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G-FREAK FACTORY 茂木インタビュー たくさんの“未来の約束”のために、バンドは大きくなっていく。

G-FREAK FACTORY 茂木インタビュー たくさんの“未来の約束”のために、バンドは大きくなっていく。

 
2018年、自身初となる日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブ、そして初の2日間開催となった“山人音楽祭”を大成功させた群馬発、最強のローカルバンド・G-FREAK FACTORY。多くのものを背負い、たくさんの“未来の約束”を守るため、彼らは待望の新作・ダブルA面シングル『FLARE/Fire』を完成させた。3曲ながらもバンドが持つ様々な要素を詰め込んだ濃厚な今作は、ライブハウスでオーディエンスを熱狂させるエネルギーに満ち溢れている。G-FREAK FACTORYはたくさんの“未来の約束”のために、更なる成長を遂げた。
 


 
「それまでライブハウスがあるかもわからないし、メンバーの誰かが病気になるかもしれない。だけど俺たちは約束をするんですよ。その先の」


 

●2日開催となった昨年の“山人音楽祭2018”ですが、印象的だったのは、茂木さんが常に客席エリアのどこかに居たことで。
 
茂木:客席エリアをずっとウロウロしてましたね(笑)。自転車に乗って。
 
●そんな茂木さんを見ていて“すごいな”と思ったことがあって。今まで毎年行かせてもらってますけど、いつも客席エリアで茂木さんと会うとその場で色々と話しますよね。でも昨年はお客さんが「握手してください」という感じでワーッと寄って来て、ほとんど会話できなかったんです。それが今までとは違っていて、やっぱり積み重ねがそういう状況を生んでいるわけで、“背負うってこういうことなのかな”と思ったんです。あんな大きな規模のイベントなのに、会場全部に目を行き届かせようとしてきた結果というか。
 
茂木:なるほど。お客さん目線はバックヤードに居たら味わえないし、発見できることもあるんですよ。当然もともと色んなことを想定して準備しているけど、ちょっとずれていることとか結構あるんですよね。
 
●うんうん。
 
茂木:俺たちはそこをちゃんと見直さなきゃいけないし、1つでも嫌な思い出があるとみんなのイメージをダメにしてしまう。“このフェスに来てよかった”と思ってもらえるようにするにはどうしたらいいんだろう? ってずっと考えながら動くし、他のフェスに出させてもらった時も、そういう部分を癖で見てしまう。特にローカルフェスだとそうなりますね。
 
●なるほど。
 
茂木:“こんな感じの飾り付けやってるんだ”とか、“こんな風に地元の人たちがこのフェスを愛してんだな”とか、そういうことをいちいち紐付けていくというか、そういう風に自分の中で癖みたいなものがついてきて。だから「“山人音楽祭”をこうしていきたいな」とどんどんイメージができていく。
 
●自身のライブに関しては、いつメンタル面の準備をしているんですか?
 
茂木:当日はずっと準備してますよ。ずっと準備して、最後は“本当にこれでいいのか?”って自問自答して、結局最後は“もう自分を信じるしかない”っていうところになる(笑)。“これでいいんだ、やるぞ”って(笑)。
 
●一周まわって元に戻ってくるというか。
 
茂木:そうですね。常にオンなので主催フェスとしての疲れっていうか、エネルギーはめちゃくちゃ使うんです。朝イチに会場入って、そこでは色々自分が把握してない部分も動いていて、“うわー! すげえな!”って感じながらずっとずっと自分を盛り上げていく感じ。俺たちの地元・群馬で、誰かと誰かが出会って仲良くなって欲しいし、フェスとかイベントってそういうものだと思ってて。バックヤードはそんな感じで、フロアは“みんな怪我してねえかな?”とか“こっちからお願いすることじゃないけどマナー守れてるかな?”とか“ストレスないかな?”とか、そういうことをずっと気にかけてますね。
 

 
●今年も開催が発表されましたが、“山人音楽祭2019”楽しみにしてます。ところで今回リリースとなる『FLARE/Fire』は新曲が3曲収録されていますが、曲は“山人音楽祭2018”以降で作ったんですか?
 
茂木:そうですね。最初にM-2「Fire」ができて、次にM-3「GOOD OLD SHINY DAYS」、いちばん最後にできたのがM-1「FLARE」です。
 
●「Fire」は始まりからの起伏がすごく大きいですよね。静かに始まって“聴かせる系の曲なのかな?”と思ったら全然そんなことない。テンポや勢いでリスナーを燃やすというより、曲の中にある熱で炊きつけるというか。
 
茂木:「Fire」はトータル的なイメージがずっとあって、そこに今思うことを綴っていこうと思って歌詞を乗せていったんです。
 
●トータル的なイメージというのは、サウンドですか?
 
茂木:サウンドですね。サウンドとサビのニュアンス。それは「カモメトサカナ」を録る前からあって。
 
●1年以上前から頭の中にアイディアがあった。
 
茂木:特に楽器を弾きながらとかではなく、ぼんやりとしたイメージなんです。それを後からギターで「俺はこういう風に歌いたいんだな」という感じで拾っていく作業でした。
 
●曲の原型というかアイディアが沸くのは、なにかきっかけがあるんですか?
 
茂木:ふとした瞬間ですね。俺は曲ができるのは偶然だと思ってて、作ろうと思った時は引き出しを開けて、ピースを埋めこんで組み合わせるだけだと思っているんです。
 
●ほう。
 
茂木:日々の中で偶然出会った言葉とかメロディの組み合わせ。メロディなんてシチュエーションが違えば全然違うものが出てくる。例えば車の中で聴く音楽と青空の下で聴く音楽は全く違うし、みんなで聴く音楽とひとりで聴く音楽は全然違いますよね?
 
●そうですね。
 
茂木:レコーディングは“決める時”ということだから、決めるまでの時間にどれだけいろんな引き出しやアイディアやユーモアを貯めることができるか、そしてそれを本当に好きになれるかどうか吟味をするというか。でもその偶然に出会っちゃえば、曲なんて1日で書けると思うんです。
 
●なるほど。「Fire」の歌詞については、かなり抽象的ですよね。
 
茂木:この曲の歌詞は…俺がバンドを日本語でやるようになってからずっと根底にある“時間”というものがテーマになっていて。
 
●時間?
 
茂木:過去、今、未来。この3つをかなり意識していて。過去をもうちょっと感じることで未来も全然変わってくると思ってるんです。当初はもっと、例えば震災とか戦争のことをはっきりと「Fire」の歌詞で表現しようと思っていたんです。
 
●あ、そうなんですね。
 
茂木:でも“なんか違うな”と思って、それをどこまでシンプルにできるか。紐解いて、砕いて、最終的にこういう歌詞になりました。
 
●この曲はシンセが入っていますが、この壮大なアレンジのアイディアは?
 
茂木:最初にサポートのキーボーディストにイメージだけ伝えたら、すげえものが返ってきたんです。歌を録った後に「ここに着色してくんねえか?」って感じで。
 
●この曲は、今回の3曲の中でいちばんG-FREAK FACTORYらしさが強いですよね。
 
茂木:俺もそう思います。G-FREAK FACTORYがやってそうでやってなかったこと。新しくもあり決して媚びてない。そこが俺は好きですね。
 
●一方で、「GOOD OLD SHINY DAYS」は懐かしくてポップなテイストですが、これはどういうきっかけでできた曲なんですか?
 
茂木:俺、曲を作るときって持っているCDを聴き返すんですよ。それで今回の制作でオールディーズを聴いた時に“なんて素晴らしいんだろう”と改めて感動したんです。
 
●オールディーズというと、50〜60年代くらいの音楽ですかね。
 
茂木:うん。その音楽の背景にはベトナム戦争なんかがあって、激動の時代だったんだろうなって…そういうことを思いながら聴いていたんですけど、そしたらなんかオールディーズみたいな曲を作りたいという気持ちになって。
 
●なるほど。
 
茂木:俺がガキの頃、DJパーティーによく行ってたんです。
 
●え? DJパーティー?
 
茂木:高校生の時に。そこで音楽を教えてもらったのが大きくて。
 
●群馬で?
 
茂木:群馬で。洋服屋さんが何店舗かでDJパーティーをやっていたんですよ。今あるイベントのはしりですよね。
 
●すごいですね。
 
茂木:今考えてみるとすごかったですよね。高校生なのにクラブに行って、当時のいわゆるストリートカルチャーはそこで教えてもらったんです。当時は随分大人に見えた、3つか4つくらい年上の先輩が遊んでる状況っていうのがすごく印象的で。そこで色んなことを教えてもらったんです、ファッションも音楽も。ミックステープみたいなのものも知ったし。
 
●そこでオールディーズを知ったんですか?
 
茂木:オールディーズももちろんその時に。その時に聴いてたものは今も根底にあるし、消そうと思っても消せないし、むしろ消しちゃダメだと思っていて。だったらそれを出そうかっていうことで「GOOD OLD SHINY DAYS」で形にしたんです。
 
●3曲の中で最後にできたという「FLARE」ですが、この曲はミクスチャーの要素が色濃く出ていますね。作曲クレジットはバンド名義になっていますが。
 
茂木:さっき言ったようにいろんな音楽を聴き直していく中で、「やっぱり90年代のミクスチャーかっこいいな~。もう邦も洋もかっこいいな~、豊富だな~」と思って、「こういうのやりてえ!」という気持ちが盛り上がったんです。とにかく理屈抜きでちゃんと転がっていく感じ。だから1人で作る世界観というよりも、みんなで作った方がいいと思って、スタジオでみんなで作ったんです。
 
●聴くと巻き込まれる感じがするんですよね。特にライブで威力を発揮するタイプ。
 
茂木:うん、ライブでやる曲になるでしょうね。
 
●それにこの曲の歌詞は、強くて鋭い言葉が多いですよね。サウンドが持つエネルギーがこういう強い言葉を呼んだんでしょうか?
 
茂木:そうですね。誰かがコンポーザーになるわけでもなく、みんなで作ろう、みんなでイメージをしよう、というところから入ったんですが、最初は少し照れちゃうんですよね。でもやっていくうちに閉まってた引き出しをみんなが開けてくる。それがなんか嬉しくて快感で、恥ずかしさもどんどんなくなっていく。ダメだったらダメでしまえばいいだけの話だから、思い切りやってみようと。その結果、強い言葉が出てきた。
 
●うんうん。
 
茂木:それにドラムがP×O×Nになってこういう曲をやるっていうのは理にかなってるというか。ドラマーとしてのあいつのいいところも絶対出せる曲だと思うんです。だから決まってからがめちゃくちゃ早かった。昔の作り方ですよね。
 
●昔の作り方?
 
茂木:スタジオに1本だけマイクがあって、そのマイクでずっとテープに録音しながら練習する、みたいな。それに近い状態で作ったんです。録ったものをみんなで聴いて「この部分いいんじゃない?」みたいなやり取りをして。久々にこういう作り方をしたんです。でもこういうタイプの曲は、そういう作り方がたぶん俺たちは合ってるんですよ。コンポーザーがいるわけでもなく、誰かが引っ張るわけでもなく、みんなで互いに音を感じながらやっていく方法がいいなって。すっげえ手間がかかるんですけど(笑)。
 
●それって何パターンも作るということですよね?
 
茂木:うん、何パターンもできましたね。何パターンもできたし、持ち帰って練り直したりもしたし。構成をみんなで考えたり、その場で決めたり。
 
●G-FREAK FACTORYは若気の至りで曲を作る年齢ではないと思うんですが、定期的にこういうエグい曲を作りますよね(笑)。
 
茂木:まあこういう側面はもぐりがちですけど(笑)、でも要はそこなんですよ。そのもぐりがちな部分を前面に出してみたくなるんです。この曲と「ダディ・ダーリン」を同じバンドがやるって想像できないし、でも1本のライブの中でこの曲と「ダディ・ダーリン」をマッチさせるステージが想像できるか? って言われたら、俺はできる。
 
●うんうん、常にG-FREAK FACTORYが持ってきた要素ですよね。ちなみに今作のリリースツアーですが、シングルながらかなりの本数ですね。
 
茂木:『カモメトサカナ』のツアーが6本で最後が野音だったので、今回はちょっと細かくまわろうということにしたんです。俺たちは土日中心にライブをやるバンドなので、どうしても本数入れたかったら期間的には長期になりますよね。
 
●長いツアーになると、曲の感触もライブを重ねるごとに変わりますよね?
 
茂木:変わりますね。育っていく場合もあるし、逆に「どうしても持っていききれない」っていう曲になってしまうこともある。想像通りというのはなかなかないんです。特にツアー初日とか、自分で作った曲なのにまだ身体に曲が入っていないから、他人の曲をやっている雰囲気になってしまう。だけどやっぱり強烈に育って欲しいなと思うし、強烈に育つイメージをしなきゃなと思います。でも、今回の3曲だったらちゃんとできるかなという手応えがあって。
 
●今回の3曲、おそらくライブにフィットしやすい曲ですよね。
 
茂木:そうそう。今回のツアーはかなり長い期間ですが、それまでライブハウスがあるかもわからないし、メンバーの誰かが病気になるかもしれない。だけど俺たちは約束をするんですよ。その先の。
 
●その先の約束。いいですね。
 
茂木:未来の約束ですよね。だから無責任にはやらずに、責任をちゃんと背負いながらバンドをやっていくっていう。ましてやすごく遠い先の話なんていうのは口約束に近いというか、覚え書きくらいの感じ。
 
●ツアー楽しみですね。
 
茂木:曲が育ってるといいな~。
 
●育ってるでしょ(笑)。
 
茂木:それと今回、各会場でその土地のローカルバンドに出てもらおうと思って調整中なんですよ。
 
●あ、おもしろそう。
 
茂木:俺たちはローカルバンドとしてやってきたので、ツアーバンドに誘ってもらえるのは嬉しかったですから。その土地でやっている奴らを観たいし、観てもらいたい。そのチャンスは今回だなと思ったんです。「ツアーで地元バンドといつかやりたい」とずっと思っていたんです。
 
●きっと今回のツアーでできた繋がりは、2〜3年後とかに芽吹いてくるような気がします。
 
茂木:違和感をずっと感じてたんですよ。
 
●ん? どういう違和感ですか?
 
茂木:例えば群馬のバンドが名古屋に行って、東京から来たバンドとツーマンをやって、東京から来たスタッフとイベンターさんに仕切ってもらって、その2バンドで飲んで各々帰る、みたいなこと…そこになんか違和感があるというか。もちろんライブイベントとして成立はしますよ。成立はするし、ライブというものはそうやって作っていくものだとなんとなく理解はできるんだけど、やっぱりその土地のローカルに根ざした奴らがどんどんデカくなっていく、みたいなのが俺は好きだから。仮に環境が劣悪だったとしても、「自分たちが動けばいい」という考えでアメリカのバンドはやっているんですよね。しかも日本の移動距離なんて比にならないくらいの距離を。
 
●なるほど。
 
茂木:それがツアーというものなんじゃないかなって。年齢とかキャリアとか関係なく、ローカルでやってるバンドと知り合えるのはすごく嬉しいですからね。
 

interview:Takeshi.Yamanaka
assistant:Yuina.Hiramoto

 
 

Member
Hiroaki Moteki(Vo.)
Hiroyuki”P×O×N”Watabe(Dr.)
Toshiyuki Harada(G.)
Nobuyuki Yoshihashi(Ba.)

リリース情報
ダブルA面シングル
『FLARE/Fire』

BADASS
[初回限定盤:CD+DVD]
BDSS-0036
¥1,600+税
[通常盤:CD]
BDSS-0037
¥1,000+税
2019/5/15 Release

ライブ情報
※6/9から“FLARE/Fire” TOUR 2019スタート!! 詳細はHPでチェック!!
 
more info→
https://g-freakfactory.com/

 
 
 

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