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シキサイパズル

音で紡ぐ、幻想的な色彩。 フセタツアキと掘り下げる彼らの魅力。

ShikisaiPuzzle_ArtistPhoto透き通った冷たい空気の中で、星のきれいな夜空を観ているような…。シキサイパズルの音を聴くと、そんな昔のホーリーな体験が呼び起こされる。シューゲイザー、エレクトロニカ、ポストロックを原料に紡がれる彼らの音楽は、どこまでも幻想的で鮮やかだ。9/3に自主レーベルFärg Recordsを立ち上げ『prismatic telescope』をリリースしたシキサイパズル。今回は彼らと共演して以来親交が深く、Suck a Stew Dry、ヨルニトケルという属性の違う2つのバンドを乗りこなすフセタツアキを迎えて、彼らの魅力を掘り下げる。

 

 

SPECIAL TALK SESSION

シキサイパズル shuntaro tsukui&ayako urano × フセタツアキ(Suck a Stew Dry、ヨルニトケル)

“「なにかひとつ目標を作ると自ずと近づいていって、達成できるんだ」っていう手応えを感じられたんです。”(shuntaro tsukui)

●シキサイパズル(以下シキサイ)は2009年に結成されたんですよね。

tsukui:結成当時は違うベースとボーカルがいたんですよ。でも、始めて間もない頃に突然ボーカルが脱退したり、ベースも体調を崩したりして、なかなかメンバーが固定できなくて、今のボーカルのuranoとベースのshiomiが入って活動を始めたのは2011年からなんです。それまでやっていた音楽は、もっとエレクトロな雰囲気の4つ打ち主体の曲が多かったんですけど、今までの曲がuranoの声とは合わない気がしたんですよね。

●メンバーが変わって音楽性も変わった?

tsukui:僕がちょうどシューゲイザーにハマっていて、そういう音楽の方がuranoには合うんじゃないかなと思って、また新しく曲を作っていったんですよね。その頃から渋谷club 乙-kinoto-でライブをするようになって、初めて出演した日にSuck a Stew Dry(以下Suck)のシノヤマくん(Vo./G.シノヤマコウセイ)の弾き語りと共演したんです。その時にフセくんがヨルニトケルっていうバンドをやっていることをシノヤマくんから聞いたんですよね。

フセ:先にシノヤマくんと会ってたんですね。

tsukui:そうなんです。その後にヨルニトケルと初めて対バンしたんですよ。彼らは全員青森県の出身なんですけど、実は僕も昔、青森県の三沢市というところに住んでいて、そこで親近感を覚えたんです。

フセ:三沢市が僕の地元の十和田市に近いんですよね。

tsukui:それがきっかけで話したりライブを観たりして、彼らのことがすごく好きになったんですよ。

フセ:あの日がきっかけでお互い仲良くなりましたよね。ヨルニトケルが都内に出て活動するようになったのは2011年の8月くらいで、その半年後にシキサイと対バンしたんですけど。その時のライブを観て「うわ、格好良い!!」って思ったんです。それから、かれこれ3年くらい経ちますけど、あの「格好良い!!」を超えるバンドはなかなかいないですね。

●特にどこが格好良いと思いました?

フセ:音が多くて、迫力があるんですね。シキサイってライブでも打ち込みを多用するんですけど、生楽器とのバランスが悪いバンドだとそれが浮いて聴こえちゃうんです。でもシキサイはスキルが高いから、どこまでが打ち込みで、どこまでが生楽器なのか分からないんですよね。プログラミングは全部tsukuiさんがやっているんですけど、打ち込みの音も含めて自分のギターも楽曲の一端としか考えていないんだろうなと。

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tsukui:ああ、まさにそうですね。

フセ:LUNA SEAで言うところのSUGIZOよりINORANみたいな。あまり前に行くような立ち位置じゃないんですけど、僕はそういうギタリストが好きなんですよ。そこで「格好良いな」と思う瞬間があったんだと思います。あんな普通の4人編成では出せない数の音を全部tsukuiさんが頭の中で作っていると思うと、僕は恐ろしくて仕方がない…。

tsukui:曲を作るときは、だいたいギターから作ることが多いんです。弾いていたコードの響きから、頭の中でふわっと画が浮かぶことがあるんですよ。それは動いてる景色だったり、その景色から切り取った絵だったりするんですけど、そういう映像に対して音楽を付けていくっていう。そこからビートも頭の中で鳴らしたりして、ある程度自分で作ったものをスタジオに持って行くんです。スタジオではコード進行と曲の構成だけ伝えて。バンドでそのイメージを徐々に具現化していきます。最初の曲の種になる部分は僕が作って、そこからメンバーと育てていくような感じで作っていくんですよね。

●9/3に『prismatic telescope』がリリースされましたが、今回が初めての全国流通盤ですよね。きっかけは何だったんですか?

tsukui:去年、2nd E.P『triangle』をリリースして、レコ発イベントでお客さんが沢山来てくれている中でライブができて、「なにかひとつ目標を作ると自ずと近づいていって、達成できるんだ」っていう手応えを感じられたんですよね。それまでは「どうしたらいいんだろう?」ってずっと悶々としてバンドを続けていたんですけど、今年は年間でプランを立てて、1〜2年先のビジョンをある程度作った上で活動していこうと思ったんです。そこで9月に音源を出すことを決めて、それに向けて動いていこうとした時に、ちょうど流通会社から「CDを出しませんか?」っていう話がきて。良い機会だし、どこまでできるかやってみたいと思ってミニアルバムをリリースすることにしたんです。

●そんな今作ですが、フセさんがジャケットの帯にコメントを寄せていますね。

フセ:はい。愛を込めて書きました。

tsukui:読んだ時に震えましたね。グッときました。

urano:すごく嬉しかったですね。

●フセさんは今作を聴いた中で、特に印象に残った曲はどれですか?

フセ:M-4「monochrome」です。サビで転調するんですけど、それが格好良いんですよ。

tsukui:「monochrome」は僕が一番「これは上手く作れたな」っていう曲で、初めて4人でしっかり色んなものを共有して、純度の高いものを作れたと思えたんですよね。それまでは、どこかしら自分がメンバーを引っ張っていた自覚があったんですけど、押し付けになりかねないような所もあったりして、その時に「だったら1人でやればいいじゃん!」ってドラムのtakakuraに怒られたんですよ。そこで自分の意識が変わったんですよね。この曲のサビはuranoが作っていたりして、自分の想像を超えた初めての作品だったんです。

安易に気付いてほしくないっていうところがあるんでしょうね。歌詞を深く掘り下げてくれた人だけに気付いてほしいというか。(フセタツアキ)

フセ:M-2「shikijitsu」も良いですよね。歌詞を読むとスッて入ってくる。

●「shikijitsu」はセルフライナーノーツでも“大切な友人の大切な日を思って書きました”と書いていて、内容が具体的ですよね。

urano:この歌詞は、大事な友達が結婚した時に書いたんです。すごく幸せに溢れていて、それが優しい光と強い光が混ざっている感じがして、パッと歌詞のイメージが湧いたんですよね。

フセ:M-7「far side of the horizon」も良いですよね。

tsukui:この曲は普段あまり作らないような明るいイメージだったので、感謝の気持ちを伝える曲にしたいと思ったんです。今まで、好きな奴も嫌いな奴も沢山いましたけど、そういう出会いがあったからこそ培われた僕らがいるっていうのを感じて、その人達に感謝の気持ちを込めて無償の愛を歌おうと僕は思ったんです。でもuranoはすごく嫌がって(笑)。

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urano:もちろん大事だと思うんですけど。それをドンと出すのは自分ではできなくて、遠回しに伝える言葉は「monochrome」とか、他の曲にも入れているんですけど。こう、“LOVEっ!!”みたいなのは…。

フセ:LOVEを全面に出したくないっていうことですよね。それ分かる。

●フセさんも同じ考えなんですか?

フセ:そう思っていたんですけど、最近作った未公開の曲の歌詞に“I Love You”とか入っています(笑)。ただ、ストレートな意味での“I Love You”とはまた違う意味で、感情のひとつとしての“Love”みたいなニュアンスで。安易に気付いてほしくないっていうところがあるんでしょうね。歌詞を深く掘り下げてくれた人だけに気付いてほしいというか。

●シキサイパズルの歌詞は“夜”や“寒さ”を連想させる言葉が多いですよね。その辺りでみなさんに共通した世界観があるのかなと。

tsukui:やっぱりuranoが雪国(長野)出身なので。

フセ:雪国のグルーヴがあるのかもしれないですね(笑)。確かに歌詞を書いたり、曲を作る時に、原風景として地元の十和田市があります。この間久しぶりに帰ったら、やっぱりそこにしかない空気がちゃんとあって。ヨルニトケルの根幹って、そこにある街の冷たさであったりとか、人の優しさがあるので。田舎すぎて何もなくて、好きなこともできなくて、でも東京に来てからあの頃を思い返すと、あの街にしかないものを感じるというか。そういうところを曲に詰めている気はします。

●tsukuiさんとフセさんはお互いギタリストで作曲もされる立場ですけど、そういう話を2人でしたりしますか?

フセ:よくしますね。この間も居酒屋で夜9時くらいから翌朝の5〜6時くらいまでずっと2人で飲んでいました(笑)。曲への向き合い方とか、歌詞をどうしているとか。普段そういう深い話ってあまりしないんですけど、tsukuiさんとはよく話すんですよね。

tsukui:あの日、最後は駅前でずっと話してたよね。

フセ:居酒屋が3時で終わっちゃって、その後に駅前のベンチでアイスを食べながら話していました(笑)。

●仲が良いですね(笑)。何を話したんですか?

フセ:下らない話もしましたけど、主に音楽の話をしていましたね。僕はSuckとヨルニトケルという2つのバンドで活動をしていて、Suckは事務所に所属していますが、ヨルニトケルに関しては自分が主導権を握って4人で話し合って作っていかなきゃいけないんです。そんな中で突然、シキサイが自主レーベルを作って流通盤をリリースしたっていう話を聞いてビックリして。僕もその辺をすごく勉強がしたくて。だからtsukuiさんを飲みに誘って「一体あなたは何を考えているんだ!?」って聞いたりしました。もし僕らが自主で流通盤を出すことがあったら、それはシキサイの影響だと思います。

●なるほど。

tsukui:何で全国流通を選んだかというと、今は都内が中心であまり遠方に行けていないんですけど、それでも遠方の方にも僕らの音楽を届けたいと思ったからなんです。これからは僕らの熱量を伝えに全国の人にライブを観てもらえるように、自分たちから足を運んでいけるような環境で活動ができると良いですね。

Interview:馬渡司

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