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それでも世界が続くならインタビュー:終わりを見据えても尚、今を生きるバンドのリアルなドキュメンタリー

それでも世界が続くなら:終わりを見据えても尚、今を生きるバンドのリアルなドキュメンタリー


それでも世界が続くならが、今の時代を象徴する様な1st EP『僕は君に会えない』を3/17にリリースした。2019年9月に活動を再開させた直後、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて活動がままならなくなった彼らは、この1年間どのような想いを抱き、どのような心境で今作を完成させたのか。コロナ禍を精一杯生き抜いてきたバンドの真に迫るべく、Vo./G.篠塚将行に話を訊いた。
 
 
 
 

INTERVIEW #1


「僕らの曲を聴く気がない人に対して、初見で聴いても親友の話の様に伝わる音楽をずっと求めてきたんですよ。たった30分のライブ、たった4分の曲で心を撃ち抜ける本当の音楽とライブを追求したかった」


 
 
 
 
●2019年9月にリリースした4thミニアルバム『彼女はまだ音楽を辞めない』のときのインタビューを振り返ってみると、1年くらい活動を休止して、結果的に曲を作らざるを得なくなったということでしたよね。篠塚さん曰く「曲作りは精神安定剤みたいなもの」だと。
 
 
篠塚:そうでしたね。
 
 
●それが2019年の秋で、当時は新ドラマーのツチヤカレンさんが加入する直前のタイミングだった。
 
 
篠塚:はい。「新メンバーが入ることが決まったから、僕らはもう一度動くよ」という意思表示のアルバムだったんです。『彼女はまだ音楽を辞めない』は、その加入するはずだった新ドラマーの子は叩いていませんでしたし、活動再開前という位置付けて、“次回作から正式な活動再開をしよう”と思っていたんですけど、世界がコロナで変わってしまって。
 
 
●激変しましたね(苦笑)。
 
 
篠塚:狼煙を上げただけで終わったという(笑)。カレンちゃんもコロナだけじゃないにしろ、それもひとつのきっかけで、脱退することになって。
 
 
●カレンさんはいつ脱退になったんですか?
 
 
篠塚:入って1年経つか経たないかくらいだったと思います。レコード会社からも「正式メンバーで、正式な活動再開を示す、次作をリリースしよう」という話があったんですけど、レーベル側の他のバンドのレコーディングも全て止まって、レコード会社の人たちも先が見えない状況になっちゃって。みんな考えないといけない時期…僕らの活動再開のリリースが、ちょうどその時期に当たったんです。
 
 
●前回のインタビューで篠塚さんは「人に好かれるためにとか、かっこいいと思われるために音楽をやっていない」という話をしていたじゃないですか。だからコロナであろうがなかろうが、きっとこのバンドは音楽を辞めないだろうなと思っていたんです。でも当時の篠塚さんはライブハウスで働いていたし、色々考えることはあったと思うんですが。
 
 
篠塚:そうですね。変な話ですけど本質的に、“ライブという文化が終わる可能性がゼロじゃないな”と思っていました。
 
 
●ライブという文化が終わる。
 
 
篠塚:もちろん無くならないとは思うんですよ。でも生のライブは配信とかでは代わりにならないと思っていたし、それこそ「音楽が特別好きというわけじゃない」という方も含めて、そのご家族や友人とか会社とか色々な人たちの空気が、「病気が広がらないためならライブが無くなっても構わない。そんなこと言っている場合じゃない」という雰囲気だったじゃないですか。
 
 
●そうですね。
 
 
篠塚:そういう空気が続いた場合、数年間まともなライブは出来なくなるだろうな、その間に別の文化が生まれるだろうな、とは思っていました。その別の文化が進化していけば、ライブというものは古い文化になるんだろうなと。
 
 
●なるほど。
 
 
篠塚:僕はライブハウスで働いていたし、ずっと自分たちのことをライブバンドでいようと思っていたんです。生々しさとか生演奏だったりそういうものに重きを置いていたバンドだったので、正直に言うと活動休止をした時よりも、コロナでライブ活動ができなくなった時の方がメンバーのテンションの下がり方がひどかったと思います。
 
 
●菅澤さんも琢磨さんも、あまりそういうタイプには見えないですが。
 
 
篠塚:そうですね。「ライブが出来ない」ということは、曲を作っている僕みたいな人間と比べて、かなり堪えることなのかもしれないとは感じました。
 
 
●表現の場所が制限されてしまうということ?
 
 
篠塚:そうですね。曲を作っている人間は配信や音源、ライブ以外でも曲を聴いてもらえる手段を選べるんですけど、例えばギタリストのガースー(菅澤)はスタジオに入ってエフェクターを並べて、実際のアンプで鳴らした時にどうなるかを考えてずっとギターと向かい合ってきたんです。だけどそのギターを鳴らす場所がない。配信の場合、まあ「アンプで鳴っている音をマイクで拾う」のは同じなんですけど、やっぱり配信は配信でしかないというか、僕らにとって「リアルの再現」でしかないですからね。実際のライブと同じでは絶対ないので、結局配信は実際のライブとはイコールにはならない。そういう意味では、演奏に文字通り人生を賭けてきたメンバーが「ライブで曲を演奏する」ってことを奪われた時の失望感はかなりのものだったと思います。
 
 
●そうだったんですね。
 
 
篠塚:これはファンだとかファンじゃないとかは関係なく同様になんですけど…僕らはアマチュア時代からライブバンドとして、対バン目当てで僕らのことを知らずに観た人や、フェスに遊びに来た僕らを知らない人にも、当たり前だけど僕らを知ってるとか知らないとか関係なくライブをしてきたんです。僕らが大きいコンサート会場を選ばない理由は、僕らの音楽に興味がない人の前で演奏するということが自分たちにとってのデフォルトで僕らにとっての戦場だったからなんです。ある意味では、自分たちに興味がない人にも僕らの意思が届くかどうかが重要で。
 
 
●はい。
 
 
篠塚:そもそも僕らの曲を聴く気がない人に対して、初見で聴いても親友の話の様に伝わる音楽をずっと求めてきたんですよ。たった30分のライブ、たった4分の曲で心を撃ち抜ける本当の音楽とライブを追求したかった。
 
 
●うんうん。
 
 
篠塚:ライブバンドであり続けたかった。でもメンバーは、楽器に人間の意思を込めるという行為を実践する機会、闘う場所を奪われたという感覚があったと思うんですよね。僕は曲作りでも闘っているので配信でも出来てしまう部分があったから、僕ももちろん苦しかったけど、メンバーは僕以上だったんだと思います。
 
 
●なるほど。
 
 
篠塚:僕と違って、言葉や歌でも意思を伝えられる芸術ではなく、音だけに命を賭けて勝負してきた人間が、生きた音を伝えられない、生演奏で音を伝える場所を奪われたという現状が、どうしようもないって感じだったんです。
 
 
●琢磨さんもそうだったんですか?
 
 
篠塚:章悟(琢磨)は、そもそもベースが好きというより、きっとそれでも世界が続くならがやりたい人なんですよ。ベースじゃなくて例え楽器が何であっても、それでも世界が続くならで僕やガースーと一緒に演奏したい、友達と一緒に何かをやりたいという人なので、ファンと言える人たちやレコード会社の人や関係者もメンバーも、たぶん全員同じように見ることが出来るんです。よく言えば博愛主義者というか。
 
 
●琢磨さんはそういう感じがしますね。
 
 
篠塚:良くも悪くも、僕には想像できないくらい人に対する愛情が大きい。だからガースーとは別の意味で、ライブが出来ないことで、ファンの人たちや関係者の人に会えないということが、すごく彼のエネルギーみたいなものを奪っていたというか。
 
 
●なるほど。
 
 
篠塚:彼は論理的というより感覚的なので「なんかわからないけど最近元気が無い」みたいな感じでした。
 
 
●自覚が無いんですか(笑)。
 
 
篠塚:はい(笑)。ずっと「元気が無い」と言ってましたね。僕は人を洞察するのが好きというか、人に怯えてるからこそ洞察することで生きている人間なんでですが、僕もガースーも、章悟の状況は察していたので、“ライブをしないとこの子は危ないな”と思っていました。
 
 
 
 
 
 
 
 

INTERVIEW #2


「僕は音楽が無かったら、やっぱり死んでいたんだろうなと思うんです。コロナ禍になって、改めて音楽に救われていたという現実を実感した」


 
 
 
 
●コロナは今も続いていますけど、さっき話してくれたような想いからバンドを動かしていこうという判断をしたんですか?
 
 
篠塚:そうですね。ひとりひとり考え方はあると思うし、ライブをしないとメンバーが苦しみ続けるという理由もありましたけど、僕の中で大きかったのは…僕って、よく考えたら環境が整っていたからこのバンドを組んだ訳じゃないんですよね。いじめられっ子だったし、人前に出ることを笑われたこともあるし、馬鹿にされてきたこともあるんです。「死ね」と言われても僕は生きてきた。
 
 
●はい。
 
 
篠塚:コロナでライブが出来なくなったことはすごく苦しいことだし、感染予防対策は考えるべきことだと思っていたし、もちろん今でも思っているんですけど…そもそも僕は「やっていい」と言われたからバンドをやっているわけじゃない。
 
 
●ああ〜。
 
 
篠塚:きっかけで言えば、「やってくれ」と頼まれてもいない。だから…不謹慎かもしれないですけど…“僕がライブをしたいかどうか”ということを優先して考えようと思ったんですよね。僕の人生なので。たくさんのバンドマンやレコード会社の人が自粛をしたと思うんです。今もしていると思う。色々な考え方があると思うんですけど、僕のことを好きな人や、例え僕のことを好きじゃなくても、僕が一方的に、僕が好きな人が幸せでいてくれたら僕が嬉しいんですよね。押し付けみたいになりますけど、その人たちが苦しんでいるのを僕が見たくない。
 
 
●はい。
 
 
篠塚:僕は世界平和のためには生きられないし、この世界のどこかで人が亡くなったり悲しいことが起こっていることをわかっているのに、僕は涙が出ないんですよ。見たことのない誰かのために自分の友達や自分自身を犠牲には出来なかった。
 
 
●うんうん。
 
 
篠塚:こんな僕だからこそ、感染予防対策や考えるべきことは放棄せず、人の2倍3倍考えるべきだなとは思っているんです。死ぬほど考えて、知らない誰かのことも精一杯傷つけない努力はするから、まずは僕が好きな人たちが今目の前で苦しんでいるのをなんとかさせてほしい、と。
 
 
●でも、身近な人を大切にすることで、それがどんどん繋がって広がって、世界を平和にするとも言えますよね?
 
 
篠塚:そう言ってもらえると少しだけ気が楽になりますね(笑)。
 
 
●ハハハ(笑)。今作のM-8「猫と飛行機」で歌っていることにも繋がる話じゃないですか。自分が大切だと思っている人や物を大切にしようということですよね。
 
 
篠塚:シンプルに言えばそうですね。コロナが無かったらこんなこと思わなかったかもしれないですけど、僕は、音楽が無かったら、やっぱり死んでいたんだろうなと思うんです。コロナ禍になって、改めて音楽に救われていたという現実を実感したんです。
 
 
●というと?
 
 
篠塚:音楽が出来なくなって、ライブハウスの仕事も実質クビになって、僕の状況が悪くなったらやっぱり人も離れていったし、したかった活動再開も、リリースも出来なくなって、加入したばかりのメンバーの早期脱退もコロナが全ての理由ではないかもしれないけど引き金にはなったと思うんです。ライブも出来なくなって、僕の音楽を聴いてくれて結果的に僕の命を救ってくれた人達にも会えなくなった。
 
 
●はい。
 
 
篠塚:僕の人生の中で大切にしたかったものが、コロナで一回全部奪われているんですよね。僕の人生を構築していた、バンド、仕事、人…全部無くなってみて、気がついたんですけど…僕の人生って全部音楽で出来ていたんですよね。
 
 
●なるほど。
 
 
篠塚:「音楽が無かったらちょっとだけ人生が違ったかもしれないね」とかそういうレベルではなくて、音楽が無ければ僕の人生は無いんです。実際に、音楽が無ければ小学校からいじめられていた時や不登校の時期から数えても、実際に何度か死のうとしてる訳ですし。本当の意味でも。
 
 
●ほう。
 
 
篠塚:僕はthe pillowsの「ハイブリッドレインボウ」を聴いて死ぬのをやめたんです。その後、僕の曲を誰も「良い」と言ってくれなくて「やっぱり人とは分かり合えない」と思っていたときに、the pillowsの事務所の方が「君の歌はいいよ」と言ってくれて。僕が音楽に感じてたものは嘘じゃなかったと思ったし、そこから巡り巡って色々な人に出会って、“こんな不器用な人間でも生きていてもいいんだな”とは思えたし。僕はロックバンドに生き方を教わったんですよね。
 
 
●うんうん。
 
 
篠塚:コロナ禍で「音楽よりも命が大事」という感覚はすごくわかるんですよ。そういう意味ではライブをするべきではないという感覚もすごくわかるんですけど、僕の命は音楽が無かったら存在していない人間なので、心からの同調は出来ないんだなと。「音楽が無くても生きていこうよ」と言うのは僕には出来なかったんです。こういうことを言うと本当に不謹慎で嫌われても仕方が無いんですけど、僕の人生では「音楽は無くてもいい」とは言えなかった。
 
 
●いや、不謹慎ではないと思いますよ。
 
 
篠塚:メンバーとも話していたんですけど、もしメンバーが大怪我したりして楽器が弾けなくなったら、僕はなんとか弾ける楽器にパートチェンジしてでも一緒に続けようと思っているんです。作りたいのは音楽でもあるんですけど、それ以上に僕はメンバーと一緒にいたいし、友達で居たいんですよね。孤独って人を殺すし、もうあんなのは嫌だから戻りたくない。だからコロナがどうとか以前に、友達というか、音楽を通して、メンバーやファンと対等な関係でいたいんです。
 
 
 
 

INTERVIEW #3


「だったら今、悪者になったほうがいい」


 
 
 
 
●コロナになって、改めて“自分にとって音楽とは?”と自問自答したんですね。
 
 
篠塚:特に、音楽業界とかバンドマンは、自粛をしている人が結構多いと思うんですけど、ちょっと視点を斜めに変えれば、どう考えても、今はやらない方が楽なんですよね。赤字になる可能性とか、責任とか、世間の目を考えたら「やらない」という選択肢のほうが、格好が付く。
 
 
●合理的だし。
 
 
篠塚:そうですね。僕も一瞬想像してしまったんですけど、自分の中ではただ楽なだけの要素が強かったんです。たぶん僕が辞めても、きっと誰かがやるんですよ。世間の賛否に晒されながらも誰かが音楽を続けるんです。それでいつかコロナが落ち着いた時に、僕がそこに乗っかるというのは、ちょっと考えられない。それは嫌だなと。 誰かが、誰かの悪意や攻撃を受けながら死ぬ気で守ってきた音楽の上に乗っかるというのは、僕には出来なかった。
 
 
●虫が良すぎる?
 
 
篠塚:はい。でも、そういうことが全て悪いってわけじゃないんですよ。ただ、気づいてしまった僕がやったら不誠実だなと思いました。だったら今、悪者になったほうがいい。
 
 
●かなり強い意志を持ってバンドを続けているということですね。
 
 
篠塚:そうかもしれないです。今、本当にやるべきかどうかということもわからないですけど、ただわかるのは、コロナなんかが理由で誰かが自殺したり、死んでしまうのは嫌だというだけです。
 
 
●音楽に限らず、今は「辞める」という選択肢を選ぶ人も多いと思うんですが。
 
 
篠塚:僕は悔しいんですよ。ステージ上で散々「お前たちのために歌う」とか「人を救いたい」とか言っていたミュージシャンに限って簡単に辞めていく。「お前の歌で誰かの命救えるんじゃなかったの?」と思いますね。あれは嘘だったのかと。それと同時に、僕に「あなたの歌があったから死なずに済みました」と言ってくれた人の言葉は、未だに心から「そうなんだ」とは思えないままで。
 
 
●え、そうなんですか? どういう理由で?
 
 
篠塚:どこかで「そんなわけない。僕がそんなこと出来る人間じゃない」と、自己肯定感の低さの方が勝ってしまって、心のどこかで受け止めてられていないんですよ。
 
 
●なるほど。
 
 
篠塚:だけど、それでも、その人たちがくれた言葉とか、送ってくれたファンレターやリプライは信じてみようようと思ったんです。僕が歌うことで死ななかった人が実際に居る。それって僕がthe pillowsの「ハイブリッドレインボウ」を聴いた時と同じ事が起こっているのかもしれない。だから、僕にくれたその言葉は軽くない。僕は簡単には辞められない。
 
 
●うんうん。
 
 
篠塚:ライブやらせて欲しいから言うんですけど、僕ら、今はワンマンをやってもお客さんは30人くらいしか入れてないんですよ。赤字なんですけど、でもライブは続ける。生演奏を続けるということ自体に、メンバーは生きてる実感を感じていると思うし。僕は、僕の音楽を聴いてくれた人たちに生かされてきたので、僕か世界のどっちかが終わる前までには返したいですし、なにより「僕が生きていた」って事実を僕が死んだ後にも残したい。
 
 
●音楽を続ける理由が明確ですね。
 
 
篠塚:だからこそ、僕らは「友達と一緒に」「誰よりも嘘のない演奏をする」というところに人生をかけているので。就職もせずお金にもならないバンドで、アルバイトとほんの少しのライブのギャラで食いつなぎながら、もちろん将来の見通しなんてないけど、音楽と一緒に死にたい、僕らは生きて此処に居たんだぞ、というのを死ぬまでに残したいんです。余談ですけど、ガースーはレコーディングが終わって、緊急事態宣言が延長されたタイミングでアンプを買ったんですよ。
 
 
●え?
 
 
篠塚:そのタイミング、意味ないじゃないですか。全てが終わったタイミングでアンプを買ったんです(笑)。
 
 
●レコーディングが始まるときじゃなくて?
 
 
篠塚:終わった後です。僕は、それが彼の意思表示なんだろうなと思って。
 
 
●あ! なるほど!
 
 
篠塚:「こいつ、ライブをやる気だ」と(笑)。
 
 
●痺れますね。命をかけてバンドやっている。
 
 
篠塚:本当にそう思います。彼は生きてるんだなと。ライブバンドという生き方を辞める気が無いんだと思いました。損得で言えば損しかなくても自分の生き方を選べる、そういうとこが本当に尊敬できる友達だなと思いました。僕はすぐ迷うので見習いたい。
 
 
●すごくシンプルですよね。「自分が大切に思っているものを大切にする」という。
 
 
篠塚:震災の時、福島に元レーベルの社長が居たので直後にボランティアに行ったんですけど、ボランティア精神の基本として「自分が危険に遭わないように出来る人、自己犠牲で人を助けたいと思っていない人だけ来てください」と言われたんですよ。「自分が死んでも人を助けたいという人はボランティアを断ります」と。知らなかったんですけど、これはボランティアの基本らしいんです。
 
 
●自分の命は自分で守れる人。
 
 
篠塚:“人を助けられる人は、自分を助ける余裕がある人だけなんだ”、“そういう人しか誰かを助けてはいけないんだ”と改めて知ったんです。例えば、自粛も実際は「赤字になるから」とか「世間の目が…」という理由がゼロでは無いと思うんですけど、人の命を守るための自粛じゃないですか。
 
 
●はい。
 
 
篠塚:でも、その人が自粛したことで本人が死んでしまう様な状況に追い込まれたり、借金を背負ったり、病気になったり、人を救う為に自分が死んでしまったら、その救済には意味があるんですかね?
 
 
●難しいですね。
 
 
篠塚:誰かが病気にならないために、大きな借金を背負ったり、人生が崩壊する人がいる。僕らのバンドは有名でもないし、誰かのために何かをしてあげられるほど、お金も精神も強くはなかった。今は自分と目の前の人を守ろうとすることで精一杯だったんです。本当に無力で悔しいけれど。もちろん手洗いうがいもするけど、あとは国が許可しているライブハウスのキャパシティを更に半分以下にしてライブするくらいしか出来ない。換気も消毒もするし「やりすぎだろう」と言われるくらい感染防止対策をするから、まず「自分たちと自分たちの音楽を好きだと言ってくれる人が死なないことからしか出来ない無力な自分を許してほしい」というのが今の気持ちですね。
 
 
●なるほど。
 
 
篠塚:だから今度は、「メンバーが加入したから活動を再開する」じゃなくて、メンバーが見つからないまま3人で活動再開する覚悟を決めようと。この1年で、悪役になる覚悟が決まりましたね。無様でかっこわるくありたい。3/17にリリースした1st EP『僕は君に会えない』が僕らにとっての活動再開の決意表明です。
 
 
●言い方を変えれば、その確認も出来たし意志も強くなった。
 
 
篠塚:そうですね。自分にとって「音楽が何なのかと」いうことを見つめる時間になりました。暇すぎて(笑)。
 
 
●ハハハ(笑)。
 
 
 
 

 
 
 

INTERVIEW #4


「人より音楽が優先されるべきじゃないと思う。じゃないと順番がおかしくなる。言いたいことや残したいものがあるから人間は今も音楽を作るんです。」


 
 
 
 
●今日話してくれたことの大半が、今作の曲になっていますよね。
 
 
篠塚:だと思っています。僕にとって曲を書くことは日記というか記録なんです。多くのバンドやアーティストは、印税で生活をしたいとか、有名になりたいとか、自分が生き続けることが前提じゃないですか。
 
 
●はい。普通はそうだと思います。
 
 
篠塚:僕の場合は「明日死ぬ」が前提なんです。僕が死んだ時に、僕が本当はどう思っていたのか、僕がどんな人間だったのかというのを、人に嫌われてでも残したい。
 
 
●M-3「生活と自粛」というすごくわかりやすいタイトルの曲もあるし、今作はこの1年で書いた曲ばかりですよね? 歌詞にはショッキングというか突き刺さる言葉もすごく多いし、M-4「遺書」という曲もある。でも聴くと、総じて優しいというか、体温を感じるというか、突き放すような感じがしなかったんです。
 
 
篠塚:不思議な感想ですね。「尖っているのに突き放していない」なんて。
 
 
●そう感じました。聴いている側の感情が今までと違うという理由もあると思いますし、このバンドの人間性を分かった上で聴いているからということもあるかもしれないけど、尖っているけど冷たくない、むしろ温かいなと。
 
 
篠塚:嬉しいです。僕がメンバーに感じているものが、そういうイメージなんですよ。「助けるよ」とかそういう感じではないんですけど、そういう甘いことは言わずに大切にしてくれている感じがしていて。僕らは、暗いとか重いとか揶揄されたりもしますけど、僕は自分のバンドを温かいバンドだなと思います。
 
 
●あ、そうなんですね。なるほど。腑に落ちた感じがする。
 
 
篠塚:僕が感じることが出来なかった学生時代の青春とかそういうもの…もし自分が高校にちゃんと行っていたらとか、小学校の頃いじめられてなかったら、きっとこういう感じだったんだろうなと、それを今更メンバーとやっている感じですね。
 
 
●ライブの時のヒリヒリした印象とは違って、確かに普段のメンバーの空気感はそういう感じがする。
 
 
篠塚:音楽は人間を不幸にするためにあるわけじゃない。言ってしまえば「音楽は人のためにある」と僕は思うんです。
 
 
●はい、そうですね。
 
 
篠塚:だとしたら、人より音楽が優先されるべきじゃないと思う。じゃないと順番がおかしくなる。言いたいことや残したいものがあるから人間は今も音楽を作るんです。音楽や芸術の本質は、音自体じゃなく人間の心の方にあると思うんです。僕のバンドのメンバーは音楽よりも人の心を大事にする人たちなんです。だからすごく芸術的だし、本質的で、逆に音楽的にも信頼ができる。スタジオに入る予定だった時、彼らの友達が苦しい思いをしていたら「スタジオになんか行くのやめよう」とメンバーは言うんです。こんなバンドだから「俺と一緒にいるのが辛くなったら明日にでもやめていい」と言うんですけど、まだ居るんですよ。「いつでも辞めていい」ってルールだからこそ、ここに仕方なくやっている人はいない。このバンドに義務はない、居たい人だけが居ればいい。みんな居たいから居るんですよ。だからこそ僕にとってこのバンドは宝物です。
 
 
●いいですね。
 
 
篠塚:友達って好かれるために一緒に居たりしないじゃないですか。本当の自分で居たいし、居てほしい。だからこそ、好きになってくれたら嬉しいんですよね。今作のEP(『僕は君に会えない』)は、僕らの人生そのものを、清濁混ぜたまま、僕が死んでもいいと思える位には記録できたと思うので、恥ずかしいけど、この音楽を一人でも多くの人に聴いてもらいたいなと本当に久しぶりに思ました。
 
 
●コロナがきっかけかもしれないけど、音楽で歌いたいことや表現したいことが洗練されたというか。
 
 
篠塚:うん、邪魔なものは全部削ぎ落とされた感じですね。「どうせ俺なんて」みたいな感覚はあまり優先されなくなりました(笑)。消えたわけじゃないけど。
 
 
●フフフ(笑)。
 
 
篠塚:どうせ嫌われるんだったら、たくさんの人に聴いてもらって、その上で、「好きか嫌いか」を決めてもらいたい。僕らが生まれて、生きてきて、バンドをやっていたというのを知らないまま人生が終わるのは嫌だなと。何でもいいから「それでも世界が続くならが1st EPをリリースしたぞ」ということを知ってもらおうと思いましたね。あれ、なんで今まで思わなかったんだろう(笑)。
 
 
●今まで思ってなかったのか(笑)。
 
 
篠塚:野心が欠けているんですよね(笑)。売れるために物を作るとか、人に聴いてもらうために努力するということ自体が、音楽への冒涜だと思っていたんです。宣伝じゃなく音楽自体に人の心を動かせる力があるはずだ、だから自分の音楽が聴いてもらえないなら練習をする。死ぬ気で曲を作る。血を吐くまでレコーディングをする。音楽を作ることとかライブをすることに全エネルギーを注いできたし、後はどうなってもいいとレコード会社に丸投げしていたんです。でもコロナでレコード会社もキツイしライブハウスも厳しいと考えたら、なんで最初から「たくさんの人に知ってもらおう」と思わなかったんだろうって(笑)。まあ、やっと普通の考え方が出来るようになっただけなんですけどね。やっと他人の気持ちが少しわかった。
 
 
●ハハハ(笑)。
 
 
 
 

INTERVIEW #5


「もし僕が死ぬまでに「あんな時もあったね」って言える日が来るなら、このEPは、僕が走馬灯で思い出す、僕の人生そのもの」


 
 
 
 
●ところでこの作品は、サポートの只野うとさんがドラムを叩いているんですよね?
 
 
篠塚:そうですね。
 
 
●うとさんとはもともと後輩として繋がりがあったわけですが、すぐサポートしてもらうことになったんですか?
 
 
篠塚:すぐでは無かったんですけど、うとちゃんは、僕がたまにプロデューサーとして参加してた後輩バンドのメンバーだったんですけど、カレンちゃんが抜けた話を聞いた時に「だったら私が叩くのに」と言ってくれていて。
 
 
●お! 頼もしい!
 
 
篠塚:最初はうとちゃんのバンドもメンバーが抜けて大変だったので、頼む気はなかったんですけど、その一言が僕の中で結構大きかったんですよね。あの時は脱退やクビやコロナで全てに失望感があって、僕はもう音楽できない、解散するしかないかもしれないと思った時期だったので。ワンマンツアーが始まる直前に、カレンちゃんが「音楽を辞めようと思うのでバンドを辞めたい」と言った時も「義務じゃないから無理にやらないくて良いから」と伝えたけど、でも実際2週間後にはワンマンツアーがあったし、ツアー初日の千葉LOOKだけは、結成メンバーの則雄(栗原 則雄)が僕らのために1日だけ叩いてくれて。
 
 
●素晴らしいですね。
 
 
篠塚:その後の大阪名古屋のワンマンがドラムが決まってなかったので、彼女にお願いするしかないんと。実は少しだけ、僕もドラムを練習してみたんですけど全然良くなかったんですよ(笑)。
 
 
●ドラムヴォーカルでライブやろうとしたんですか。
 
 
篠塚:はい(笑)。僕意外とマルチプレイヤーでピアノもドラムも叩けるんで、でもドラム叩くと歌や言葉の気持ちが削げてしまって、良くないと。でも他の案も思いつかなくて。“どうしようかな”と思った時に、うとちゃんの言葉を思い出して。改めて相談したら「やる」と。
 
 
●頼もしいですね。
 
 
篠塚:彼女は2週間で30曲くらい覚えることになったので、地獄だったと思うんですけどね。でもこっちも真剣なので「君は心の底から叩いてるのか?」とか言ってしまったりして(笑)。
 
 
●無理なお願いしているのにそんなこと言ったんですか?
 
 
篠塚:ライブできれば、なんでもいいという事にはならなかったんですよね、お互いに。
 
 
●そうか。
 
 
篠塚:うとちゃんは、あらきゆうこさんのお弟子さんでもあったし、技術的には全く問題がなくて。性格的にも良く言えば純粋だし、悪く言えば単純だからこそ常に真剣で誠実だし、嘘つくのが嫌いな人だから芸術的な思考が僕らに合ってたんで、2週間でも最高の4人だと心から思えるライブを目指してしまったんです。だから参加してもらってすごくよかった。
 
 
●その2週間が地獄だった。
 
 
篠塚:普通は2週間で覚えられないですもんね。でも真剣に向き合ってくれたので、すぐに「すごくかっこいいね」ってなって…まあ要するに、ただ単純に仲良し4人組が生まれたというエピソードです(笑)。
 
 
●ハハハ(笑)。でもそのエピソードはこのバンドを象徴している気がします。作品が物語っているというか。
 
 
篠塚:コロナ禍も含め、一瞬とはいえ本気で解散まで考えてたので、このバンドの一番辛い時期をこの4人で乗り越えましたからね。今はCDとか雑誌とかが売れる時代ではないと思うんですよ。ライブも大手を振って出来るような状況でもない。すごく音楽業界が苦しい時代だと思うんです。
 
 
●そうですね。
 
 
篠塚:でも自分たちは文字通り、赤字とも病気とも音楽とも向き合って、苦しくても今だけは死なない、死ぬなら今じゃないだろうって覚悟は持てたので、僕らのことを好き嫌い問わず、まだ音楽を聴いてくれる全ての人に向けて命賭けでやろうと思いました。どこまでやれるかわからないけど。
 
 
●コロナ禍のバンドを象徴していますね。歌詞にもある、“本物のドキュメンタリー”ですね。
 
 
篠塚:そうかもしれません。「コロナだからこそ面白くしよう」とかそういう逆説的な考えはないんですけど、ただ純粋にコロナがなかったらこのジャケットにはならなかっただろうし、このタイミングでリリースしていないし、このメンバーで、この曲たちも生まれなかった。もし僕が死ぬまでに「あんな時もあったね」って言える日が来るなら、このEPは、僕が走馬灯で思い出す、僕の人生そのものだから、もう少しこの続きを生きてみようと思います。
 
 
 
 

interview:Takeshi.Yamanaka
assistant:Yuina.Hiramoto

 
 
 
 
 
 
 
 

1st EP
『僕は君に会えない』

Bellwood Records / Rock BELL
BZCS-1189
¥2,200(税込)
2021/3/17 Release

人数制限ONE-MAN LIVE TOUR 2021
「それでも君に会いたくなったら」

5/05(水・祝)千葉LOOK
5/21(金)三重kocorono cafe
5/22(土)京都SOLE CAFE
 
 
 
 

それでも世界が続くなら
Vocal. / Guitar. 篠塚将行
Ambient Guitar. 菅澤智史
Bass. / Chorus. 琢磨章悟
Support Drams. 只野うと

http://www.soredemosekaigatsudukunara.com/

 
 
 
 

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