音楽メディア・フリーマガジン

山人音楽祭2016

故郷を愛し、仲間を愛し、音楽を愛した群馬のフェス

2016/9/24@ヤマダグリーンドーム前橋

G-FREAK FACTORY / ROTTENGRAFFTY / RHYMESTER / HEY-SMITH / MONGOL800 / キュウソネコカミ / 東京スカパラダイスオーケストラ / WANIMA / 10-FEET / NAMBA69 / tricot / SA / My Hair is Bad / SHANK / ヤバイTシャツ屋さん / 四星球 / HAWAIIAN6 / NakamuraEmi / サイプレス上野とロベルト吉野 / 竹原ピストル / DJダイノジ / 山人MCバトル(NAIKA MC、崇勲、TK da 黒ぶち、GOLBY、MAKA、SAM、サイプレス上野、N∀OKI)

“GUNMA ROCK FESTIVAL”が“山人音楽祭”に生まれ変わり、2年ぶりに帰ってきた。9月の涼しい風を全身に浴びながらグリーンドームを眺めると、群馬での熱いライブの記憶が蘇ってくる。G-FREAK FACTORYの呼びかけに集った猛者たちによる、群馬でのロックの祭典。数多くのオーディエンスが列を成し、開場の時を待つ。いよいよこの日がやってきた。群馬に帰ってきた。

ROTTENGRAFFTYがトップバッター、10-FEETがトリ前、G-FREAK FACTORYが大トリ。タイムテーブルが発表されたとき、この3者の関係性を知る者は心が震えたはず。

10年以上前、G-FREAK FACTORYのVo.茂木、10-FEETのVo./G.TAKUMA、ROTTENGRAFFTYのVo.N∀OKIが「この中で最初にフェスを主催できるようになったバンドが他の2バンドをフックアップしよう」と誓い合ったという話は、当誌でことある毎に何度も書いてきたエピソード。更に、“GUNMA ROCK FESTIVAL 2014”にやむなく出演できなかったNAMBA69が榛名STAGEのトップバッターを飾ること自体にも胸が熱くなる。すべての出演者には意味があり、それぞれの意志と気持ちを感じることが出来るフェス。バンド主催のフェスは、そういった背景や感情も含めた魅力に溢れている。

高崎頼政太鼓が繰り出す太鼓の音に気持ちを駆り立てられた後、ROTTENGRAFFTYのN∀OKIが「群馬!」と叫んで“山人音楽祭2016”がスタート。RHYMESTARがヒップホップならではのステージングでオーディエンスを熱し、HEY-SMITHはアリーナから3階席まで満遍なく興奮させ、MONGOL800は全員が大合唱する巨大な一体感を作り出す。榛名STAGEのNAMBA69やtricot、SAも負けてはいない。全出演者が熱く、オーディエンスの全員が熱い。

普段は競輪場として使われているグリーンドーム、この日は音楽一色に染まる。音にまみれ、常にどこかのステージでライブが繰り広げられている祭典を、観客は思い思いに全力で楽しんでいる。

赤城STAGEではキュウソネコカミ、熱気が充満する榛名STAGEではMy Hair is Badがライブを繰り広げる中、屋外の妙義STAGEに目を移せば竹原ピストルが「よー、そこの若いの」を始めるところだった。彼の歌にグッと聴き入り、心を震わせる。ジャンルを超えた豪華なメンツ、いったいどのステージを観ればいいのか、いつフードエリアに行けばいいのか、悩んだ者も多かったはず。

そして特筆すべきは、妙義STAGEで行われた「MCバトル」が最強に強烈だったこと。歴戦のラッパーたちに加えてROTTENGRAFFTYのVo.N∀OKIが参戦したフリースタイルラップのトーナメント。2人ずつが対戦し、勝敗を決めるのは観客の拍手というギリギリの緊張感。その日その場でしか生まれない瞬間の連続は、バンドのライブにも大いに通じるものがあり、まさに対バン形式の真骨頂を味わうことができる。優勝したNAIKA MCはもちろんのこと、参加した全ラッパーに盛大な拍手が贈られた。

東京スカパラダイスオーケストラ、WANIMA、ヤバイTシャツ屋さん、四星球…出演者たちの全力のステージにオーディエンスが歓喜の声をあげ、モッシュし、ダイブし、音を全身で浴びる快感の連続。いよいよ“山人音楽祭2016”は佳境に入る。

TAKUMAが「群馬ロック! 復活おめでとう!」と叫んで始まった10-FEET。「RIVER」のイントロが鳴り響いた瞬間の興奮は鮮烈。TAKUMAはMCで、10-FEETやG-FREAK FACTORYがバンドを始めたころから続けてきた対バン形式のイベントの魅力とそこに込めた想いを語り、それはフェス規模になってもまったく同じで、「だから会場に関係なく全部の出演者はめっちゃいいから本当に全部観て欲しい!」と叫び、「アンテナラスト」を聴かせた後、会場が揺れるほど盛り上がった「その向こうへ」でバトンを繋ぐ。そのバトンは榛名STAGEで凄まじいライブを繰り広げたHAWAIIAN6を経て、いよいよG-FREAK FACTORYの手に渡る。

楽器陣がジャムる中、頭からすっぽりをフラッグをかぶった茂木がステージに登場。そのまま彼はぽつりぽつりと言葉を吐いた。

「21バンド、8人のMC、6人のペインター、全てのスタッフ、高崎頼政太鼓、すべてのバトンを背負って、オールドヤンキー、G-FREAK FACTORYやります」という言葉でライブがスタート。

押し寄せる「Unscramble」のソリッドなサウンドに会場は大興奮、各所から歓声が沸き起こり、グリーンドームは巨大なライブハウスと化す。「日はまだ高く」「SOUL CONNECTION」で大きな一体感を生み出した後、茂木は会場後方に掲げられた歴代のGUNMA ROCK FESTIVAL フラッグを指さし「聖地グリーンドームに過去のフラッグ掲げて立ってんだ。こんな幸せなことがあるか!」と喜びを叫ぶ。

群馬から2016年の世の中を見つめた情景が胸の奥まで染み込んでいく新曲「ダディ・ダーリン」、言葉の1つ1つが心に強く突き刺さる「Too oLD To KNoW」。やっぱりG-FREAK FACTORYは最高だ。これが彼らにしか表現できないレベル・ミュージックだ。オーディエンスの上で熱唱した茂木はステージに戻り(セキュリティに戻してもらい)、最後のメッセージとして「ありがとう、山人音楽祭!!」と叫んで「EVEN」で締め括る。「群馬が生んだ最高傑作、G-FREAK FACTORYでした! ありがとう!」と言って彼らはステージを去った。

故郷を愛し、仲間と一緒に作ったイベントを、まるで地元の友達に自慢するように誇ること。G-FREAK FACTORYが“山人音楽祭”で成し得たことは、数多くのバンドにとって、そして我々にとって、とても意味があることだったように思う。地に足をつけて思いの丈を鳴らすかっこいいアーティストがこんなにたくさんいることを、こんな素晴らしいフェスに観客の1人として関われたことを、なんというか、1人でも多くの友達に自慢したい。

TEXT:Takeshi.Yamanaka

 

 

 

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