音楽メディア・フリーマガジン

Dirty Old Men

ずっと変わらない大切なもの 変わっていくことを受け入れて見つけた大切なもの

3月末にメンバー2人が脱退し、新メンバーを迎えて4/14のライブで始動したDirty Old Men。

昨年2月にアルバム『GUIDANCE』をリリースしてツアーをまわり、全国のオーディエンスを熱狂させてきた彼らが、ここに辿り着くまでには様々な苦悩と葛藤があった。

音楽を辞めることさえ頭をよぎったというその期間を経て、Dirty Old Menはバンドとして、そして人間として新たな扉を開くことを選択した。

Vo./G. 高津戸信幸の胸の内、そして彼自身が音楽をやる道を選んだ理由について訊いた。

Interview

「やっぱり音楽が好きだし、仲間っていいなと。仲間と一緒に夢を追いかけられているということが生き甲斐だし、楽しいと思った」

●昨年の2月に『GUIDANCE』をリリースして、春までツアーがありましたよね。つい先日、新しいメンバーでのライブがありましたが(4/14@渋谷WWW)、まずメンバーチェンジはどういう経緯だったのか聞きたいんですが。

高津戸:今年の3/18が前のメンバーでの最後のライブでしたけど、昨年9月にDr.野瀧、10月にBa.山田の脱退が決まったんです。でもその前から薄々は感じていて。震災の影響が大きかったというか、決定打になったんだと思いますが。

●前作リリースして1か月後に震災が起きましたが、あの影響が大きかった?

高津戸:はい。9年になる長いバンドなので、震災以前から言い合いもあったし、いい雰囲気ではなかったんです。今から振り返ってみると、あるべき姿じゃなかったのかなと思います。高校からの付き合いなんですけど、やっぱりプライドとかも邪魔しちゃうし、言いたいことも言えなかったりして。それに、いい意味でも悪い意味でもスタッフに恵まれてしまったので、スタッフを介さないと話さなかったり、自分たちの意思も伝えられなかった。そういうこともあって、ずっと言いたいことも溜まりつつ、メンバー間の関係が崩れていってしまっていて、最終的にはスタジオでひと言も喋らなかったり…。

●そんな状態だったんですね。

高津戸:ぶっちゃけるとそうでした(笑)。それはけっこう辛くて。昨年3月に震災が起きて、栃木は直接的な被害は少なかったんですけど、でも停電とかで若干被災地のようになっていて。そのときにドラムの野瀧が、いちばん大切なものはたぶん音楽ではなくて家族だという風に思ったようなんです。実際に彼の家族の病気はあったんですが、正直バンドを続けようと思えばやれたと思うんです。だから、いちばん大切なものが移り変わってしまったんだと思います。それで9月に辞めることが決まって。

●なるほど。

高津戸:あと山ちゃん(山田)は、技術的なところで他のメンバーについて来れない部分が前からあったんですよ。それが問題で前からいろいろ言われていたんですが、野瀧はすごくいい奴で、使命感から「上手くならないといけないよ」と山ちゃんに対してスパルタになっていて。

●はい。

高津戸:それで山ちゃんが音楽を嫌いになりそうになってしまった。それがかなり辛かったようで、本音を訊いたら「音楽をやめたいと思ってる」という話になって。決定的だったひと言は「みんなに嫌われるのが嫌だ」だったんですよ。だから10月で辞めることにきまったという感じです。

●震災が直接的な影響ではないけれど、そこでメンバーそれぞれの本心が浮き彫りになってしまったんですね。

高津戸:そうなんです。でも俺はあの4人で一緒にやりたかったから、本当は迷いがあったんです。でも、止められなくて。

●止めなかったんですか?

高津戸:止めなかったです。野瀧とはいちばん仲が良かったんですよね。だからそれまでもいろんな話を聞いていたんですが、辞める話や家族の話は俺には言わなかったんですよ。家族のことももちろん本当のことだけど、それとは別に何かあるのかなとも感じて、何も聞かずに「分かった」とだけ言いました。「お前が違う道に進むなら、それを応援するよ」って。でも正直、内心ではすごく迷っていました。

●なるほど。

高津戸:今はめっちゃ仲が良いんですよ。2人とも大好きだし。でも、そのときの状況はそれくらい辛いものだった。そのときの自分は"音楽をやっていていいのかな?"とすごく迷っていて。俺と野瀧と山ちゃんは、Dirty Old Menを設立したときの3人だったんですよ。そのうちの2人が辞めるとなって、"音楽を続けていていいのかな?"とか"地元のみんなはなんて言うのかな?"とか…ちっちゃいことも、いろんなことが気になっちゃって。

●そこで続けようと決めたのは?

高津戸:やっぱり歌いたいという気持ちが根底にあったし、何よりも拓実(山下)が「俺は辞めるのイヤだよ! 絶対やるからね!」と言ってくれていたので。俺は「もう無理だよ~」と言っていたんだけど…。

●ヘロヘロじゃないですか(笑)。

高津戸:俺はすごくネガティブなんです(笑)。でも拓実はめちゃめちゃポジティブで。だからそういう言葉がすごく嬉しくて。もちろんDirty Old Menをやりたいし、脱退が決まった後のライブをやっていくうちに、お客さんの反応とかを見て"俺が生きるのはここしかない。このステージに立つしかない"という想いがどんどん強くなって、2人でがんばろうと思えた。そこからメンバー探しを始めたんです。

●なぜ高津戸さんは音楽をやることを選んだんでしょうか?

高津戸:やっぱり楽しいからです。「今は」ですけど。あの当時は分からなかった。でも今は楽しいからやっています。

●改めて自覚したんですね。

高津戸:そうですね。俺も音楽を嫌いになりかけていた。でもやっぱり音楽が好きだし、仲間っていいなと。仲間と一緒に夢を追いかけられているということが生き甲斐だし、楽しいと思ったんですよ。俺も震災に遭って、周りのみんなが就職とかいろいろ考えていたときに、"ちゃんと未来を見て就職しなくちゃだめなのかな?"とか思っていたけど、今は"楽しいからやればいいんだ"と。高校生のときは何も考えずに楽しいからという理由だけでバンドをやっていて、今はまたそういう初心に戻っている感覚ですね。言葉としてはすごく軽くなっちゃうけど、楽しいから。

●最初にバンドを始めたときの"楽しい"ではなく、一周まわった上での"楽しい"なんでしょうね。

高津戸:そうですね。全てに対して感謝というか、幸せな感覚があって。幸せな場所ってなかなか立てないじゃないですか。そこにいられること、さらに仲間と一緒に歌える喜びとか、聴いてくれるお客さんがいる空間も…そのすべてがめちゃめちゃ楽しくて。4/14のライブも本当に楽しかったんです。

●あの日のライブは本当に楽しそうでしたね。

高津戸:嬉しくて楽しくて、俺が音楽をやっている意味というのは、シンプルに"楽しい"だけでいいのかなって実感しました。自分だけが楽しいのではなく、自分が楽しければみんなが楽しいと思えるような仲間に出会えたので。それだけでいいのかなと今は思っています。今までは、メンバーを失って、深く考えすぎてしまっていたし。後任の2人が3/6に決まるまでの間、本当になにも上手くいかなくて。

●約半年間くらいですね。

高津戸:その間は残されたライブとかイベントとか、最近東京に引っ越してきたんですけどその準備とかをバタバタとやっていて。脱退が決まった2人もまだいたけど、拓実と2人だけでやっているような感覚でした。

●そうだったんですね。

高津戸:愛の鞭だったとは思うんですが、スタッフからも「早くメンバーを決めないと。この先どうするんだ?」って突き放されていて。2人だけ残されて、宇都宮から通っていて。でもメンバーが決まらないんですよ。同い年のバンドマンとかはみんな「就職する」って言うし。東京のバンド仲間にも声を掛けていたんですけど、地元に帰って就職するという人が多かったんです。そういう部分でも、やっぱり震災の影響はデカかったと思います。

●日本全国の人が"自分が何をするべきか?"を考えましたもんね。

高津戸:この時期になっていきなり解散するバンドが増えていたし。いろんな人に声を掛けるんですけど、恋愛と一緒で、断られる度に自分の人格まで否定されているみたいな感覚に陥って。"俺は音楽をやっていていいのかな?"とか思ったし、"何のために音楽をやっているんだろう?"とか。俺は曲や歌詞も書いているので、いろんなものを背負っていたんです。レーベルや事務所だって応援してくれているから焦りもあったし。

●2人しかいないですしね。

高津戸:"ヤバい! ヤバい!"と思っていました。いろいろ考えすぎて音楽が重くなってしまって、もう辞めたいなとか思ったこともあったけど、辞められなくて。悔しくて諦められないんですよ。拓実と2人で励まし合いながら。…でも振り返ってみると、今こうやって"楽しい"と思えるのは、あのがむしゃらな半年間があったからなのかなとも思えるんです。本当に変わらないものと、変わってもいいものがあるんだろうけど、俺はたくさんの人に応援してもらっているんだから、Dirty Old Menは今までの4人じゃなきゃダメだと必死だったんです。変わることが怖かった。

●そうだったんですね。

高津戸:正直に言うと、何年も前から辞める/辞めないの話は出ていたんです。

●え?

高津戸:野瀧と山ちゃんは。その度に俺が止めたり、スタッフさんが入って止めてもらったりしていて。

●バンドを守ってきたという想いが強いんですね。

高津戸:うん。それは楽しさよりも、義務感のようなもの。"俺が音楽を続けるためにはこいつらがいないとダメだ"みたいな。言葉では「仲間だ」とか言っていたけど、責任感の方が強かったんですよ。俺は曲を書いて歌詞を書いて歌っているから、その責任感でメンバーを繋ぎ止めていたんですけど、今新たな2人に出会って、変わることは悪いことだけじゃないんだなということに気付きました。

INTERVIEW #2

「自分で選んだんでしょうね。成長したいというか、なんとか過去の栄光にしがみつかないで前に進もうという気持ちは、この半年間ずっとあったかもしれない」

●新しいメンバーの2人は、どういう経緯で決まったんですか?

高津戸:翔ちゃん(Dr.岡田翔太朗)は、3月いっぱいでバンドが解散するとエンジニアさんに聞いたんです。もともとserial TV dramaとは企画に出てもらったり対バンしたりして、昔から知っていたし仲が良かったんですけど、解散することは知らなかったんですよ。それをエンジニアさんに聞いて、会って話しました。

●渡辺さんは?

高津戸:雄司(Ba.渡辺雄司)は2月いっぱいでRIDDLEが活動休止に入って、「半年くらいは活動しないから空いているよ」と言われたので、とりあえずサポートでお願いしたんです。今作の制作が決まっていたので本当に時間がなくて、2月の中旬から曲を書かなくちゃいけなかったんです。だからサポートでもなんでもいいからやってもらおうという感じでお願いして、やってもらっていたら3/6に決まったんです。楽しかったらしくて、雄司が「Dirty Old Menに懸けてみたい」と言ってくれて。

●スタジオに入っているうちに?

高津戸:そうです。それにもともと拓実と雄司は10代の頃に一緒にバンドをやっていたんですよ。そのバンドが解散して拓実はDirty Old Menに入り、雄司はメロコアやハードコアとかの方向にいって。さらに、雄司は翔ちゃんともバンドを組んでいたんです。だからこの3人はけっこう繋がりがあったんですよ。

●高津戸さんだけが繋がりがなかったという(笑)。

高津戸:そうそう(笑)。だから最初は俺だけ敬語で。拓実に「俺、いつからタメ語になれるかな?」って相談していたんです。

●アハハハハ(笑)。

高津戸:拓実は性格的に「次からタメ語で話せばいいじゃん!」と言うタイプなんですけど、俺はやっぱり敬語なんですよ。「じゃあやりましょうか」とか「楽譜を書いてきたのでお願いします」みたいな(笑)。でも4人で合わせると楽しいんですよ。

●なにが楽しいんですか?

高津戸:まず、辛さがあったから楽しみが倍に感じられる。それにありがたみでも嬉しいことでも、ちょっと気に食わないこともすぐ言い合えるメンバーだし、何よりも2人のやる気をすごく感じるんです。4人のやる気がものすごいので、音楽をやっている感覚とか、バンドっていいなと節々ですごく思う。

●いい状態なんですね。

高津戸:2人が決まるまでは、正直に言うともう仲良くバンドをやれないんだろうと思っていたんです。正式メンバーを探すのは無理だろうからサポートメンバーでやろうと考えていたのに、いいメンバーに巡り会えて。また仲間というか、"バンド"というものをやれるとは思わなかったのですごく嬉しいですね。本当に2人に感謝してます。

●やっとスタート地点に立ったような感覚?

高津戸:そうですね。

●今作『doors』ですが、特に新メンバーと録った新曲は感情が振り切れていますよね。逆に旧メンバーとの曲は、ひとつの視点として自分の弱いところを隠したり守ろうとしている心象風景が描写されていて、要するに自分の弱いところに向き合っている感じがあって。

高津戸:そうですね。

●今までのDirty Old Menの歌詞は仮想世界というか、自分とは切り離したところで書いていると感じていたんです。でも今作では曝け出しまくっていますね。

高津戸:そうですね。本当に自分との葛藤があったというか、変わりたかったんです。新しい自分というか、今まではファンタジーみたいな物語を書いていたんですけど、漠然と"自分の言葉で書けたらいいな"という気持ちがあって。震災もあったし、人とか愛とか、近くで触れられるものを書きたいなと。物語的な歌詞表現を全部捨てるわけじゃないんです。でも、こういう風にストレートに書く歌詞ってありふれているけど、グッと来る歌詞は本物なんだと自分の中で思っていて、自分もそういう切り口で書きたい。それがDirty Old Menの為だとも勝手に思っていたし。

●現時点での自分とバンドのテーマとして、自分に近い言葉だったり心境だったりを楽曲に投影したいと思っていたと。

高津戸:M-1「doors」やM-8「a heart of difference」は今のメンバーと出会って作った曲で、"こういうものを書きたかったんだな"と後から改めて思いました。今まで"辛い"、"苦しい"、"どうしよう?"とか、前メンバーの4人でいた心境にバリアを張っていたんです。でもいろいろ経験して、新しいメンバーの2人に出会ったときにバーッ! と書けたので、本当にこういうものを書きたかったんだと自分自身納得できたんです。

●そういう感覚は初めてですか?

高津戸:初めてです。曲を書くことに毎回苦しんでいたんですよ。頭であれこれ考えて「上手くまとまったな。ここはこうじゃなくてああかな? こうしようかな?」みたいな感じで。でも今回の新曲はパッと書けて「できた!」という感じだったので、この感覚は初めてでした。特に「doors」はそうかな。

●自分の心境を音楽としてストレートに分かりやすく出すことを今まではしてこなかったわけじゃないですか。そういった心理は今作の歌詞を読めば伺えるんですが、今までは敢えて隠していた部分もあったんですよね?

高津戸:そうですね。最初は自分の気持ちを知られたくなくて物語的な歌詞を書いていたんです。芸術家みたいな感じで。

●ああ~。

高津戸:高校からバンドを始めて、周りは青春パンクが流行っていたんですけど、俺はちょっとひねくれていたから"なんか違うな?"と思っていたんです。だから自分は物語を書いて芸術家ぶって「頭いいね」って、頭が良くないのに言われたくてそういう歌詞を書いて。もちろん成長していくうちにそれが進化していって、書きたいこともどんどん変化してきたんですよ。だんだん物語の中に自分の気持ちを投影するようになっていったんです。

●最初のうちはフィクションだった?

高津戸:めっちゃフィクションでしたよ。恋愛のことなんて書いたことがなかったし、"愛してる"とか"好き"という言葉は使ったことがなかったんですけど、今は…特に今は"音楽=人間力"だと思っていて。それは決して物語性のある歌詞を否定しているんじゃなくて、自分の経験とかから「俺はこういうことを感じているから大丈夫だよ」みたいなことを言える人間になりたいと思うんです。音楽で伝えられる人間になりたい。

●ライブバンドはきっとそうだと思うんですよね。ライブで伝わる音楽の説得力みたいなものは、技法の問題ではないと思っていて。

高津戸:まさしくそうですね。それが人間力の問題だと思います。

●そこに挑戦したかった?

高津戸:そうですね。バンドマンは年をとるにつれて味が出てきますからね。ぶっちゃけますけど、メジャーデビューしたとき、最初は抵抗があったんですよ。

●"たくさんの人に届けたい"みたいな、ポップミュージックに対するアンチテーゼというか。

高津戸:うん。そういう気持ちもありましたけど、いろんな人に出会って、かっこいいの基準が自分の中で変わったんですよね。売れたいという気持ちももちろんありましたけど、TVに出たいとか有名になりたいという欲があるわけでもないし。そういうことじゃなく"言いたい"という気持ちというか。"こういう歌を作りたい"と本当に自分で思えたんです。そう思えるようになったのは…プロデューサーの方とかもそうですし、音楽とは関係のない人とかも含めて、いろいろな人に出会っていろんな話を聞いていくうちに、"芸術性の高い音楽と人間味のある音楽、どちらも作れたら最高だな"と思うようになった。そういう自分の変化というものを"進化"として楽しめるようになっているのかな。

●なるほど。

高津戸:ツアーをしたときとかに、音楽が変わっていったとしてもお客さんは離れないんだろうなっていう確信があったんですよね。それがめちゃめちゃデカくて。だから、もっと自由にやっていかなくちゃいけないんだなと思いました。

●今まで自分の気持ちや弱さを隠していたのは、いろんなことに怯えていたんでしょうか?

高津戸:そうですね。ずっと変わらないものを探していました。ずっと繋ぎ止めたいというか、人にどう思われるかが気になったり。でも、それでめちゃめちゃ頭が堅くなったり、視野も狭くなったりしていたのが分かってきて。今回ストレートに心情を書いた曲が多いのは、前作以降でそれを実践していたからなんです。

●確かにM-9「コウモリ」とかにも心情が投影されていますね。

高津戸:自分がいますからね。M-2「変えるのうた」とかにも自分がいます。

●苦労や葛藤はあったけど、Dirty Old Menはなるべくして今の形になったんでしょうね。

高津戸:結局、自分で選んだんでしょうね。成長したいというか、なんとか過去の栄光にしがみつかないで前に進もうという気持ちは、この半年間ずっとあったかもしれないです。

INTERVIEW #3

「ツアーファイナルの6/24のステージには、たくさんのライブを経てどんどん変化して、もっとかっこいい俺らが立っていたらいいな」

●今後はどのように進んでいきたいと思っているんですか?

高津戸:「doors」という曲は自分の気持だけで、他のことは全然何も考えずに作ったんです。俺は引越ししてこの4月からちょうど新生活が始まって。ただ、同じ状況の人が多かったみたいで、この曲を聴いてくれた人から「今の自分に重なりました」とか「背中を押されました」とかコメントをもらったんです。

●ただ単に自分の気持を書いただけなのに。

高津戸:それで"そうか! 新生活が始まったのは俺だけじゃねえのか!"と思ったときから、今まで俺は「辛い」と言ったりバリアを張っているばかりだったけど、人に何かを与えられるような、背中を押せるような曲を書いていきたいという気持ちになっています。自分を出すことに怖がらないで、いろんなことに挑戦して、もっともっと経験して、そういうことが伝えられたらいいなと。

●何も意識せずに書いた「doors」という曲なのに、人に力を与えることができるということが分かったんですね。

高津戸:本当にそうですよね。

●ポピュラリティーというものは、正解があるわけではないと思うんです。"共感"とはちょっと違う種類のもののような気がしていて。でも、そこに込めた気持ちの純度や熱量は嘘をつけないというか、伝わる人にはきっと伝わると思うんですよね。そういう意味で、「doors」に込めた気持ちの純度はすごく高いと思うんです。

高津戸:うん、そうですね。これからがんばらないとなあ…。

●ハハハ(笑)。

高津戸:でもこれからがすごく楽しみなんです。もちろん今もずっと自分がどうあるべきなのか探していて。でもこれからどんどん見つかってくると思います。もっともっと勉強して、もっともっといい男になって、いい曲を書きたいですね。

●話を聞いていると、音楽に身を捧げている感じがしますね。

高津戸:ここまで来たらもう音楽しかないと思っています。新たなお客さんもライブに来てくれて、ついてきてくれているので、前みたいに俺が「もう無理だ~」なんて言ってられないですよね。音楽で死にます。

●おっ!

高津戸:…ちなみに俺、意外に理容師の免許を持っているんですよ。実家が床屋で(笑)。

●え? すごい逃げ道があるじゃないか!

高津戸:いや、継げないですけどね(笑)。まあ床屋って繋がりが体育系なところがあるので、助けてくれる人はいるんですよ。「床屋だったら紹介できるよ」とかも言われていたし。でも理容師にはならない。

●じゃあ理容師免許を読者プレゼントに出しますか。

高津戸:いや、さすがにそれは…(笑)。

●ハハハ(笑)。

高津戸:今は音楽だけをやります。本当にそういう気持ちですね。

●新メンバーが発表されたばかりですが、せっかくの機会なので高津戸さんから新体制になった各メンバーのことを教えてもらえますか。

高津戸:まず…拓実はバカです(笑)。ずっと一緒にいるときは、バカでうざったかったんです。人の話も聞かないし。

●話を聞かないんですか(笑)。

高津戸:でも気持ちのいいバカで、最高なんです。裏表がなくて、思ったことはその場で言うし。たまにそれで喧嘩になることもあるんですけど(笑)。

●いいですね。

高津戸:あと、めちゃめちゃポジティブ。たぶん俺と同じく辛かったと思うんですよ。でも、俺の前では全然弱音を吐かなかった。こないだのWWWのライブのMCでは「お互い弱音を吐いて励まし合っていた」と言ったんですけど、実際はずっと俺が励まされていました。あいつがいなかったら本当にヤバかった。毎日会って、毎日一緒にいろいろとやっていましたけど、さらに毎日電話で話していましたもん。

●バカに甘えていたんですね(笑)。

高津戸:そうなんです。俺、バカに甘えていました(笑)。

●ハハハ(笑)。

高津戸:そして翔ちゃんはムードメーカーですね。2歳上で大人なんですけど、みんなを盛り上げたりしてくれる。でも、いちばん繊細でもあって。メールもマメだし、自分の気持ちを隠しているのかなと感じる部分もある。彼もあまり弱音を吐かないんですよ。みんなでいるときはムードメーカーで、すごく明るくて。

●いちばん年上だからか、周りというか、場を見ている人なんでしょうね。

高津戸:すごくよく見ているし、空気を読みますね。空気を読みながら、わざと外すとかもするし、みんなに気を遣える人っていうか。みんながいるところで「雄司、お前は何でもできるんだな」と褒めたり。

●周りを見ているからこその行動というか。

高津戸:そうなんですよ。雰囲気を作ってくれて、バンドを円滑にまわしてくれる。本当にデカい存在ですね。

●なるほど。

高津戸:そして雄司…雄司はシャイですね。シャイで、すごく人見知りで。でも俺らの前では言いたいことは言うし、無口というわけではなくて。酔っ払うと「Dirty Old Menに入れて本当によかったよ」とか言うんですよ。基本はシャイなんですけど、お酒を飲むと熱くなります(笑)。

●そんな4人でのツアーが5/26から始まりますが、どんなツアーにしたいですか?

高津戸:新メンバーでまだ1回しかライブをしていなくて、ツアーも初めてなんですよ。だから、たぶんライブごとにどんどん変わっていくと思うんです。自分自身でも"どんなツアーにしたい"というよりも、"俺らはどうなっていくんだろう?"という感覚。さっき言ってくださいましたけど、4/14はほとんど笑顔のライブだったじゃないですか。嬉しいし楽しいし、感謝だけを伝えようみたいな。

●そうですね。

高津戸:でもツアーファイナルの6/24のステージには、たくさんのライブを経てどんどん変化して、もっとかっこいい俺らが立っていたらいいなと。今から楽しみですね。それに、やっぱり現時点では戸惑いながら観に来るお客さんもいると思うので、このツアーでは新しいメンバーを紹介しつつ、「やっぱりかっこいい」と思ってもらえるようなライブにしたいです。

●4/14のライブを観ていて思ったんですが、アイコンタクトとかも含めて、4人がステージで生み出す雰囲気がすごくいいですよね。

高津戸:そうですね。メンバーは仲が良いので、それがステージにも出ていると思います。本当にバンドをし始めたという感じ。ツアーが楽しみですね。

Interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:Hirase.M

  • new_umbro
  • banner-umbloi•ÒW—pj