音楽メディア・フリーマガジン

strange world’s end

深く、鋭く。 その音の塊は 心の影をえぐり取る。

アーティスト結成以来、初期衝動を前面に押し出したシンプルかつ強烈なメッセージで社会の闇を抽出し続けるstrange world's end。VJ、コンテンポラリーダンスとコラボした自主企画イベントを成功させ、さらなる進化をはたした彼らが感情を爆発させた衝撃作『君が死んでも、世界は別に変わらない。』をリリース。今回はバンドの成り立ちから見えた、彼らの意外な一面に焦点をあてて迫った。

 

 

●もともとVo./G.飯田さんのソロプロジェクトだったんですよね。

飯田:2006年の時はそうですね。2007年には3ピースバンドになったんです。その後はメンバーが変わったりして、Ba.平がドラムを叩いたりもしていました。

●平さんはドラマーだったんですか?

飯田:もともとはベーシストなんですけど、ドラムが辞めてしまった時に「メンバーが1人抜けるんだけど…ドラム叩かない?」って平に電話をしたら「良いよ」って(笑)。

●すごい決断力ですね。

飯田:返事は即答でした。それから2012年でベースが辞めてしまったので、平はもともとやっていたベースに戻り、違うバンドでギターボーカルをやっていた関根くんがドラムで入るという…(笑)。

●ベース、ギターからドラムってけっこう勇気の要るパートチェンジだと思うんですけど…。

関根:ちょうど僕がやっていたバンドも活動休止状態になって。その時に「何か面白いことしたいな」って思ったんです。もともと飯田くんの曲が好きだったし、ドラムが抜けたって話も聞いていて、活動が止まってほしくなかったっていうのあって「ちょっとドラムをやらせて貰えないかな」と。

●その前は、バンド活動自体が危ぶまれていた?

飯田:サポートドラムを入れてライブを続けた時期はあったんです。ドラマーだから当然上手いんですけど、バンド内のケミストリーというか、信頼や空気感で保っていたところがあって、だからテクニック的にちゃんと成り立っても「何か違うな」と思ったんです。

●関根さんはドラムに転身したてで上手くいったんですか?

飯田:上手いというわけではないけど、すごく息が合ったんですよ。2〜3回目のライブは痛い目にあいましたけど、その後横浜で演った時に「完全にハマったな」っていうライブができたんです。

●関根さん自身はそうやっていく中で「ギターなら上手く行くのに…」とか思わなかった?

関根:そういうことは入るって決めた時に捨てたので、まずは「ドラマーとしての関根」を何とか認めさせようと。

●逆にギタリストとして飯田さんに思うことがあったりしない?

関根:ないです。もともと「飯田くんが居ての僕」っていう前提があるので。自分がギターボーカルをやった時に「こんなことをやられたら嫌だな」みたいなことはやらないようにしています。

●バンドを組む上で、技術よりも人間的な信頼や相性に重きを置いている。

飯田:楽器の演奏が上手ければベストですけど、やっぱりバンドってそれだけじゃないので。仕事でもなければ、好きでやっていることだけど遊びでもない。

●『君が死んでも、世界は別に変わらない。』を聴いていて、Nirvanaのような初期衝動的なものを強く感じるんですけど、そういうところがルーツにある?

飯田:Nirvanaが好きで出会っているのもあるし、初期衝動が好きなんですよね。なので、どう自分を追い込んで初期衝動感を出すかっていうことを結構考えたりします。今で言うと彼(関根)がドラムになるのもある意味、初期衝動なんですよ。それをずっと保てているのは、常にそういうテンションで音楽に向かっているからなのかなと。

●歌詞の世界観も衝動的というか、闇の部分を全力で絞り出す感じというか。

飯田:全力で絞り出しています(笑)。

●今作はM-1「窒息」からM-7「うつくしい」を通して、一貫してダウナーな印象なんですけど、最終的に“美しい”で終わるじゃないですか。それが虚を突く感じで際立って聴こえるんですよね。

飯田:最後の“美しい”って言っている部分は、M-2「破滅の庭」の“今すぐお前殺してやるよ”というのもありつつ、M-6「屍」で“せめてもう一度君に会いたかった”っていう部分があったりする、いろんな感情がある人間だからこその美しさなんですよね。それをアルバムの締めとして持ってくることで、“汚れている部分も、憎しみとかも全部含めて人間は存在している”と。

●飯田さんのTwitterを見ていたら「チューリップが今日ついに花を咲かせた。嬉しいね。忙殺される中、一時の安堵」と書かれていて。そういう感覚が歌詞に繋がっていたりする?

飯田:自分の住まいがテラスハウスで、小さい庭があるんです。そこで植物を育てているんですけど、プランターの中にも、虫や植物の小さな生死があるわけですよ。そういう身近に生と死を感じるって、自分のやっている音楽にも良いなと思って。

●生と死がたまたま、ふっと見える瞬間があると。

飯田:自分も生きているっていうことを身近で感じることができる。生きているからこその美しさってすごくたくさんあるし、花が咲くとめちゃくちゃ嬉しいんですよ。咲いてすぐの花って、花屋で売っているものよりも格段に良いんです。それはすぐに枯れてしまうんですけど、やっぱり「生きている」もの、飾りではないものがあるというのがすごく良い。枯れてしまうものの美しさは最高に綺麗だと思います。

●そういう心を持っているからこそ出る、闇の部分に聴き手は共感を得るのかもしれないですね。

飯田:そうですね。だから俺は、メッセージを薄めてはダメだと思っていて。自分のことを歌うことによって、人が「自分のことを歌ってくれているようだ」と思ってくれたら。そういう意味で生活に寄り添うような音楽になれたら良いなと思っています。

Interview:馬渡司
Assistant:森下恭子

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