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ミソッカス

あんかけスパ、小倉マーガリン…。独自のミックス文化圏ナゴヤが生み出した新たな混沌(カオス)。

ミソアー写ロゴなし2006年の活動開始から、独特なミックス文化を生み出す名古屋においても異彩を放つ“ミソッカス”。去年リリースされた音源はタワーレコード限定販売ながらオリコン週間インディーズチャートにランクインし、SUMMER SONIC、OTODAMA'14 〜ヤングライオン編〜への出演を果たすなど、加速する勢いは止まらない。そんな彼らがステージで着ていた和装を脱ぎ捨て、バンド名もカタカナ表記に変え“新生ミソッカス”としてミニアルバム『統一された混沌(カオス)』をリリースする。個性あふれるグッドメロディーな楽曲はそのままに、大胆に切り込んだ歌詞や新たな試みが詰め込まれた本作。彼らのホーム、名古屋の老舗喫茶店で作品に込めた思いを訊いた。

曲として聴かせる部分を他のメンバーが補ってくれるんですけど、その補ってくれた部分が奇抜すぎて独特なサウンドになっていった気がします

●ミソッカスが今までリリースしたアルバムが『三次元からの離脱』(1stミニアルバム)、『異次元からの来訪者』(2ndミニアルバム)、『三次元への回帰』(3rdミニアルバム)というタイトルで、ネーミングにこだわりを感じるんですが、どういう意味合いで名付けたんですか?

はるきち:ミソッカスの音楽はちょっと現実から離れたところにあるものだと思っていて、僕らの音楽を聴いて、空想の世界に飛んでいってほしいっていう気持ちがあったんです。前作までのアルバムはそういう意味合いを込めて、3部作として『三次元からの離脱』、『異次元からの来訪者』、『三次元への回帰』と名付けました。

●去年、メンバーチェンジを経たわけですが、方向性に迷いは出なかった?

はるきち:むしろジャンボリー加藤が加入したことによって、ひとつになりました。

●方向が定まったと。

はるきち:『異次元からの来訪者』の時はできた曲をそのまま詰め込んだ感じだったんですけど『三次元への回帰』に関しては「ライブでこの曲をどうやって観せていこう?」、「ライブでお客さんに楽しんでもらうためにどんなアレンジにしよう?」とか、そういったところを踏まえて曲を作ったんです。

ノブリル:『三次元への回帰』は目的を持って作れたと思います。

●『統一された混沌(カオス)』というタイトルですが、この由来はなんですか?

はるきち:混沌(カオス)と統一という真逆の意味の言葉を並べて「ん?」ってなる矛盾感を入れたかったんですよね。前作までが3部作として完結したので、今度は全然違うところから攻めていこうと『統一された混沌(カオス)』と名付けたんです。

●今回から和装を脱ぎ、バンド表記も変えられましたね。

ノブリル:例えばYouTubeのサムネイル画像に和装で“みそっかす”っていう動画があったら、特定の人は見なくなっちゃうし聴く時も何かイメージを持って聴いちゃうと思うんです。最初は奇をてらったことがしたくて和装でライブをしていたんですけど、それがどうしても邪魔になってきたんですよね。

●今までやってきた上で、和装じゃなくてもいいと思った?

はるきち:今回の『統一された混沌(カオス)』はメッセージを込めた歌詞が多かったので、それを考えたら和装がメッセージを邪魔をしてしまう気がしたんです。

●今作のアルバムの中で一番メッセージを込めた曲どれですか?

ノブリル:バンドとしてメッセージを込めたのが、M-1「マッドシュリンプス」だと思います。

●この曲はけっこう切り込んだ内容の歌詞になっていますね。

はるきち:この曲はいろいろ際どい部分を突いていて、捉え方によっては「コイツ何考えてるんだ?」って批判的に見られちゃうところはありますね。まず、この曲を作った時に「雰囲気がRADWIMPSの曲に似ているな」って自分らも思ったんです。いつもならそこでその曲をボツにするんですけど、今回は似ていることを逆手に取れないかなと思ったんですよ。それを承知でオリジナリティを追求してやろうと。

●発想を変えて、それを武器にしようと。

はるきち:そうやって似せていった上で、歌詞でオリジナリティについて歌おうというコンセプトをメンバーに伝えてからで曲作りを始めたんです。「マッドシュリンプス」というタイトルは狂ったエビという意味で、曲中の苦悩に満ちた作曲者のことを表しました。それとは別にRADWIMPSに掛けて名付けた部分もあって「マッドシュリンプス」とRADWIMPSって響きは似ているけど、意味は全然別物。「表面上は似ているかもしれないけど、中身は全然別物なんだぞ」という意味を込めてこのタイトルにしました。

●内容的にもシニカルな目線で見ている部分があるというか。

はるきち:もともとひねくれているところがあるからなんだろうとは思います。

●そういう目線で見ちゃって「〇〇に似てる」みたいに思って、そこで起こった葛藤が曲になっていく?

はるきち:そうですね。

●じゃあ「マッドシュリンプス」は、はるきちさんの葛藤そのもの?

はるきち:そのまま書いた感じです。僕にしては、すごくストレートな歌詞が書けたなと思います。

●それは何かきっかけがあったんですか?

はるきち:ノブリルが作詞作曲をした「アメリカと中国と静岡」(1stシングル 2013年5月リリース)っていう曲があるんですけど、その曲がすごく評判が良かったんですよ。「いろいろな故郷を持ちながら今ここにいて、みんな同じ月を眺めているんだよ」っていう内容の歌詞で、それが心に染みる内容だったんですよね。後で「悔しいな…。なんでこんなに評判が良いんだろう」って聴き直した時に、自分が作ってきたものとは「歌詞が違うのかな?」と思ったんです。聴いている人も人間だし、その人の人生の糧になるようなことを歌うことが良いのかなと。

●そこで違うタイプの歌詞を書いてみようと思ったと。

はるきち:僕の今まで書いてきた歌詞は物語を描いたものが多くて。その物語の主人公になりきってしまえば何かを感じると思うんですけど、まず主人公にならないといけないっていうところでひとつ壁があったんだろうなと。それで「俺もこういう歌詞を書いてみようかな」って今までとは違う歌詞のスタイルに挑戦した曲が「マッドシュリンプス」だったんです。

●今までは所謂アーティスティックな歌詞が多かった?

はるきち:そうですね。生活には全くリンクしないけど、主人公になりきったら共感できる歌詞というか。M-6「幻のオ・ト・コ」はそういう今までのテイストで書きました。今作みたいにいろんなテイストの歌詞がある中で「幻のオ・ト・コ」があるとスパイスになって良いと思うんですけど、今までは全部こんな感じだったんです。

ノブリル:空想の世界に飛びっぱなしでしたからね。

はるきち:昔は歌詞について褒められたことはなかったんですけど、今作は「歌詞が良いね」って褒めてもらえたりします。

●歌詞がストレートになった分、より身近になったと。

ノブリル:せめて歌詞だけは分かりやすくしないとって思うんですよ。

はるきち:この変化がリスナーにも届いてくれたらすごく嬉しいですね。

●元々どういう音楽を聴いて育ったんですか?

はるきち:90年代の安室奈美恵や鈴木亜美とか小室ファミリーの音楽です。あとは当時ヒットチャートを賑わしていたB'zやミスチルとか…。そういう王道なところを聴いていて、僕らはそういうJ-POPにすごく影響を受けてきましたね。

●ルーツはJ-POPなんですね。

はるきち:それで、ある時から純粋にメロディが良いなと思ってジャニーズを聴くようになったんですよ。ジャニーズの曲って、歌い手の負担にならないようにすごく自然に転調させる曲が多いんです。メロディはすごく自然で良いんだけど、音楽的に紐解いていくとコード進行に実は違和感があったりするんですよね。

●巧みで職人的な曲作りをしているというか。

はるきち:はい。当時は楽器のことは全然分からなくて、ただ純粋に曲が良いと思って聴いていたんですけど、今思うとジャニーズの音楽に惹かれていたのはそういうところなのかなって思います。

●ミソッカスの作曲は、はるきちさんが担当しているんですか?

はるきち:もともと僕がほとんどの曲を書いていて、前作くらいからノブリルが少しずつ作曲に加わってきたんです。今作からレーベルが付いて、締め切りというものができたんですけど、僕は筆が遅くて(笑)。最初の2曲を作った段階で1人でアルバムを作ることを断念して、そこからはノブリルと2人で1曲ずつ交代で作っていきました。

●今作から本格的にノブリルさんも作曲に加わったんですね。

ノブリル:かえってそれがお互いの刺激になって、上手い具合にいきましたね。

●アルバムを通して曲中の展開に和メロのラウドロックなアレンジから、笑いの要素まであったりして。このいろんなものが混ざっている感じが名古屋らしいというか、独特な混ざり方だなと感じるんですよね。

はるきち:ノブリルやマイケルTHEドリーム(Key.)の作るフレーズは何か和っぽいものが多いんですよ。奇抜な混ざり方で、どうも特殊みたいですね。

●日本人としてのオリジナリティみたいなところを意識している?

ノブリル:そこは意識していますね。M-3「お願いGOD」は特に意識しました。

はるきち:僕らはみんな、ペンタトニック・スケールを追いかけるダサさみたいなものが好きなんです(笑)。

●曲のアレンジはみんなでやっているんですか?

はるきち:そうですね。ワンマンでやっている感じはないです。僕が1人で作ってもミソッカスのサウンドにはならないと思います。

ノブリル:意外と現場での閃きの方が多いんですよね。

はるきち:その場で想像して出てきたものを加えていくんですよ。アレンジに関してはマイケルTHEドリームとブルマン藤井(Ba./Cho.)がよくアイデアを出してくれますね。

●メンバーのアイデアが混ざったものがミソッカスのサウンドになると。

はるきち:ボーカルがワンマンで引っ張っていくっていう形にすごく憧れがあったんですけれども、僕がバンドを組んだら意外とワンマンでは上手くいかなかったんです(笑)。それで、逆に「混ぜてみた方が面白い」って思ったんですよね。元々僕は曲の展開やキメを作るっていうところに全く執着がないんです。それを曲として聴かせる部分を他のメンバーが補ってくれるんですけど、その補ってくれた部分が奇抜すぎて(笑)。それでこういう独特なサウンドになっていった気がします。

●M-8「太陽の塔」は今までとは違ってストレートな曲ですよね。こういう試みをしようっていう気持ちはあったんですか?

はるきち:昔から「太陽の塔」みたいな曲はあってもいいんじゃないかと思っていたけど、今までは着物を着てライブをやっていたり、派手なパフォーマンスが前面に押し出されているイメージがあって、なかなかこういう曲がやり辛かったんですよね。ちょうどバンド名もカタカナになって、着物を脱いだっていうタイミングだったので「これはもうガチンコのバラードで行こう!」と。

●これからの方向性として「太陽の塔」みたいなストレートな曲をやっていこうって考えている?

はるきち:「太陽の塔」の方向がメインにはならないと思います。いつもは変化球な曲をやって、たまにこういうストレートな曲を投げる、みたいな。

ノブリル:「たまに本気なことを言うから、そういう時はしっかり聞いてよ!」くらいの感じですね(笑)。

●今後はどういうことをやっていきたいですか?

ノブリル:これからもずっと曲を作り続けていくだろうから、5年後10年後も聴けるような曲を作っていきたいです。

はるきち:曲にしろ、ライブにしろ、ただやりたいからやるとか、作りたいから作るんじゃなくて、ひとつひとつに意味のあることをやっていきたいなと思います。

Interview:馬渡司

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