音楽メディア・フリーマガジン

特撮

特撮×中川翔子『ヌイグルマーZ』&特撮『シネマタイズ(映画化)』 2作同時リリース記念 大槻ケンヂ×NARASAKIインタビュー

特撮NEW_A写中川翔子が初主演を果たした映画『ヌイグルマーZ』は、大槻ケンヂと映画監督・井口昇の出会いから始まった奇跡のコラボレーションだ。2000年に発売された特撮の2ndアルバム『ヌイグルマー』収録の「戦え! ヌイグルマー」を元に、小説『縫製人間ヌイグルマー』が書き下ろされたのは2006年のこと。そこから7年の時を経た2013年、雑誌『映画秘宝』の常連であった井口と大槻が出会い、意気投合したところから物語は始まった。そして2014年、遂に公開となる本映画の主題歌と劇中歌を収録した2枚のシングルが同時リリース決定! 発売を記念して、特撮の大槻ケンヂ(Vo.)とNARASAKI(G.)に話を訊いた。

 

 

 

 

 

●今回の映画『ヌイグルマーZ』は大槻さんの小説『縫製人間ヌイグルマー』が原作なわけですが、その元になったのは特撮の2ndアルバム『ヌイグルマー』収録の「戦え! ヌイグルマー」なんですよね。その曲を作った時点で、小説を書こうと考えていたんですか?

大槻:考えていました。ぬいぐるみと人間の合体ヒーローというものは、世界的に見ても他にないんじゃないかなと思って。僕はUFO好きなんだけど、“エンゼルヘア”という現象があって、UFOを見た後に空から綿状のものが降ってくるという現象なんですよ。それが“綿状生命体”であるという説があったので“綿だから、ぬいぐるみの中に入ったら面白いな”と考えて、そういう短編小説を一度書いたんじゃなかったかな(『ゴシック&ロリータ幻想劇場』収録)。

●そこに最初の着想があったと。

大槻:最初はエンゼルヘアから来ているんです。それでナッキー(NARASAKI)に「架空ヒーローのテーマ曲みたいなものをやろう」という話をして、「戦え! ヌイグルマー」ができたんですよね。

●映画化が決まったのは、監督の井口昇さんとの出会いがキッカケということですが。

大槻:最初は井口さんから「一緒に何かやりましょう」というお話を頂いたところからかな? 違うかも。井口さんは以前から僕の他の小説も映画化できないかと思って、読んでいたらしいんです。

●今回は原作を元に、井口監督が脚本を書いているわけですよね?

大槻:元でもないな。一応、メールでやりとりはしたんですけど、もう井口さんの中に独自の世界観や発想があって。これは原作者としての制御を取っ払ったほうが、井口さんにとっても良いなと思ったんです。井口さんは「大槻さんの言ったことは押さえましたよ」と言っていましたが、やっぱり全然違うオリジナルなものになっているところが僕には面白かったですね。

●原作に忠実じゃなくても構わない?

大槻:うん。原作者にも色んなタイプがいると思うんですけど、僕はわりと変わっちゃってもいいと思うタイプで。それは僕が角川映画世代だからじゃないかな。80年代の角川映画は、原作からかけ離れたものが結構あったんですよ。ああいう方法論は、昔から面白いんじゃないかなと思っていたんですよね。

●自分の中にはない発想が面白いというか。

大槻:「よくぞここまで、原作と違うものを作ったな!」というところに感心しました。自分で観ていても、「そうか〜!」っていう驚きがあって。(原作と)同じ名前のキャラクターは出てくるんだけど、原作者から見るとありえないキャスティングやセリフだったりするのが「なるほどな〜」という感じで面白かったですね。原作を読んでから映画を観た人もビックリするし、映画を観てから原作を読んだ人もビックリするんじゃないかな。

●原作と映画で全然違うんだけど、そこも楽しめる。

大槻:その違いの面白さというのが、僕にとっては面白かった。だから今回、特撮のほうで出したシングルが『シネマタイズ(映画化)』というタイトルになっていて。何度か自分の作品を映画化してもらったことはあるんですけど、ぶっちゃけ僕には映画自体よりも映画化されるまでのプロセスのほうが面白いんですよ。そういうことを歌ってみたいなというのがあったんです。

●表題曲「シネマタイズ(映画化)」の歌詞は、そのことを歌っていると。

大槻:ミュージシャンで、自分の書いた作品が映画化されるという経験はあまりないと思うんですよね。それを自分で歌える立場というのも珍しいだろうなと思って。最初は「自分が歌うのはどうかな?」っていう気がしたんですけどね。原作者の歌が劇中で流れる映画って、うさん臭いじゃないですか(笑)。

●うさん臭いって(笑)。

大槻:僕は映画少年だった時代があったから。自分自身も作品の内部に関わっているような人が劇中歌も歌うというのが、僕はあまり好きじゃなかったんです。たとえばバーブラ・ストライサンドという人は自分で映画をプロデュースして、その中で朗々と自分の美声を聴かせるんですよ。「俺はバーブラ・ストライサンドかよ!」と思って(笑)。それはあんまりやっちゃいけない行為だと思っていたんですけど、まぁ今回はそういうのもありかなということで結局やっちゃいましたね。

●今回は最初から特撮の曲が劇中歌で使われると決まっていたんですか?

大槻:映画化するにあたっては、この楽曲(「ヌイグルマーZ」)を使用して欲しいとは言いましたね。主演のしょこたん(中川翔子)に、この曲を歌って欲しいと思ったんじゃなかったかな。

●中川翔子さんに合いそうなイメージがあった?

大槻:そうですね。でも、しょこたんは歌が上手いから何でも大丈夫だろうとは思っていて。プロ意識の塊みたいな人なので、僕は彼女をリスペクトしているんですよ。ミュージシャンとしても素晴らしい。ライブにもゲストで出させて頂いたんですけど、今回のしょこたんのツアーはハードロックバンドをバックに付けていたんです。ハードロックで女性が歌うのって声量的な部分もあってなかなか難しいのに、バッチリでしたね。

NARASAKI:「ヌイグルマーZ」は、原曲よりキーが一音高いんですよ。しょこたんの色んな曲を聴いて、(声が)張ったところに美味しいところが合うようにということを考えたらそうなって。

●この曲はハードロック系の曲ですが、一方で「遊星歯車機構」は全然違う可愛らしい印象で…。

大槻:この曲は特撮ではありえないくらい、J-POP感に溢れた曲ですね。オケだけ聴いている時は「デパートとかで流れていそうな曲だね」なんて、みんなで言っていたんです(笑)。でもしょこたんの歌が入ったら、いわゆる(松田)聖子ちゃんから受け継がれる昭和歌謡の雰囲気というのが出て。ボーカルが入ったバージョンを初めて聴いた時、本当にぶっ飛びましたね。「こういう曲だったのか!」とわかったというか。素晴らしいなと思いましたし、これはちょっと僕には歌えない曲だなと。

●中川さんが歌うことで、一気に化けたと。この曲は映画のイメージに沿って、作られているんですか?

大槻:これは一応「こういうシーンで流れますよ」ということを聴いていたので、歌詞もそこに合わせたところはありますね。映画の中ではちょっと百合っぽいというか、レズビアン的な雰囲気もあるシーンなんですよ。

NARASAKI:「遊星歯車機構」に関しては、3曲デモを作った中から映画のシーンに合うものを井口監督にチョイスしてもらって。そこから広げて、全体を作っていきました。ストーリーの展開的にスッと入っていけるような感じが良かったので優しいメロディや曲調ということで考えた結果、ああいう曲調になったんです。

●曲調も映画のシーンに沿うようなものにしたと。

NARASAKI:普段作っている時はロックバンドなので曲だけで成立するものが中心なんですけど、今回は映画の挿入歌として考えた時に演出としてスッと入っていけるようなものを中心に考えて作りましたね。この曲のアレンジは、特撮のサポートベースをやって頂いている高橋竜さんなんですよ。彼はこういったアレンジが上手な人なのでお願いしたら、とても良くなりました。

●「マリリン・マラソン」は、特撮の1stアルバム『爆誕』からの再録曲ですが。

大槻:劇中でゾンビが阿波踊りを踊るシーンがあるんですけど、井口監督から「この曲が一番合うから使わせて下さい」という話があったので録り直したんです。この曲では、しょこたんは“マリリン・マラソン マリリン・マラソン”というコーラス部分だけ参加しています。

●コーラスといえば、「ハンマーはトントン」の冒頭も男性陣の重厚なコーラスが入っています。

大槻:スタジオにいるみんなで歌いました。

NARASAKI:三柴さんと高橋さんと(大槻)の3人だけなので、非常に微妙な人数ですけどね(笑)。

●この曲は三柴(理)さんの作曲ですね。

大槻:エディの作る曲は元がクラシックなので、歌詞を乗せるのがとても難しいんですよ。いわゆる一般のロックバンドをやっている人は、こういう曲調に歌詞を付けたことはないんじゃないかな。そこが作詞の醍醐味でもありますけどね。この歌詞も映画とつながっていて、猫ひろしさんの演じる登場人物が過去のトラウマから悪い人になっていく…というようなことを歌っています。

●6thアルバム『綿いっぱいの愛を!』からの再録曲「世界中のロックバンドが今夜も…」も映画のイメージに合うものを選んだ感じでしょうか?

NARASAKI:この曲に関しては、自分から「この曲をこのシーンにどうか?」と提案したんですよ。音源では「特撮! 特撮!」と歌っている部分を、映画の中では猫ひろしさんが毒ガスを吸っているシーンで「毒殺! 毒殺!」と歌っていて。そこがすごく合うと思ったので、監督に自分から提案をして採用されました。

●「一点もの」は書き下ろしの新曲ですが。

NARASAKI:これは劇中で中川翔子さんが踊っているシーンを観て、何となく雰囲気がワルツっぽく思えたところから曲調を考えました。ちょっとノスタルジックなところも意識しつつ、ほんわかとして温かい感じの曲にしようと思って作りましたね。

大槻:(歌詞中の)“Baby, The Stars Shine Bright”っていうのは、しょこたんが映画の中で着ている服のブランド名なんですよ。

●2作に収録された曲は、どれも映画の雰囲気にハマるものになっているわけですね。

NARASAKI:ハマるように意識して作りましたし、監督にもすごく喜んでもらえたので良かったかなと。劇中歌はストーリーに沿うようにということを考えて作ったんですけど、「シネマタイズ(映画化)」は映画が終わった時にどういう曲が流れたら良いのかということを自分なりに考えて。最後にちょっと哀愁漂う、カッコ良い感じが出せたら良いかなと思って作りましたね。

●「ヌイグルマーZ」ともども、ライブでも盛り上がりそうな感じです。

大槻:(「ヌイグルマーZ」について)昔はライブでそんなにやっていなかった曲なんですよ。元々のキー設定がすごく高くて、ドラムの演奏とかもすごく大変だったので、ライブではわりと(セットリストから)外していて。最近はキーを下げたり、アレンジも変えたりしたのでよくやっていますけどね。これからは特撮の代表曲の1つとして、もう外せない曲になるんじゃないかな。

Interview:IMAI

  • new_umbro
  • banner-umbloi•ÒW—pj