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10-FEET Ba./Vo.NAOKI 19th Single『シエラのように』ソロインタビュー

10-FEET Ba./Vo.NAOKI 19th Single『シエラのように』ソロインタビュー


 
 
 
 
 

NAOKI INTERVIEW #1

 
 
 


「どれくらいの時間がかかるかわからないけど、少しずつ本来の姿に戻していきたいですね。そこに向けて少しずつでも変えたいです」


 
 
 
 
 
●新型コロナウィルス感染症拡大の影響でライブ自粛期間があり、なかなかハードな半年間だったと思いますが、NAOKIくんはどういう心境で過ごしていたんですか?
 
 
 
3月いっぱいくらいまでは“すぐもとに戻る”と思っていたんですよ。でも4月に緊急事態宣言が発令され、京都MUSEの周年イベントが無くなった辺りからだいぶざわつき始めましたね。

 
 
●京都MUSEの周年イベントというのは、2020年の4/11と4/12に予定していた「KYOTO MUSE 30th Anniversary “Talk about LIVEHOUSE”」ですね。
 
 
 
はい。4月くらいからの急展開に戸惑いました。あんなに家に居ることも今までなかったし、外出といえば食材の買い出しくらい。たしか4月末くらいに“京都大作戦”の中止を決断したんです。

 
 
●あ、4月末の段階だったんですか。
 
 
 
その理由としては、5月頭に解除されるはずだった緊急事態宣言が、解除延期になりそうな状況で。だんだん事態が大きくなってきて、7月の“京都大作戦”も無理だろうと思ったんです。

 
 
●なるほど。
 
 
 
あと祇園祭の中止が先に発表されたんですよ。祇園祭が中止を発表したから、サウンドクリエーター(“京都大作戦”主催プロモーター)に多くの問い合わせがあったみたいで。これはもう、少しでも早めに発表してあげないとお客さんも困ってしまうなと。その時期から“今年の夏フェスは無いんじゃないか”と思うようになりました。

 
 
●そういう雰囲気でしたね。
 
 
 
だからずっと家に居たし、緊急事態宣言が出た頃は、制作でメンバーとスタジオに入っている時期でもなかったんです。ただ、周りからちょこちょこ刺激は貰っていたんですよ。

 
 
●刺激というのは?
 
 
 
ライブハウス支援プロジェクトの“LIVE FORCE, LIVE HOUSE.”でDragon AshのKjから「一緒に曲を作ろう」と誘われたり(ライブハウス支援ソング「斜陽」)。そういう刺激は貰っていたけれど、“これからどうなっていくんだろう?”という不安がありました。

 
 
 

 
 
 
●あの時期はそうでしたよね。
 
 
 
あと、僕は他の2人に比べて頻繁にZoomで飲み会をやっていたんです。色々なバンドマンとやっていたんですけど、久しぶりに顔を見れたから最初は盛り上がったとしても、結局最後は暗い話になるんですよね。途中からしんどくなってきたので回数も減ったんです。

 
 
●わかります。答えが出ないので、誰と話しても同じような終わり方になる。
 
 
 
そんな中、僕らは今回のシングルを出すにあたって、6月くらいからやることが増え始めたんです。

 
 
●やることがはっきりすると、メンタル的にも前向きになれますよね。
 
 
 
そうですね。そういう動きがない仲間たちはZoomですごく暗い顔してました(笑)。

 
 
●特に音楽業界の一部の人は生き方を否定されているような気持ちになってしまう時期だったし。
 
 
 
そうですよね。ライブハウスとか僕らの周りのライブスタッフさんとかは仕事がなくなるわけですもんね。でも「常に少しづつ何かしら動かしていかないと、音楽シーンが本当にやばい」という話をよくしていたかな。

 
 
●そんな中で、10-FEETは8月末にツアーを発表しましたよね。あのニュースですごく力をもらえたんですが、一方でものすごく勇気の要る決断だったと想像するんです。
 
 
 
やっぱりバンドはCD発売〜ツアーというのが今までの流れじゃないですか。

 
 
●「ツアーが終わってやっと作品が完結する」みたいな感覚がありますよね。
 
 
 
でも今ツアーをやるとなると色々な制限もある。極端な話、お客さんを半分しか入れることが出来ないとしたら、ライブを2回やれば同じ人数になるんですよね。

 
 
●その発想に驚きました。なるほど! って。
 
 
 
でも現時点では(※当取材は9月上旬に実施)、キャパの半分も入れることが出来ない場所がほとんどです。それでも同じ会場でライブを2回やることによって、ライブを観ることが出来る人も増える。

 
 
●うんうん。
 
 
 
あとは演奏時間を短くして換気をしたり、お客さんのソーシャルディスタンスを保ったり、色々な対策をしっかりします。そういう形だとしても動き出さないと「いつ動き出すねん?」という感じですね。今回はシングルを出すというちゃんとした理由もありますし。

 
 
●みんながみんな、誰かが動き出すのを待っている感じだったと思うんです。そんな中で、今後の音楽シーンのために開催を決断するフェスやイベントもある。10-FEETがこのタイミングでツアーを開催するのはすごいことだと思います。
 
 
 
やっぱり不安はありますけどね。「100%大丈夫!」なんてことはないですし。でも少しずつでも動き出さないといけませんから。

 
 
●そうですよね。
 
 
 
この前、“Osaka Music DAYS!!!”(2020/8/8, 8/9)で久しぶりにライブをやったときはすごく気持ちが高ぶったんですけど、やっぱりお客さんは大声を出したりすることもダメで、マスク着用などの制限があったんですよ。“今はこれがいちばん最善の形なんだろうけど、これがいいものとは思わない”と、ライブの後に感じましたね。素直に楽しかったという気持ちではなかったんです。

 
 
●はい。
 
 
 
どれくらいの時間がかかるかわからないけど、少しずつ本来の姿に戻していきたいですね。そこに向けて少しずつでも変えていきたいです。そういう想いの1つが今回のツアーでもあるんですよ。

 
 
●なるほど。僕は“Osaka Music DAYS!!!”の数週間後に開催された“RUSH BALL 2020”に行ったんですが、お客さんは全員しっかりルールを守ってライブを観ていたんですよね。その光景に感動して。
 
 
 
そうですね。MCとかで3人のちょっとしたやりとりがあってもシーンとしていて。TAKUMAやKOUICHIと「これはスベってるわけではないよな? 声出せへんだけやもんな?」と確認してました(笑)。

 
 
●ハハハ(笑)。
 
 
 
お客さんも責任感を持って来てくれていますよね。今回のツアーもお客さんはそういう感覚でいてくれると思うんです。ルールを守って、その上で楽しんで帰ってくれると思います。

 
 
●フェスやイベントのルールは押し付けではなくて。10-FEETの場合は“京都大作戦”の歴史の中で少しずつ理解をしてもらってきた背景があると思うんですよ。“RUSH BALL”や“Osaka Music DAYS!!!”が開催されたり、生活にライブやフェスが定着しているからかなと。
 
 
 
そうですね。昨日も関東のバンドマンの仲間と話していたんですけど、「関西は色々攻めてていいよな」とみんな言ってくれていますね。

 
 
 
 

 
 

NAOKI INTERVIEW #2

 
 
 
 


「“全然NAOKI独断グルメ出来ひんやん~”って落ちてました(笑)。俺の取り柄無くなった(笑)」


 
 
 
 
●ところで、楽器はずっと触っていたんですか?
 
 
 
触ってましたね。シングルの制作もあったし。

 
 
●曲を書いたりは?
 
 
 
してないですね。ちょくちょくパソコンをいじっていたりはしました。というより、いじらないといけない状況に追い込まれた。

 
 
●追い込まれた? なんで?
 
 
 
さっきも言っていたDragon AshのKjから振られた話(ライブハウス支援プロジェクト“LIVE FORCE, LIVE HOUSE.”のライブハウス支援ソング「斜陽」)とかがあったので。あれ、家で録音したんですよ。でも僕は今まで家で録ったことはなかったので、めちゃくちゃ勉強したんです。

 
 
●ああいうコラボを見ていると、みんな瞬発力で曲を作っている感じがするんですよね。SNSとかで、ものすごいスピード感で曲が出来上がっていく。
 
 
 
そうなんですよ。話をもらって色々調べようとしたら、翌日に音を送ってくる(笑)。

 
 
●ハハハ(笑)。そういうコラボもあり、直接会えてはいないけど、Zoomなどでバンドマンの仲間と話したりしていたんですか?
 
 
 
そうですね。僕の場合はほぼ決まったメンツでしたけど。ROTTENGRAFFTYのNOBUYA(Vo.)とZoomで話す機会が多かったですね。

 
 
●あ、そうなんですか。
 
 
 
NOBUYAがZoomにハマってたみたいで。LINEで連絡が来て見てみたら、なんの文章もなくURLだけ貼ってあるんです(笑)。入るまで誰が居るかもわからない(笑)。

 
 
●ハハハ(笑)。そういうことがありつつ、少しづつ前向きになれたし、少しずつ行動に移せたということですね。
 
 
 
うん、今はそうですね。今回のツアーにしてもやることが決まってきたし。4~5月はやることが無さすぎて結構落ちていたんです。無気力状態が続いていたし、何かをしようとする気持ちになれなかった。

 
 
●4〜5月は外にほとんど人が居なかったですもんね。
 
 
 
だから外食とかも出来なかった。“全然NAOKI独断グルメ出来ひんやん~”って落ちてました(笑)。

 
 
●2月くらいからNAOKI独断グルメのブログ書いてないんでしたっけ?
 
 
 
はい。外食に行けていないので。俺の取り柄無くなった(笑)。

 
 
●8月に立ち上げたアパレルブランド『DOGMATIC GOURMET』があるじゃないですか(笑)。
 
 
 
ハハハ(笑)。あれもいいきっかけだったんですよ。去年くらいから“やりたいな”と思っていて、少しずつ考えていたんです。ちょうどこういう時期になったから、時間を有効活用して少しずつ加速してみようかなと。

 
 
●アパレルブランドは、もともとはキャップから始まったんでしたっけ?
 
 
 
そうですね。

 
 
●今後アイテム展開は増やしていくんですか?
 
 
 
少しずつ自分が欲しいと思う物を作っていこうかなと。10-FEETの物販も担当してくれているスタッフの子に、僕はそいつに市販の洋服に対する愚痴をたまに言っていたみたいなんです。

 
 
●愚痴?
 
 
 
「ここもうちょっと1cmくらいあったらいいのにな」とか「ここのプリントこっちにあったほうがいいのにな」とかブツブツ言っていたみたいで。そしたら「NAOKIさんが自分で作ったほうが早いんじゃないですか?」と言われて(笑)。「確かにその発想はなかった!」という話になったのがちょうど1年くらい前。そのあたりから自分が欲しい物を作ってみようかなと考え始めたんです。

 
 
●今回の新作『シエラのように』の制作はどうだったんですか?
 
 
 
「シエラのように」は最終的にリード曲に決まったんです。最初にTAKUMAが持ってきたデモから大幅には変わっていないんですけど、アレンジを詰めていく度に曲の規模が大きくなっていった感覚があったんです。

 
 
●規模が大きくなる?
 
 
 
そんなに変わったところはなくて、Cメロが追加されたり、Aメロのメロディが変わったくらいなんですよ。でもアレンジのやり甲斐があった感覚がありますね。

 
 
●規模というのはスケール感ですかね?
 
 
 
そうですね。印象が変わったわけでもなく、曲の良さが増幅されていった感じですね。

 
 
●アレンジのやり甲斐があったというのは?
 
 
 
アレンジ中はそこまで考えていないんですけど、完成した時に振り返ってみると、前作のシングル表題曲「ハローフィクサー」は楽曲の方でみんなで攻めていく感じだったんです。でも今作は“楽器も歌っている”というイメージというか。

 
 
●ああ〜、なるほど。
 
 
 
あくまでも歌を引き立たせるための演奏であって、演奏がコーラスみたいな感じになっている。そういう膨らませ方が出来ているなと思います。

 
 
●確かにそうですね。アレンジを詰めていく中で、そういう方向性がいいと見つけたんですか?
 
 
 
そこまで考えてはいなかったんですけど、やっているときに“ここのベースはこういう感じのほうがより曲で泣けるな”とか“より切ない感じが増すな”みたいに、イメージを膨らませながら作っていったんです。その結果として、歌っていたという感じの演奏になった感じですね。

 
 
●確かに「シエラのように」は泣ける切なさがありますね。この曲は今後めちゃくちゃ定番になりそうな気がするんですが。
 
 
 
意外とこの方向性は今までになかったんですよね。こういうテンポ感の曲はあるんですけど、「蜃気楼」ほどテンションが振り切っている感じでもない。自分たち的にも一歩引いて聴いた時に、不思議な気持ちになりますね。

 
 
●うんうん。
 
 
 
今までこういう曲をやっていてもおかしくなかったんですけどね。

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

NAOKI INTERVIEW #3

 
 


「やっぱりお客さんがいない状態でいくらやっても、ライブのあの熱量は絶対に出ないし、僕の中ではあれはライブでは無いんです」


 
 
●ライブが無くてお客さんに会えない期間が長かったですけど、お客さんに対してはどんな気持ちですか?
 
 
 
SNSをやっているので、そういうところでコメントをもらったりするんですけど、こういう時期も気にかけてもらえているのはありがたいです。これだけバンドが動いていないと、僕だったら気持ちが離れてしまうと思うんですよ(笑)。ツアーを発表する前はいつライブがあるかわからない状況だったし、ライブも今までと同じ楽しみ方は出来ないし。この間の“Osaka Music DAYS!!!”でも思ったんですけど「お客さんが楽しめているのか?」という心配はありましたね。

 
 
●制限がある中で、お客さんは楽しんでくれているか? と。
 
 
 
今までは揉みくちゃになって、熱気や熱量があるというところに生きがいや楽しさを感じてライブに通ってくれていたお客さんも多いと思うんです。

 
 
●そうですね。
 
 
 
それを今は出来ないじゃないですか。この間は久しぶりだからお客さんも楽しかったかもしれないけど、これが何回も続いたときに、同じ状況のライブで本当に楽しんでくれるかどうかが心配になったんです。

 
 
●確かにそうですね。配信ライブはやっていないんでしたっけ?
 
 
 
生配信はやっていなくて、収録したライブを配信しました。

 
 
●最近は生配信ライブをやっているバンドが多いじゃないですか。そういう話は無かったんですか?
 
 
 
そういう話もオファーはあったんですけど、無観客で生配信ライブ…今はお客さんに音を届ける数少ない手段のひとつだと思うから仕方ないけど、僕はそれがいいと思っていないんです。収録ライブは2回やったんです。2回目の方は今月頭くらいに事前収録した映像が配信されたんですけど、やっぱりお客さんがいない状態でいくらやっても、ライブのあの熱量は絶対に出ないし、僕の中ではあれはライブでは無いという感覚なんです。

 
 
●うんうん。
 
 
 
ちろん配信ライブが成立するバンドも居ると思う。だから配信ライブをやっているバンドに対して否定的な気持ちはまったくないんです。やり方次第ですよね。

 
 
●なるほど。
 
 
 
この間のELLEGARDENの配信ライブはすごかったですよね。

 
 
●すごかったですね。でも自分たちには適しているわけではないと。
 
 
 
そうですね。やっぱりモニター越しではなく、お客さんの前でやりたい。みんなそれが出来ないから仕方なく配信ライブをやっているとは思うんですけど。

 
 
●ツアーが楽しみですね。今は不安しかないような顔してますけど(笑)。
 
 
 
ホンマに不安しかないですよ(笑)。こういったツアーはやったことないですもん。いくら時間が短いとはいえ、2回部制で。僕はライブでセーブが出来ないんです。ペース配分が出来ない。両方で100%を出しきらないといけないという経験もないから。

 
 
●1日2回というのは初めてなんですか?
 
 
 
ほぼ初めてですね。上京したてのインディーズ時代に会場の異なるダブルヘッダーをやったことあるくらい。

 
 
●テンションの持って行き方が難しいでしょうね。
 
 
 
絶対どっちも100%じゃないといけないので。あとはお客さんの雰囲気も普段とは違うと思うんですよね。だから蓋を開けてみないとわからないんですけど、何本かやってやり方を変えるかもしれない。お客さんの観るスタイルも違うわけだし。でも、このツアーでいい結果を出せるようにしたいですね。

 
 
●しかも今回のツアーでNAOKI独断グルメがまた再開出来るんじゃないですか?
 
 
 
出来ますかね〜。それSNSにあげたら叩かれたりしませんかね? 俺、叩かれるの好きじゃないんですよ。

 
 
●ハハハ(笑)。結構凹みやすいタイプですもんね(笑)。
 
 
 
そうなんです(笑)。でもツアーは楽しみです。ライブ自粛期間になって、大阪と京都と東京にしか行っていないですから。ライブで色々な街に行けるのはやっぱり嬉しいです。

 
 
 

 
 
 
 

PHOTO:HayachiN
Interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:Yuina.Hiramoto

 
 
 
 
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