音楽メディア・フリーマガジン

KIDS

目を見張るスピードで成長を遂げていくライブバンド

PHOTO_KIDS12

2012/12/20@渋谷乙-kinoto-
ジミヘン proudly presents “Kaleidoscope Vol.4”
KIDS / scope / Earls Court / Local Blue Sheeps / Rhythmic Toy World / リアクション ザ ブッタ

 
 
 2006年奈良で結成。Vo./G.奥野が紡ぎ出す繊細で透明感のある歌とダイナミックなバンドアレンジ、感情溢れるステージで注目を集めるKIDS。その音楽からは、奥野が作り出す世界観の“歌”に焦点が集まりがちだが、彼らが11/7にリリースした2ndミニアルバム『奇跡の軌跡』の前後から、そのライブはどんどんダイナミックさを増し、そして一体感を帯びたステージは以前よりも一層多くの観客を巻き込むようになった。それは新作に収録された「ミラーボール」というライブチューンができたことに拠るところも大きいのではないか。奥野が弾いたリフを元に、スタジオでセッションを重ねて作ったという同曲は、体感的にライブを楽しもうという想いが詰め込まれた楽曲。今回は、ライブを重ねる毎に進化を遂げるKIDSの現在点を確かめるべく、渋谷乙-kinoto-で開催された“Kaleidoscope Vol.4”へと潜入した。
 ステージ前にKIDS目当ての観客が殺到し、いよいよライブがスタート。Dr.片貝の前にフロント3人が集まって気合いを入れた後、それぞれの楽器から1stミニアルバム『LとL』収録「光へ」のサウンドが溢れ出す。音源から想像する以上にその音はパワフルで、眼に光を宿した4人の勢いに圧倒される。繊細さと力強さを併せ持つ奥野のヴォーカル、身体全体でギターを搔きむしるG.植田、気持ち良さそうに身体を揺らしながら時折感情を露わにするBa.藤村、そしてフロント3人を幸せそうに眺めながら情感豊かにリズムを繰り出す片貝。ステージを立体的に使って展開するKIDSのステージは、観る者を一気にその世界へと引きずり込む。
 2ndミニアルバム『奇跡の軌跡』から「film」へと続く。胸を焦がすようなギターリフがライブハウスというキャンバスをエモーショナルに色塗り、切なさと哀愁を帯びた奥野の歌がリアルな情景を描き込んでいく。“かっこ悪くて情けない でもちゃんと生きるよ / 繋いだその手は 離しはしないから”という、バンドの宣言とも受け取れる歌詞に惹き込まれながら、楽しそうに音に身を委ねるオーディエンス。
 片貝の爆笑(失笑?)MCを経て、前述のキラーチューン「ミラーボール」が始まる。片貝が繰り出す四つ打ちのビートがフロアを回転させ、観客の気持ちを加速させ、歌が入ったときには会場全体が大きな一体感に包まれる。KIDSのライブは歌と演奏だけではなく、メンバー1人1人の動きや表情やアイコンタクトなど、すべての要素で作り上げているというのが、この曲の4人を観ているとよくわかる。ライブバンドなのだ。
 ノリノリの楽曲だけではない。次に披露されたのは、KIDSの真骨頂とも言えるミドルバラード「四季」。奥野曰く「痛みを感じたメロディ」という同曲は、胸を引き裂くような感情を内包したメロディと歌詞と、繊細なタッチのギター、緩急のあるバンドサウンドがひとつとなった名曲。赤い照明に浮かび上がる奥野は、言葉のひとつひとつに気持ちを込めて丁寧に、かつハッとさせるほどの熱量で歌う。その歌にグッと意識を惹き込まれたまま、まるで時間が止まったような錯覚に陥る。KIDSの歌とメロディが持つ力を改めて実感する。
 そして最後のライブ定番曲、関西人特有のバイタリティで否が応にも会場全体を巻き込んでいく「愛してるよ」。植田と藤村がモニターの上に身を乗り出してフロアを煽り、片貝がパワフルなドラムを繰り出して更に煽り、奥野が両手をあげて高揚した会場の気持ちを更に引き上げる。コール&レスポンスがありながらも純粋な歌の力で会場を温かい空気に塗り替え、ライブハウスをとてもピースフルな空間に作り変えた。
 5曲だけの短い時間だったが、KIDSというバンドが持つ様々な魅力を味わうことができた濃密なステージ。経験を重ねる毎に、目を見張るスピードで成長を遂げていくKIDS。2月には渋谷O-Crest、そして3月には大阪BIGCATでワンマンを控えている彼ら。そのワンマンのステージでは、今日よりも更に成長した4人の姿を観ることができるだろう。
 
 
TEXT:Takeshi.Yamanaka

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