音楽メディア・フリーマガジン

ヤバイTシャツ屋さん

常にぼくらの予想の斜め先を突くヤバTの最新形態

『NHKフレッシャーズキャンペーン2018』のイメージキャラクターに大抜擢され、モード学園TVCMソング「鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック」収録のシングル『げんきいっぱい』を5月にリリースし、自身のツアーはもちろん今夏も各地のフェスでオーディエンスと共に暴れまくっているヤバイTシャツ屋さん。飛ぶ鳥にタンクトップを着せてから落とすほどの勢いでシーンを疾走する彼らが、ライブ激アガり必至のリード曲「KOKYAKU満足度1位」を含むニューシングル『とってもうれしいたけ』を完成させた。のびのび作ったという今作について、3人にのびのびと話を訊いた。

 

「タイアップが付いた後の大事な時期に、『とってもうれしいたけ』というタイトルでのびのびと作った曲を入れたCDを出すなんて、頭おかしいなと思うんですよね、やっぱり」

●6th Single『げんきいっぱい』(2018/5/16)のリリースツアー“げんきいっぱい” TOUR 2018はメンバー3人の出身地凱旋という趣旨がありましたが…。

こやま:6/18の大阪・高槻RASPBERRYの公演の日に地震があったんですよ。

●高槻公演は延期になりましたが、当日地震があったんでしたっけ?

しばた:そうなんです。ちょうど朝、出発しようとしてたときに。

こやま:それで延期にして、次の京都KBSホールでのライブも、実施はするけど振替公演もやりますっていう。

しばた:来れない人のために。

●優しい!

こやま:でも今から思えばよくそういう判断をしたなと我ながら思います(笑)。

もりもと:色んな人に協力していただいたおかげで。

しばた:うんうん。

こやま:だから結果的に良かったです。みんなそれで納得してたから。

●なるほど。夏はフェスで忙しい日々だったと思うんですが、9/19に7枚目のシングル『とってもうれしいたけ』をリリースするということで、これはいつの間に作ってたんですか?

もりもと:6月頃かな? “げんきいっぱい” TOUR 2018の前ですね。

●作品のイメージはあったんですか?

こやま:ここ最近…というか前作がポップなものだったので、次はちゃんとゴリゴリとしたものを作りたいなっていうのがあって。メッセージ性も最近込めすぎたし、それも次はやめようと。

●反動ばかりですね(笑)。

しばた:基本反動です。

こやま:「深読みしたらいいこと言ってそうに聴こえるけど、実はこいつ何もいいこと言ってないな」というラインを目指しました。

●ハハハ(笑)。前作からの振れ幅で考えつつ、おそらくこやまさんの性格上同じことの繰り返しを避ける傾向もあるんでしょうね。同じことはつまんないと。

こやま:そうですね。

●そんな反動から生まれたM-1「KOKYAKU満足度1位」ですが、かなりキャッチーだし、何よりライブ映えする曲ですね。

こやま:まさにタイトル通りなんですけど、きっかけはお客さんが満足するような曲を作りたいなと。「おい!おい!」とかコールを入れて、わかりやすく盛り上がる。

●テンポがかなり速くて、スクリーモ的なパートもありますよね。

こやま:タイアップとか付いてないので、自由に作ったんです。

もりもと:やりたい放題、みたいな。

●ということは新しいものを生み出したというより、自分たちの中にある引き出しから作った感じ?

こやま:あ、そうですね。速さとかは新しいと思いますけど、原点に戻って、あまりメッセージを込めないというか、深いこと考えずに悪ふざけするというか。やっぱりちょっといいこと言いたいっていう気持ちが前まであったんですけど、また一周まわってきて、前に作っていたような肌触りの曲にしたいっていう。

●何も考えずに思い切り振り切れる曲。

こやま:そうそう。前みたいな感じに新しい要素を入れる。新しい要素というのはスピード感だったり…たぶんインタビュアーの人とかは「前までメッセージや深読みする要素を入れてたから今回も入れてるんやろ。お、なんかいいこと言ってそう」って一生懸命挑んでくれはると思うんですけど。

●はい。僕も“何のメタファーだろう?”と思いながら聴いてきました。

こやま:ですよね。でも今回は別に深読みしなくて大丈夫です(笑)。

しばた:メッセージ性が見当たらない。

●ハハハ(笑)。先ほど「スピード感」とおっしゃいましたが、この曲のスピード感を出しているのはテンポだけじゃなくて、言葉を詰め込んだり掛け合いを入れたりしている部分も大きいと思うんです。こういうのはもともと得意とするところなんですか?

こやま:得意とするところですね。なんか男女がすばやく入れ替わるような掛け合いをしたかったんです。せっかく僕ら男女ツインヴォーカルやから。この曲を作っていたのはそういう気分やった時期ですね。

●「KOKYAKU満足度1位」が出来て、その後カップリングを作ったんですか?

こやま:いや、時系列的には「タンクトップくんのキャラソン」をいちばん最初に作って、その後「君はクプアス」を作ったんです。

もりもと:リード曲残しです。

こやま:僕は後回しにする癖があるんです。

しばた:逆に言うとカップリングの曲は早く出来るんです。

●力が抜けているから?

こやま:そのとおりです。

●力が抜けた状態で作ったカップリングのM-2「君はクプアス」ですが…この人はいったい何のことを歌っているんだろう? と思いました。

しばた:曲の後半にいくにつれてそう思いますよね。

●「君はクプアス」は一瞬、真面目なラブソング的な曲かと思ったんです。男女ツインヴォーカルの。

こやま:はい。

●でも聴き進めていくと…これ何なんですか?

こやま:クプアスはフルーツなんですよ。「アサイーの次にくる」と言われているんです。

●いや(笑)、クプアスは調べたからフルーツのことだっていうのはわかるんですが(※クプアスはアサイー以上に栄養価が高く“神の果物”と言われているらしい)、なぜこれを題材にしたのか? という大きな疑問が。

こやま:カフェに行ったらあったんですよ。クプアスジュースっていうのが。

●あ、実際にあったのか。

こやま:「なんやこれ?」と思って。“クプアス”という単語は聞いたことが無いじゃないですか。

●はい。今回人生で初めて知りました。

こやま:だから珍しいなと思ってクプアスジュースを飲んでみたら、まあなんとも言えない味で。美味しいんですけど、個人的には好んで飲む味ではないなと。ちょっとチョコレートっぽいというか、カカオっぽい味なんです。

●ほう。

こやま:“結局クプアスって何なんやろ?”と思ったんですけど、ちょうどそのときに「君は◯◯」というタイトルの曲を作りたいと思っていて。「君は◯◯」って色んないいものに例えたりするじゃないですか。

もりもと:星とか。

しばた:きれいなお花だとか。

●はいはい。

こやま:世の中にも「君は◯◯」と例えた曲はいっぱいあると思うんですけど、自分で作るとしたら変なものに例えたいなと。そこで得体の知れないクプアスに例えようというのを思いついて。見た目とかはちょっと気持ち悪いじゃないですか(笑)。

●クプアスは花もちょっと気持ち悪いんですよね。

こやま:でもそこで“感性は人それぞれだよ”ということを伝えたかったんです(笑)。そういう曲です。

●ハハハ(笑)。前回のインタビューでも同じようなことは言いましたが、「君はクプアス」なんて真面目な歌詞を付けたらめちゃくちゃいい曲になると思うんですよ。ハーモニカもグッとくるし。

しばた:いいですよね。もりもとくんのハーモニカ。

●あ、もりもとさんが吹いてるんですね。前から吹けるんですか?

もりもと:レコーディング前日に買いに行って、当日それっぽく吹きました。

しばた:吹いたの初めてやんな?

もりもと:はい。

●え、まじで。

こやま:「この曲にハーモニカ入れたいからもりもと買ってきて」と言って。

もりもと:ハーモニカは「息を吐いたり吸ったりして音が鳴る」というくらいしか知識がなかったんです。

●ええっ!

こやま:でもその割には上手ですよね? 僕が1回やってみたら全然うまくいかなくて。もりもとはハーモニカの才能があるんです。

しばた:上手やった。

もりもと:母親は鹿児島出身なんですが、(同じく鹿児島出身の)長渕さんの曲ような和音を響かせる感じをイメージしました。

●すごいな。あと、いちばん最初に出来たというM-3「タンクトップくんのキャラソン」はめちゃくちゃポップな曲ですよね。

こやま:前作に収録していた「ざつにどうぶつしょうかい」と同じ時期に作ったんです。前の『げんきいっぱい』も3曲目の「ざつにどうぶつしょうかい」は子供向けに振り切った曲というイメージで作ったんですけど、今回も3曲目は子供向けに振り切った曲にしようと。

●タンクトップはバンドのテーマと言っても過言ではないと思うんですが、タンクトップくんを主人公にしたアニメの主題歌みたいな曲ですね。

こやま:あ、まさにそういうイメージです。いずれアニメにしようと思っていて。

●え? 本当に?

こやま:はい。いつかは。だから先にキャラソンを作りました。

しばた:珍しいよな。普通はアニメありきやのに。

もりもと:でも曲を聴いてると画が浮かんでくるよね。

しばた:確かに。想像しやすい。

●歌詞にはストーリーもあるから、映像が浮かびやすいですよね…子供受けしやすい曲というのがよく分かります。

こやま:幅広い年齢層のお客さんに聴いてもらいたいんで。

●ホームページもいまだに50代女性をターゲットって書いてありますもんね。

しばた:そうです。

もりもと:実際ライブ会場で客席に40代、50代のお客さんもいたりするので嬉しいです。

こやま:小ボケで書いていたのにほんまに来てくれるようになってきましたね。

しばた:実際本当にライブ会場でもそれを実感できるように少しずつなってきました。

●確かに。ヤバイTシャツ屋さんというバンドにはその可能性を感じます。

こやま:頑張ります。

●というか…ここまで話を聞いてわかったんですが、要するに今回の3曲はとてものびのびと作ったと。

こやま:そうですね(笑)。のびのび作ってますよね。

じばた:自由やったな。

こやま:タイアップが付いた後の大事な時期に、『とってもうれしいたけ』というタイトルでのびのび作った曲を入れたCDを出すなんて、頭おかしいなと思うんですよね、やっぱり。

●“頭おかしいな”というのは褒め言葉ですよね。僕が感じたのは「君はクプアス」や「タンクトップくんのキャラソン」のような曲がこやまさんの頭の中で生まれる理由は今まで取材してきたのである程度理解できるんですが、よく誰もストップをかけずにCDになるまで辿り着いたなと。

こやま:本当ですよね。空気感的に誰も疑問を持ってないですもん。

しばた:そうやな。

もりもと:僕はたまに言うんですよ。「これ大丈夫?」って。

●アハハハ(笑)。

こやま:もりもとだけは言う(笑)。

しばた:でももりもとが「これって大丈夫なん?」って言った曲が逆にお客さんに好評だったりするんです。「ハッピーウェディング前ソング」(5thシングル『パイナップルせんぱい』/2nd フルアルバム『Galaxy of the Tank-top』収録)とか。

もりもと:まあでも今までこうやってやってきたし、メンバーと言えどすべてがすべて共感するわけないじゃないですか。

しばた:「ヤバみ」(4thシングル『どうぶつえんツアー』/2nd フルアルバム『Galaxy of the Tank-top』収録)とかもね。

もりもと:うん、“ヤバみ”という言葉もチャラい感じがしてちょっと苦手やったんですけど、でもこやまさんの感性に乗っかって今までやってきたので、世に出てみないとわからないなと思ってます。だから止める人は居ないですし、僕が言って止まることはまずないです。

一同:アハハハハ(笑)。

Interview:Takeshi.Yamanaka

 

 

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