、曲全体で作っているんです。

 

4)今日の“懐かしい音”の正体

今日の“懐かしい音”の正体は、
the telephones『Keep Your DISCO!!!』

AORのメロウなシャッフル感!

https://www.youtube.com/watch?v=keF5SXSKRjc

脳天直撃のシンセリード!!: 80sやテクノの質感をハイスピードなロックに落とし込み、高音域で鳴り響くシンセサイザーの「派手さ」「ネオン感」のバランスが、blind startに非常に近いです!

 

今夜の“耳トレ”ポイント

最後に、この曲を聴くときのおすすめポイントを3つ。

まず、イントロ。
最初の狭い音像から、音の視界が一気に開く瞬間を聴いてみてください。
ここで曲の世界に入れるかどうかが決まります。

次に、Aメロのベース。
派手なサビに耳が行きがちですが、実はAメロの推進力はかなりベースが作っています。
低いところでどれだけ曲を走らせているかに注目すると、曲の聴こえ方が変わります。

そして、サビ。
ボーカル、シンセ、ベース、ドラムが一斉に前に出てくる中で、どれかひとつだけが主役になっていない。
全部が同時に前に出ているのに、曲として破綻していない。

この密度感こそが、「blind start」の武器です!

 

まとめ

「blind start」は、ぼやけて見えないまま走り出す曲です。でもそれは、無謀に突っ込んでいるという意味ではありません。

見えないからこそ、心臓の音を頼りにする。外側の正解ではなく、自分の内側で鳴っている衝動に従う。

そのテーマを、歌詞だけでなく、サウンドの構造そのもので表現しているところに、この曲の強さがあります。

正確なビート。
硬質なシンセ。
うねるベース。
前のめりなボーカル。
その全部がぶつかり合いながら、最後にはひとつの言葉に向かっていく。

心臓鳴らそう。

「blind start」は、TëKMO+が持つエレクトロ、ファンク、ポップス、ロックの要素を、かなり高い圧で一曲に閉じ込めた楽曲です。

冷たい機械の上で、熱い人間が走っている。
その摩擦が、この曲をただのダンスチューンではなく、TëKMO+の“始まりの衝動”として鳴らしています!


【作品とライブの案内】

3rd Album:『CONTINUE?』全国発売中!
『navyblue』を収録したアルバム。全曲はこちら:
(配信で聴く→https://pcim.lnk.to/continue)

(全国のCDショップにてお買い求めいただけます。)
(販売元購入サイト:https://pcimusic.com/s/pec/item/detail/TKMO-0003?ima=4016)

(タワーレコード:https://tower.jp/search/item/T%C3%ABKMO%EF%BC%8B)

(楽天:https://books.rakuten.co.jp/rb/18420063/?l-id=artistpage-item)

 

ONE-MAN LIVE 情報

8/21(金) 月見ル君想フ

TëKMO+ ONEMAN LIVE ”Summer pulse”

〜テクモと騒ぐ夏〜

https://7057.zaiko.io/e/tekmo0821

TëKMO+連載コラム「サウンド設計室」 第5回|教材は『伝えられてないメロディ』

今回は、TëKMO+の楽曲『伝えられてないメロディ』を教材に、
“切ないのに、なぜか体が揺れてしまう音楽”を分解していきます。

 

1)今月の問い

「悲しい歌なのに、どうして心地よくのれるんだろう?」

『伝えられてないメロディ』は、大切な人との別れを描いた曲。

でも、聴いてみると、ただ沈み込むようなバラードではありません。

「切ないのに、どこか温かい。
悲しいのに、重すぎない。」

こんな風に聞こえる理由は、曲の土台にあるシャッフルのリズムにあります。

シャッフルとは、簡単に言うと、
少し跳ねるように「タッタ・タッタ」と揺れるリズムのこと。

歩いているというより、少し身体を横に揺らしながら進んでいく感じです。

この曲では、その心地よいハネたリズムの上に、
“本当は伝えたかったのに、伝えられなかった想い”が乗っています。

だから『伝えられてないメロディ』は、ただ泣かせる曲ではなく、
泣きながらも前に進んでしまう曲になっています。

2)結論

『伝えられてないメロディ』の魅力は、主にこの3つです。

① 心地よく横揺れする、ノれるシャッフルバラード
② ホーンと鍵盤が作る、大人っぽくソウルフルな質感
③ 「言えなかったこと」を小さな日常で描く歌詞

この曲の最大の特徴は、歌詞だけ見るとかなり切ないのに、
サウンドはずっと温かく、前へ進んでいる
ところです。

泣き崩れるのではなく、涙をこらえながら笑おうとしている。

その感情の揺れが、シャッフルの横揺れとぴったり重なっているんです!

3)設計ポイント3つ

① リズム:ゆっくりなのに体が揺れる“シャッフル”の気持ちよさ

この曲の一番大きな特徴は、リズムです。

テンポは速くなく、いわゆるバラードのはやさですが、

ドラムとベースが作っているリズムには、
ただゆったりしているだけではない“ハネ”があります。

このハネがあることで、曲が前に進んでいるように感じさせるのです!

悲しい歌詞なのに、音楽としてはずっと前へ進んでいく。
ここが『伝えられてないメロディ』の核です。

 

② ホーンと鍵盤:切なさを華やかに見せるアレンジ

この曲では、トランペットやサックスのようなホーンの音が、
感情の山を作る大事な役割をしています。

でもこの曲のホーンは、ただ派手に鳴っているわけではありません。
歌の気持ちが少しあふれそうになるところで、

後ろからそっと背中を押すように鳴っています。

言葉では言い切れない感情を、楽器が代わりに持ち上げてくれる感じ。

そして、そこにピアノの響きが乗ることで、
曲全体に大人っぽい丸みを与えているんです…!!

ただ悲しいだけではなく、少しおしゃれで、

少し余裕があって、でもちゃんと寂しい。

このバランスが、シティポップやAORに通じるポイントになります。

③ 歌詞:「大事件」ではなく「くだらない話」が胸を刺す

『伝えられてないメロディ』の歌詞は、別れを描いています。

でも、劇的な言葉で泣かせにいく歌詞ではない。

むしろ刺さるのは、大きな約束や運命の言葉ではなく、
もっと日常的な後悔です。

-

相手がどんな季節を好きなのか知らなかった。
もっとくだらない話をしていたかった。
「さよなら」とは言えず、「また明日な」で終わらせたかった。

-

この曲の主人公は、
最後までかっこよく別れられる人ではありません。

寂しいと言ってしまったら笑えなくなる。
泣かないようにしているけど、涙を隠せていない。
まだわかりたくないのに、時間は進んでしまう。

この未完成な感じが、生身の人間を表しています。

言えなかったことを、音楽にして届けようとしている曲です。

そこに、TëKMO+がこの曲を歌う意味があります。

4)今日の“懐かしい音”の正体

今日の“懐かしい音”の正体は、
Toto『Georgy Porgy』

AORのメロウなシャッフル感!

https://www.youtube.com/watch?v=EWIgEtkE3GA&list=RDEWIgEtkE3GA&start_radio=1

AORとは、大人っぽくて、演奏が上手くて、都会的で、心地よいポップスのこと。

派手にロックするというより、グルーヴ、コード、演奏の気持ちよさで聴かせる音楽です。

Totoの『Georgy Porgy』は、ゆったりしているのに、リズムが深くハネている名曲です。

ドラムのグルーヴ、ベースの揺れ、鍵盤のメロウな響き。
その上に、少し切ないメロディが乗っている。

『伝えられてないメロディ』にも、そこに近い感触があります。

6)まとめ

『伝えられてないメロディ』は、切ない別れの歌でありながら、
心地よく体が揺れるシャッフルバラードです。

ドラムとベースが作る横揺れのグルーヴ。
鍵盤とホーンが生む大人っぽい華やかさ。
そして、言えなかった想いを小さな日常で描く歌詞。

この3つが重なることで、曲はただの悲しいバラードではなくなっています。

「ありがとう」と言いたい。「もっと一緒にいたい」とも言いたい。
でもうまく言えない。
だから、その気持ちをメロディにする。それが『伝えられてないメロディ』という曲です。

TëKMO+の音楽では、おしゃれなサウンドだけではなく、
ちゃんと人の弱さや未練が入っています。

でも、それを重く閉じ込めないで、リズムで揺らして、
ホーンで光らせて、メロディで前へ進める。

『伝えられてないメロディ』は、
“のれる哀愁”というTëKMO+の強みがよく出た、
大人のポップ・バラードです。


【作品とライブの案内】

3rd Album:『CONTINUE?』全国発売中!
『navyblue』を収録したアルバム。全曲はこちら:
(配信で聴く→https://pcim.lnk.to/continue)

(全国のCDショップにてお買い求めいただけます。)
(販売元購入サイト:https://pcimusic.com/s/pec/item/detail/TKMO-0003?ima=4016)

(タワーレコード:https://tower.jp/search/item/T%C3%ABKMO%EF%BC%8B)

(楽天:https://books.rakuten.co.jp/rb/18420063/?l-id=artistpage-item)

 

ONE-MAN LIVE 情報

8/21(金) 月見ル君想フ

TëKMO+ ONEMAN LIVE ”Summer pulse”

〜テクモと騒ぐ夏〜

https://7057.zaiko.io/e/tekmo0821


 

TëKMO+連載コラム「サウンド設計室」 第4回|教材は『くるりってさ。』

この曲を聴く→https://pcim.lnk.to/continue

 

今回の教材は、3rd Album『CONTINUE?』収録曲『くるりってさ。』

この曲をひと言で言うなら、
“サウンドと歌詞で景色をくるっと変えていく、都会派ファンク・ポップ”です。

ただ明るいだけじゃない。ただおしゃれなだけでもない。

冴えない日常を、低音のグルーヴ・きらめくエレピとシンセで、少しだけ前向きな景色に変えていく。
そんなTëKMO+らしい一曲を解説します!

1)今月の問い

「日常の景色を少しだけ変えてくれるTëKMO+のサウンド秘密」

2)結論

『くるりってさ。』の気持ちよさは、主にこの3つでできています。

① タイトなドラムと弾むベース
② ネオンみたいに光るシンセとエレピ
③ 景色が回るようなサウンドの上で聴こえる歌詞

この3つが重なることで、
ただの“おしゃれなポップス”ではなく、
日常の見え方が少しだけ変わる体験になっています。

 

設計ポイント①

タイトなドラムと弾むベース

この曲の土台はとてもシンプル!

ドラムは無駄に動かず、しっかりとリズムの芯を作る。
その上で、ベースが自由に跳ねる。

この関係性が、この曲に”深さ”をもたらしている。

ドラムがまっすぐだから、ベースの細かい動きが際立ちます!

結果として、“歩いてるだけなのにちょっと気分がいい”

みたいなグルーヴが生まれています。

これぞ、テクモが表現しているシティ・ポップ、ソフィスティ・ポップの美学…!!
あの時代のおしゃれなポップスを、令和のポップスに落とし込んでいるのがポイントです!

 

設計ポイント②

ネオンみたいに光るシンセとエレピ

この曲の「都会感」は、ここで決まってます。

曲の開始10秒から出てくる柔らかなシンセが一気に“夜”に変える役割を持っています!

さらにエレクトリック・ピアノをコード楽器として採用することで、
キラキラだけじゃない、少し温かみのある温度感が加わる。

シンセ=夜の光
エレピ=温かい空気

この2つが重なることで、
ネオンが滲む夜の街みたいな質感になっています。

ここが弱いと、この曲はただのファンクになる。
でもここがあるから、“TëKMO+の夜”になる。

 

設計ポイント③

景色が回るようなサウンドの上で聴こえる歌詞

この曲のタイトルにもある「くるり」。

これ、サウンドと完全にリンクしてます。

ベースが動く
和音が流れる
シンセが光る

その上で、歌詞が乗ることで、
“同じ一日なのに見え方が変わる感覚”が成立している。

例えば、

・「売り切れてしまったわ」
・「誰かが持ってった」

こういう日常の断片的な言葉が、リズムにハマることで、ただの状況説明じゃなくなる。

さらに、

・「最悪な今日だって」
・「ご機嫌の伏線になってほしい」

ここで一気に視点が変わる。

重要なのは、無理に前向きにしてないところ。
現実はそのまま。でも解釈だけ少し変えることで、“ほんの少しの角度の変化”が、
サウンドの「くるり」と完全に噛み合ってる。

3)今日の“懐かしい音”の正体

【正体:Level 42『Something About You』的な、ベース主導の80sファンク・ポップ】

https://www.youtube.com/watch?v=zpdQQoc-gkk

『くるりってさ。』を聴くと、80年代のUKファンク/ソフィスティ・ポップの空気を感じる人もいるかもしれません。

特に近いのは、Level 42の『Something About You』のような美学です。

ポイントは、
ベースが目立っているのに、曲全体はちゃんとポップに聴こえるところ。

テクニックを見せるためのベースではなく、曲を気持ちよくするためのベース。
低音が派手に動いているのに、全体の印象は涼しくて都会的。

このバランスがすごく重要です。

『くるりってさ。』も、ベースがしっかり主張しています。
でも、あくまで中心にあるのは歌と曲の景色です。

だから、音楽好きには「このベース、かなり気持ちいい」と届く。
一方で、細かいことを知らなくても「なんかおしゃれでノれる曲」として楽しめる。

この二段構えが、この曲の強さです。

 

まとめ

『くるりってさ。』は、

リズムで身体を動かしながら、
言葉で景色の見え方を変える曲。

・下ではドラムとベースが前に進ませる
・中ではシンセとエレピが夜を作る
・上では歌詞が日常を少しひっくり返す

この3層がちゃんと機能してるから、「なんかおしゃれでノれる」だけで終わらない。

“聴いたあとに、ちょっとだけ気分が変わる曲”になってます!


【作品とライブの案内】

3rd Album:『CONTINUE?』全国発売中!
『navyblue』を収録したアルバム。全曲はこちら:
(配信で聴く→https://pcim.lnk.to/continue)

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ONE-MAN LIVE 2本同時解禁!

 5/23(土) 下北沢Music Islanmd O

「たっぷりテクモvol.2サウンド設計-実演編-」

〜近距離でテクモサウンドを紐解く〜

https://www.tekmoplus.com/blank-6/tappuritekumovol-2-saundosekkei-jitsuenhen

 

8/21(金) 月見ル君想フ

TëKMO+ ONEMAN LIVE ”Summer pulse”

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TëKMO+連載コラム「サウンド設計室」 第3回|教材は『♭Boy』

(この曲を聴く→https://pci.lnk.to/flatboy)

1)今月の問い

「体が動いてしまう“気持ちいいリズム”って、何でできてる?」

2)結論

『♭Boy』の気持ちよさは、
①シンプルなドラムが作る、まっすぐな進み方
②一音一音をしっかり踏みしめるベースライン
③シンセとピアノが“テーマ”と“物語”を与えるフレーズ設計

の3つでできています。

この曲は、音をたくさん詰め込んで盛り上げるタイプではありません!

むしろ、大きな流れの中で自然に体が揺れるようにできている。

だから、無理にテンションを上げなくても、気づいたらノってしまう、そんな曲。

しかも歌詞では、もう戻らないと決めながらも、頭の中では何度も自分に言い聞かせている。

失ったものを抱えたまま、それでも自分の在り方や勝つ方法を探していく。
つまり『♭Boy』は、迷いが消えた歌じゃなくて、迷いを抱えたまま前を向こうとする歌なんです!

だからこそ、サウンドの中でも、過剰に跳ねたり暴れたりしない。
大きく、まっすぐ、でも内側にはちゃんと揺れがある。
そのバランスが、この曲の“体が動く気持ちよさ”になっています。

3)設計ポイント3つ

① ドラム:細かく煽るんじゃなく、「自然に歩きたくなる流れ」を作っている

『♭Boy』のリズムの良さは、音を細かく埋めて勢いを出すタイプの快感じゃないです。

まずはドラム。
パターン自体はかなりシンプルで、余計なことをしすぎない。だからこそ、リズムの芯がぶれず、聴いている側も自然に身を任せられる。技で引っ張るというより、まっすぐ進むための道を作っている感じです。

このシンプルさは、歌詞ともよく合っています。
この曲は、感情を派手に爆発させる歌ではなく、頭の中で何度も同じことを反復しながら、自分の進み方を探していく歌。だからドラムも、気持ちを煽るというより、進み続ける時間そのものを鳴らしているように聴こえるんです。

 

② ベース:細かく暴れるんじゃなく、「地面を踏みしめる気持ちよさ」を作っている

この曲で体が動く要素に、ベースの存在も強く絡んでくる!

ここでのベースは、細かく動き回ってノリを作るというより、一音一音をしっかり置いていくことで、曲全体に“前へ運ばれる感じ”を作っています。
だから耳だけで追うというより、まず体で受け取れる。

聴いていると自然に揺れるし、歩幅まで整えられるような感覚にしたくてこのベースを弾いています。

さらにベースのこのプレイも、歌詞の意味を反映しています!
『♭Boy』では、もう帰らない、戻らない、という意思がはっきり示される。

だったらリズムも、右往左往しすぎない方がいい。

ベースが太く、長く、まっすぐ進むことで、後戻りしないと決めた人の歩き方みたいなものを音にしているんです。

 

③ ピアノとシンセ:リズムを埋めるんじゃなく、曲に“物語”を与える

この曲のシンセは、イントロ、間奏、アウトロでテーマを弾いて、曲の顔を作っている存在です。「この曲はどんな景色なのか」を最初に見せています。物語の入り口に近い役割ですね!

そして、そこに対してすごく大事なのがピアノ。
この曲のピアノは、単なる後ろの伴奏ではありません。

シンセと同じ動きをしたり、フレーズとして場面に意味を足したりして、

サウンドに人の気配みないなものを入れてくれています。
シンセだけだと無機質になりやすいところに、ピアノが入ることで呼吸が生まれています。『♭Boy』の世界はただおしゃれなだけじゃなく、ちゃんと人間の感情が通った景色にしているんです。

“表面はクールだけど、中では熱が消えていない感じ”を、シンセとピアノの関係性でうまく表現しています。

4)「今日の“懐かしい音”」の正体

【正体:80年代シンセポップ/ダンス・ロックの“前へ進む気持ちよさ”】

  • Tears For Fears - Pale Shelter

https://www.youtube.com/watch?v=BUfcT5OoP-8

ただノれるだけではなく、内省やドラマをちゃんと含んだポップス。歌詞の感情とサウンドの広がり方の噛み合わせに近さがあります。

だから『♭Boy』は、懐かしいだけで終わらない。今の耳で聴いても、ちゃんとかっこいい。 そこが強いと思っています!

5)今夜の“耳トレ”(1分でできる!)

「ベースの“前へ進む感じ”と、ピアノの“物語の足し方”を分けて聴いてみよう」

今日は、歌より先に土台の気持ちよさを追ってみてください。

まずはドラムとベースだけに集中して、
「この曲、なんでこんなに自然に体が揺れるんだろう?」と聴いてみる。
たぶん、ベースが一音一音をしっかり置きながら、曲をまっすぐ前に運んでいるのがわかるはずです。

そのあと、シンセとピアノに耳を移す。
ここで注目してほしいのは、
「この2つはリズムを埋めているというより、景色や場面を作ってるな」ということ。

そうやって分けて聴くと、『♭Boy』は
ドラムとベースが体を動かし、シンセとピアノが物語を運んでいる曲として見えてきます。

そして歌詞まで重ねると、
ただノれる曲じゃなくて、迷いながらも前を向こうとする意志の歌として、もっと深く刺さってくるはずです!


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ONE-MAN LIVE 2本同時解禁!

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「たっぷりテクモvol.2サウンド設計-実演編-」

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TëKMO+のサウンド設計室 第2回|教材は「navyblue」

80年代の“夜の匂い”って、ただ古い音色を使えば出るわけじゃないです!
TëKMO+の3rd ALBUM収録の「navyblue」(https://pci.lnk.to/navyblue)は、懐かしい80年代のサウンドを、“今のスピード感”で蘇らせるために設計した曲。

聴けば聴くほど要素が分解できて気づいていくタイプのやつ。

1)今月の問い

「80sの懐かしのサウンドを、現代J-POPの疾走感で成立させるには?」

2)結論

「navyblue」の正体は、これ。

  • ジャンルを“混ぜる”じゃなく、“重ねる”
  • シンセの音色で“遠近感”を作り、夜景みたいな奥行きを出す
  • リズム隊が16分を刻むことで、曲に推進力を与える

この3つの要素で、80sの気配が“懐かしさ”で終わらず、新しさを生み出していくよ。

3)設計ポイント①:ジャンルを1つに絞らない

「navyblue」は、1つのジャンルで説明しようとすると分かりにくい。
でも実は、いくつかの“味”を重ねて作ってる曲だと思うと一気に見える。

中心になってるのは、だいたいこの4つ。

  • Synthpop(シンセポップ) , Power Pop(パワーポップ):メロが強くて、歌も前に出る。曲の芯。ライブで聴くと“パワー曲”なのが分かるやつ。
  • City Pop(シティポップ):リズムが気持ちいい。和音もちょっと大人。曲に“洒落感”を足してる。
  • Synthwave(シンセウェーブ):80年代っぽいキラキラした光。夜っぽい景色を作る担当。
  • Disco Funk(ディスコファンク):ベースがうねって、体が勝手に動く感じ。踊らせる担当。

大事なのは、混ぜただけじゃなくて、役割分担してるってこと。

懐かしさは“背景の景色”に回して、前に出るのはメロとノリ。

だから、レトロっぽいのに古臭くならない。

4)設計ポイント②:シンセは「距離」で聴くと一気に分かる

「navyblue」の立体感は、曲中にずっと「ジャン!」って鳴ってる、シンセの音色が作ってる。
同じシンセでも、“どこで鳴ってるか”が全部違う。

・近くで鳴るシンセ

サビで「チキチキ」って細かく鳴ってる音が聞こえるかな?

→ これがあるから、沢山の音を詰め込んでも、全体がボヤけないで輪郭がはっきりとするよ。

・遠くで鳴るシンセ

耳を澄ませて。サビ、歌の後ろの方の遠くで「ジャン!」ってくり返し鳴ってる音。
これはあえて“奥のほう”で鳴らすことで、夜景の光みたいな広がりを作ってる。

→ ここが「navyblue」の“色”であり!背景となってるよ。

おすすめの聴き方:
サビを1回だけ“歌”を追わずに、近い音遠い音の順で意識してみて。
「この曲、奥行きでテンション上げてるな」って分かるはず!

5)設計ポイント③:リズム隊が主役みたいに動く(簡単版)

「navyblue」の速さって、音が派手だからじゃない。
ベースとドラムがずっと前を走ってるから、自然に加速して聴こえるでしょ?

  • ベース:ただ支えるんじゃなくて、細かく動いて曲を引っぱる。だから跳ねて聴こえる。
  • ドラム:特にスネアが気持ちいい。ここが抜けるからスピードが出る。
  • ハイハット:細かい刻みで、体感のテンポを速くしてる。

つまりこの曲は、
**シンセが“夜の景色”を作って、リズム隊が“車で走らせてる”**曲。

6)「今日の“懐かしい音”」の正体

【正体:】“硬いシンセ音” × “16ビートのリズム”=80sの夜のネオンとスピード感

  • New Order「The Perfect Kiss」

7)まとめ:この曲は「夜の情報量」

「navyblue」は、80sの懐かしさをそのまま持ってきてるんじゃない!
遠近感(空間)と、リズム感(速度)で、現代J-POPに変換してる楽曲!

ヘッドホンで、夜に聴いて。
奥でキラキラしてて、手前でチカチカ鳴ってて、下でベースが走ってる。
それが全部そろった瞬間、曲のタイトルが“色”として見えるはず。

 

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『navyblue』を収録したアルバム。全曲はこちら:
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(※画像1)

 

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TëKMO+のサウンド設計室 第1回|教材は『24/7』

始まりました。TëKMO+の連載コラム「サウンド設計室」。

第1回は、3rdアルバム収録曲『24/7』を教材に、

“おしゃれで切ないのに「ノれる」”の正体を分解していきます!

1)今月の問い

「“おしゃれで切ない”って、音でどうやって作る?」

2)結論

『24/7』の“エモさ”は、

①夜色のハーモニー

②低音が演出する疾走感

③ネオンみたいな質感

の3つで設計してる。
その結果、80sの都会的ポップスの“キラめき”が、現代の鳴りでよみがえる。

3)設計ポイント3つ

① ハーモニー:夜の街を彩る「エモい」色の正体

この曲を聴いて「なんだかオシャレで切ない」と感じるのは、使われている音の重なり(コード)に秘密があります。

単なる「ドレミ」の明るい音だけでなく、少しだけ「濁り」や「浮遊感」のある大人っぽい音の組み合わせを多用しているからです。

例えば、都会の夜景を眺めているときに、街灯がじわっと滲んで見えるような感覚ってありますよね。あの「切なさと高揚感が混ざった感覚」を音で表現しています。

ただ明るいだけじゃない、夜の空気感を含んだ「エモい」響きが、曲全体に深みを与えているのですね!

 

② リズム:夜を駆け抜ける「ドキドキ感」の作り方

この曲の最大の魅力は、立ち止まらせないような疾走感(ドライブ感)にあります。

心臓の鼓動よりも少し速いテンポに加え、リズムのアクセントをあえて少し「ずらす」ことで、聴いている人の背中をグッと押すような躍動感を生んでいます。

夜の高速道路をスムーズに走り抜けているような感覚。
一定のリズムを刻みつつも、時折「跳ねる」ような動きが入ることで、身体が自然に揺れてしまうような心地よいグルーヴを生んでいます。

耳を澄ませて、一度歌から耳を離し、ドラム・ギター・ピアノ・ベースがどのようなリズムを刻んでいるのか意識して聴いてみてください。

 

③ 質感:音の中に閉じ込めた「ネオンの光」

曲全体を包んでいるのは、80年代の都会的なポップスを現代風にアップデートした「キラキラした質感」です。 耳を澄ますと聞こえてくる、宝石を散りばめたようなサックスや電子音の響きが、まさに夜の街に輝くネオンサインを連想させます。
一方で、ボーカルや楽器の生々しい熱さもしっかりと感じられるため、冷たいデジタルな印象にならず、どこか「人の温もりや息づかい」を感じる音に仕上がっています。
この「新しくて、どこか懐かしい」光の質感が、聴く人を一瞬で都会の夜へ連れて行ってくれるのです。

4)「今日の“懐かしい音”」の正体

【正体:80年代のドラマ主題歌のような「都会のキラめき」】

この曲から感じる「懐かしさ」は、かつてカセットテープから流れていたような、少し背伸びをした大人なポップスの要素を感じさせます。
今の時代に聴くと、それが逆に「新しくてカッコいい」響きとして胸に刺さるんです!

 

聴いてみてほしい懐かしの曲

 

・杏里『悲しみがとまらない』

(切ないけれど踊り出したくなる、80sシティ・ポップの代表格となる楽曲)

https://www.youtube.com/watch?v=Io57r9R0HcE

 

・PSYQUI 『ヒステリックナイトガールfeat.Sach』

(80sシティ・ポップの質感に、futerbassをかけ合わせ現代ポップスに落とし込んだ楽曲。24/7の1:10〜の10秒間と、こちらの楽曲を聴き比べてみてね!)

https://www.youtube.com/watch?v=MwxgUVrj5m4

5)今夜の“耳トレ”(1分でできる!)

「一番低い『ドスンドスン』という音だけを追いかけてみよう」

今日は、ボーカルではなく、一番低いところで鳴っている**「ベース」の音**に全集中して聴いてみてください。

  1. 最初は難しいかもしれませんが、耳を「低音」のフィルターにするイメージで。
  2. この曲のベースは、単にリズムを刻むだけでなく、まるで歌っているように激しく、かっこよく動いています。
  3. 「あ、ここでベースが跳ねた!」と気づくことができれば、曲の疾走感が2倍、3倍に感じられるはずです。

土台となる低い音が、どれだけ曲をエネルギッシュに動かしているか。それを知ると、音楽を聴くのがもっと楽しくなりますよ!

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ONE-MAN LIVE開催決定!
2026/2/22
(日)「FORTH」|天王洲アイル KIWA
チケット:https://t.livepocket.jp/e/forth0222
(初めての人でも乗れる合図、用意してます!)