音楽メディア・フリーマガジン

CULTURES’ BackPacker vol.4「One Q、和洋折衷、時代を超える恋心」

 【和洋折衷】。よく耳にする言葉ですが、日本と西洋との風習・様式を適当に取り混ぜること、という意味があるのだそうです。あたしが三味線や日本文化を取り入れてポップミュージックを制作していく中で、時折そのような感想を預かることもあります。しかし和洋折衷というのは、あくまでそれは日本文化が前にあった状態を指すのだとも思うのです。日本文化をベースに洋文化を取り入れる。は我が国の文化を大切にしたいというムーブが根底にあるからこそだからか、その様式美を完全にかき消すことなくバランスを保ちながら、新たなスタイルを確立して存在しています。そしてそれは視点を変えてみると、簡単に洋文化から完全に食ってかかられることのない強いパワーを持つ日本文化だからこそ完成するバランスであるとも言えます。

 

 CHiLi GiRLの音楽もとい川嶋志乃舞が持つ三味線の音の置き方は和洋折衷ではなく、あくまで洋文化から強く影響を受け、ろ過され昇華され生まれたジャパニーズ”渋谷系”が根底にある音楽プロジェクトなのですが、5/31にリリースした「One Q feat.倉品翔(GOOD BYE APRIL)」は、これまでの作品のバランス感から原点回帰し、改めて和洋折衷の作品となりました。

 

 歌舞伎でも愛される長唄「二人椀久(ににんわんきゅう)」を題材に制作した今作がなぜそうなったかといえば、実は和洋折衷を重んじつつポップミュージックを表現し続けていた2019年川嶋志乃舞時代の作品だからです。伝統芸能ポップアーティストを名乗る川嶋志乃舞は、何かしら日本に因んだ作品を作り続けていました。例えば長く愛していただいている「遊廓ディスコ」は長唄「吉原雀」を、「トリカブト」は狂言「附子(ぶす)」を、キツネ倶楽部は能楽「殺生石」さらに殺生石から派生して誕生した長唄「那須野」をそれぞれ題材にしています。これらは東京藝術大学に通っていた頃に勉強していた古典邦楽からヒントを得た作品で、そこに恋心や女の生き様を絡めてポップス表現をした曲。今作「One Q」も、CHiLi GiRLが生まれる以前の当時書き下ろしたものになります。

 

◆遊廓ディスコ/川嶋志乃舞

https://youtu.be/CYwql2EUQlk

 

◆トリカブト/川嶋志乃舞

https://music.apple.com/jp/album/%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%83%96%E3%83%88/1437481239?i=1437481392

 

◆キツネ倶楽部/川嶋志乃舞

https://youtu.be/JI10pB7LOTE

 

 さてその頃、あたしは和洋折衷とも長きにわたって闘っていたのも事実です。なぜなら純粋にポップミュージックをしたいのに、日本文化というものはパワーが強すぎるし、さらにはそこに三味線を持って舞台へ出てこようものなら”和”が前に出て当然なのですから。

 

ーーー三味線を持たなくても、日本文化を背負わなくても、あたしはあたしの歌いたいものを歌いたい。

 

 そう強く感じていて、とうとう自分の武器に自分自身が壊されてしまいそうになった頃に「One Q」を作りました。江戸時代の儚い恋心を、時を超えてもきちんと様式美を保ちつつ歌うから、三味線をいよいよ置いてしまおう、と自分を救うために書いたのでした。そのうちにCHiLi GiRLを始めて、この曲を作ることになった苦しみや葛藤をも忘れ自由になったとき、ファンのおひとりが「One Q、また聴きたいな」と言ってくださったのです。

 

 苦しかったことを忘れることで救われていたけれど、その頃作った曲ごと忘れてしまっていたのです。リリースすらしていていなかった幻の曲「One Q」。それを覚えていてくださったその方には本当に感謝しています。ライブで数回しかやったことのなかったこの曲を約3年もの間忘れずにその方の心に刺さっていたこのパワーを信じて制作を決めました。なんなら、もっと良い曲にしようと。そこで頼もしい先輩であり友人の倉品翔くん(GOOD BYE APRIL)にアレンジと共演をお願いして、さらに強く魅力的なパワーを込めて、幻を現実にすることができました。

 

 二人椀久は、遊女の松山太夫に恋をした椀屋の久兵衛が、叶わぬ恋の末ついに気が触れてしまい、夢幻として現れた彼女と桜の木の下で踊るというお話。偶然にも一時的に幻と化していた本曲の経緯とも重なり、自分にとって忘れることのできない一曲となりました。時代によって恋の落ち方、落とし方、そして恋する時間の過ぎ方は変わりますが、恋することそのものはいついかなる時も変わらないのではないでしょうか。和洋折衷に改めて向き合ったことで、そんな大切なことにも気づくことができました。

 

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 昨年「泣き虫の星」でGOOD BYE APRILとして参加させて頂きましたが、今回は僕個人として、歌唱とアレンジ・ミックスをやらせていただきました。

 最初にこの曲のdemoを聴いた時からすごく素敵な曲だなあと思い、「二人椀久」という日本の伝統芸能が題材やモチーフになっているというのが、すごく面白かったですし、"グラウンドビート"が基軸になって、三味線だったりサックスだったり色んな音が絡み合ったアレンジになっているので繰り返し聴いて新しい発見がたくさんできるとかなと思うので、是非じっくり聴いていただければと思います。

倉品翔(GOOD BYE APRIL)

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One Q feat. 倉品翔(GOOD BYE APRIL)はこちらからチェック!

https://clg-tokyo.bitfan.id/contents/102344

 

川嶋志乃舞が表紙掲載、特集掲載されている各書籍もチェック!

https://amzn.asia/d/bx0p78a

https://tkj.jp/book/?cd=20259301

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2023.6.10掲載

執筆:Shinobu Kawashima

 

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LIVE INFOMATION

6月23日(日)京都MOJO

7月1日(土)渋谷ストリームホール/オノマトペル主催「TOKYO天の川」客演コラボ

7月12日(水)下北沢rpm「Summer Jam Session(川嶋ジャム)」

7月22日(土)CHiLi GiRL&川嶋志乃舞 mixed one-man show「LOVE SPiCE HARVOR」

※来場チケットSOLD OUT/配信チケット発売中

チケット詳細はこちら▷https://clg-tokyo.bitfan.id/schedules/menu/34068

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CULTURES’ BackPacker vol.3「自分らしく、海を越えるには」

「イケてるひと」は、メイクやファッションのセンスだけではなく、知識や経験をさらりと自分のものにして、あらゆるシーンでも自分らしくいられるひとのことだと思うのです。

 

台湾は台中で行われた大型野外音楽フェス「Spring Wave」に、TOKYO GROOVE JYOSHIの客演として渡航した今回、コロナ禍中で妨げられていた久しぶりの公演となりました。最後に海外へ渡ったのは、こちらもTGJとの2020年2月ニューヨーク。

 

◆「Spring Wave」出演の鍵となった動画「WHAT IS HIP?」NYツアー時の旧メンバー。

https://youtu.be/fiM7ZsneF64

 

◆台湾渡航を叶えたメンバーでのライヴ動画「Rise up/TOKYO GROOVE JYOSHI」

https://youtu.be/UaTBsoxgIj4

 

あたしを含めてTGJメンバーは、日常会話とライヴMCができる範囲で、なかなか込み入った話までは不束では踏み込めないものの、ボディランゲージ+スマイル、そして持ち前の天真爛漫さを全員が兼ね備えていると思います。音楽が確かだからこそ異国の人々にも興味を持ってもらえる入り口が整い、そしてあたしたちも同じく、異国の人々や文化に興味があって歩み寄りたいからこそ、新しい出会いや視点が広がっていくのだと感じます。

特にメンバーの中で英語が達者なのは、あたしと同じく客演のSax.今井晴萌。彼女は10代の頃に単身渡米し、ヴィクター・ウッテンのセッションキャンプに参加。彼の来日にはゲストとして共演を果たしています。彼女は媚び売ることなく、共演者はもちろん、テクニカルやフードを出店している各スタッフ、お客さんとも気さくに話す様子を何度も目の当たりにしました。ピカイチのプレーなのにフレンドリーで、だれもが彼女と仲良くなりたいと、そしてもっと彼女の音楽を知りたいと興味を持っていました。彼女は本当に「イケてる」のです。

 

昨今の音楽家は名門大学の卒業生が多いのは確かですが、世界とコミュニケーションを取る上では、学歴は関係ないようにも思います。あたし自身、東京藝大を卒業しているからこそ、学歴では得られない経験や、その経験を掴みにいく勇気をとてもとても羨ましく感じます。作家として、演奏家として、自分で選んだ道以外にいろんな夢を持つ仲間や仕事になり得る出会いを獲得するのに、大学や専門学校はとても大事な場所です。毎日、きちんと目的を持ってそこに通えば、生活しているだけじゃ知り得ない専門用語や、歳の近い学生との切磋琢磨を間近で体験できるのですから。

 

とはいえ彼女のように、自分の楽器に必要な基礎やルーツ、マインドを会得するには、学校に入らずにその音楽の本場へ向かっていくことも素敵です。出会いのタイミングでその時がいつくるかは分かりません。遅かれ早かれ、本場の音を体験しに一歩踏み出すことは、誰にでもできるのかもしれません。

 

海外では、積み重ねてきたプロフィールやキャリアが日本国内でいくら優遇されようとも、どこでも誰でも、目も耳も惹かれる確かな実力と、その人間性が功を奏すのです。

 

三味線は日本生まれなので、海外留学よりも、国内での修行がほとんどになります。だいぶ少なくはなりましたが、いまだにジャンルによっては、住み込みの内弟子制度もあるくらいです。師範免許を許され、弟子を取り始めて8年目、佐々木光儀流光櫻会(みつさくらかい)を設立して丸3年が経つあたし自身も、まだまだ民謡の唄の勉強をしに月1で東京から小田原まで通っています。民謡の各発祥地に行けば、CDでは分からない独特の節回しや伴奏のノリにも出会うでしょう。日本の音楽も、座学だけでは知り得ないことがいっぱいなのです。

 

とはいえ、CHiLi GiRLもとい川嶋志乃舞はファンクやソウル、サンバにジャズなどワールドミュージックが大好き!三味線を伝統的な演奏法やしきたりに準じて演奏するだけでは、異国の人々に出会い、愛してもらえる頻度は減るかもしれません。古きを温め、新しきを知る。これこそあたしのやるべき音楽なのです。今回の久しぶりの海外公演で色々な気づきがありました。

 

インターネットで手軽に海外のコンテンツや音楽、さまざまな文化をリサーチしやすい時代となりました。また、コロナによって入国する条件を満たすのがなかなか厳しかったアメリカが、5月11日よりワクチン接種証明が不要になるというニュースが出ましたね。あなたの好きな音楽の本場へ、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。きっと素敵な出逢いや歯がゆい思いが、あなたがもっともっと素敵でセンスある「イケてるひと」になれるきっかけになることでしょう。一緒に冒険しましょう!

 

2023.5.10掲載

執筆:Shinobu Kawashima

 

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LIVE INFOMATION

5月30日(火)代々木LODGE

6月4日(日)浜松窓枠

 

7月22日(土)CHiLi GiRL&川嶋志乃舞 mixed one-man show「LOVE SPiCE HARVOR」

※来場チケットSOLD OUT/配信チケット発売中

チケット詳細はこちら▷https://clg-tokyo.bitfan.id/schedules/menu/34068

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CULTURES’ BackPacker vol.2 ソエジマトシキと語る

春めく2023年3月18日より全世界一斉デジタル配信となったToshiki Soejima(ソエジマトシキ)のニューアルバム「True」にて、「Beautiful In Tokyo feat.CHiLi GiRL」がリリースされました。今回はそんなあたしの盟友であり、ギター講師やアーティストとして活躍するソエジマくんとの対談インタビューをお届けします。

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はじめに、ソエジマくんとあたしの出会いは2021年頃に流行っていた「Clubhouse」というトークアプリ。そこでソエジマくんがTwitterで開催する「おしゃれペンタ選手権」を知り、三味線でもぜひ参加してください!と背中を押していただいたことをきっかけに、第4回から参加しました(この時、初参加でアレンジ賞を頂きました)

【日本一のペンタ使いは誰?】第4回おしゃれペンタ選手権のグランプリを発表します!

以降第6回では準グランプリに。ソエジマくんは、友達だからどうこうじゃなく、本当にフラットに審査選定してくれるので、純粋にすごく嬉しかったです。

【グランプリは誰の手に?】第6回おしゃれペンタ選手権の結果を発表します!|伝説級のギターソロが誕生しました。

あたし自身、三味線のコンクールも含めて、オーディションやコンテストと言う競争文化からは卒業していたのですが、不幸中の幸いなのか、コロナ渦でCHiLi GiRLが誕生し、CHiLi GiRLでなら初心に帰ってみることも大事だ!と思っていた矢先に、ソエジマくんと出会ったんです。この出会いはすごくあたしにとってはかけがえないのないものです。

まさに第4回おしゃペンでの提出曲が「Beautiful In Tokyo」。あの時の曲がこうして世界中にリリースされるなんて当時夢にも思いませんでした。ベーシックトラックはソエジマくん、メロディはチャレンジャーShinobuの共作曲。そこから派生するふたりの対談をぜひお楽しみください!

◆アルバムレビュー

https://note.com/musicassetdir/n/n58b4352c241a

◆ソエジマトシキセルフライナーノーツ

https://note.com/toshiki_soejima/n/n93f1ba817ada#d0c985c9-14bc-4b94-8cde-fff2906cb2d3

■プロ音楽家として自分をカテゴライズするとしたら

CHiLi GiRL(下記:C)”音楽家”を職業にするとしたら、演奏家、ミュージシャン、アーティスト、バンドマン、講師の5つにカテゴライズされるとあたしは考えてるの。ソエジマくんは、自分自身はどれだと思う?

ソエジマトシキ(下記:ソ)Shinobuさんの言うカテゴライズの違いってどんな感じ?

C)演奏家は、作曲した人の意図を汲みながらなるべくそのままの完成度を保って後世に伝承する人。ミュージシャンは自分で作曲もするし、誰かが作ったものでも自分の個性も取り入れながらバージョンアップをしていく人。

ちなみにアーティストは、よりゼロから個性を表現をする個人または少数ユニット。バンドマンは、みんなで集まって”アーティスト"になる団体のことかな!ミュージシャンとも違って、上手い下手関係なくその団体に必要不可欠な個性を発揮している人はまさに、揺るぎなくバンドマンだと思う。で、言わずもがな講師は音楽を教える人だね。

このうちであたし自身はアーティスト、ミュージシャン、講師かなって思う。

ソ)演奏家も含まれてると思うよ!

C)あ、たしかに演奏家も入るかも!そしたらバンドマン以外かな!笑

ソ)伝統芸能を今でもしっかり弾いてたりもするもんね

C)師匠に「地域性や歴史や作家の意図を踏襲して、演奏で表現してね」って言われるからそうかも…!じゃあ改めて、ソエジマ君はどう?

ソ)俺はギター講師の他に、アーティストとミュージシャンの二つがあるのかなと思ってる。ゼロイチでの制作はやってるからアーティストかなと思ったんだけど、その意味のアーティストよりかはもっと汎用性がある気がしていて、ミュージシャンの要素もあるのかなって。

なんだけど、演奏家的な活動は今は全くしてないかな。あとバンドマンでもないし。

講師とアーティストの側面が特に強くて、他の人とコラボする時にミュージシャンの側面が出てくるね。

C)なるほどね!それってどんな割合?

ソ)なんとなくイメージとしてあるのは、アーティストと講師が4:4であって、残り2がミュージシャンかな。

C)あー!はいはいはい!(納得)

ソ)セッションしてる時は、やっぱりミュージシャンって感じがするなあ

C)やっぱりミュージシャンって言うのは楽器が上手いこと、更には人の目を惹きつけることができるのが大前提でさ。ソエジマくんの楽器への情熱やソウルが出てきているのは、この間のライブステージに立ち会ってそう感じた!

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◆2023年3月10日 三軒茶屋グレープフルーツムーン公演(ツアーファイナル)

ソ)ひとの音楽にのめり込んでやるというよりかは、圧倒的に自分の音楽をやる方が得意だし心地いいから、ウエイトとしてはアーティストの方が高いかなと思うね。

ーーーどうして人の音楽よりも自分の音楽の方がやりやすいって感じるの?

ソ)単純に性格な気がする。人が開催する飲み会よりも、自分が飲み会を主催した方が楽しいみたいな笑

C)わかりやすい!私もそのタイプかも。しかもうウチら、”一人呑み属性”じゃないですか笑

ソ)うんうん笑

C)みんなでも楽しめるけど、自分主軸の方が動きやすいし、気持ちが楽ってことなのかな。

ソ)そうそう!そうなのよ笑

単純に気持ちの作りやすさというか無理してない感じだね

■暮らしの拠点

C)若い時って、飲み会でもセッションイベントでも「あの先輩がいるから、ちょっと大変でも顔出したい」みたいな貪欲さが少なからずあったと思うんだけど、それがなくなって「人は人、自分は自分」って気持ちになったタイミングっていつ?

ソ)自分がYoutubeとかの発信を始めてからかなあ。

そう考えると、なんだかんだでコロナの頃なのかもしれない。

C)やっぱり大きな変化があった?

ソ)そう。東京に住んで、色んな人と関わる中で前進していることって「ひょっとしたらマヤカシなのかも」って薄々思ってはいたんだけれど…。2020年の緊急事態宣言を機に、初めて家でただただ作業をして、もともと自分のやっていたことだけやり続けて、それでもしっかりと結果が出るということに気づいてしまったんだよね。

そこの人に会ってみようかな…みたいなのも全部無くなった時に、むしろ頭が冴え渡るというか。

C)おお、なるほど!

ソ)さらに今の住まいがある静岡に移ってからは、その勘が正しかったと実感してる。一方でたまには東京のような刺激も必要なんだなって思ったね。笑

Beautiful in Tokyo - Toshiki Soejima & Shinobu Kawashima (Guitar × Shamisen)(kimama session)

◆ソエジマ邸(kimama studio)にお邪魔して収録した「Beautiful In Tokyo」

C)たまには必要だよね笑

ソ)インスタのストーリーとか見てて、今日は誰々がライブしてるとか見ると

やっぱり「行きたい!」って思ったりするのよね。だいたいそれが東京だったりするしさ。

C)東京はライブが本当に多いからね。誰かが毎日何かをやってる。

ソ)今すぐ新幹線乗って行こうかな、みたいな衝動が時々起こるんだ。今後、本当に行くことがあってもいいなと思うけどね!

C)逆にあたしは茨城から出てきて、水戸のバンドマン界隈は勿論、DJ(アニクラや歌謡ポップ)や地下アイドル…いろんなカルチャーに顔出しまくってたら、「あそこの界隈はどういう感じの人が界隈を仕切っている」、「この先輩がこの音楽を布教し始めて界隈が変化していってる」、「その裏で、このカルチャーがもう古くなっている」って変化を目の当たりにしてきたんだけど、やっぱりカルチャーの発信源は東京だよなあと。

ソ)そういう情報の早い人は、頻繁に東京に繰り出してたりするもんね

C)もちろん広々として空気の澄んだ茨城で過ごすのが大好きな反面、仕事したり日々生活したり、フットワーク軽くいられる東京は自分に向いてると思ったんだ。客演出演が多い”川嶋志乃舞”だからこその生き筋で、”自分は都会が向いてる”って感じた!

ソ)それも一つの良さだよね

■現場のあたしと、SNSのソエジマくん

C)あたしの活動の現場は、ライブハウスや楽曲提供のほかに、アーティスト/演奏家として街のイベントや企業さんのパーティーとかなんだけど、活動資金を立てるための収入の場が、コロナのせいで簡単にキャンセルされちゃったりとかあったよ。あたしたちも当日稼働までにリハーサルしたり曲を仕込んだりと、本番当日を迎えるまでに稼働しているから、それを機にキャンセルポリシーをしっかり設けたね。

ソ)なるほど…。キャンセルポリシーはお互いのためにも大切だね

C)そういう意味では、活動現場に変化はあったなあ。

さっきは生活面の話をしたけど、プロ音楽家としてコロナ禍での痛手を食らったことや得したことってあるかな?

ソ)実は得したことと言うか、やっぱりコロナでYouTubeが伸びたんだよね。そこは完全にコロナが追い風になってしまったんだよね。

C)追い風かあ!それは元々やっていた土台があったからこそ、より強い追い風だったんじゃないかな!

ソ)コロナ前から一年以上やってて登録者も10000人くらいは既にいたんだけれど、何十万回も再生される動画っていうのがまさにコロナで緊急事態宣言になった時にたまたま出してた「おうちギターおすすめアイテム5選」とかが立て続けに伸びてポジションが確立できた感じがあったね。オンラインレッスンもすごくも伸びた。

【必需品】お家ギターを充実させる最強グッズTOP5

C)インターネット少年だったソエジマ君のやってきた事が時代に合ったって事だね!

ソ)そう!それはほんとにラッキーで、コロナで損をしたってことは自分にはあまりないんだよね。だからこそ今年になって各地方ツアーで回って、各会場のノリの硬さや当日キャンセルの多さに「あれ?なんだこの感じ?」っていうコロナの残した爪痕や余波を感じたね…。

C)現場を見てきたあたしと、ネットでコツコツやってきたソエジマくんとで、かなり見え方感じ方が違くて面白いね!

■コンテンツづくりと継続

C)初めてやる新しいチャレンジに物怖じしちゃう人も多かったと思うんだけど、続きけていくコツや、ネットをうまく活用するコツがあれば聞きたい!

ソ)とにかく”スモールスタート”が一番大事!

何曜日の何時に動画を投稿する、というルールだけ決めておけばいいと思う。

ーーーコンテンツを作る上で、何かポイントとかあるの?

ソ)それをいつからやるのかだけ決めて、クオリティーがどうであれ投稿して、毎週少しづつクオリティーを上げていけばいいと思っていて。

今更YouTubeを始めるんならクオリティーが高くて専門性のあるジャンルじゃないとってよく言われるんだけど、あまりそんなことはなくって、人柄やキャラクターと相性だと思う。

C)なるほど!せっかく上げるなら最初からハードル上げがちだけど、それよりも「継続する」ことが大事なんだね。

ソ)投稿し始めって、熱し易く冷め易いみたいなことがおこると思う。はじめのうちはたくさん投稿して他のに、そのうちネタが減ってきたりスタミナが無くなってきて頻度が少なくなるみたいな。

それよりも、たとえ沢山動画が撮れても”毎週1回”って決めたならそれを守るのがコツだと思う。

C)自分で課題を増やしすぎないってことね!期待に応えようと薪をくべていって炎を大きくしたけど、結果的に追い付かなくなっちゃって、自分が燃え尽きちゃうんじゃなくて、ちょうどいい塩梅でくべつづけるってことだね。

ソ)そうそう!俺はそっち派だね。

C)10年以上昔からやってる人は毎日投稿してるベテランYouTuberもいるけど、あれはやっていくうちにチームがしっかりして、手分けしてできるようになったからで、まず1人でやるなら無理せず続けることが大事ってことだね。

ソ)勿論やりたければ毎日でもやっていいと思うけれど、何かを始めても挫折してしまう人は、あまり最初から頑張らず無理せずにしっかり自分のペースを守れるといいね。

ーーーちなみに、続けるにしても自宅の環境をあまり見せられないって人もいると思うんだけど、動画を撮影したり投稿をするのに適した環境づくりのこだわりみたいなのってあるの?

ソ)俺のこだわりとしては、自然光を取り入れることかな!

これを読んでる人にも言えることで言ったら、特別なものを買わずに、今あるものがいいと思うことかな。

C)自然光!

ソ)たとえば録音にしても、インターフェースがまだ安いものしかなくて、良い音で録れないとかの課題はあると思うんだけど。

実はそれくらいのクオリティの方が親しみがあったりとか。カメラも同じで、粗い解像度の方がスマホで聴いた時に親しみがあったりとかするし、必ず買い揃える必要はないと思う。壁を綺麗にしてみたりとかわざわざ変える必要もない!

それをそのままやればいいと思う。

C)取り繕うんじゃなくてありのままの自分を好いてくれる人がいると思うから、親しみやすさやあったかさが重要ポイントなんだね

ソ)そうそう!自分もずっとやってきたからようやく洗練されてきたけれど。最初は後ろに物があったりとか全然したし、全然伸びてから考えればいいと思う!

世界へ進んでいく

ーーーこれからもっとソエジマギターサウンド、メソッドが世界に広まっていくとなったら、どんな楽器や人とやってみたい?

ソ)まずは日本語のボーカルとやってみたいかな。

世界に打って出るには英語でやらなきゃって思ってたんだけど、どうやらそうでもないのかなって。それこそCHiLi GiRLとも日本語の歌で一緒にやってみたいな!

C)嬉しいなあ!今回は三味線のインスト曲だったもんね。

ソ)それからもう一つは、海外のミュージシャンや楽器と一緒にやることだね。

C)あたしはSnarky Puppyでギリシャのアコーディオンシンガーの人の動画で衝撃を受けたんだけど、アコーディオンいいなと思ってやってみたいな。あとはポリネシアンミュージックとかに触れていきたいかな笑

これから、さらに色々な人に見てもらって三味線も含めていろんな楽器とコラボするなかで広がっていくのは面白そうだね!

Snarky Puppy feat. Magda Giannikou - Amour T'es Là (Family Dinner - Volume One)

ソ)そうだね!

それでいうと、三味線と一緒にできたのは、めちゃくちゃ自分のなかでアンテナが広がって、全然いけるんだなって!

C)恐れ入りやす…!

ソ)いろんな楽器や民族音楽とかに精通しているわけではないけど。結局はその人と自分が仲良かったらいい感じのサウンドになるから、むしろ知っていきたいかな。

C)自分の軸はありつつも自分の知りたいことや、やってみたいことっていうのはこれからどんどん出てくるってことだね。楽しみだなあ~

ソ)そうだね。とはいえ、まずはやっぱり今は日本語でやってみることかな。

C)フロムジャパンのソエジマミュージックの中では日本語曲があった方が”東京のソエジマ”って世界から印象がつくよね!

ソ)そうそう!だからCHiLi GiRLと日本語の曲をやりたい!

カ)近々やりたいね!めちゃくちゃコラムの締めがとても良く収まった笑

◆対談:ソエジマトシキ

・Twitter https://twitter.com/toshiki_soejima

・instagram https://www.instagram.com/toshikisoejima/

・オンラインギタースクール「Soul Guitar Lab」

7日間無料体験実施中!https://soulgt.com/sgl

2023.4.10掲載

取材 / 編集:Shinobu Kawashima

編集協力:伴藤陸

   

◆3.10 New Digital Single「Scrolling Girl」リリース!

各サブスクリプションにて好評配信中。

◆4.16 東京渋谷にてリリースイベント開催決定!

https://eplus.jp/sf/detail/3823410001-P0030001

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◆4.23 台湾大型フェス「Spring Wave」にTokyo Groove Jyoshi客演にて出演!

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◆5.2 渋谷サーキットフェス「HUG ROCK FESTIVAL」出演

リリース情報やチケットお買い求めはCHiLi GiRLオフィシャルサイトをチェック▶︎https://clg-tokyo.bitfan.id

CULTURES’ BackPacker vol.1

「三味線は叩く弦楽器である」と言い続けて、ポップカルチャーや世界中の音楽に興味を持ちながら音を鳴らし、耳で探検を続けていたら、いよいよ連載が始まることとなりました。

”CHiLi GiRL(チリガール)”とは、あたしShinobu Kawashimaのソロポッププロジェクトです。でも一人では寂しいのでこれまで出会ってきた仲間、これから出会うであろう仲間と力を合わせて「才能巻き込み型プロジェクト」として、本当に、いや本当に巻き込んでいます。下の動画はかなり過度なものですが、その日ライヴを観にきた親友の宮野弦士くんを楽屋で巻き込み、本番飛び入りさせるという荒業の様子です。笑

https://twitter.com/shinobu_clg/status/1615913017287532545?s=46&t=YHjc0CeviES57x_oviqTUw

Dr.油布郁くん、Ba.カワノアキちゃん。急に宮野入れてごめんね、でも楽しかったね!笑

流石にこれは親友だからこそできることですが、でも基本的には心から信頼し合い、いつでも音楽を一緒に鳴らそう!という仲間に恵まれ、ドラマチックに作り込んである曲もあれば、セッションライクにライヴをするものもあることで演奏力に定評があります。2022年内は、11名もの仲間がCLG  BANDに参加してくれました。メンバーを固定せず、いろんな組み合わせで音楽を調理していくことを、みんなとても楽しみにしています。しばらく呼ばれてないからと言って、クビも無い!そのくらい慎重かつ真剣にメンバーを選ぶのですが、それはもうとても気が張ります。

ワンマンライヴも私には身に余る(でもとても有意義で最高だったので今年もやりたい!)な渋谷WWWで開催でき、1st AL「MEBAE(読:芽生え)」でもfeat.アーティストに東京藝大の後輩である才女・和久井沙良、春にメジャーデビューを控えるGOOD BYE  APRIL、そして盟友でありマルチなSSW・GIVE ME OWが参加してくれました。

https://youtu.be/3pp7yhgqlp8

昨年の参加メンバーはGt.2名、Ba.4名、Dr.3名、Key.1名、Sax.1名。この中からライヴの趣旨やシーズン、新曲の具合に適したメンバーを組み合わせます。時にはトリオ(Mani.導入)で、時にはドラムとギターのアコースティックで、時には超豪華に一緒にやりたいだけメンバーに参加してもらうことも。どうしてもソロの時は、ちょっとだけ旅路が寂しいけど、ピアノで弾き語りして曲の真髄に向き合ったり、Mani.を使って三味線と歌をリリースした作品の形に近い状態で演奏したりします。

では、そんな信頼おける仲間たち”CLG BAND”に、あたしが求めていること。

①キャラクター性

②リズム感

③音楽は最高の趣味だと言う心意気

この3つです。

キャラクター性=スパイス。とっても大事です。だって同じキャラクターで同じ楽器の人がいたってつまらないじゃないですか。ライヴは生き物です。それに、うちのメンバーみんな旨いから、やはりリリースした音源に近い状態で演奏するとあたしが飽きちゃう。それでスパイスを調合して、その日の香りや味わいを自分たちも楽しみたいのです。その方があんまり喧嘩しないし、ジェラシー無く活動できます。つまり、自分を認めて、相手を尊敬できる関係。超理想ですね!みんなそれぞれ、みんないい。それがうちの醍醐味です。

そのキャラクター性がうまく調合され目でも楽しい上に、音楽として純度の高いものを演奏するには間違いなく、リズム感が鍵!リズム感が暴走すると、それじゃあNOT平和。グルーヴしてなきゃ楽しくないです。心が躍るのは、相手への心配や配慮を全部取っ払って、心が丸裸でただただ”楽しい”気持ちが高揚した時に生まれるんじゃないかと思います。だから、純度を上げるには基礎とリズム感。これができてこそキャラクター性が活きるはずです。

最後。これはね、ビジネスビジネスせずにいたい、というあたしからの仲間たちへのお願いに近いかも。もちろんサポート稼働費は支払う大前提!バンドじゃなくソロプロジェクトだから、価値ある演奏家に助けてもらった時の対価を支払うのは当然のこと。だから、お金じゃないところで繋がっていたいんです。友達だもん。

これらは日本国内だけでなく、これからCHiLi GiRLが旅していく様々な国やカルチャーの境界線を越えようとするたびに、大切だなあと常々感じることでしょう。三味線がポップミュージックに馴染んでいるのは、あたしの感性だけじゃない、仲間の受け入れや興味があったからこそです。これから出会う新たなCLG BANDにも、いろんなカルチャーの中心地で待っている人や音楽にも、あたしは果敢に飛び込んでいきたい。新しいものを生み出し、世の中に愛されるためにはいつだって、知識と経験が伴うものです。そしてそれらをちゃんと刻んで、次の何かに出逢ったときに畏れずフレンドリーにふれあいたい。

そうね、あたしにとってのコラム連載、それは誰かに何かを紹介するのではなく、自分の考えやアイデア、その時々その年齢だからこそ感じた気づきの備忘録や見聞録になっていく予感がします。この連載を通して、あたし自身も新たな気づきを得たいし、お読みくださっているみなさんにもちょっとしたものの見方のスパイスになったら、とても美味しそうですよね。そんな美味しい音楽をたくさん食べに出かけるのもまた素敵。一緒に「文化間バックパッカー」になりましょう!

2023.3.10 掲載

Shinobu Kawashima(CHiLi GiRL) 執筆


   

◆3.10 New Digital Single「Scrolling Girl」リリース!

各サブスクリプションにて好評配信中。

◆4.16 東京渋谷にてリリースイベント開催決定!

◆Lucky FM(茨城放送)3月度月間パーソナリティにて毎週水曜日放送中!

radikoで全国からお聞きいただけます。

リリース情報やチケットお買い求めはCHiLi GiRLオフィシャルサイトをチェック▶︎https://clg-tokyo.bitfan.id