音楽メディア・フリーマガジン

nano.RIPE

何でもない日常を七色に輝かせる、エヴァーグリーンな光を放つニューシングル

nano_mainトリプルA面シングル『サンカクep』から約5ヶ月、nano.RIPEが通算12枚目のニューシングル『なないろびより』をリリースする。“今までで一番ポップ”だとVo./G.きみコが語る表題曲は、TVアニメ『のんのんびより』のオープニング主題歌として書き下ろされたものだ。原作アニメで描かれる田舎の風景や季節の移り変わる様を投影した楽曲は、誰しもが心の中に抱く“ふるさと”の煌めきとノスタルジーを呼び起こす。同じく『のんのんびより』をイメージして書かれたという「きせつの町」は、ライブでの盛り上がり必至のキラーチューン。さらに“めまいがするほどの恋のウタ”という「めまい」も含め、今回もいずれ劣らぬ3曲を収めた珠玉のシングルとなった。リリース後の11月からは、10都市11公演に渡るワンマンツアーも予定している彼ら。その先に見据えているであろうニューアルバムへの期待も、ますます高まらずにはいられない。

 

「誰もが思う“田舎の風景”というか。みんなの心の中にある“ふるさと”のイメージをすごく大事にして書きたかったんです」

●今回のニューシングル『なないろびより』の表題曲は、TVアニメ『のんのんびより』のオープニング主題歌になっているんですよね。

きみコ:今回の曲は(タイアップの)お話を頂いてから書き下ろしたんですよ。だから原作をしっかり読んで、世界観もそれに合わせて書きました。

●アニメの公式サイトによると“脱力系田舎ライフコメディアニメ”ということですが、最初に原作を読んだ時の印象は?

きみコ:最初は本当にユル〜く読む作品だなと思って。物語に大きな起伏はなくて、田舎の女の子たちの毎日をただ淡々と描いている感じなんですよ。アニメの監督さんたちとお話をさせて頂いた時に、(制作側としては)「途中でチャンネルを変えられたら負けなんだけど、途中で寝てしまうのは勝ち」ということを言っていたのが面白かったですね。

●見る側に求めるスタンスもユルい(笑)。

きみコ:たとえば1回見逃してしまったとしても、ストーリーが(一話完結で)つながっているわけではないので大丈夫っていう。“たまたまやっているのを見て、1日の疲れを癒やしてもらえたら”みたいなテーマで作っているそうなんです。

●癒し系アニメというか。そういうイメージに沿っているからなのか、「なないろびより」にはどこか優しい雰囲気が漂っています。

きみコ:nano.RIPEの中でも、最もポップな曲になったんじゃないかな。今回はロックバンド的な面を出すよりも、キラキラした感じの曲を書きたいなと思っていたんです。

●そういうイメージが最初からあったんですね。

きみコ:曲調については、監督さんと話した時に何となくのイメージを聞いて作った感じですね。原作を読んだイメージだと、もっとゆったりした曲が良いのかなと最初は思っていたんですよ。でも監督さんからは「オープニングテーマだから明るい感じでいい」と。「山くらいしか周りにないような風景の真ん中できみコが気持ちよく歌っているような曲を作ってもらえればそれでいい」と言って頂いたので、基本的には自由に書かせて頂きました。

●歌詞の内容も、原作のイメージを元にしているんでしょうか?

きみコ:内容は原作のストーリーに沿っているわけじゃないんですけど、その中で出てくる田舎の風景から想像をふくらませていった感じですね。すごく景色がきれいな作品なので、そういう景色の感じや季節感とかを出したいなと思って。

●実際に、田舎の風景に馴染みがあったりもする?

きみコ:あたしが生まれ育ったところはそうでもないんですけど、実家が引っ越しをして今はすごく田舎のほうにあるんですよ。海と山しかないようなところなので、そこで田舎の風景は見慣れていますね。その辺りの風景もちょっと意識しつつ、基本的には原作に出てきた田舎の風景を一番にイメージして書いた感じです。

●“ゆるやかに続いてく日々は答えなどない”という歌詞が、原作に流れる世界観をよく表しているのかなと。

きみコ:そうですね。あたしの中では“毎日が淡々と過ぎていく。でもその中にも実は色んなことが隠されていたりするんだ”ということをテーマに書きました。

●「なないろびより」という曲名は、原作の『のんのんびより』から?

きみコ:最初はタイトルが決まっていなかったんですけど、せっかくだから原作に沿ったものにしようかなという気持ちはありましたね。あとは単純に「なないろびより」っていう言葉が素敵だなと思って。

●言葉の響きが良いですよね。“季節が水を染めて七色に光るよ”という歌詞にもあるように、取り立てて何もない日々だからこそ季節ごとに色んな色に染まれるというか。

きみコ:アニメの中でも春夏秋冬が一周するような流れで、1つの季節だけを描いているわけじゃないんですよ。季節の移り変わりも人によっては色んな色に見えるし、1日の中でも空が色んな色に変わっていったりする。そういうものを「なないろびより」という言葉で表現してみました。

●曲名がひらがな表記というのもあって、幼い頃の原体験を呼び覚ますようなノスタルジックな雰囲気も感じられます。

きみコ:まさにそんな感じで、誰もが思う“田舎の風景”というか。特にどこか限定するわけじゃなく、みんなの心の中にある“ふるさと”のイメージをすごく大事にして書きたかったんです。だから、色んな人が思い描くものとすごくリンクするんじゃないかな。

●カップリングのM-2「きせつの町」も、「なないろびより」に近い世界観ですよね?

きみコ:実はこれも『のんのんびより』のために書いた曲なんですよ。タイアップのお話を頂いた時に、あたしとジュン(G.ササキ)の2人で1曲ずつ書こうという話になって。だからどっちが使われてもいいくらい歌詞は原作の世界観に合わせてあるし、ジュンもシングル曲のつもりで作ってきたんです。

●こちらの曲も意識的にアニメの世界観に近づけたんですね。

きみコ:基本的には同じテーマで書きつつ、全く一緒にならないようには意識しました。でも歌の背後にイメージしている景色は同じなので、2曲とも『のんのんびより』の歌だと思ってもらっていいくらいですね。

●最近のシングルではリード曲がジュンくん作曲のものになる場合が多かったですが、今回はきみコさんの曲が勝ったということですよね(笑)。

きみコ:久しぶりに勝ちました(笑)。「きせつの町」が良い曲だったので負けたかなと思ったんですけど、作品のイメージには「なないろびより」のほうが合っていたということなんでしょうね。

●曲調も良い具合に「なないろびより」とは分かれましたが、最初からそういう話をしていたんですか?

きみコ:監督さんに頂いたイメージは、ジュンにも伝えていて。それをジュンなりに噛み砕いて、自由に作ってきたのがこの曲だったんです。たまたま、あたしの書いた曲とはタイプが結構違ったのもあって、このどちらかでイケるだろうという自信はありましたね。

●確かに「きせつの町」もフックがあって、リード曲になりえる感じがします。

きみコ:そうなんですよね。ライブでも盛り上がりそうな曲だと思います。

●nano.RIPEのシングルは毎回、カップリング曲もクオリティが高いですよね。常にそういう曲を作っていくのは大変じゃないですか?

きみコ:でもnano.RIPEはずっとそういうことをやり続けてきているし、あたしとジュンは2人とも必要に迫られて作曲しているわけじゃないから。好きでやっていることなので、苦痛に感じたことは全然ないんです。

●曲作りで苦戦することはない?

きみコ:ないですね。特にジュンはないみたいです。あたしも「すごいな」って思うんですけど、何かコツを掴んだらしいんですよ。

●だから、どんどん名曲が生まれていると。もう1つのカップリング曲M-3「めまい」はどういうイメージで?

きみコ:「めまい」は元々あった曲で、今年の頭くらいに書きましたね。その頃はちょうど集中的に創作をしていた時期で、その中で生まれた1曲です。たくさんストックがある中でどの曲を入れようか悩んだんですけど、「今回のリリースツアーでこういう曲があったらセットリストが面白くなるよね」と思うものを選びました。

●ライブをイメージして選んだ曲なんですね。ブログにも書かれていましたが、歌詞の内容としては恋愛的なものなんでしょうか?

きみコ:“めまいがするほどの恋のウタ”ですね。でもそういうイメージで歌詞を書いておきながら、一番最後に“こんなウタより欲しかったきみの体温”と歌っていて。自分で書いておきながら「こんな歌は書きたくなかった」と言ってしまうのは、思い切った感じがします(笑)。

●きみコさんの恋愛観を投影していたりもする?

きみコ:恋愛観ですか…? 恋の歌を書いていても曲によってテーマが違ったりするので、なかなか一口には言えないんですよね…難しいな。

●たとえば好きな人に対して、追うのと追われるのではどちらがいい?

きみコ:追うほうが好きですね。たぶん、そういう曲しかないんじゃないかな。

●好きな人を追いかける側の立場だから、上手くいかなくて切ない恋の歌も生まれるわけですよね。

きみコ:そうですね。もし恋が実ったとしても「本当に気持ちが伝わっているんだろうか?」というところの葛藤が出てきたりして…。

●その葛藤もまた歌になるんでしょうね。ブログには“みんなもよくご存知のあの曲の続きの物語”と書かれていましたが、「めまい」は何の続編なんですか?

きみコ:これは「スターチャート」(『サンカクep』収録)の続きの物語として書いた曲で、作った時期もほぼ同じですね。実は自分の中では、3部作にしたいと思っていて。「めまい」の続きの物語をまた作りたいなと今、思っているんです。

●まだここで完結ではないと。そして今作の初回盤には、nano.RIPE TOUR 2013 「かえりみち」追加公演(2013/5/26@渋谷WWW)の模様を収めたライブDVDが付いているんですよね。

きみコ:本編全曲とアンコール1曲の合計19曲入りになっています。MCとかはちょこちょこカットしているんですけど、それでも100分超えですね。(DVDも合わせると)曲数はフルアルバム以上に入っているので、ボリュームたっぷりです(笑)。

●この日のライブ映像を収録したのは、自分たちの中でも良いライブだったから?

きみコ:元々、この日のライブを収録して「次のシングルに付けよう」という話はあったんですよ。でも終わった直後はメンバーも結構ヘコんでいたりしたので、「DVDになって大丈夫かな?」という不安はあって。

●上手くいかなかったということ?

きみコ:この日は機材トラブルが多かったんですよ。ジュンが使っているアンプ2台の内、片方が全く鳴らなかったりしたので不安もあったんです。でも映像として上がってきたものを見ると、「こんなに良いライブをしていたんだ!」って自分たちでも驚くくらい良くて。『影踏み』(10thシングル)の初回限定盤に付けた赤坂BLITZのライブ映像(2012/12/26)とはまたちょっと違う感じというか。ライブハウスでのライブという感じがすごく出ていたので、あれとはまた別物になったと思います。

●さらに今回のDVDには、「なないろびより」のMVも収録されているんですよね。

きみコ:MVの映像も過去最高にポップだと思います。演奏シーンはそんなになくて、4人の男の子たちとメンバーが一緒にフザけ合っているような映像になっているんです。アニメのイメージに合う風景の中で、田舎の子どもたちが遊んでいるみたいな感じというか。足柄で撮ったんですけど、アニメは足柄の風景を忠実に再現しているらしくて。なので、どうせだったらMVもそこで撮ろうということになりました。

●今回はMVも含めて、本当に原作アニメの世界観に沿っているんですね。

きみコ:アニメに出会ったおかげで生まれた曲たちだなと思っています。今まではMVでも演奏シーンが多かったりして、“ロックバンド・nano.RIPE”に重きを置いてやってきたんです。でもたくさんライブ映像を出してきたことで、今では色んなところで「nano.RIPEってロックバンドなんだね」と言ってもらえるようになって。だから、今回は肩の力を抜いて作れたんですよね。

●ライブバンドとしてのイメージを確立できたからこそ、今作では今まで以上に自由な創作ができた。

きみコ:そこだけに固執せず、nano.RIPEらしさを追求して書けた曲たちじゃないかなと。でもロックバンドとしての面も、ちゃんと(初回盤の)ライブDVDにたっぷり入っていて。一番ポップ寄りなシングルだけど、一番ロック寄りなライブまでお見せできる1枚になったかなと思います。

●リリース後のワンマンツアーも楽しみですね。ちなみに「スポットライター」というツアータイトルには、どんな意味を込めているんでしょうか?

きみコ:これは造語で、“スポットライトを浴びている人”という意味なんです。メンバーとは、「次のアルバムにもつながるようなタイトルが良いよね」という話をしていて。「人生は自分が主役なので、いつも自分にスポットライトが当たっている。でも影となっている部分や簡単には見えないところにも、実はすごくたくさんの人たちがいてくれたりするんだ」ということを次のアルバムでは書きたいなと思っているんですよ。

●次のアルバムのイメージが、今回のツアータイトルには込められている。

きみコ:ツアー各地でフロアにみんながいてくれるから、あたしはスポットライトを浴びて歌えるし、ライブも成立する。そういう自分自身のことも含めて、みんな1人1人が“スポットライター”なんだという想いを込めたタイトルですね。

Interview:IMAI

  • new_umbro
  • banner-umbloi•ÒW—pj