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The Mirraz

インディーシーン最後の大物、ザ・ミイラズが満を持して待望のメジャーデビュー!! - Vo./G.畠山承平に迫る1万字ロングインタビュー -

今年7/16に代官山UNITで行われたワンマンライブにて、メジャーデビューを発表したThe Mirraz(ザ・ミイラズ)。Vo./G.畠山承平が紡ぎ出す言葉は時に周囲を刺激するような鋭い毒性を放ち、独自のスタンスを貫く活動とともにインディー時代から様々な話題を呼び起こしてきた。だがもちろんそれだけではなく、ユーモアやクリエイティブな遊び心も秘めつつ、時に人の心を打つ普遍性を持った歌詞が数多くのファンに支持されてきたことは揺るぎない事実だ。4月にはZepp Tokyo公演を成功に収めるなど、その規模感と存在感はもはやインディーという枠内に留まるものではなくなってきていたとも言えるだろう。そして10/3、彼らが遂に満を持してのメジャーデビューを果たす。両A面という形でリリースされるメジャー1stシングル『僕らは/気持ち悪りぃ』は、二面性を持つミイラズの世界観を見事に凝縮。1つの集大成的作品であり、さらには次のステップを示すように新たな側面も感じられる作品となった。そのリリースを機に、中心人物・畠山承平に迫る1万字ロングインタビュー。

Interview Part 1
「“メジャーデビューして、ミイラズはどうなっちゃうんだろう?”と不安に思っている人も今作を聴いてもらえば、“何も変わっていないし、これからどんどんカッコ良くなっていくんだな”っていうことをわかってもらえるものになったと思う」

●これまでインディーならではとも言えるような独自のスタンスで活動を繰り広げてきたThe Mirraz(以下、ミイラズ)が、このタイミングでメジャーデビューをするということに少なからず驚きを覚えました。以前から「売れたい」ということは公言されていたわけですが、やはり意外というか…。

畠山:2ndアルバム『NECESSARY EVIL』 (2009年10月)を出した後くらいから、次はメジャーに行こうという意識はずっとあったんです。でもCDがあまり売れない時代の中でメジャーとインディーの境がなくなってきて、どっちでやるべきなのかという道筋がその時はまだ定まっていなかったというか。メジャーに行くことでのメリットと同時にデメリットも当然あるので、どっちを優先するのかという判断にもなって。当時も色々なお話は頂いたんですけど、結局は自分の中で決め手になるものがなかったんですよね。

●その時点ではメジャーに行く決断をするだけのメリットを感じられなかった。

畠山:それでとりあえず次のアルバムはそのままインディーで出すしかないなということになって、3rdアルバム『TOP OF THE FUCK’N WORLD』(2010年9月)をリリースしたんです。その後でどうしようかと考えていたところに、当時の関係者から「メジャーにいきなり行くより、事務所を外に作っておいたほうが活動しやすいよ」という助言をもらって。そこで自分たちの事務所とレーベル(KINOI RECORDS)を立ちあげて、去年1年は活動してみたんですよ。

●事務所とレーベルを立ち上げたのには、そんな理由があったんですね。

畠山:でも結局それはある種の保険としてやった行動だったので、決め手になるものがあればすぐにでもメジャーに行っていたような状況だったんですよ。周りから「ここの会社はこうだ」とか色々と先に聴いていた分、何を信用すればいいのかわからない状態にもなっていて。特にミイラズはメジャーでリリースしにくい歌詞が多いらしいので、「メジャーに行ったらそういうものが全部書けなくなるんじゃないか」と言われていたんです。

●メジャーに対する先入観として、そういうトガッた歌詞や音楽性を変えられるかもしれないという危惧は確かにありますよね。

畠山:でも今回、EMIさんから頂いたお話は「ミイラズが今までやってきたことをより大きくしよう」ということだけだったんですよ。メジャーシーンに合うところだけを使って売り出していくんじゃなくて、ミイラズらしい言葉の使い方や言葉数の多さ、ダークなリフとかを気に入ってくれて、そこをもっと良くしていこうという話だった。そこがいわゆる“メジャー”のイメージとは全然違ったし、「メジャーとかインディーとか関係なく、ミイラズというバンドをデカくしていこうよ」と言ってくれたことがすごく信頼できたので今回の話を決めました。

●そういう発想だったからこそ、信頼できた。

畠山:メジャーデビューの話を頂いた時点ではまだ何も始まっていないから、最初から全部の不安が消えたわけじゃなくて。でも今回の『僕らは/気持ち悪りぃ』を作った時に、“良いものを作っていけるな”という確信が得られたんです。このシングルを作ったことでこれからの活動に前向きになれるというか。“メジャーデビューして、ミイラズはどうなっちゃうんだろう?”と不安に思っている人も今作を聴いてもらえば、“何も変わっていないし、これからどんどんカッコ良くなっていくんだな”っていうことをわかってもらえるものになったと思うんですよ。それが自分自身も一番望んでいたものだったし、やっぱり楽曲を作ることがバンド活動の中で一番大事なことなので、それが成功したということは自分たちが今すごく良い環境にいる結果なのかなと。

●音楽に集中できる環境にいるからこそというか。

畠山:そういう意味では、去年はレーベルと事務所の運営も自分たちでやっていたということがあって…。現実的には自分が指揮を執らなくてはいけなかったんですけど、経営者としてのあり方とミュージシャンとしてのあり方というのはやっぱり違うものだから。ミュージシャンとしてのあり方が確立される前に、経営者としての道も作らなきゃいけなくなったことで、自分が音楽に集中できていないなと思う瞬間がものすごくあったんですよ。音楽だけを見ていないとミュージシャンとしてのあり方を成立できないような時期に、それをできないことがものすごくストレスになりましたね。だから今はこういう形に決まって、本当に良かったなと思います。

●音楽を作る上でのストレスになったとはいえ、経験として得たものも少なからずあったのでは?

畠山:それはありましたね。ただ、自分がそういうことを体験してわかったのは、ある一定のライン以上のことはミュージシャンにとって知る必要がないなということで。楽曲を作ったり、ライブをしたり、CDをリリースするということに対して、ネガティブになりうる情報というのがあることも知りました。だから去年は活動している中でも、葛藤みたいな気持ちがすごくあったんですよ。でも去年1年をかけてバンドとしての土台作りをちゃんとやれたから、EMIさんも「そのまま変わらず、やっていこうよ」と言ってくれたのかもしれないですね。

●土台がしっかりあるから、簡単に潰れたりもしない。

畠山:自分の中には“売れたい”という気持ちが当然あるんですけど、それは長く音楽活動を続けたいからなんです。音楽を続けられる状況を保ち続けるためにはやっぱりお金が必要だし、それは売れないとどうにもならないと俺は思うから。メジャーに行くかインディーズでそのまま活動を続けるかというのは、ミイラズにとってその先潰れるかどうかを左右するすごく大きなポイントだと思うんですよ。バンドのメンバー4人だけでずっと続けられるほど甘い世界ではないし、仲間や関係者が増えていく中で全員が同じ気持ちを持って一緒にどうやって潰れないように進んでいくかを考えることがすごく大事なんですよね。

●“売れたい”という気持ちは、バンドを始めた当初からあったんですか?

畠山:最初から音楽を長く続けたいという気持ちはあったし、やるからには一番上に行きたいという気持ちがありましたね。あとは単純に、自分が好きなバンドは売れている人たちが多かったということもあるかな。去年、“SUMMER SONIC 2011”でTHE STROKESを観たんですけど、やっぱり売れてデカいバンドになるのってすごくカッコ良いことなんだなと思ったんですよ。売れているバンドがすごくデカい会場でライブをすること自体がものすごくカッコ良いんだと、現場の光景を観て初めて知ったんです。映像で観ても伝わってはいたんですけど、本当にその場で観て“こういうことなのか”という感覚があって。

●売れているということの意味を現場で実感した。

畠山:カッコ良いから売れているということと、売れているからカッコ良いということの二面性が見えたような気がします。今まではカッコ良いからそういう場所でやれているという一面しか見えていなかったけど、“こういう場所でやるから、よりカッコ良く見えるんだな”ということを感覚的に理解できたというか。それによって、やっぱり俺たちは絶対に売れなきゃダメだなと思った。それはこの前、アークティック・モンキーズがロンドンオリンピックの開会式で演奏したのを観た時も同じで、ああいう姿勢や楽曲のロックバンドが国民的な存在になっている姿というのはすごいことだなと思ったんです。そういうものを目指している自分は間違いじゃないと思えたし、そういうことをするのがバンドとして一番カッコ良いことなんだなと感じましたね。

●だからといって彼らが大衆に媚びているわけではないし、流行りに迎合して売れたわけでもない。ミイラズが目指しているのも、そういうバンド像なのかなと。

畠山:ミイラズというバンドの根本的な始まりがそうなのかもしれない。前身バンドの頃は下北沢や渋谷で活動していて、当時流行っていたギターロックと言われるようなバンドだったんです。その頃から自分ではすごく良い曲を書いているし、他のバンドにも負けていないと思っていたけど、やっぱり周りと同じことをやっていても目立たなくて。今流行っていて売れそうな音楽をやっても全然目立たないし、何の可能性もない。そういうことを当時から感じていて、今売れているものとは全然違う形のものを作らないと売れないなと思ったんですよ。その時にたまたまアークティック・モンキーズを聴いて、こういう洋楽ロックの要素を取り入れたら目立つんじゃないかというところから始まったのがミイラズだった。

●初期のミイラズは、アークティック・モンキーズのパクリだと叩かれたりもしましたよね。

畠山:自分たちとしては、そこもミイラズが目立つための要素として利用しようと思っていたんです。自分たちであえて「パクってま〜す」みたいな言い方をしたほうが目立つし、バンド活動をする上でそういうところは潔くいたいなという気持ちがあって。どの音楽にもどこかからパクってきたような部分はあって、大事なのはそこからどういうふうに変わっていくかだから。だからあえて自分から「こういうものから影響を受けて、こういう音楽を作っています」と潔く言いたいなと。バンドとしてなのか人としてなのかはわからないですけど、そういう姿勢は常に持っていたいなと思っていますね。

●そう考えるとインディーでの活動期間は、ミイラズというオリジナルな音楽を固めていく上での土台作りの時期でもあったのかなと。

畠山:そういう部分はあると思います。それこそ今回のシングルの曲なんかは、自分が今まで好きになったバンドの要素が全部混ざってできている感じがすごくあるんです。◯◯っぽい要素もあれば××っぽい要素もあって、自分の中にある色んなものがちゃんと混ざり合ってできている。オリジナリティというものが見えてきた段階で作った1枚なんだなということをすごく感じましたね。

Interview Part 2
「俺はずっと前からこういう音にしたかったし、そこは1stアルバムを作った頃から何も変わっていないんです。より良いものを作っていくための変化なので、それによってすごく良いものになったという事実は見逃してほしくない」

●今回のシングルに収録した新曲は、どれもメジャーデビューが決まってから作ったんでしょうか?

畠山:そうですね。今年の3月からツアーが決まっていたんですけど、その前の2月頃から曲作りを始めました。ツアーまでに1ヶ月くらい時間があったので毎日曲作りをしていて、100曲くらいは作りましたね。その中からちゃんと世に出せるような曲を選んでメンバーに聴かせた時、一番最初に聴かせたのがM-1「僕らは」だったんですよ。メンバーも「すごく良い」と言ってくれて。

●この曲を選んだ基準とは?

畠山:メジャーデビューして1発目の作品となるわけだから、ミイラズというバンドが一番わかるような楽曲で名刺代わりになるようなものにしたいという気持ちがあって。メジャーに行くことで今まで聴く機会がなかった人たちにも聴いてもらえるタイミングだと思ったので、ミイラズがどういうバンドなのかを聴いてすぐにわかる音楽を作りたいなという気持ちがあったんです。それが一番わかりやすく出ていたのが「僕らは」でしたね。

●この曲はまさにミイラズらしい、すごく長い歌詞ですよね。

畠山:そこもEMIのスタッフが「ミイラズって、こういうところがカッコ良いじゃん」と言ってくれたから、俺はただ自分がカッコ良いと思うことをやればいいんだと思えたんです。実際にそれがやれたというのは、ミュージシャンとしてすごく健全なことだなと思いましたね。

●ミイラズの“カッコ良い”部分を形にできた。

畠山:そうですね。ただ、今回のシングルはメジャーの1枚目というところで、「僕らは」と「気持ち悪りぃ」のどちらにしようかという悩みはあったんですよ。両方ともすごくミイラズらしい曲だから。だったら両A面にして二面性を出していけば、ミイラズらしさがより伝わるだろうという結論がそこで出たこともすごくやりやすかった要因というか。

●どちらもミイラズらしい曲だけど、タイプが全く違う。

畠山:「僕らは」はこれからのミイラズを予感させるスケール感の大きな楽曲だったし、「気持ち悪りぃ」は今までのミイラズというものがすごく伝わりやすい楽曲だったから、どっちで攻めればいいんだろうというところですごく迷った部分はありました。「気持ち悪りぃ」みたいな曲がシングルになるというのは、今の日本の音楽シーンではなかなかありえないことだなと思っていて。だからこそ逆にこういう曲がシングルのA面として出ていたら、“ミイラズというバンドはすごいことをしているんだな”というのが伝わるんじゃないかなと。そこから両A面にしようという発想になれたことで、すごく良いシングルになったと思いますね。

●2曲とも良かったからこそ、悩んだわけですからね。

畠山:ミイラズってロックバンドというイメージがあるけど、音楽としてのエンターテインメント性も保っていて。今回の2曲はどっちも音楽として楽しめるし、あとは好みの問題かなと。ただ、バンドとしての良さを2曲ともちゃんと内包しているから、すごく悩んだんですよね。

●「気持ち悪りぃ」のほうはミイラズが持っている良い意味でのユルさや、毒の部分がより出ている感じがします。“こないだ不倫してるやつらから 常識ないねと言われたんだ”という歌い出しなんて、普通のロックバンドならありえないというか(笑)。この歌詞ですら、他の会社ならNGが出るかもしれないですが…。

畠山:そうなんですよね。でもEMIさんからは「全然大丈夫だよ」と言われたので、すごく楽になりました。逆に今までのほうが、色んなことを考えながら歌詞を書かなきゃいけなかったくらいで。結局、インディーズでも売れたら問題になるんだと知った時に、“じゃあ、なんで今まで俺は悩んでいたんだろう?”という想いがあって。今は歌詞に関してはスタッフがすぐに調べてくれるので、そういう部分でも良い環境だなと思いますね。

●そもそも畠山くんが歌詞にトガッた言葉を使う理由というのは、どんなところにあるんでしょうか?

畠山:勘違いされやすいなと思うんですけど、たとえば「Make Some Noizeeeeeeeeeeee!!!!」(『TOP OF THE FUCK’N WORLD』収録)みたいな曲は自分の中のユーモアな部分を出してみたり。知り合いのバンドから今所属しているメジャーの会社がすごくやりづらいという悩みを聞いた時に、“だったら、そこを辞めて他の会社に行くか、自分でレーベルを立ちあげてもいいじゃん”と俺は思って。あの曲は、そいつのために書いた曲なんです。

●特定の個人のために書いた曲だと。

畠山:だから別に俺が世の中に対して、何かを言いたいとかそういうわけじゃなくて。そういう部分が全くないわけじゃないけど、周りからは割とミイラズは畠山個人の感情だけで楽曲を作っていると見られがちなんですよね。でも俺はちゃんと楽曲を語り部として歌っているし、その曲の中に自分とは別の主人公がいるような楽曲も書いていて。全部が全部、畠山の個人的な意見だと思われてしまうような楽曲が多いんですけど、そういうわけではないんですよ。単に歌詞で歌っているようなことを自分がそのまま伝えたいからやっているというわけでもないですね。

●そういう意味では「僕らは」の歌詞は個人的な意見というよりも、すごく普遍的なテーマを歌っている気がします。

畠山:「僕らは」は、最初からこういう歌詞にしようと狙って書いたわけではなくて。この曲をシングルのメインにすることになって、歌詞を考えていた時に言葉がバーっと出てきたんですよ。なんでこんな歌詞になったのか自分でもよくわからないし、“こういうことが俺は言いたかったんだ”というわけでもない。ただ、楽曲がこういう歌詞を引き出してきたのかなというだけなんです。

●意図的なテーマがあったわけではない。

畠山:「気持ち悪りぃ」に関しては自分の意図があって書いている部分もあるんですけど、「僕らは」に関しては歌メロに忠実な発音を再現するための言葉というだけだったりもして。サビの早口な部分も、これ以外にはありえない歌詞になっているということがすごく大事なんです。自分で客観的にこの歌詞を見た時に感じたのは、“音楽という存在に対しての歌なのかな”ということだったんですよね。音楽をやれることの喜びだったり、音楽という存在に対しての喜びというか。その人にとって一番大事な何かを歌っているんだなと感じて、それが自分にとっては音楽だったのかなと思いました。

●そういうふうに後から自分で客観的に見て、歌詞の意味を発見することは今までにもあったんですか?

畠山:なかなかないことですね。だから、この曲は自分にとっても可能性が広がった曲というか、“こういうやり方が俺はできるんだな”ということがわかった。次へのステップになった曲だと思います。

●もう一方の「気持ち悪りぃ」に関しては、何らかの意図があったということですが。

畠山:知っている人の両親が不倫しているんですけど、両親が不倫している子どもの9割以上がトラウマになるっていう記事をどこかで読んで。トラウマになった子たちは将来、恋愛や結婚ができなかったりすることもあるらしいんです。そういう両親が不倫していると知った子どもの気持ちを想像した時に、一番わかりやすい言葉が“気持ち悪りぃ”だと思ったんですよ。

●不倫している親に対する感情を表している。

畠山:わかりやすく言えばそういうことへの“怒り”なんですけど、その子たちの気持ちを歌ったような楽曲が今までにないなと。“気持ち悪りぃ”というフレーズを歌っている曲というのも、俺は聴いたことがない。もしそういう子たちがこの曲で“気持ち悪りぃ”と歌っているのをライブや通学中に聴いて、少しでも気持ちを前向きな方向に向けられるのなら、音楽ってすごく良いなと思って。だから、この曲に関しては“こういうものを書きたい”というものが明確にありました。

●この曲は歌詞が短めですよね。

畠山:最初はこの5倍くらいの歌詞があったんですけど、そこから方向性をどうまとめるかを考えていったんです。候補となる言葉が色々ある中から今の方向性で1つにまとめるために、自分で何が一番ベストかを選択していくという作業も今回が初めてでしたね。今までは“これは絶対に言いたいから抜きたくない”という歌詞の書き方だったんですよ。でも最近はそれがなくなってきた感じもあって。“絶対にこれが言いたいんだ”というものをあえて排除して、そこで本当は何が言いたかったのかを自分でもう一度洗い出すことで、本当に表現したいものをちゃんと選ぶというか。そういうことも今まではあまりなかったですね。

●両A面の2曲ともに、客観的に見ることができた。

畠山:今回は歌詞を作ってから一度、客観的になる時間があったんですよ。3月のツアー後半でも「気持ち悪りぃ」はやっていたんですけど、その時は歌詞も今とは違っていて。1回置いて、冷静になる時間があったのは大きかったかもしれないです。

●メジャーデビューが決まってから、ちゃんと準備期間があったのも良かったんでしょうね。

畠山:僕自身も、そこに向けた準備段階にすぐ入れたというのは良かったですね。

●M-3「E-miんの歌(いーみんのうた)」はタイトルからして明らかにEMIをイメージしていますが(笑)、この曲もメジャーデビューまでの期間に書いた?

畠山:そうですね。これはもう最初から“移籍の歌”というものを作ろうと思っていて。せっかく移籍して最初のシングルだし、“移籍の歌”みたいなものが入っていたらミイラズらしくて面白いなと思ったんですよ。そこで最初にパッと浮かんだのが、「移民の歌」(レッド・ツェッペリン)だったんですけど(笑)。

●字面から連想したと(笑)。

畠山:「移民の歌」のパロディみたいなものをやったら面白いかなと思って適当にリフを弾いていたら、(原曲と)似ているけどちょっと違うリフが出てきて。遅い曲にしてはドラムのパターンも変だし、“すごくパワーのある曲だな”と思ったので形にしていきました。そしたらちょうど“移民”の中に“EMI”という文字を入れられるのに気付いて、「これはすげぇくだらない曲になるぞ」と(笑)。

●歌詞としてはメジャーに毒づいている感じもありますが…。

畠山:タイトルに“EMI”が入っているからディスっているような歌詞に見えちゃうんですけど、全然そんなことはなくて。単純にEMIに移籍するから「E-miんの歌」というタイトルにしただけで、EMIのことはディスっていないです(笑)。ミイラズに限らず、インディーバンドがメジャーに移籍する時に抱えている悩みや不満を面白おかしく書いたというだけで。サビがすごく前向きなものになっていて、怒りをぶつけているというよりは自分が進むための歌詞になっていたので、すごくキャッチーだし嫌な気持ちにならない曲だなと。そういうところも自分でコントロールできたのがすごく良かったなと思います。

●単に感情に任せて書くわけじゃなく、客観的な視点で曲作りができている。

畠山:特に歌詞がそういう感じなんですけど、楽曲に関しても最近は客観的に見られていて。自分が作っているものだから、そこには作曲者・畠山のプライドや名誉みたいなものが今まで何かしら付いていたんです。でも最近はそれすらも上から見られるようになったというか、自分が作った曲なのに自分で作った曲として見ていなかったりする。曲そのものとして冷静に見て、“もっとこうしたら良くなるな”と考えられるようになったのは大きいですね。

●それが今作にも反映されている?

畠山:「僕らは」を書けたことにも、それがすごく関係していると思うんです。自分の中では“こういうことが言いたいんだ”みたいなものは全然ないけど、確実に今作で一番メッセージ性がある曲なんですよね。それがなぜなのか考えてみたら、無心で書いたことによって何も計算されていないというところに客観性がすごくあるなと思って。そこから、今後の楽曲を作っていく上でも自分をコントロールして書くことができるんじゃないかと思ったんですよ。その要素が「気持ち悪りぃ」や「E-miんの歌」にも出ているというか。

●インディー時代から積み重ねてきたものが凝縮されているだけじゃなくて、これから先へとつながるような作品にもなっていますよね。

畠山:最初は集大成的なものを作ろうと思っていたので、今までのミイラズを全てまとめたような作品にしようとしていて。でもミイラズっていうバンドをこれからより大きくしていこうと考えた時に、どう進化させていくかというところもあったと思うんです。それがちゃんと曲として形になったのは、すごく良かったですね。

●今作にLIVE TRACKとして収録した7/16の代官山UNITでのMCでも話しているように、メジャーに行ったからといって意識的に変えることはないけど、進化として変わっていくことは当然ある。

畠山:より良くしていくことには、絶対的に変化が伴うものだから。価値観の部分で言えば、それによって悪くなることもあるのかもしれない。でも自分自身に“こういうことがしたい。こうなりたい”という気持ちがあれば、それでいいというか。それが何も変わらないっていうことになっているはずだと思うんですよ。

●それを証明していくのが、ここから先に発表していく作品なのかなと思います。

畠山:今までミイラズを聴いてくれてきた人たちに今作を聴いてもらえば、音がメチャクチャ良くなっているのがわかると思うんですよ。自分としてはすごく良い変化だと捉えているんですけど、もしかしたら「売れている感じのサウンドになっちゃったから嫌だ」と言う人もいるのかもしれない。でも俺はずっと前からこういう音にしたかったし、そこは1stアルバムを作った頃から何も変わっていないんです。より良いものを作っていくための変化なので、それによってすごく良いものになったという事実は見逃してほしくないですね。

Interview:IMAI

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