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GHEEE:4th Album『QUAD』発売記念 Double A-side Interview この4人でしか起こせない奇跡の化学反応は爆発力を増し続けている

GHEEE_mainGHEEEが前作から3年ぶりとなる4thフルアルバム『QUAD』をリリースする。この3年の間には、それぞれの活動も活発化。Vo./G.近藤智洋はソロ活動の他に新バンドも結成し、凄まじい本数のライブを行ってきた。PLAGUESの20周年を迎えたVo./G.深沼元昭は新譜やリテイクベストアルバムの制作とそれに伴うツアーの実施、さらには数々のプロデュースやツアーサポートも担当。Ba.Hisayoはtokyo pinsalocksで新譜のリリース/ツアーだけでなく、a flood of circleのベーシストとしても認知度と実力を高めている。結成25周年のZEPPET STOREで新作を発表したDr.YANAは、NACANOやvezでの活動に加えてtokyo pinsalocksのサポートドラムも担うようになった。他にも4人それぞれがここに書ききれないほどの活躍と経験を重ねてきた、まさに充実の3年間だったと言えるだろう。そんな個々のめまぐるしい状況の中でも、GHEEEは月に1度のペースでライブを継続してきた。既にライブの中で披露されて磨かれ続けてきた楽曲に加えて、新たな色彩も見せる書き下ろしの新曲も加えた全12曲収録の今作。4個で一組の物事を表す言葉であるタイトルが象徴するように、それぞれが4分の1としての役割を果たしながら、この4人でしか生み出し得ない音がここには鳴り響いている。そして、その音は今まで以上に太さと強靭さを増しているようだ。待望のニューアルバムにして新たなる名作の完成を記念して、本誌では2本立てのインタビューを敢行。近藤智洋と深沼元昭、HisayoとYANAという組み合わせで実現した2本のインタビューは4人の関係性がまさに“QUAD”であることを証明するようなものとなった。ダブル・Aサイド・インタビューと題したようにどちらを先に読んだとしても、そのことをはっきりと実感できるはずだ。

■インタビューその1

4th Album『QUAD』発売記念 Double A-side Interview
Part 1:近藤智洋(Vo./G.) × 深沼元昭(Vo./G.)

「今作で4枚目なんだけど、1枚目っぽい雰囲気はあるかもしれない。ガムシャラに突っ走った感じがすごく新鮮で、1stにありがちな初々しさみたいなものが今作にも出ている気がします」(近藤)

「この4人が集まらないとできない音であるというところはすごくありますね。普段はそれぞれに活動しているのでなかなか集まれないんですけど、それがGHEEEという名前の下に集まるとこういう音ができる」(深沼)

●3年ぶりのリリースですが、お2人はその間にもそれぞれ活動されていたわけですよね。

深沼:僕はPLAGUESが20周年だったので、新譜とリテイクベストの第2弾を出して、ツアーも3回やって。あとはいつものように外部のプロデュースやサポートの仕事もやりつつという感じで、わりと忙しかったですね。近藤さんも新たにThe Everything Breaksを始めたり、他にもDQSでも歌っていたりと…。

近藤:そういうことをやりつつソロもやって…という感じでした。バンド形式でやる時は近藤智洋&ザ・バンディッツ・リベレーションという名義でもやっていて、去年は全部で140本くらいライブをしましたね。その間もGHEEEは、月1回くらいのペースでライブをやっていたんですけど。

●それぞれ忙しい中でも、GHEEEとして定期的にライブはしていた。

深沼:当たり前のようにあるというか。自分の中ではGHEEEをやることで、良い意味でリセットできるところがあるんですよ。たとえばPLAGUESのワンマンライブがあれば過去の曲まで掘り起こして30曲近くやったりするわけで、他にも色んなところでそういうことがある度に集中しなくちゃいけない。でもGHEEEに戻ってきた時は、ずっと継続して活動しているバンドだから「今日はこういうセットリストで行きましょう」と言えば済むし、良い意味で単純なライブバンドの気持ちに戻れるんです。いつも言っていますけど、そういう意味でGHEEEは“部活”的なバンドだなと。

●いつ戻ってきても、純粋にライブを楽しむことができる場所というか。

深沼:HisayoちゃんもYANAさんも他で色々と活動しているし、そんな人たちがパッと集まっていつもの曲をやる…みたいな。自分の中でGHEEEというものがすごく大事な存在というか、ある意味でライブに関しては原点に戻れるような感覚があるんですよ。でもアルバムを作るために集まるとなると、そう簡単なことじゃないんですけど(笑)。

●新たな曲も必要だし、レコーディングのスケジュール調整もいるわけですよね。

近藤:曲自体は作っていたんですよ。ずっとライブを続けている中でも、新たに深沼くんが作ってきた曲をやったりはしていて。それで「近藤さんも曲を書けば?」みたいにMCで言ってもらったりして、“俺も書かなきゃな”という雰囲気になって書き始めた感じですね。結果的に2年間で8曲できて、「そろそろアルバムを作りますか」という雰囲気が出てきたのがこの1年だった。でもみんな忙しいのでまずはツアーのスケジュールを調整してみたら、4人とも動けるのが今年の5月しかなかったんです。

●ピンポイントでそこしかなかったと。

近藤:そこでまずツアーを5月に決めて、それに間に合うようにリリースするとしたら、いつまでにレコーディングをしなきゃいけないかというところを逆算していって。今年になってから、一気に動き始めた感じですね。

深沼:「ここでやらなきゃ、もう当分できない」という感じだったんですよ。レコーディングもそれぞれに一瞬の隙を突いてやる感じで、難しかったですね。当初の予定より1ヶ月くらいは遅れたのかな。

●あ、1ヶ月遅れたんですね。

近藤:本当は2月に録る予定だったんですけど、みんなのスケジュールが1日も合わなくて。それでレコーディングが3月になったんです。

深沼:5月にリリースしてツアーをやるには、3月いっぱいで全ての作業が終わっていないといけなかったんですよ。〆切は変わらないから、作業のスケジュールだけがどんどん圧縮されていくっていう(笑)。

●制作スケジュールは相当きつかったと。

近藤:結局、レコーディング前のリハーサルさえできなかったんです。

深沼:だから、1回もリハをやっていないんですよ(笑)。

●4人が一堂に会することはなかったんですか?

深沼:ベーシックに関しては2日間だけ、4人で集まって録りました。その2日しか一堂に会していないですね(笑)。しかもその翌日もYANAさんは渋谷CLUB QUATTROでZEPPET STOREのワンマンライブがあって、Hisayoちゃんもa flood of circleのツアーですぐ地方に行っちゃって。残りはこっちのチームに託されました(笑)。

●2日間だけって、すごいですね…。

深沼:僕自身バンドを長くやってきて、プロデュースやエンジニアの仕事もやるようになってからも既に10年くらい経つんですよね。だからある程度はプロの仕事というか、客観性を持って作品をきっちり仕上げていくところがあって。でも今回はそういう客観性を持つような時間すら全くなかったんですよ。これだけ時間を掛けないというのは初めてのことで。自分の歌やギターもそうだし、近藤さんにしても2日くらいで歌を全部録った後、聴き返してチェックする時間もなかったくらいなんです。

●客観的な視点を持てないくらい、時間がなかった。

深沼:ある意味で、全体のバランサーとしての自分が出てくるヒマがなかったことが今回は良い方向に働いたなと。作っている時はもう必死でしたけど、できあがってからそう思いました。

近藤:今作で4枚目なんだけど、1枚目っぽい雰囲気はあるかもしれない。1枚目を作っている時もまだバンドが固まっていない中で、ライブでもやっていない曲を録っていって。ガムシャラに突っ走った感じがすごく新鮮で、1stにありがちな初々しさみたいなものが今作にも出ている気がします。

●時間がなかったことでの勢いが良い意味で出たというか。

深沼:逆に前作の3rdアルバム『III』に関しては、かなり練って作った部分があって。前作はリズムを録ってから完成させるまでに、半年くらいかけているんですよ。取り組み始めてからできあがるまでのフレッシュさが、前作とは全然違うかな。普段からライブでやっている形のバンドというものに対して、ある程度の信頼がないとここまではできないというか。そういうものがすごく表れているアルバムになったと思いますね。

●タイトルの『QUAD』(※クアッド=4個で一組の物事を表す言葉)というのは、そういう意味も込めたものなのかなと。

深沼:4枚目ということもあるんですけど、やっぱりこの4人が集まらないとできない音であるというところはすごくありますね。普段はそれぞれに活動しているのでなかなか集まれないんですけど、それがGHEEEという名前の下に集まるとこういう音ができるんだっていう。「(自分が)4分の1であることを楽しめるバンド」ということは前からよく言っているんですけど、本当にGHEEEの場合はその中で自分の役目を果たしていくのがすごく楽しいんですよね。

●初期から言われていたことですが、結成して8年目になる今も同じように楽しめているわけですね。

深沼:なにげに8年目っていう…(笑)。すごく不思議なバンドなんですよね。

近藤:気を遣わなくて良いので楽なんですよ。だから月1回ライブが入っていても、毎回スッとGHEEEに戻れるというか。

●メンバー間でストレスを感じることがない。

深沼:そこにストレスがないというのは、みんながちゃんとやるべきことを果たしているというのが大きいと思います。「新しい曲だから、ここまではちゃんと自分で考えてこよう」とか、そういったことをみんなが当たり前のごとくやってくるからストレスを感じないんです。もし誰か1人でもできていなかったら不満も出るだろうし、逆に「自分が考えてきたとおりに全部やってくれ」みたいな人もいなくて。みんながその“4分の1”感を共有しているというのが大きいんじゃないですかね。

近藤:そういうのは今回のレコーディングでも出ていた気がして。2日間しかなくて、4人で演奏したことがない曲も4曲あったけど、それぞれがやるべきことをきちっとやっているから予定通りにすんなりと終わったんです。

●後から作った4曲というのはどれなんでしょう?

深沼:M-3「On the beach」、M-5「Speed of sound」、M-8「Thorn」とM-11「Heart Gravity」ですね。

近藤:先にあった8曲のBPMを深沼くんが提示してくれて、「アルバム全体で見ると、こういうテンポの曲が足りないから書いて下さい」みたいな依頼が来たんです。だから最後に作った4曲はバリエーションがすごくあって、既にライブでやっている曲とも違う感じで作れましたね。

●確かにその4曲は今作の中でも異色な感じがしました。

深沼:そうですね。ライブで仕上げられない曲というか。よりによって、新たに書き下ろして4人で1回も合わせていない4曲が技術的には一番難しいんですよ。変拍子だったりもして。逆にライブで既にやっている曲は、わりとストレートな曲が多いかな。

●「Thorn」は特に難しそうですね。

深沼:この曲もまだ1回も4人で合わせていないんですけど、めちゃくちゃ難しいんですよ。ライブで既にやっていた曲はわりとスパッとしたリズムが多かったので、逆にドロドロしたリズムのものが欲しいなと思って「Thorn」や「Speed of sound」を作りました。最近はEcho & the Bunnymenとか80年代後半の音楽を聴き直すことが多くて、そのへんのちょっとウェットなサウンドを志向しているんです。そういうサウンドの質感というところを今回は追求したところがありますね。

●逆に「On the beach」のアメリカ的なカラッとした質感も珍しいかなと。

深沼:僕もこれを聴いた時に「近藤さんがこんなアメリカっぽい曲を書くのは珍しいな」と思いました。

近藤:「このくらいのテンポの曲が欲しい」と言われたので、そのテンポを鳴らしながら作ったんですよ。ポップなものにしようと意識していたら、こういう曲になりました。コーラス部分ではみんなが一緒に声を出したりできそうな雰囲気があって、自分の中ではライブの終盤で盛り上がれる曲というイメージで作りましたね。

●ちなみにM-10「Far gone」に入っている女性の歌声はHisayoさん?

深沼:そうですね。前作でも少しだけ入っていたんですけど、ちょっとずつ増やしているんです(笑)。そういうことも含めて、色んなことができるバンドではあるんですよ。8年目になるんですけど、それぞれのメンバーが持っているポテンシャルにまだまだ興味が持てるというか。今はツインボーカルでやっているんですけど、Hisayoちゃんがもっと歌っても良いと思うから。

●メンバーそれぞれにまだ見せていない引き出しがあるのを感じている。

深沼:長くやっているんですけど、まだまだありそうですよね。そもそもGHEEEを始めた時は8年も続くと思っていなかったんです。しかもメンバーチェンジも1回もなくて。やっている側からすると、「メンバーチェンジなんてあるわけないよ。まだ始めたばかりなのに」っていう感じですけどね(笑)。

●まだ始めたばかりの感覚だと(笑)。

近藤:GHEEEはいつライブをやっても新鮮な感じがするんですよ。

深沼:良い意味で、ライブの時に安心できないバンドですからね(笑)。

●そういう意味でも、ツアーが楽しみなのでは?

近藤:ツアーではメンバーと一緒にいる時間が必然的に長くなるし、一緒に飲む機会も増えるので楽しみですね。ゆっくり話す時間もあるので、そういう中で深まっていく部分もあるんじゃないかな。

深沼:今までの月1で集まってやるライブとはまたちょっと違う、1本1本成長していく面白さがツアーにはあると思います。個々に会う機会は何かとあるんですけど、一堂に会することが少ないんですよ(笑)。4人集まったことがとりあえずうれしいっていう…そこから始まる感じですね。

Interview:IMAI

近藤智洋(Vo./G.)

近藤智洋(Vo./G.)

深沼元昭(Vo./G.)

深沼元昭(Vo./G.)

 

■インタビューその2

4th Album『QUAD』発売記念 Double A-side InterviewPart 2:Hisayo(Ba.) × YANA(Dr.)

「他にも自分の居場所があるということで、変な関係性にならないんですよね。もし誰かが“ここしかない!”という状況ならちょっと違うのかもしれないけど、みんなが変な気負いもなく良いバランスでGHEEEに向き合えていて」(Hisayo)

「ほど良い緊張感というのが活動を続ける上でのモチベーションになっているところもあって。GHEEEの場合は活動がピンポイントな感じになっているのが良いのかなと。点が線にもなっているけど、その点1つ1つに無駄がない」(YANA)

●今作までの3年の間にYANAさんはサポートドラマーとしてtokyo pinsalocks(以下ピンサロックス)も手伝うようになったんですよね。

YANA:ここ1年半くらいですね。元々、ピンサロックスは女の子3人組のガールズバンドだったので、サポートとはいえ俺みたいなオッサンが叩くのはちょっと意外な感じというか…(笑)。

Hisayo:いやいや(笑)。ドラムが休養に入った時に、これはもうYANAさんに頼むしかないという感じでした。ピンサロックスのレーベルオーナーの三浦(俊一)さんともつながりが深いし、NACANOで同期と合わせる音楽性をやっているところも近いし、ロックな感じの人だというのも知っているから。私が作った曲でYANAさんにドラムを叩いてもらうっていう、GHEEEとはまた違う不思議な関係性になって(笑)。

●GHEEEの時とは関係性も違う?

Hisayo:ピンサロックスでは色々とリクエストもさせてもらうんですけど、GHEEEだとお互いのプレイに関して何か言ったりすることは全くないんですよ。

YANA:深沼くんや近藤くんからドラムのテンポ感とかについて言われることはありますけど、Hisayoちゃんは基本的に何も言わないんですよね。

●そこは信頼して任せているというか。

YANA:GHEEEに関しては、お互いに暗黙の了解があって。たまに細かいニュアンスについて要望されるくらいで、それ以外は空気感的にみんなで合わせるポイントがわかっちゃうんですよ。今までも「今度はこうやっていこう」みたいな意志の伝達を具体的にされたことはないんですけど、着地するべきところがみんな何となくわかっていて。ミーティングがほとんどないのにまとまっちゃうという不思議なバンドですね。

●方向性を話し合ったりはしない。

YANA:そこに関してストレスがないのが不思議なんですよ。「もっと話し合いをしようよ」ということにもならないし、ある意味で安定しているというか。逆にピンサロックスではHisayoちゃんがしっかりリーダーシップを取って進めているので、そこのギャップは面白いですね。

Hisayo:ピンサロックスでは、私が仕切りまくっています(笑)。

●それぞれのバンドで立ち位置が違う。

YANA:ピンサロックスではコンポーザーだけど、GHEEEではベーシストとしてプレイに徹しているところはあるんじゃないかな。180度違うHisayoちゃんが見れたのは面白かったですね(笑)。

Hisayo:私としてはYANAさんがドラムを叩いてくれるというだけでも光栄なことなのに、サウンド全体のバランスを取る作業にも付き合ってもらったりして、すごく良い時間を過ごせています。

●GHEEEでも作曲者のリクエストに応えるという部分では近いものもあるのでは?

YANA:特に深沼くんの場合はデモの段階で完全にアレンジができあがっていることが多くて。GHEEEに限らず作曲者が考えてきたアレンジがあれば、僕はまず1回完コピするんですよ。余計なオリジナリティを入れたりせず、できる限り自分の中で消化して完璧にコピーする。そうすれば、まず世界観は壊れないから。ライブをやっていく中で「ここはもう少しこうしたほうがお客さんが盛り上がるかな」というところだけは若干変えたりしますけど。

●作曲者の世界観を維持することが第一だと。

YANA:逆に近藤くんの場合はラフスケッチみたいなデモが来るんですけど、リズムトラックがどんなに簡素なものでも他のみんなもそれを聴いているわけで、勝手に崩すと変になっちゃったりするから。

●ラフなデモだとしても、作曲者のイメージが読み取れるからこそというか。

YANA:でもバンドを始めて1〜2年では、それはできないんですよ。何年も続けていく中で、メンバーそれぞれの好みやツボみたいなものが見えてくるから。そこはどのバンドにも通じるところだと思います。

●Hisayoさんはどうですか?

Hisayo:今回はデモの段階でベースが全く入っていないということが、今までに比べて多くて。「ご自由にどうぞ」という感じだったんですよ。ベーシックになるものが入っている場合もあったんですけど、基本的には今までの流れでもう任せられているんだなというか。今までと一番違うところはそこで、今回は好き勝手に作らせてもらった感覚がありますね。

●ベースに関しては、今までで一番自由度が高かった。

Hisayo:今作を作るにあたっては、スタジオに入れる時間が本当に少なくて。レコーディング当日までは、デモだけでやりとりをしているような状況だったんです。送られて来たデモに私がベースを入れて、それを受けてもう1本ギターが入ったり、歌詞が決まった歌が入ったり…みたいなことをデモのやりとりだけでやっていましたね。スタジオには一緒に入っていないんですけど、曲ができあがっていく過程に参加したなという実感は今までよりもあるかな。

●そういうやり方は今までで初めてだったんですね。

Hisayo:前作『III』の時も何曲かはあったんですけど、今回はそういうパターンが多かったですね。初期は本当にガッツリ作り込まれたデモを渡されていたんですけど、最近はかなりラフな形でもらうことが増えました。深沼さんのデモで初めて、仮歌状態のものをもらったりして。

YANA:近藤くんも深沼くんも基本的にデモの段階で、歌詞までできていることが多いんですよ。だからレコーディング時のギリギリまで歌詞を書いているということは、ほとんどないんですよね。

●そのくらいスケジュール的にも厳しかった。

Hisayo:しかもレコーディングが終盤になるにつれて、変拍子が入ってたりして難解な曲が多かったんですよ。

YANA:ポストロックみたいにリズムが複雑な曲もあって。事前にみんなで音を合わせる時間もなくて、レコーディング当日にいきなり録るっていうものも4曲あったんです。それはもう時間との戦いでしたね。

●リハなしでいきなりレコーディングだったと。

YANA:とはいえ今作までに3年間あったので、7割くらいの曲は既にライブでも披露していたんですよ。そこでイメージできている曲もあったんですけど、あまりやっていない曲も全くおさらいできないまま録ることになっちゃったのは大変でしたね。

Hisayo:2日で12曲録ることになっていたので、後ろにこぼすこともできなかったんですよ。一度も触ったことがないものも4曲あるから、できるだけ1日目にたくさん録らなきゃいけないと思っていて。今までで一番、追い詰められました(笑)。

●ライブで新曲をやる時も当日いきなりだったりするんですか?

YANA:ライブでいきなり新曲はやれないので、そういう時は無理矢理にでもスケジュールを合わせて事前にリハーサルするようにはしていますね。

Hisayo:でも近藤さんはそういうのもいつか狙ってきそうな気がする…。ライブ前日にデモを送ってきて、「明日これをやろう」みたいな。近藤さんはソロの時によくそういうことをするので(笑)。

●あえてそういうことを仕掛けてくる(笑)。

Hisayo:近藤さんはたぶん、自分自身でも完成形のイメージが見えてないまま、デモを渡したりするんですよ。私も近藤さんのソロのバンド(近藤智洋&ザ・バンディッツ・リベレーション)で一緒にやるようになって、「これはバンドにお任せなんだろうな」というのがわかるようになってきて(笑)。でもそうやって任されるのも、信頼関係があるからこそなのかなと。

●信頼関係は深まりつつ、長く活動してくる中で関係性が悪くなったりすることはないんですか?

YANA:全くストレスがないですね。

Hisayo:不思議なくらい、平和なんですよ。音とはうらはらに、他のどこよりものほほんとしています(笑)。

●のほほんとしているんだ(笑)。

Hisayo:みなさん、大人だからかな?

YANA:そうかもしれない。10代から一緒にやっているようなバンドだと友だち意識も強い分、お互いに言いたいことや文句が出たりして軋轢も生まれると思うんですよ。そういう点でGHEEEはそれぞれがオリジナルバンドを経験してきているのもあって、お互いをリスペクトし合って集まっているから。

●お互いへのリスペクトが大きい。

Hisayo:お互いを尊重し合っていますね。

YANA:その上で一緒にやっているので、他のメンバーに文句やストレスもないし、逆に「(一緒にやってくれて)ありがとうございます」というくらいの感じなんですよ(笑)。

●それぞれにキャリアを積んできているからこそというか。

Hisayo:あとは他にも自分の居場所があるということで、変な関係性にならないんですよね。もし誰かが「ここしかない!」という状況ならちょっと違うのかもしれないけど、みんなが変な気負いもなく良いバランスでGHEEEに向き合えていて。

YANA:たとえばボーカルとギターの仲がすごく悪いとか、ビッグネームでもよくある話じゃないですか。ある意味ではバンドの醍醐味でもあるんだけど、そういうのは全くない(笑)。

●仲が悪ければ売れるわけでもないですからね(笑)。

Hisayo:かといって、仲が良すぎてベタベタしているわけでもない。ちゃんと距離感も保てていて、良い関係なんですよね。

YANA:ナアナアになりすぎない、ほど良い緊張感というのが活動を続ける上でのモチベーションになっているところもあって。ルーティン化していたり、ずっとツアーをやっていたりすると中だるみもするかもしれないけど、GHEEEの場合は活動がピンポイントな感じになっているのが良いのかなと。点が線にもなっているけど、その点1つ1つに無駄がないというか。

●月に1回のペースだとしても、そこに凝縮されている。

YANA:まず無駄がないというのと、それぞれに他のバンドもやっているのでプレイにブランクがないというのもあると思うんですよ。4人でいざ合わせるとなった時にリハビリがいらないというか。リハでも2回合わせれば、もう良い感じになっちゃうんです。

●そうやって活動を続ける中で、新譜を作りたいという気持ちも自然と湧いてくるものなんでしょうか?

Hisayo:今作に関しては「出すなら今年だろうな」という感覚はあったので、そろそろレコーディングしたいという欲はありましたね。

YANA:「ぼちぼちかな」という感覚もみんな一緒だと思います。次はいつ出すかというのも、イメージ的にはみんな持っていると思うんですよ。もしかしたら「来年に出そう」という感覚にみんながなれば、自ずとそうなるだろうから。

●今作を作り上げて、バンドとしての進化も感じている?

Hisayo:GHEEEのコンセプトというのは最初から変わらないと思うんですけど、個人的には同じような作品にはしたくないなと思っていて。だから作品ごとにベースのアプローチの仕方も変えようと挑戦していたり、衣装もちょっと雰囲気を変えるようにはしているんです。もちろんこの3年で自分が成長しているところも出したいし、「一味違うな」っていうところは見せたいから。

●それが結果的にバンドの進化にもつながるわけですよね。

Hisayo:GHEEEを始めた頃はメンバーの中で私が一番キャリアが浅かったけど、この3年で状況も変わってきているから。a flood of circleのメンバーとしても注目されるようになって、その私が弾いているというところでさらにできることがあれば良いなと思っていたんですよ。今のGHEEEに私がどう貢献できるかということを考えながら、今回は取り組みましたね。

YANA:この3年間でそれぞれに新しい活動を始めたりとめまぐるしかった中でできた作品なので、無意識的な“すごさ”みたいなのは出ている気がして。サウンドの重量感や太さに、自然と拍車がかかっているんじゃないかなと思います。

Interview:IMAI

Hisayo(Ba.)

Hisayo(Ba.)

YANA(Dr.)

YANA(Dr.)

 

 

 

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