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ROLL-B DINOSAUR

転がり続ける孤高の恐竜バンド、驚異的進化の2ndアルバム。

2015年に鮮烈なるデビュー・アルバム『ROLL-B DINOSAUR』で混沌としたロック界に突如現れた孤高の恐竜バンド、ROLL-B DINOSAUR。これまで作曲家・プロデューサーとして数々のヒット曲を世に放ってきた織田哲郎を中心に、ダイアモンド✡ユカイ(RED WARRIORS)、CHERRY(LINDBERG)、ASAKI(GUNIW TOOLS)、JOE(FUZZY CONTROL)とまさに強烈な個性が集結したスーパーバンドだ。前作以降も精力的なライブ活動を続けた先に生み出された待望の2ndアルバム『SUE』は遊び心とヴァラエティを増しつつ、聴く者の胸をダイレクトに貫く圧巻の威力を誇っている。

 

「織田哲郎でもないし、ダイアモンド✡ユカイでもない、ROLL-B DINOSAURというバンドになっているなというのを感じていて。そして、ロックンロールなんだよね」

●2015年にデビュー作の1stアルバム『ROLL-B DINOSAUR』をリリースされたわけですが、そこで見えたものもあったんでしょうか?

織田:逆に言うと、1stを作らないと見えないことばかりでしたね。わからないことだらけの状態から、“とりあえずやってみよう”と思って始めたから。

●明確なヴィジョンがあったわけではない?

織田:一言で言っちゃえば“ロックンロールがやりたい”というすごく大雑把なイメージだけで、あとは成り行きに任せていく感じでしたね。

ユカイ:本当に大雑把な感じで始まったよね。でも初めて5人で音を出した時に、“良い感じだな”という感覚はあって。

●活動を続ける中で、バンドとして固まっていったんでしょうか?

ユカイ:ライブをやっていく内に…という感じかな。それぞれがバンドをやっていたり、織田さんも作曲やアーティスト活動をしていたりするとはいえ、やっぱり“新人バンド”だから。ライブをやるごとにどんどん変わっていくのは感じたね。

●“新人バンド”的な感覚で、新鮮な気持ちで取り組めている?

織田:フレッシュですよ。特に打ち込みというものを何十年か前にやり始めてからは、音楽を作る上で基本的には自分で打ち込みと楽器を全部やるようになったので、最初から最後まで1人で完結しちゃうことが多くなって。今回こういう形でバンドをやるようになったことで、メンバーから受ける影響もあったんです。

●誰かと一緒にやることからの刺激もあったと。

織田:ユカイくんやASAKIも曲を書いてくるし、アレンジや歌詞の面でも自分が思いもしないことを言い出したりするから。M-5「はずれクジ」についてユカイくんが「女性視点の歌詞はどう?」と言ってきた時は、自分では考えもしなかったことなのでビックリしましたね。

●ユカイさんの中で、曲に呼ばれてイメージが湧いたんでしょうか?

ユカイ:フィーリングだね。そこがバンドの面白いところでさ。俺はどちらかと言うとバンドマン気質なんだけど、30年やってきた中でバンドに疲れているところもあって。バンドをずっとやっていなかった時期も長かったから、織田さんから「バンドをやろうよ」と言われた時も最初は“今さらバンドをやるのか…?”と思ったんだよね。

●最初は少し疑問があったと。

ユカイ:でもやり始めてみたらすごく新鮮で、中学校の時に初めて組んだバンドみたいな感覚があって。やっぱり織田さんがすごくフレッシュなんだよね。ギター小僧みたいに一生懸命弾いている姿を見て、本当に中学生くらいの時にギター小僧たちとバンドを組んでいた時のフィーリングが蘇ってきた。普通はバンドって色々とぶつかったりするものなんだけど、このバンドが面白いのはそれぞれの持ち場にパズルのピースがスポッとハマっている感じなんだよね。

●各ピースが的確に組み合わさって、1つのバンドになっている。

ユカイ:織田さんが集めたメンバーだけあって、見事なくらいハマっていて。楽曲を作る時って、普通は苦労したりもすると思うんだよね。でもこのバンドが面白いのは織田さんに「こういうのが良いんじゃない?」と言ってメンバーがアイデアを投げると、それが曲になって戻ってきたりするところで。

●そういうメンバー間で起きる化学反応からも、バンドを始めた頃に近い新鮮さを感じられるのでは?

ユカイ:もちろん、その時よりプロフェッショナルだけどね(笑)。当時は今みたいに、簡単に曲ができないから。

織田:そういう意味では、このバンドはフレッシュさとプロフェッショナルさのバランスがすごく面白いですね。

●プロフェッショナル同士が新鮮な気持ちでやれているのはメンバー同士の相性も良いからこそかなと。

織田:そうですね。一緒にやりながら、“バンドってそういうものだな”とつくづく感じています。

●1枚目を制作したことで、メンバーそれぞれの特性が見えたことも大きいんじゃないですか?

織田:俺は普段から職業としてプロデューサーをやっているけれど、1枚目の時はそういう視点からはあまり言わないようにしていて。各人の特質もまだわからなかったので、とりあえずやってみようと思ったんです。その中で“この人はこういうミュージシャンなんだな”というところもわかってきたから、2枚目では“もっとこうしよう”とか色んな話をみんなとできるようになったのかな。

●メンバーの特性を理解した上で、2枚目の制作に取り掛かった。

織田:1枚目を作ってライブをやってきた中で、みんなの良いところや悪いところ、得意なところと不得意なところが色々わかったから。ライブの中で“こういう曲が必要なんじゃないか?”とか、“ユカイくんにはこういう曲が活きるんじゃないか?”と思ったりもして。そういうところは、今作を作る上で考えていたかな。

ユカイ:1stの時は初対面の人もいたし、基本的には織田さんが中心にならないとまとまらないだろうなとは想定していて。そうやって作ったものも素晴らしかったけど、今回の2ndを作ってみて“織田哲郎はロックバンドがやりたいんだな”と初めてわかったね。

●目指すところがロックバンドであることを今作で実感したんですね。

ユカイ:(プロデューサーとしての経験があるので)形にすることはいくらでもできるんだろうけど、ロックバンドって読めないところがあるじゃないですか。“どうなっちゃうんだろう…?”みたいなところで、ある意味では受け身になる部分も必要なわけで。 織田さんはそういうところも全部含めた上で、ROLL-B DINOSAURを見ているんだなというのはすごく感じたね。

●予測できないところまで含めて、このバンドを楽しんでいる。

ユカイ:今回はそれをすごく感じたね。

織田:1枚目の時は“こういうものにしよう”というものがないと、バラけてしまう恐れがあったから。でもライブをやっていく中で、逆に“何を作っても良いんじゃないか?”と思ったんだよね。ユカイくんが歌って、各人が音を出すというだけでこのバンドの音になるわけだから、それで良いじゃんと思って。範囲を相当広げちゃっても良いという自由さは今回、随分出たんじゃないかな。

●何をやってもROLL-B DINOSAURになるという確信が持てたことで、楽曲の幅も広がったんですね。

織田:基本的にはみんな自己主張の強いミュージシャンだし、この人たちが一緒に音を出せばこうなるというものがあるから。最初は正直“この曲は合わないかな?”と思いながらやってみたら、“いや、これもアリだな”となることが多くて。“こういう音楽じゃないとダメ”とか考える必要はないなというふうに、どんどんなっていった。M-1「Neverending Dream」も最初は“ちょっと違うと思うんだけど、やってみよう”というところから始まって、結果的に“全然アリだな”と思えたんですよね。

●最初に“ちょっと違う”と思っていた理由とは?

織田:暗いし、面倒くさい。

●面倒くさいって(笑)。

ユカイ:この曲はライブでやるのが大変でしょ?

織田:俺が一番、大変! でもレコーディングスタジオで最初にみんなで一斉にやってみた時に、“意外とイケるじゃん”という感覚はあって。そこで一発でやれたということは、ライブでも頑張ればできるはずなんだけどね。

●難しいチャレンジも、ワクワクするポイントでは?

織田:やっぱりチャレンジすることもちょっとずつ増やしていかないとね。そこも“バンドって面白いな”とすごく感じられるところだから。

ユカイ:あと、「Neverending Dream」の歌詞は、織田さんがノイローゼになりながら書いたんだよね(笑)。

●それくらい悩んだということ?

ユカイ:哲学的になりすぎたんだよね。1stは織田さんが書いた真面目で哲学的な歌詞が多かったんだけど、今回の2ndは俺も書いているのでもう少しくだけた感じのものが多くて。でも1曲くらいはそういう曲も書きたいと、織田さんは思ったんだろうね。それでいざやってみたら、ノイローゼになっちゃって(笑)。

織田:他の曲は全く悩まなかったんだけど、これだけは1回書いたものを捨てて書き直したりもしましたね。

●他の曲の歌詞はスムーズに書けたんですね。

ユカイ:特に「はずれクジ」は、あっという間だったね。最初は俺に書かせようとしたんだけど、そういう女性視点の歌詞を書いたことがなかったし、「織田さんはそういうのもいっぱい書いてるじゃん!」と言って。その時は「ええっ!?」とか言っていたのに、次の日にはもうできあがっていたからね。しかも説得力がメチャクチャ強い歌詞で、ビックリしちゃったよ。

織田:我ながら、良い歌詞だよね。1stの「くずの詩」も我ながら良い歌詞だなと思っていたんだけど、その変化系みたいな感じだなと。

●前作の「くずの詩」とつながっている?

ユカイ:その“くず”の相手(が「はずれクジ」の主人公)だよね。いったい誰をモデルにしているんだろう…?

織田:この歌詞を見せると「私をモデルにしたでしょ?」と言ってくる女性が何人もいるよ(笑)。

●ハハハ(笑)。M-2「Mr. カサノバの恋の手ほどき」は、ユカイさんならではの歌詞かなと思ったんですが。

織田:俺には、絶対にこんな歌詞は書けないよ。“LESSON”とか歌っているけど、何の“LESSON”にもなっていないっていう。最後は“ガタガタ言わずにロックンロール”だからね(笑)。

●この歌詞にはユカイさんの思考が出ていたりする?

ユカイ:多少は自分の経験が元になっているけど、俺のことじゃないよ。でも案外、教えたがりなのかもしれない。「こうしろよ」とか、結構言っている気もするし。

織田:でも最後は“ガタガタ言わずにロックンロール”だから(笑)。

●その有無を言わせない感じがロックンロールなのかなと(笑)。

ユカイ:そうだね。この歌詞は自分でも面白かったな。

織田:ぶっちゃけ何の説得力もないんだけど、それが逆にすごい説得力になっていて。そこはすごいなと思います。俺はつい論理的な整合性とかを考えちゃうから。

●まさにユカイさんにしか書けない歌詞になっている。

織田:やっぱりダイアモンド✡ユカイはすごいと思うよ。普通は「こういう歌詞ができたから歌ってみない?」と渡されても、歌い手のほうが嫌がると思うんだよね。これを自分で書いて歌える人間は、日本広しといえどもダイアモンド✡ユカイくらいじゃないかな。

ユカイ:変な歌だよね。

織田:変なんてものじゃないよ(笑)!

●こういう曲もあれば、哲学的な歌詞の曲もやれる幅広さが、このバンドの武器にもなっているのでは?

織田:それもバンドだからだと思うんだよね。バンドってある意味、何でもOKだから。音楽的にはそのメンバーでやればその音になるということもあるんだけど、イメージ的な部分でもバンドだから言ってしまえることがいっぱいあって。ソロの歌はその人の発言みたいに聴こえてしまうから整合性をある程度問われちゃうんだけど、バンドはもっと無責任にやれる。

ユカイ:「(言っているのは)俺じゃない!」って言い張れば良いわけだからね(笑)。だから、“バンド”なんだよね。織田哲郎でもないし、ダイアモンド✡ユカイでもない、ROLL-B DINOSAURというバンドになっているなというのを感じていて。そして、ロックンロールなんだよね。

●ロックンロールをやっているという感覚がある。

ユカイ:“ロック”とか“ロックンロール”のイメージって、時代と共に色々と変わっていくものじゃない? ロックンロールって日本だとリーゼントみたいなイメージが強いけど、欧米の感覚では全然違っていて。たとえばローリング・ストーンズがその象徴みたいなものになるのかな。そういうフィーリングがずっとあるわけだけど、日本だとそれをわかっている人が少数だったりするんだよね。その中でROLL-B DINOSAURは、そういうものを表現しているなというか。

織田:音楽的な意味で言うと「Mr. カサノバの恋の手ほどき」は典型的なロックンロールなんだけど、逆に「Neverending Dream」はいわゆるロックンロールからは外れている。でも俺の中では、このバンドでやっている音楽は全部ロックンロールだと思っているんだよね。たとえばギターの弾き方や8ビートを使っているものという具体的な説明もできるけど、本当に大事なのはそこじゃなくて、“ロール感”なわけで。その“感”は抽象的な部分だから説明するのは難しいんだけど、やっぱりロールして転がっていれば、進むじゃん。その“進んでいる”感じが大事なんじゃないかな。

●そこをROLL-B DINOSAURでは表現しているわけですよね。

織田:音楽が大好きだし、色んな意味で真面目に追求することもあるけれど、やっぱりどこかに軽やかさが欲しいよね。そこがロール感なんじゃないかな。

Interview:IMAI
Assistant:室井健吾

 

 
 
 
 

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