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ROTTENGRAFFTY

静かなる狂気の表現者 KAZUOMI 単独インタビュー

PHOTO_KAZUOMI2013年6月にキャリアの集大成といえる5thアルバム『Walk』をリリースし、2014年4月までのリリースツアーを大成功させたROTTENGRAFFTY。ツアー終了後も間髪入れずにシングル+DVD『世界の終わり』を完成させ、そしてワンマン公演を含む15周年記念ツアーと過去最大規模での“ポルノ超特急2014”の開催を発表した彼らは、飛ぶ鳥を落とす勢いのまま貪欲なまでに成長し続けているロックの体現者。なぜ彼らが響かせるサウンドは強く感情を揺さぶり、彼らが発する言葉は深く胸に突き刺さるのか。今月号では、バンドの作曲、作詞、プロデュース、サウンド面を一手に担い、ステージでは修羅のごとく感情を溢れさせるG./Programming.KAZUOMIの単独インタビューを敢行。静かなる狂気の表現者に15年の想いを訊いた。

 

 

 

 

 

INTERVIEW #1

「あの2人に歌わせるんだったらやっぱり日本語がいちばんいいし、日本語で歌わせることがあいつらをいちばん光らせると思ってる。その中でロックもラウドなこともしたい」

●アルバム『Walk』の取材のとき、楽曲「Walk」についてKAZUOMIくんは「この曲が完成できなかったらアルバムを出すつもりはなかった」とおっしゃっていましたよね。

KAZUOMI:そうですね。更に言うと、あの楽曲ができていなかったらそんなことは思いもしなかったでしょうね。制作中というより、アルバムを作ろうと思って曲を作りためているときに「マンダーラ」(3rdシングル及び3rdアルバム『This World』収録)の第二章を作ろうと思い立ったんです。で、そういう手応えのある曲がパッとできたから、これは歌詞をしっかり作らないとダメだと思って。

●自分たちにとって大切な曲になるだろうという手応えがあった。

KAZUOMI:はい。それまで、僕が唯一このバンドで“できた!”と奇跡的な達成感を得られたのは「マンダーラ」が唯一だと思う。その「マンダーラ」を世に出した頃から数枚のアルバムを出し幾度とツアーを回り経験を重ねた自分が、その第二章である「Walk」を形にできないのであればアルバムを出す意味はないと思ったんです。

●「マンダーラ」を作ったのは、所属レーベルから離れてバンドだけで活動していた時期ですよね。

KAZUOMI:そうです。「THIS WORLD」(3rd アルバム『This World』収録)も同じ時期に作ったんですけど、あの頃は音源を出してくれるレーベルも見つからず、メンバーの心がバンドから離れていっていたんです。言葉にしていたわけではないんですけど、行動や熱量で見えるんですよね。ハッキリと。ずっとレーベルが見つからない状況。だからその状況をなんとかするために“メンバーに自信を持たせる曲を書くしかない”と思って「マンダーラ」と「THIS WORLD」を作ったんです。

●はい。

KAZUOMI:あり得ない程の熱量をメンバーに伝えて“俺らはいける! やれる!”って言ってやらなかったらバンドが崩壊すると思ってた。それくらいの曲ができなかったら僕はこのバンドを辞めていたかも知れない。

●話には聞いていましたけど、かなりギリギリの状況だったんですね。そんな時期にモチベーションとなった「マンダーラ」の第二章が「Walk」だったと。

KAZUOMI:第二章になるという確信と共に「Walk」の楽曲ができたんですけど、それに歌詞を乗せて僕の描いたビジョンをキチンと完成させることができなかったらダメだと。デビューからずっと続いていることなんだと思う。力不足の僕らが初めて音源を出して、色んな人に手伝ってもらったけど、上手いこといかない僕らの人間性やいろんなことがあって、またレーベルがなくなって…そういうことが全部繋がっているというか。成長する過程とか今まで得たものとかを全部『Walk』に集約したかったんです。言ってみれば、僕たちの今までのベストみたいな作品にしたかった。だから楽曲「Walk」が完成しなかったらアルバムを出す意味がないと思ったんです。

●ツアーで「Walk」を聴いたとき、メンバーも観客も、全員が同じような気持ちになった感覚があったんです。ROTTENGRAFFTYらしさみたいなもの…すごく不器用だけどピュアで真っ直ぐな内面や人柄が曲から伝わってきて、グッときたんですよね。

KAZUOMI:自分で言うのもなんですが、僕らはめちゃめちゃピュアなんですよ(笑)。「Walk」は僕から発信したものかもしれないけど、メンバー全員と言うかROTTENGRAFFTYに共通した言葉を選んだし、これだけ一緒にやっているから“運命共同体”みたいな気持ちはわかっているつもりだし。わかっていない部分ももちろんあるけど、このバンドに於いては向かうところが一緒やから、作曲者・作詞者はそういうところも全部背負って楽曲を書けたらいいなと。

●そういう作曲者・作詞者としての自覚というか責任感は「マンダーラ」のときに初めて芽生えたんですか?

KAZUOMI:たぶん。本当に“このままだったら無理だ”と思ったから。地獄だったんです。だからこいつらの気持ちをなんとかしたい。例え音源を出せなくてもライブができるから、“ライブでやったら絶対にイケる!”とメンバーが自信を持てるような楽曲がまずは必要だと考えていました。

●なるほど。今回6/11にシングル+DVD『世界の終わり』がリリースとなりましたけど、それほどの想いが詰まったアルバムの次に出すシングルというのは、バンドが次に進む方向を指し示す側面もあると思うんです。そういう意味でのプレッシャーはなかったんでしょうか?

KAZUOMI:ものすごくありましたし、すごく勇気がいる。曲を作るプレッシャーは他のメンバーには理解できないと思う。それに制作の時間もなかったから。今回の曲を作りはじめたのは『Walk』のツアーが終わる頃だったんですけど、精魂が尽きるほどの想いでツアーをまわったからこそ、それを噛み締めることもなく次の作品を出すのは嫌やって言うメンバーも実際に居たんです。だから曲を作る立場としては、時間がない中でこのバンドが求めているものをお前は出せるのか? っていう、自問にも似た挑戦でした。そこをポジティブに、逆に時間がないからこそソリッドなものが出てくるんじゃないかとも考えて。

●今回の2曲が生まれたきっかけはどういうところだったんですか?

KAZUOMI:3rdアルバム『This World』からコンスタントに音源を出せるようになったからこそ、“ライブで欲しい”という感覚が僕の曲作りのスタートではあると思います。うんやっぱりライブ。今はね。今回の2曲もツアーで“次はこんな曲が欲しいな”と思ったところから作り始めたんです。どのバンドも規模にかかわらず“自分たちにとってのヒットソング”ってあると思うんですよ。特にリスナーは、新しく発表する作品に対してもそういうものを求めると思うんです。

●確かに。

KAZUOMI:僕ね、それは無理やと思うんです。同じような曲は確信がないと作れないから。「マンダーラ」の第二章として作ることができた「Walk」だけは既発曲と同じようなイメージで作ったんですけど、それ以外は無理かな。例えば僕ら、「金色グラフティー」(Single&Best Album『GOLD』、5th Album『Walk』収録)はすごく色んな人に聴いてもらえるきっかけになった楽曲だと思うんですけど、新しい作品にあれを望んでいる人はすごく多いと思うんです。でも同じようなイメージの楽曲を作ったとしても僕自信は全然テンションが上がらないし、バンドのモチベーションもいい方向に向くとは思わない。自分たちのライブを客観的に捉えたとき、既にあるもの以外が欲しくなるというか。

●曲を作るときはライブの景色をイメージするんですか?

KAZUOMI:そうですね。その上で僕が「世界の終わり」でやろうとしたことは、ラウドロックではなくて歌謡ロックなんです。“歌謡ロック”というと若い子たちはダサいと思うかもしれないけど、僕は全然そうは思っていなくて。

●ROTTENGRAFFTYは昔からそういう要素を持っていますよね。

KAZUOMI:そうですね。僕はそれがこのバンドの個性なのかなと思っていて、今回はそこを前面に押し出した楽曲を作ろうと思ったんです。このバンドであの2人(NOBUYA、N∀OKI)に歌わせるんだったらやっぱり日本語がいちばんいいし、日本語で歌わせることがあいつらを光らせると思ってる。その中でロックもラウドなこともしたい…それをそのまま形にした感じですね。

●確かに「世界の終わり」はラウドですけど、歌に焦点が当たっていますよね。

KAZUOMI:メロディを作るとき必ずあの2人が歌うことを前提にしているし。本来は…何がバンドの本来かはわからないけど…ヴォーカリストが曲と歌詞を書く場合は作り手のビジョンと演者のビジョンが直結しているからいちばん伝わると思うんです。でもROTTENGRAFFTYはギタリストの僕がそのビジョン作っているから、作るときにいちばん最初にイメージするのはヴォーカル2人の声。“こいつらやったらこういう風に歌うやろうな”っていうところを思い浮かべるんですけど、日本に従来あるメロディとか歌いまわしってあいつらにめっちゃハマるんですよ。

●ああ〜、わかる。

KAZUOMI:僕もそういう音楽がめちゃめちゃ好きやし。1990年代〜2000年代のJ-POPもすごく好きやけど、もっと前の歌謡曲もすごく好きなんです。自分が小学生の頃あの辺の音楽に影響を受けていると気づいたのは、20代後半になってからですね。

●あ、そうなんですか。個性を自覚したのは20代後半になってから。

KAZUOMI:10代の楽器を持ち始めた頃というのは楽器を上手く弾けるようになりたいって事もあったりしてメタルなどテクニックが上達する様な音楽もよく聴いたんです。その当時は重いもの以外は音楽と思っていなかったし、今考えても凄く閉鎖的な生き方をしていたと思うんです。その中で好きなものが年齢を重ねるごとに増えてはいくんですけど、閉鎖的な感じだと全然もの作りとしてのスキルが上がらへんなと思ったんです。そういう流れの中で“もっと感動するものを作りたい”と思ったとき、楽器を始める前の好きだった音楽や、家族と一緒に聴いていたものが脳に焼き付いていて、自然に出てきたというか。僕の中で、ROTTENGRAFFTYの2人のヴォーカルが持っている個性とそこは結び付いたんですよね。

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INTERVIEW #2

「もし明日が世界の終わりだったら不安だらけだし、でもその中でも“今を懸命に生きる”というところに意味を持たせたかったというか。強い人間を演じてこの曲を完成させるのは嫌だった」

●「世界の終わり」の作詞はKAZUOMIくんとNOBUYAくんとN∀OKIくん3人のクレジットになっていますけど、曲によって作詞の担当はバラバラですよね。歌詞を誰が書くかはどうやって決めているんですか?

KAZUOMI:発端となるキーワードを持ってきた人が担当する事は多いですが。「世界の終わり」の場合は、楽曲ができた段階でN∀OKIが持っている言葉のパンチ力や発想力が欲しいと思って、N∀OKIに「歌詞を書いてきて」と言ったんです。それで持ってきた歌詞を歌入れしてみたんですけど、それが全然よくなくて。そこから1〜2回書き直したと思います。その中に“もし明日が世界の終わりならば”というフレーズがあって、「あ! これきた!」と思ったんです。

●お、なるほど。

KAZUOMI:そのフレーズから僕が“もし明日が世界の終わりだったらどうしよう?”と考えて、構成や展開を付け足していったという感じなんです。2人が持ってきた歌詞の構成を僕が作ったり、構成が繋がるように書き直すことが多いですね。

●発端はN∀OKIくんが持ってきたフレーズだったと。

KAZUOMI:そうですね。ピンときたというか、「これ!」って思ったんです。

●“もし明日が世界の終わりならば”という意識は、音楽を作ったりライブをする上ですごく大切なモチベーションになると思うんです。更に、この曲の歌詞に“もし今全てが消えてゆくならば/この歌を道連れに…”とありますけど、このフレーズに込められた想いはKAZUOMIくん自身のパーソナルな想いでもあるのかなと想像したんですよね。

KAZUOMI:そうですね。この曲に関しては、バンドと自分自身がすごく融合してると思う。特に“この歌を道連れに”という部分と“過去も未来も無意味だというの?”という部分は僕が書いた詞なのですが、僕自身が生きていく中で感じるパーソナルな感情とすごくリンクしていて。僕はたぶんネガティブ寄りな人間なんですね。

●それは見ていてわかります(笑)。

KAZUOMI:そういう自分の気持ちそのままで書いたんで。実は歌入れの時、N∀OKIが「“過去も未来も無意味だというの?”って俺っぽいかな?」と僕に訊いてきたんです。僕は「そういうこと思ってるやろ? そういう気持ちも隠さずに歌って欲しい」と言って。「強がりな人間やからこういうこと言いそうにないけど、逆にそういう感情を知ることができたらグッとくる」と。

●そうだったのか。

KAZUOMI:2番のサビ、NOBUYAのパートの歌詞はほぼ僕が書いているんですけど、あの2人って「こうだ!」とか「人生をこう生きろ!」と言い切る傾向があるんです。それがあいつらの強みだし、すごくいいところでもあるんですけど、この曲に関してはそういうスタンスは違うと思ったんですよね。実際にもし明日が世界の終わりだったら不安だらけだし、でもその中でも“今を懸命に生きる”というところに意味を持たせたかったというか。強い人間を演じてこの曲を完成させるのは嫌だったんです。

●もっと生々しく。

KAZUOMI:生々しく。どんな人間でも色んなことを考えるし、強さも弱さもあるから、そういう想いを2人に歌わせたいと思って歌詞を作っていったんです。

●今までKAZUOMIくんはバンドのサウンド面を担当していると思っていたんですけど、今の話からするとサウンド面はもちろん、バンドのマインドの部分を作り上げている気がするんですよね。それも、1人でマインドを全部作っているわけじゃなくて、メンバーの気持ちを汲み取って楽曲を作っているというか。

KAZUOMI:そうですね。今から思えば昔は僕、何も考えれてなかった。曲しか書いてなかった。あの頃の僕はほんまにアホで。ものを作るということも、ただ遊び感覚で“こういう曲を作ったから詞を乗せたら?”みたいな感じでバンドメンバーに渡していて。分担しすぎていたんですよね。

●はい。

KAZUOMI:でもね、作れば作るほど、そんなことでは曲は完成しないということにどんどん気づいていって。それがハッキリと変わったのはアルバム『This World』からかな? 「この感情を出してほしい」とか「こういう想いで歌ってほしい」とか、僕が歌詞を書いていない曲にしても「ここは断言してくれよ」とか。曲にはストーリーがあるし、そのストーリーと歌詞のストーリーがリンクしたときの奇跡ってめっちゃあるから、そういう部分を『This World』以降はずっと意識している感じです。変わりましたね。

●今のROTTENGRAFFTYが愛されるのは、そういう部分が大きいと思うんです。僕は10年以上前から知ってますけど、昔のROTTENGRAFFTYは“他のどこにもない変わった音楽をやっているバンド”という印象だったんです。ゴツゴツとした歪な個性がかっこよさに繋がっているというか。でも今は、そこもひっくるめての人間性が音楽から伝わってくる。単に珍しいのではなくて、他にない音楽を作るのは5人の人間性があってこそという。

KAZUOMI:なんか今から考えると、どん底やった時期を経てもう1回音源を出せるようになって、ツアーをまわれるようになった時の気持ちがすごくよかったんかなって思います。昔の僕はミュージシャンになりたかったけど、今はバンドマンになりたいと思っているという違いなのかな。

●ああ〜、わかる。

KAZUOMI:バンドマンってやっぱり人と会うから、出会う人たちの気持ちを知りたいし、今の自分の気持ちを伝えたいと思う。そういう曲じゃないともう無理ですね。そこの気持ちがないライブは全然感動しないですもん。

●演奏会では感動しないと。

KAZUOMI:うん。僕らのライブバンドとしての強みって、ライブハウスをまわってすごく近い距離で、人と感情で会話できるようなところだと思うんです。そういうものを、ライブだけじゃなく根元の楽曲にも反映しないとダメだと思ってます。

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INTERVIEW #3

「目をひんむいてウオオオオー!! ってやっているやつとか…あの顔はもうヤバい。そいつは僕を見てそうなってくれてるのかもしれないけど、“俺もお前に対してそう思っているからな”っていうことを伝えたい」

●「Reunion」はどういう経緯でできた曲なんですか?

KAZUOMI:「世界の終わり」と同じタイミングに作ったんですけど、この楽曲は去年の12月くらいから構想はあったんです。その頃はツアーをまわっていたわけなんですが、僕の中で“再会”という気持ちがあって。ツアーで会った人たちに“もう1度会いたい”という気持ちって、僕が音楽を作る上でのかなりの原動力になっているんですよね。だからヴォーカル2人に「“再会”というテーマで歌詞を書きためといて」と言って。

●まだ曲がない段階から?

KAZUOMI:はい。楽曲自体は今年の春にレコーディングしたんですけど、そのときに初めて見たN∀OKIの歌詞が曲にめっちゃハマったんですよ。

●「“再会”がテーマだった」とおっしゃいましたけど、この曲はサウンド面からもそういう感情が色濃く伝わってくるんですよね。そういう感情とか想いを音楽にどうやって落とし込んでいるんですか?

KAZUOMI:うーん…。僕、哀愁感みたいなものがすごく好きなんですよ。日本人特有の“切なさ”みたいな感情がすごく好きで。“再会”というテーマの中には出会いとか別れとか、悲しさとか喜びとか、いろんな感情があると思うし、歌詞を書いたあいつが具体的にどう思って書いたかはわからないですけど、大きなテーマがあれば音と歌詞が合うだろうなと思っていて。そういう意味でも、この曲はポップですよね。

●うん。今回は2曲ともポップだと思う。

KAZUOMI:さっき言っていた、あまり何も考えていなかった若い頃の自分って、すごく冷めているような閉鎖的な生き方をしていたんですよ。こんなこと言って申し訳ないですけど、全員敵やと思っていたんです。

●全員敵って(笑)。

KAZUOMI:だから打ち上げとかすごく苦手で。メンバーさえ敵やと思っていたんです。“こいつ俺のことよく思ってないやろうな”とか、完全な被害妄想というか。

●誰も自分を必要としていないと。

KAZUOMI:そうそう。自分が好きなものも閉じてしまうような生き方をしていたように思います。瞬発力だけでやっていた。あの頃は理論も何もなく瞬発力で作っていたからこそ、ライブで事故が起きるような変な曲ができていたんです。それが素晴らしいと思っていたんですけど、でもやっていく中で、例え嫌でも技術や知識は付いていくんですよね。もの作りに於いて、それはすごく邪魔なんです。“あの頃のあの感覚がほしい”とか“なんでああいう曲を作れたんやろう”みたいなことで悩むこともいっぱいあって。

●へぇ〜。

KAZUOMI:そういう試行錯誤の中で、自分の感情を音楽の中で出せるようにしたいと思ったとき、それまで自分が封じ込めていたものが出るようになったんです。僕は音楽を作りたいんです。自分が作った音楽をたくさんの人に聴いてもらって「良い」と言ってもらいたいんです。曲を作っている人はみんなそうだと思うんですけど、それを実現するためには、それまで自分が至らなかったところを成長させる必要に迫られたし、考え方も変えないとダメだっただろうし、閉鎖的なことでマイナスになっていたところを変えたらいいという考え方になったんです。30歳を過ぎてから。

●だから変わったし、音楽にも感情が出るようになったのか。

KAZUOMI:周りのバンドマンとしゃべったりしていく中で、徐々にそうなったんだと思います。僕、素っ裸になって音や言葉を発しているバンドがめっちゃ好きなんです。感動するんです。だったら僕らは僕らなりに素っ裸になって、僕らにしかできない音や言葉を発しないといけないんじゃないかって。

●でもそれまで閉鎖的だった人が素っ裸になるって、ある意味苦しいことですよね。

KAZUOMI:もう、めっちゃ苦しいです。なぜ苦しいかというと…これは自己防衛かもしれないですけど…自分の今をさらけ出して掴んだ光みたいなものを人に否定されたりすると、とんでもなく傷つくから。

●ハハハ(笑)。

KAZUOMI:バンドを続ける限り、それは宿命だと思うんですけどね。でもめっちゃ傷つくたびに事務所の社長に電話して慰めてもらったりしてます。僕は音源でもライブでもいちいち気にするし、めっちゃ小さい人間です。音源でもライブでも否定されたときの僕の本心を言うと「お前らに褒めてもらうために俺は作ったんや…」という。

●アハハハハハ(笑)。

KAZUOMI:でもそれは必要なことなんですよね。それをどうやって乗り越えるのか。そこで自分なりの答えを見つける必要があるし、僕らは5人のバンドだし事務所もあるから、チームで話し合ってみんなで乗り越えればいいわけですから。

●KAZUOMIくんおもしろい人ですね。すごく人間くさい。

KAZUOMI:そうですね(笑)。僕、中身はすごく人間くさいです。

●前からなんとなく感じていたんですよ。KAZUOMIくんは普段あまり自分から話したりしない人ですけど、ライブでは感情を剥き出しにするじゃないですか。普段はおとなしいくてクールに見えるけど、ステージの上ではギラギラと燃えている。内に秘めた熱量がものすごいと思っていたんです。

KAZUOMI:すごく引っ込み思案なやつとか、すごくシャイなやつとか、友達が少ないやつ…僕はそういうやつらの代表と思ってステージに立っている部分がありますね。「俺もそうやで」って。そういう感情がライブになるとガーッと出るんです。

●そう。最近のライブなんて感情が振りきれてしまって、ギター持ってないことも多いし(笑)。

KAZUOMI:ハハハハ(笑)。あれはたぶん演奏者のプロとしてはダメなんでしょうけど、でも感情を伝えるという部分でああなってしまうんです。

●ステージの上ではさらけ出せるという感覚があるんですか?

KAZUOMI:そうですね。ステージの上と曲を作っているときだけ、感情をさらけ出せる。1人で曲を作っているときの僕って、めっちゃキモいですよ。

●え?

KAZUOMI:めっちゃ叫んだりとか、踊り狂ったりしてます。

●ええっ!?

KAZUOMI:頭おかしいですよ。「キター!!」とか叫んでますからね(笑)。でも、その感情で再確認するんですよ。「やっぱりこの曲はいいんだ」って。そのテンションのままガーッとデモを仕上げてメンバーや事務所にメールで送って、そのときの反応が悪かったらまたガーッと落ち込んでます。

●ハハハ(笑)。

KAZUOMI:別に「僕は引っ込み思案な人たちの代表です」と声に出していくつもりもないし、僕が勝手に思っていることですけど、でも言葉にできない感情はみんな持っているハズやと思うんです。それを「俺も出すから、お前も出しに来いよ」って。僕と同じように「お前も持ってるやろ」と言うのは失礼かもしれないけど、でも、もし持っていたら見せてくれたらめっちゃ嬉しい。

●うんうん。

KAZUOMI:やっぱり内面を見たいんです。ただ盛り上がっているだけでもいいし、何でもいいんですけど、お客さん1人1人の表現を見たい。それによって僕はテンションが異常に上がるんです。今、僕がライブをやっている意味ってやっぱりそこですね。“いいライブをしたい”という気持ちはもちろん大前提であるけど、お客さんのその場の感情を見たい。

●ライブでみんながぐっちゃぐちゃにさらけ出している瞬間って、なんとも言えないですよね。

KAZUOMI:目をひんむいてウオオオオー!! ってやっているやつとか…あの顔はもうヤバい。そいつは僕を見てそうなってくれてるのかもしれないけど、「俺もお前に対してそう思っているからな」っていうことを伝えたいんです。でもライブで言うタイミングとかないし、言葉にできないですけどね(笑)。もちろんそれがすべてではないですよ。笑っているやつも見たいし、とにかくいろんな感情が見たいですね。それがなかったら僕らは絶対にいいライブができないから。

●そういう自覚がはっきりとあるんですね。そういうことか。

KAZUOMI:ライブってやっぱり音楽を聴くのはもちろんですけど、人を見に来たり、人がその場で発する言葉を聴きに来ると思うんですよね。曲だけが好きやったら音源を聴いておけばいいし。僕らが目指している道筋として、ライブのスタンスや曲作りのスタンスは間違っていないだろうなと思いながら今はやっていますね。

●なるほど。

KAZUOMI:ライブにも音源にも絶対に気持ちは入れたいから。そういうことはヴォーカル2人には言うんです。言葉のチョイスというよりも、感情の部分で。「こういう気持ちで歌ってほしい」とか「どういう気持ちであのMCを言ったの?」とか「なんでこういう歌詞にしたん?」とか。

●きっとそれは、バンドへの誠意というか正義ですよね。どれだけ純粋になれるかという部分での。

KAZUOMI:そうですね。僕らはそれでお金をもらって、生活をしていく生き方を選んでいるわけですから。他のメンバーがどう思っているか確かめたわけじゃないけど、でも他のメンバーもそういう自覚の上で生きているところを僕は垣間見ているから、それは間違っていないと思います。

interview:Takeshi.Yamanaka

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