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10-FEET 19th Single『シエラのように』インタビュー

10-FEET 19th Single『シエラのように』インタビュー


 
 
 
 

10-FEET 19th Single『シエラのように』 INTERVIEW #1

 
 
 


「めちゃくちゃ悩んで曲が出来なかった時の、血管が詰まっていた感じがドバーッ! と流れ出した気がしたんです」


 
 
 
●10/14に19枚目のシングル『シエラのように』がリリースとなりますが、緊急事態宣言が出て1回レコーディングが流れ、実際にレコーディングしたのは6月でしたっけ?
 
 
 
6月にスタジオに入って、7月から録り始めたんです。

 
 
そもそも新型コロナウイルス感染症や緊急事態宣言とは関係なく、もともと今年の“京都大作戦”の前後でリリースしようと思っていて。

 
 
●今回は3曲入りですけど、楽曲自体は前からあったんですか?
 
 
 
そうですね。リリースとか制作の予定がどういうこうという話ではなく、とりあえず曲作りという感じで進めていて。アルバム『Fin』(2017年11月リリース)くらいから、“10-FEETに向かって作らない”というやり方を始めたんです。

 
 
●10-FEETに向かって作らない?
 
 
 
10-FEET仕様ではないというか、10-FEETで出来ないような曲になっても構わないから1日1曲作るという感じ。

 
 
●ほう。
 
 
 
その作り方でブワーッ! と曲が出来た時期があったんですよ。そのうちの何曲かが『Fin』に入ったり、全然入らなかった曲もある。でもその時は曲を作るということが目的だったのでそれでよくて。

 
 
●曲作りの方法を身体に入れ込もうとしたというか。
 
 
 
そうですね。そうしたら作曲のボキャブラリーが増えたりするんじゃないかと。でもそういう作り方をしてみると、結果的に“おもしろい”と思えるものも出来たので、それからそういう作り方を続けていて。僕、家の近所に防音室を設けたんですよ。

 
 
●お! すごい!
 
 
 
今まではマンションで声が出せなかったから、曲作りのときはスタジオに行っていたんですよ。夜中の3時に何か思いついたら4時にスタジオ取ったりしていて。それがいいペースで続くようになったから、そういう環境はあった方がいいなと。

 
 
●なるほど。
 
 
 
なのでその防音室に籠もることが多くなって、曲作りが続いていた中、弾き語りでもイベントとかに呼ばれるようになったんです。ライブ自粛期間中にアコースティックで配信したりする機会も増えてきて、弾き語り用の曲も作るようになって。

 
 
●ふむふむ。
 
 
 
そうなると今度は弾き語り用でもなく10-FEET用でもなく…という作り方になってくるじゃないですか。そういう作り方をしていたんです。

 
 
●アウトプットを意識して曲を作るというより、自分がいいと感じる音楽を作ろうという指向性になりますよね。
 
 
 
曲を作るというのは基本それでいいなと。もちろんたまに「弾き語り用の曲を作ろう」「10-FEET用の曲を作ろう」という感じになるんですよ。「ハローフィクサー」(2019年7月リリースのシングル表題曲)もそうやって生まれた曲だし。

 
 
●うんうん。
 
 
 
「ハローフィクサー」は「他のバンドが演った方がいいと思うような曲を作ってみない?」とメンバーで話しながら、“俺らが演ったらどうなるか?”というところに本気で熱意を入れて作ったんです。今までの作り方とは違うやり方をして、頭が凝り固まっているつもりは3人ともなかったけど、実際にやってみたら真新しい気持ちで出来た。まだ柔らかいところがあったのか、凝り固まっていたところが柔らかくなったのかはわからないけど、そういうことを感じるくらいガチッ! と合った。

 
 
●「ハローフィクサー」はそういう手応えがあったと。
 
 
 
その話とは別に、弾き語りをやることによって歌い方の種類も増えたんですよ。

 
 
●え? そうなんですか?
 
 
 
過去の曲でも何曲か変えたやつがありますね。

 
 
●もともと、TAKUMAくんは何パターンか歌い方を持っているじゃないですか。そこから更に増えたということ?
 
 
 
はい。全然違う発声の仕方をしていたことにライブ中に気づいたんです。“今はこの歌い方で歌うのがいちばんいいな”と。そこは弾き語りをやっていて良かったと思うところですね。

 
 
●へぇ〜、そういうこともあるんですね。
 
 
 
弾き語りの機会が増えたことによって、10-FEETの自分としての発見もあったし、作曲にもガンガン結びついていった。そうなると、今度は10-FEETか弾き語りか、どちらも意識せずに作ることもあり、どっちでも使えない曲も生まれてくるんです(笑)。でもニュートラルな状態で作れる期間が出来たんです。作った曲を振り返った時に「これ10-FEETに似合うやん!」と思ったり。そうすることによって、めちゃくちゃ悩んで曲が出来なかった時の、血管が詰まっていた感じがドバーッ! と流れ出した気がしたんですよ。

 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
●ということは、曲を色々作っていって「これが10-FEETにいいんじゃないか」と思う曲を今回バンドに持ってきた?
 
 
 
そうですね。でもバンドで合わせてみないとわからない曲もあったんですよ。実際に3人でやってみて“いける!”と思ったのが今回の3曲です。

 
 
 
 

10-FEET 19th Single『シエラのように』 INTERVIEW #2

 
 
 
 


「文字だけを見ていたらただただネガティブな部分だったり悲しい部分があったりするんだけど、それと音楽が合わさってやっと頭や心の中に描いているものが完成して伝わる」


 
 
 
 
●今回の3曲はそれぞれいつ頃に生まれたんですか?
 
 
 
M-2「彗星」はレコーディングの直前に作った曲で、M-3「あなたは今どこで誰ですか?」は1年くらい前にリビングで1人で酔っ払って、めっちゃ静かにギターを弾きながら出来た曲なんです。

 
 
●あ、そうなんですか。
 
 
 
静かなフォークソングみたいに歌っていたボイスメモがあって、パッと”10-FEETでやってみたら似合うかも”と思ってやってみたらハマったんですよ。

 
 
●酔っ払って即興で作ったものが元になっていると。M-1「シエラのように」は?
 
 
 
この曲は何も考えずにブワーッと作っていましたね。最初はどちらかというとアコースティックや弾き語りになると思っていたんですけど。

 
 
●この曲がリード曲になったのはどういう経緯があったんですか?
 
 
 
メンバーそれぞれ経緯というか思っている感じは違うかもしれないんですけど、僕はまずデモを作って防音室で歌入れをした瞬間に「やったー!」となったんですよ。

 
 
●ほう、デモの歌入れで。
 
 
 
めっちゃ嬉しい気持ちになったんです。コンビニとかでめっちゃいい曲聴いて、急いで音楽検索アプリで検索する時みたいに。自分で歌った瞬間にいいなと思ったんです。それを録音したやつを聴いてもめっちゃいいなと思ったんです。

 
 
●はい。
 
 
 
そういう曲が今まで無かったわけじゃないんですけど、バンドでやったときに思ったよりヘボかったりとか、全然良くならなくて結局完成しなかった曲もあるので、バンドでやってみないとわからないなとも思っていたんです。

 
 
●うんうん。
 
 
 
それで…今回京都MUSEをスタジオ代わりに借りて何回かやらせてもらっていたんですけど…その時は歌詞も決まってなかったからなんとなく歌って、コードもドラムパターンもおぼろげな状態でパッとやったときにまた「やった!」という感触があって、“これはよくなるかもしれないな”と。それがレコーディングまでずっと続きましたね。

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
●制作過程の中でそういう手応えみたいなものがずっと続いたんですね。京都MUSEは作曲用に借りたんですか?
 
 
 
そうですね、3人でアレンジをしたりする作業のために。それに僕もデモを作ったときは録音しただけだったから、自分の中に入っていないんですよね。その状態のまま京都MUSEで合わせたんですけど、3人ともおぼつかない感じなのに「これええんちゃう」という手応えがあったから、ドキドキしてましたね。

 
 
●NAOKIくんとKOUICHIくんはどうでした?
 
 
 
最初TAKUMAから送られてきて聴いた時の第一印象は、今まで送られてきたデモとは全然違う感覚があったんです。

 
 
●何が違うんですか?
 
 
 
それがわかんないんですよね。

 
 
●え?
 
 
 
メロディなのか譜割りなのかわからないんですけど、単純にいいなと思ったし、でも“今までに味わったことのない感覚はなんだろう?”と思いながらスタジオや京都MUSEでアレンジをしていて、その感覚のままレコーディングに入った感じですね。

 
 
●どういう感覚なんだろう?
 
 
 
自分でもよくわからないから説明が難しいんですけど、テンポにしろアレンジ次第でどういう風にでも持っていけるなとも思ったんです。最初に聴いた感覚が違ったから、これに手をつけたらどうなるんやろう? というワクワクした気持ちになりましたね。

 
 
●NAOKIくんは?
 
 
 
僕の場合は、アレンジが進んでいくに従って「シエラのように」がリード曲っぽいなと少しずつ感じていった感じですね。他にもリード曲っぽいものは何曲かあったんですけど、今のこのタイミングで出すリード曲としていいのではないかなと。

 
 
●歌詞はどの段階で固まっていったんですか?
 
 
 
歌詞を書いたのはレコーディングの途中ですね。

 
 
●最初のデモの段階では断片的にフレーズがあったということ?
 
 
 
はい、一部はありました。

 
 
●歌詞の内容としては“別れ”や“寂しさ”、“切なさ”といった、決して“陽”なことを歌っているわけではない曲ですよね。でも悲しむだけではない…こういう方向性の歌詞にしようというのは、曲が出来たときにイメージがあったんですか?
 
 
 
いや、方向性を表すほどワードが最初からあったわけではないんです。

 
 
●ほう。
 
 
 
テーマとかストーリーも無かったんですよ。でも色みたいなものはぼやっとあって。その時に思い描いていた色や景色みたいな歌詞になりましたね。だから歌詞はそんなに考えて書いていないです。考えているところもあるし、自分の中に浮かんだ色を表現するためにはこういう言葉だなというチョイスはありましたけど、“これを伝えるためにはこういう言い方をする必要がある”という感じではないですね。文章としてメッセージがあるというニュアンスではなかったです。

 
 
●ふむふむ。
 
 
 
作業を進めていけば進めていくほど、これはそういう曲だなと感じていったというか。起承転結とかストーリーの始まり、中盤、終わりというところを意識したり、作ろうとしなくていいんじゃないかと。そういうところに囚われてしまうと、この曲が持っている色とか力が消えてしまうと思ったんです。

 
 
●余計なことを考えずに、曲の雰囲気に導かれるように書いたということ?
 
 
 
えっと、違う言い方をすれば…言いたいこととか思っていることは僕の中に確かにあるんです。それを自分の頭の中でなるべく文章にせず、歌詞にしていく、みたいな作業で。

 
 
●感覚や感触を大切にする感じか。
 
 
 
「◯◯だから××だ」みたいな説明は無くていいと。でもそれが無いから、文字だけを見ていたらただただネガティブな部分だったり悲しい部分があったりするんだけど、それと音楽が合わさってやっと頭や心の中に描いているものが完成して伝わる…そもそも音楽はそういう特異な力を持っているものだと思うんですけど、そういう歌詞の方がいいんだろうなと思っています。

 
 
 
 
 

10-FEET 19th Single『シエラのように』 INTERVIEW #3

 
 
 


「そういうつもりで作ったわけじゃないんですけど、1曲目があって、2曲目3曲目がスピンオフと言ってもいいくらい同じ血液を感じる」


 
 
 
●この曲は最初の2行でグッと引き込まれるんですけど、“別れ”を歌っているのにそこまでエモーショナルではないという、絶妙な温度感がいいなと。悲しんでいるだけではなく、愛が溢れていて。
 
 
 
はい。

 
 
●歌詞カードには記載されていないですが、歌の中で“yeah”というフレーズが何回か出てくるじゃないですか。あの“yeah”が、この曲の絶妙なテンションを象徴しているのかなと。
 
 
 
“yeah”というフレーズは、歌っていてなんとなく入れたんです。

 
 
●なんとなくだったのか(笑)。10-FEETの歌に“yeah”というフレーズはよく入るという印象もあるんですが。
 
 
 
でもこの音域とテンションでは無くないですか?

 
 
●ああ〜、確かに無いかも。
 
 
 
下手したら渋い感じになっちゃうんですよね。でも合わなかったら入れなければいいし、仮歌を歌う時の気持ちのまま入れたんですよ。そしたらそれが似合っていて、思っていたほどクサくなかった。歌っていて溢れるように自然に出たフレーズだからこれはきっといいものだと。愛着をもって入れたままにしたんです。

 
 
●今作の制作は久しぶりに3人で音を合わせる機会だったわけじゃないですか。抱き合ったりとかしたんですか?
 
 
 
はい。ベロベロ身体中を舐め合いながら(笑)。

 
 
●超濃厚接触だったと(笑)。レコーディングはどうでした?
 
 
 
和気あいあいじゃなかったんですけど、でも別に険悪でもない。フラットでもない。ちょっとだけビシッとしていた感じです。ちょっとだけね。

 
 
●ほう。
 
 
 
仲良くも悪くもなく、みんなしっかり曲に向かっていて、でもそれが入れ込みすぎていない。でも”絶対にいい曲を作るというのは決まってんねん!”という気持ちがあって、それを言葉にするわけでもない。僕はそう感じていましたね。

 
 
●メンバーの信頼というか絆というか。
 
 
 
そうですね。絆はウチの売りです。

 
 
●NAOKIくんは?
 
 
 
TAKUMAが言っていた通りですね。曲がより良くなっていく方向に集中して進んでいった感じ。

 
 
●KOUICHIくんは?
 
 
 
僕的には、最初に京都MUSEでやったことが結構大きかったですね。あの感覚のままレコーディングにいけたかなと。京都MUSEで楽曲制作やアレンジをやったことは今までなかったし、ライブを意識しながら制作を進めることが出来ましたね。

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
●それとこの曲はイントロと間奏に金管楽器のような音が入っていますよね。あれがめっちゃいいなと思ったんですけど、あれはどういうアイデアだったんですか?
 
 
 
フィーリング。

 
 
●なんとなくとかフィーリングとか多いな(笑)。
 
 
 
あの音は、最初に歌って作っているときから頭の中で鳴っていたんです。

 
 
●ああいうテイストの音はあまりバンドに入らないのかな? と勝手に思っていたんですけど。
 
 
 
あまりやらないですよね。あの音、音量的には小さいくせに結構存在感があるじゃないですか。

 
 
●入れ過ぎたらロマンチックぶりが過剰になるでしょうね。
 
 
 
でしょ? あいつ山椒並みに効くでしょ?

 
 
●山椒並みに効く。
 
 
 
でも最初から鳴っていたんです。あれだけで聴いたらただの「チーン」という音なんですけど、曲に入れたら絶対にオレンジ色になると思ったんですよね。

 
 
●オレンジ色?
 
 
 
夕日色というか。アンバーな感じに聴こえるかなと。最初は耳鳴りみたいに鳴っていたんですけど、実際に入れたら「ええやん!」となった。

 
 
●うん、すごくいいと思います。
 
 
 
加減は必要ですけどね。ロマンチックになりすぎるから(笑)。

 
 
●それとカップリングの「彗星」と「あなたは今どこで誰ですか?」ですが、今回の3曲は近いという印象を受けたんです。曲調は全然違うけど、楽曲としての距離が近いというか。
 
 
 
すごい。

 
 
●え? なにが?
 
 
 
僕もそう思っているので。

 
 
●やった! 当たった!
 
 
 
今回の3曲は3部作だと思っていて。もちろんそういうつもりで作ったわけじゃないんですけど、1曲目があって、2曲目3曲目がスピンオフと言ってもいいくらい同じ血液を感じるんです。

 
 
●そうそう。
 
 
 
曲調やBPMやテンポは違うけど、似た作り方をしたからかな? 単純に「いいメロディを出して3人でやる」みたいな。そういうギアがニュートラルに入るようになって、例えば「こういう色の曲を作ろう」とか「こういうジャンルの曲を作ろう」となったとしても、そういうことを気にせずにニュートラルに俺らがどうなるかやってみようとした結果というか。

 
 
●なるほど。そして10/14からのツアーですが、本当に拍手を贈りたいくらい嬉しいニュースだったんです。
 
 
 
もともと“京都大作戦”の前後くらいに今作を出そうという話をしていて、でも夏フェスがあるからリリースツアーは10月以降にやる予定だったんです。新型コロナウイルス感染症が拡がる前からその辺の時期に会場を仮押さえていたんですけど、リリース日に合わせて少し予定をずらした感じですね。それで今作のリリースが確定した段階で、「会場は仮押さえしているけどどうする?」みたいな議論になったんです。

 
 
 
 

 
 
 
 
 
●ツアーを発表したのは8月末でしたよね。どのタイミングで決断したんですか?
 
 
 
発表の直前じゃないかな。

 
 
●ギリギリまで考えていたと。
 
 
 
はい。状況がずっと流動的なので。いつライブを禁止されてもおかしくないような状態がずっと続いているわけじゃないですか。そういうことを充分に考えて、ツアーの日程も考えたらタイミング的にはベストなところでジャッジ出来たんじゃないかな。

 
 
●ライブは二部制で行うということですが、最初からアイディアとしてあったんですか?
 
 
 
結構早い段階で出たアイディアだったんです。名案だなと思いました。

 
 
●今回新曲は3曲ありますが、ツアーでは3曲ともやるんですか?
 
 
 
「シエラのように」はやりますよ。

 
 
●「シエラのように」はやらないとダメだと思う。
 
 
 
シングルのリリースツアーなのに、シングル表題曲の「シエラのように」をやらずに「彗星」だけとか「あなたは今どこで誰ですか?」だけやるとかヤバいな(笑)。

 
 
だから「シエラのように」をやる可能性は極めて高いです。

 
 

PHOTO:HayachiN
Interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:Yuina.Hiramoto

 
 
 
 
 
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