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ROTTENGRAFFTY 20th Anniversary Interview:響く都のROTTENGRAFFTY、20年目の全メンバーソロインタビュー

響く都のROTTENGRAFFTY、20年目の全メンバーソロインタビュー

2018年2月に6th アルバム『PLAY』をリリースし、全国47都道府県をまわる“PLAY ALL AROUND JAPAN TOUR 2018”のファイナルでは日本武道館でのワンマンを大成功させた響く都のドブネズミ・ROTTENGRAFFTY。京都パルスプラザでの開催は5回目となった主催フェス“ポルノ超特急2018”を経て、今年彼らは結成20周年を迎え、1月にはLIVE DVD/Blu-ray 『PLAY ALL AROUND JAPAN TOUR 2018 in 日本武道館』のリリースと、20周年を記念したツアー“20th Anniversary,Beginning of the Story”をスタートさせ、現在も同ツアーの真っ最中で、“ポルノ超特急2019”の開催が発表されたばかり。そんな今月号のJUNGLE☆LIFEでは、ROTTENGRAFFTYの20周年を記念して全メンバーソロインタビューを敢行。ROTTENGRAFFTYの“過去”と“現在”、そして“未来”を知るべく、5人に話を聞いた。
 
 
 

ROTTENGRAFFTY 全メンバーソロインタビュー 目次

N∀OKI(Vo.)
NOBUYA(Vo.)
KAZUOMI(G./Programming.)
侑威地(Ba.)
HIROSHI(Dr.)
 
 
 
 

N∀OKI(Vo.)

ステージの最前で吠え、歌い、言葉を紡ぐ。ROTTENGRAFFTYに於けるN∀OKIという存在は、ライブの先頭に立つ旗手であり、最強の飛び道具でもあり、そしてメッセンジャーでもある。その場で生まれた“活きた言葉”を吐く彼は、多くのバンドマンに愛され、そして多くのオーディエンスに衝撃を与えてきた。TAKUMA(10-FEET)と茂木(G-FREAK FACTORY)とN∀OKI…3人の盟約が形となった“ポルノ超特急”について、そして走り続けてきた20年について、彼がずっと追い求めている“強さ”について。まるで生き急ぐようにステージで魂を爆発させる、響く都が生んだ稀有なヴォーカリストに訊いた。
 


「俺の事なんか知らない人達の目の前で、そこでBOSSるっていうか、盛り上げてきたのがいまの自信に繋がってるんです。そういう現場を経験すればするほど強くなる」


 
●昨年10/3の日本武道館ワンマンは、バンドとしてのひとつの区切りのような気がしたんですが。
 
N∀OKI:そうですね。小さいハコだろうが大きいハコだろうが、アリーナだろうが、場所は関係ないという感覚ですね。
 
●はい。
 
N∀OKI:日本武道館はまっちゃん(パインフィールズ/610inc. 松原社長)に言われたんですよね。まっちゃんやスタッフチームから提案されて。まっちゃんが病気を患っていて、それがあいつの願いで、武道館まで「まだまだ生きるぞ!」って奇跡が起こって元気になっていくんやったらと。だから“まっちゃんの為”というのが、すごく俺の中でありました。
 
●松原さんのため。
 
N∀OKI:でも武道館でのワンマンを発表して、周りの人たちの反応から「武道館でワンマンできるのは凄い事」っていうのを教えてもらった感じがあって。親や周りの友達のバンドマン、バンドを辞めたやつとかにも「武道館おめでとう!」とか言ってもらって、そこで“そんなすごいことなんや!”と思えた。まあビートルズやストーンズがやっていたりして、日本武道館はすごい場所っていうのは頭で分かってたけど、後々になって“自分たちはどういう場所に立つのか”というのが分かってきたというか。
 
●なるほど。
 
N∀OKI:ライブに関しては、それまでのROTTENGRAFFTY史上、最高に良かったんじゃないですかね。まっちゃんに対しても、仲間のバンドマンに対しても、もちろんお客さんに対しても。一生残る経験ですよね。
 
●武道館でN∀OKIくんは「俺らに出来て君らに出来ないことはない。次はお前らの番や!」と言っていましたよね。
 
N∀OKI:俺らは結成したときに武道館なんて考えもしていなかったし。バンドによっては目標を立てて「日本武道館でワンマン!」とか「東京ドームで!」みたいなものがあったかもしれないけど、俺らにとっては夢のまた夢というか、夢にも出てこないくらいの話で。「東大行け」と言われているくらいのレベルで。メンバー間で「武道館いくぞ」なんてそれまで1回も言ったことないし。だから“そこまで来たのか”っていう実感はありましたね。
 
●それにお客さんも含めて、周りの人たちは自分のことのように喜んでくれていましたよね。
 
N∀OKI:特に俺らはいろいろ苦労してきたので(笑)。19年かけてゆっくりゆっくり進んできて。マキシマム ザ ホルモンのメンバーも番組に出たときに「泣きそうやわ」と喜んでくれたし、こっちからまだ何も言ってない段階で「全員のスケジュール空けといたから」と言ってくれて。“嬉しいな”って。dustboxもそうだし、周りのバンドマンはすごく喜んでくれましたね。
 
●そして武道館の後は“ポルノ超特急2018”がありましたよね。京都パルスプラザになって5回目でしたが、イベント全体としても、ROTTENGRAFFTYのライブもすごく良かった印象があって。
 
N∀OKI:個人的な感覚として、1日目はすごく良かったんです。突き抜けたというか。でも2日目は逆に、時間が淡々と進んでいっている感覚があったんですよ。
 
●あ、そうだったんですか。
 
N∀OKI:あっと言う間に過ぎていって、アンコールの前にステージ袖で10-FEETのTAKUMAに「今日すごいぞ」と言われて“あ、そうなんか”と。基本的にTAKUMAは本当に思ってないときは褒めないんですけど、優しいやつじゃないですか。だから「優しいな」って答えたら「いやいや、ほんまにすごい」と言ってくれて、それで鼓舞されて。
 
●ということは、2日目はかなり冷静だった?
 
N∀OKI:冷静でしたね。入り込んでいなかったし、“どんどん終わっていくな”というか、自分自身がノリきれていなかったなっていうのがあって。でもお客さんが盛り上がってくれてたら全然いいんですよ。ライブってそういうもので、自分が“あかんな”と思ってても周りは“良かった”と言ってくれたり、その逆に自分が“最高や”と思ってても周りが“あんまり”と思ってることもあるから。そういう意味では、“ポルノ超特急2018”はいいライブだったんでしょうね。
 
●なるほど。今年は20周年ということで、現在はツアー“20th Anniversary Beginning of the Story”の真っ最中ですが、ツアーの手応えはどうですか?
 
N∀OKI:昔の曲を演ってたりするんですけど、忘れていた事…例えば“自分がこんな歌詞を書いてたんや”とか…を改めて思い出したりして、楽しいですね。自分たちがやってきた歴史を辿っているような感覚というか。
 
●うんうん。
 
N∀OKI:それに、当時盛り上がっていなかったような曲が、いま盛り上がっているっていうのがおもしろい。例えば「e for 20」(2004年リリースのシングル『e for 20』・アルバム『CL∀SSICK』収録)とか、当時はそこまで「ウォー!!」となっていなかったんですけど、今のお客さんはめちゃくちゃ聴いてくれている感じがあって。
 
●ROTTENGRAFFTYの最近のライブってそういう感じがありますよね。お客さんが自分の曲のように歌うというか、盛り上がるというか。
 
N∀OKI:15年も前の曲に刺さってくれてるとか、ほんまに誉れ。嬉しい。そういうのが面白いですね。もちろん最近の曲でガーッと盛り上がるのも嬉しいけど、昔の曲の反応っていうのが面白いし、20周年ツアーならではな感じがしますね。鉄板ばかりじゃないっていう。
 
●自らの発見が多くあるツアーだと。
 
N∀OKI:そうですね。やっぱり忘れてるから歌詞を覚え直したり、聴き直したりして。
 
 
 
 

 
 
 
 
●N∀OKIくんがライブに求めることって、昔と比べると変わりました?
 
N∀OKI:変わってるんじゃないですかね。昔は初期衝動で「なんでもやったれ!」みたいな感じがあって、スベろうが引かれようが言いたいことは言いたいし。まさに昔は“初期衝動”でライブをやっていて。イメージで言うと真っ赤に燃えてる感じやったんですよ。
 
●はい。
 
N∀OKI:でもいまは、冷静に青く燃えてる感じ。
 
●燃えてはいる(笑)。
 
N∀OKI:燃えてはいるけど、トランスしすぎないときもある。真っ赤なときって何も考えずにスパーンといってる感じがあるんですけど、今は冷静に、もう1人の自分が居るような。そういう状態でライブをするのは凄く良いんですけど、もっと赤くなるまで燃えたい、という気持ちはあるんですよね。
 
●赤く燃えたい。
 
N∀OKI:うん。若い時って、何も考えてなかったという事もあるんでしょうけど、初期衝動のテンションや感覚…それはどんどん無くなっていくのかなと思うと、寂しいんです。
 
●N∀OKIくんを見ていて思うのは、今もその“初期衝動の感覚”を追い求めているというか、感性から生まれるものを良しとしていて、いつもそれを探しているように見えるんですが。
 
N∀OKI:そうですね。手垢のついた言葉とかおもしろくない。忘れてて、その場で手癖が出ちゃうのは全然良いんですよ。でも前のライブで決まったからといって、次のライブでこすりたくない。当たり前になりたくないというか、そこを超えたいんです。
 
●同じことをやるのは楽ですけど、面白くない。
 
N∀OKI:うん。お客さんもそうやと思うんです。「昨日と同じ事やってる」と思われたら恥ずかしいし。それがすごく嫌で。
 
●ROTTENGRAFFTYのライブに於いて、N∀OKIくんは言葉で伝えるという役割があるじゃないですか。その中で、きちんと伝えないといけないメッセージと、衝動的にその場でしか生まれない言葉と…そこの切り替えは以前と比べてできているんじゃないですか?
 
N∀OKI:あ、できていると思います。
 
●昔みたいに暴走することはなくなったし(笑)。
 
N∀OKI:なくなりましたね。未だにあれに憧れてますけど(笑)。
 
●ハハハ(笑)。
 
N∀OKI:ちゃんと伝えるようにはなりましたね。できるようになりました。それは、ROTTENGRAFFTYの現場だけじゃないところで恥をかきまくってきたっていう自信があるから。
 
●ああ〜。
 
N∀OKI:俺の事なんか知らない人達の目の前で、そこでBOSSるっていうか、盛り上げてきたのが今の自信に繋がってるんです。パーッと遊びに行ったらそこでセッションしてて、俺を見つけてくれて呼ばれてステージに上がり、そこで場をメイクする。そういうたくさんの経験が自信に繋がっていて、“こういう言葉が結構伝わるんや”と勉強になったり。そういう現場を経験すればするほど強くなるんですよね。
 
●それで思い出しましたけど、去年の“ポルノ超特急”でOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDのステージに参加しましたよね?
 
N∀OKI:あれ即興っす。
 
●すごい!
 
N∀OKI:当日、飯を食いながらTOSHI-LOWくんに「ここで入ってきてくれよ」と言われたんですけど、事前にもらっていたトラックをそこまで聴き込んでなくて、よくわからなくて。だから「ここやっていうところで俺の方を見てください。そこで出て行くんで」と言ってて、あとはその場でバーッと。
 
●そういう経験がROTTENGRAFFTYのステージに活きていると。
 
N∀OKI:活きてますし、そういう場の方が燃えますね。“ポルノ超特急”はまあホームですけど、「こいつ誰?」っていうくらいの場所の方が燃えるし、経験にもなる。
 
●あと、このタイミングではどうしても触れないわけにはいかないんですが、松原さんが亡くなってしまいましたね。
 
N∀OKI:そうですね。まっちゃんは6人目のメンバーだし、「俺が一番偉いから言うこと聞け」とかじゃなくて俺らと同じ目線で、ちゃんと1人1人に向き合ってくれて、ROTTENGRAFFTYが終わらないように調整してくれて。2010年にパインフィールズから『This World』を出して、今がありますね。
 
●うんうん。
 
N∀OKI:もちろん2010年までも無駄じゃなかったし、俺らも必死に食らいついてやってたんですけど、やっぱりまっちゃんがブーストしてくれたんですよね。俺らがやってきた事とまっちゃんがやってくれる事が重なって、いい反応になって。気づいたら神戸が第2のホームみたいになってるし。やっぱり松原は…デカいです。
 
●そうですね。
 
N∀OKI:あいつには「ありがとう」という気持ちしかないし、悲しんで腐っている場合でもない。やっぱりバンドマンの生業ってすごいんだなと思いました。何があってもステージが決まってたらライブをやるんやろうし、そういうものを背負いながら生きていくんやなって。
 
●なるほど。
 
N∀OKI:俺らがもっともっとすごいレベルに行ったらまっちゃんは喜んでくれるかなと思ってますね。かと言って「まっちゃんの分まで俺らは生きる!」とかは思ってないです。人の分まで生きるなんて無理やし。ドラマの見すぎ(笑)。
 
●ハハハ(笑)。そしてこのインタビューが公開になる6/10、“ポルノ超特急2019”の開催が発表されましたが、今年の“ポルノ超特急”はどういう感じになりそうですか?
 
N∀OKI:今年も俺らは年末までライブをやっているんでしょうけど、毎年“ポルノ超特急”は1年の総括というか、天王山みたいな感じなんですよね。しかも今年は20周年やし、その締め括り的な位置付けもあって。
 
●なるほど。
 
N∀OKI:だから20周年ならではの“ポルノ超特急”になると思います。2019年はいろいろとあった分、最高の締め括りにしたいですね。
 
●“ポルノ超特急”に行くとROTTENGRAFFTYと仲間のバンドたちとの関係性がよくわかるんですけど、ROTTENGRAFFTYは先輩後輩の垣根があまりないというか、キャリアとか年齢とか関係なく仲間たちと繋がっている感じがあって。
 
N∀OKI:そうですね。後輩から怖がられたりもするんですけど、あまり距離はないですよね。
 
●“ポルノ超特急”に出演する人たちは…もちろんROTTENGRAFFTYに対してのリスペクトは感じますが…でもバチバチに喧嘩を売るようなライブを演っていて。
 
N∀OKI:「頼むわ! もうちょっと優しくしろよ!」と思いますけどね(笑)。俺ら、留年してるバンドですからね。
 
●留年してるバンド(笑)。
 
N∀OKI:HEY-SMITHやSiMがガーッと勢いがついた頃に、俺らが『This World』を出して、あいつらと一緒にツアーをやっていたんですよ。だからダブってる同級生に対しての接し方というか、基本は「さん」付けやけどちょっとタメ口になる瞬間とかあるじゃないですか(笑)。そういう関係かもしれないです。変に気を使われ過ぎてない感じがいいですよね(笑)。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

NOBUYA(Vo.)

バンドの発起人であり、ROTTENGRAFFTYが擁するツインヴォーカルの一翼、NOBUYA。バンドのスポークスマン的な位置づけで動く事も多い彼は、高らかに歌い上げたかと思えば、牙をむいて客席へと身を投じ、まさに最前線でオーディエンスを鼓舞する。内に燃え盛る闘志を秘め、誰よりも負けん気が強い彼は、20周年を前後にどのようにバンドの事を考え、どのように行動してきたのか。武道館へと向かう道程で生じた葛藤と苦悩、そして彼自身の美学とも言える生き様に迫る。
 


「ここで全てが倒れていくと、次に出すアルバムも1年後の武道館も、全て良くない方向に行くんじゃないかっていう。勝手に、そういう事を自分に課していたんでしょうね」


 
●NOBUYAくんとは解決していない話がありまして。
 
NOBUYA:ハハハ(笑)。2年前の事ですか?
 
●はい。2017年5月、「“ロットンの日2017”直前インタビュー」という特集をさせて頂いた事があって。
 
NOBUYA:そうでした。
 
●そのインタビューが終わった後、NOBUYAくんと2人で雑談をしていて「今年は自分たちにとって勝負の年で、“京都大作戦”では今まで以上の事をしなくてはいけない。今まで通り10-FEETに繋ぐライブをやれば合格点は獲れるけど、10-FEETに喧嘩を売るくらいのインパクトを残さないといけないと思っているから、観ていてください」と言ってくれましたよね。
 
NOBUYA:よく覚えてます。
 
●それくらいの意気込みで臨んだ“京都大作戦2017”が、まさかの雷でライブが中断。結果的に、ROTTENGRAFFTYは曲を削って3曲でしたよね。
 
NOBUYA:3曲ですね。KAZUOMIが「曲減らそう」と言ってくれて、“絶対にそうしないと”という気持ちに自分の中で切り替えて。あの雷って、誰も悪くないじゃないですか。
 
●そうですね。
 
NOBUYA:だから表面上は“そうしないといけない”と自分に言い聞かせて、KAZUOMIと「曲どうしよう?」という相談をして、「D.A.N.C.E.」「THIS WORLD」「金色グラフティー」にして。
 
●客席で観ていたんですけど、NOBUYAくんがMCで「雨にも雷にも、おまえらにも、10-FEETにも、俺たちは絶対に負けない!」と言っていて。その言葉の背景に込めた想いを知っていたから、なんとも言えない気持ちになって。
 
NOBUYA:はい。
 
●“京都大作戦2017”で起こったハプニングは、さっきおっしゃっていたように誰も悪くないけど、みんなが悔しい想いをしていて。そんな状況で、イベントとしては一番最高の形で終えられたとも思うんですが。
 
NOBUYA:そうですね。今から思えば、与えてもらった時間の中で、2017年のROTTENGRAFFTYの表現はできたと思います。
 
●それでライブが終わった後、バックヤードで僕はNOBUYAくんに「いいライブでした」と話しかけたじゃないですか。そしたらNOBUYAくんが「すみません、ちょっとしゃべれません」と言って楽屋に入ってしまったという事件があって(笑)。
 
NOBUYA:ハハハ(笑)。ありました(笑)。その後、ラジオの収録もあったんですけど、収録の途中で楽屋に帰ったんですよ。“もうしゃべれない”と思って、1人で楽屋に戻って悔し泣きしてました。
 
●その悔しい想いを翌年の“京都大作戦”で回収できると思ったら、翌年の“京都大作戦2018”は豪雨で中止になるという。
 
NOBUYA:だから僕の中では、今も“京都大作戦2017”の事は消化できていないんです。“京都大作戦”は10-FEETがすごく大切にしているフェスだし、よくG-FREAK FACTORYのVo.茂木が「俺はプロモーションをしに来たわけじゃない」と言いますけど、まさにその通りで。2017年のROTTENGRAFFTYは、ここで1歩前に出ないと先がヤバいなと僕は思っていたんです。
 
●その時点で日本武道館は決まっていたんですよね?
 
NOBUYA:決まっていました。だから2017年は、1年後に日本武道館に立つという事がわかっていたし、アルバムを出す(6thアルバム『PLAY』のこと)ということもある程度見えていたし。だから危機感というか、“このままじゃあマズいな”というのが自分の中であって。
 
●その危機感はメンバーと共有していたんですか?
 
NOBUYA:いや、話してはないです。僕は“ここで結果を出さないと後退するな”と思ってて、たぶんKAZUOMIもそういうプレッシャーの中で『PLAY』の曲作りをしていたと思うんです。KAZUOMIや他のメンバーとは違うベクトルのプレッシャーだったと思いますけどね。
 
●そうなんですね。
 
NOBUYA:タラレバの話になってしまいますけど、もし“京都大作戦2017”がすごく晴れていて、お客さんや他のバンドやスタッフの人たちに「ROTTENGRAFFTYヤバくない?」っていうくらいのインパクトを残せていれば、もっと違う“今”になっていたのかも知れない。…これは全部結果論ですけど、そういう事を僕は当時思い描いていたんです。2017年はROTTENGRAFFTYにとってそういう時期だったし、“京都大作戦2017”で与えてもらった時間帯もバッチリだったし。だから絶対にコケれない、やるべき事を全部クリアしないといけないし、それ以上のとんでもないことを残してやろうと思っていたので…ああいう結果になったとき、誰が悪いとかいう話ではないんですけど、自分の中で勝手にいっぱい背負っていた分、ライブ後に山中さん(インタビュアー)に声をかけられて「これ以上喋らせないでくれ」と制して楽屋に帰るという(笑)。
 
●ハハハ(笑)。
 
NOBUYA:ここで全てが倒れていくと、次に出すアルバムも1年後の武道館も、全て良くない方向に行くんじゃないかっていう。勝手に、そういう事を自分に課していたんでしょうね。
 
●でも武道館は素晴らしい1日だったじゃないですか。NOBUYAくんはMCで「また武道館で演りたい」と言っていましたけど、あの言葉がステージで出るっていう事自体が僕は嬉しかったんです。
 
NOBUYA:ガキの頃から武道館に立つアーティストって凄いなという印象があって、その後時代が流れて、メディアに出たり大きなアリーナでライブをする事がダサい、みたいな風潮があったじゃないですか。若い頃の僕らはそれに刺激を受けて「ダサい事なんや」と思っていた世代で。
 
●はい。
 
NOBUYA:でも僕は「武道館やったら良いのに」「TVにもバンバン出たら良いのに」と思っていた派だったんです。根本的にエンターテインメントが好きなので「そういう世界で勝負をしたらダサい」という事に関してずっと「?」が浮かんでいたんです。だから他のメンバーとはちょっと考え方が違うと思うんです。
 
●なるほど。
 
NOBUYA:武道館が決まって、正直凄く怖かった。どうやってお客さんに集まってもらうのかという怖さもあったし、ド平日だったのもすごく怖かったし。アルバム『PLAY』をリリースして、47都道府県をまわるツアーをやったんですけど、かなり過酷なスケジュールで、そこで全箇所「武道館来てくれ」と言いまくって迎えた武道館だったんです。
 
●必死だったんですね。
 
NOBUYA:必死でしたね。それに『PLAY』の収録曲って、リリースした当時のスキルでは“ライブで歌えないぞ”という怖さもあって。
 
●あ、そうなんですか?
 
NOBUYA:昔より僕の歌のキーが上がってるんですよ。だから“こんな過酷なスケジュールの中で保つのは無理やな”と思って、ボイトレに通い始めて。それも全部武道館に向けてやり始めた事なんですけど、正直なところ、僕は武道館のときは身体がボロボロだったんです。
 
●え。知らなかった。
 
NOBUYA:でも武道館のステージに立った時、自分の中で描いていた景色とはちょっと違っていたんですよ。身体ボロボロやし、ツアーの辛かった事や悔いが残っている事を思いながらステージに出たんですけど、ステージから観た景色が壮観で“うわ! 武道館すげぇな!”とまず思って。それに客席を見たら、全国から来てくれていることがなんとなくわかって。
 
●はい。
 
NOBUYA:しかも音がすごく良くて、このツアーで初めて何の苦痛もストレスもなく全曲歌えたんです。要するに凄く楽しかったんです。すごく気持ち良かった。楽しい時ってハッピーじゃないですか。必死ではない。だから精神的にはすごく冷静で、客席もよく見る事ができたんです。それで「あ、あそこの席空いてるな。これはもう1回やらなあかんな」と(笑)。
 
●だからまた武道館でやりたいと。
 
NOBUYA:そうですね。最初に話したように武道館にかける想いは凄く大きかったんですけど、実際にやってみて、今は凄く良かったなと思います。
 
 
 
 

 
 
 
 
●現在は20周年イヤーの真っ只中ですが、20年周年に対してはどういう想いがありますか?
 
NOBUYA:今やっているツアーでは久しぶりにやる曲もあって、久しぶりすぎてクオリティ的にどうかなということもあるんですが(笑)、僕の中では、当時あんなにも評価されなかった曲たちが、今ありがたいことにたくさんのお客さんの前でできるっていうことが凄く楽しくて。「嬉しいな〜、こんなに聴いてもらえなかったのに」って。
 
●当時の風景も思い出すでしょうね。
 
NOBUYA:ありありと思い出しますね。「京都MUSEでこの曲やっても全然反応なかったのに」とか。
 
●ハハハ(笑)。
 
NOBUYA:でもいま披露すると凄く反応してくれて、「ちゃんと聴いてくれてる」とも思うし。心から凄く楽しいですね。報われなかった曲たちが、少し日の目を浴びれたかなって。
 
●なるほど。そんな20周年イヤーですが、4月に松原さんが亡くなってしまったじゃないですか。
 
NOBUYA:そうですね。まだその事についてメンバーとじっくり話し合っていないからわからないですけど、結構過酷な20周年のツアーを組んでいて良かったなと僕は思っています。
 
●というと?
 
NOBUYA:何もなかったら潰れているかもしれないなって。いいスケジュールを与えてもらえていたし、今までライブをキャンセルとかしてこなかったバンドだし。それに松原自身、「そんな事でライブ止めないで」と言う人じゃないですか。彼の意志と僕らの意志がちゃんとスケジュールとして存在するから、それで良かったと思ってます。
 
●なるほど。
 
NOBUYA:あと個人的には…バンドマンの中で僕らが一番最初に「癌になった」ということを聞いたんです。3年前、ライブの前日に「緊急で話したいことがある」と京都駅に呼び出されて。
 
●あ、そうだったんですね。
 
NOBUYA:そこからの3年間だったんです。その3年間の中には武道館もあったし、“ポルノ超特急”も“ロットンの日”もあったんですよね。
 
●はい。
 
NOBUYA:僕、松原からの話があって自分の中でルールを3つ決めたんです。彼は友達の多い人だし、いろんな人に愛されているじゃないですか。だから1つ目は、「松原どう?」と聞かれたら「直接会いに行ってあげて下さい」と答えること。2つ目が、彼にとって苦痛じゃないタイム感で連絡を取ること。3つ目は、お見舞いに行くんじゃなくて、どこかの現場にあいつが行くという情報を得たら、偶然を装って僕も行く。
 
●ああ〜。
 
NOBUYA:彼が死んで悲しかったし、今も寂しいけど、自分で決めたルールは3年間全部守っていたので後悔はないです。覚悟はできていたし、重く捉えていたんですけど、それは見せないように接する事…まあこれも勝手な自分のルールなんですけどね。後悔したくなかったので。
 
●NOBUYAくんらしいですね(笑)。
 
NOBUYA:フフフ(笑)。
 
●そしてこの度、“ポルノ超特急2019”の開催が発表になりましたが、今年はどうなりそうですか?
 
NOBUYA:毎年、出演してもらうラインナップとか日割りとかをメンバーと話し合うんですが、今年はメンバーの意見の一致率が高いというか、「これでいこう」とか「そうしよう」みたいな感じになっていて。“ポルノ超特急”単体で考えないといけないんですけど、やっぱり今年は20周年というバンドの節目でもあるので、この20年間で自分たちにたくさん刺激を与えてくれた仲間を呼びたいですよね。
 
●20周年に開催する“ポルノ超特急”。
 
NOBUYA:僕はそういう考え方しかできなくて。“ROTTENGRAFFTYの20周年”という事を取っ払ってやるのは違うんじゃないかなと。日付的にも年末やし、そこが集大成になるんじゃないかなと。今年の“ポルノ超特急”はそんな感じになりそうですね。そこで僕らが何ができるのか…それを課して挑みたいなと思っています。
 
●NOBUYAくんの話を聞いていて感じたんですが、活動1つ1つを“点”で捉えているんじゃなくて、前後の流れ…“線”で考える視点がすごく強いですね。
 
NOBUYA:そうですね。それだけやって終わりっていうのが、性格的にあまりかっこいいと思えないというか、自分がファンやったらどうなんやろう? と考えるというか。そのタイミングで未来を見せてもらえないと応援する気がなくなるなとか。
 
●ああ〜。
 
NOBUYA:自分が中学生の時に追いかけてたバンドとかがそうしてくれていて、僕はそれにすごく高揚していたんです。かっこいいと思ったし、「そんなの無理」と思っていたら1年後にやっていたりとか。別に友達でもない人を応援するって、そういうことなんじゃないかなと。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

KAZUOMI(G./Programming.)

取材やライブハウスの楽屋、イベントのバックヤードなどで会ったときの彼はとても物静かな青年だが、ひとたびステージに上がれば感情を露わにしてギターをかき鳴らし、ときにはステージを降りて客席へと身を投じる。ROTTENGRAFFTYの楽曲制作を担い、バンドを牽引するギタリスト・KAUZOMI。彼が持つ“感性”と“狂気”は、ROTTENGRAFFTYというバンドの心臓でもあり、そして20年間走り続けてきた燃料とも言える。日本武道館、そして20周年…KAZUOMIは何を想い、どのような未来を描こうとしているのだろうか。
 


「“見とけよ。今から凄い事したるからな”というスイッチが入った。あいつと一緒にやってきたROTTENGRAFFTYが過去になって、その過去があるからまた次のストーリーを作ろう」


 
 
●今まさに20周年の真っ最中ですが、まずは武道館の事を聞きたいんです。KAZUOMIくんは武道館のステージで「こんな1日があるんだったらどんな苦しい事があってもがんばれる」と言っていましたよね。
 
KAZUOMI:武道館は異様な感じでしたね。あんなに応援してもらえるというか、愛に溢れすぎた異様な1日だったというか。バンド仲間や、メンバーそれぞれの家族も来てただろうし、来てくれてたお客さんも全て。
 
●うんうん。
 
KAZUOMI:でもメンバー全員、最初の方は「やばいやばい」と思ってたと思います。緊張というか、ライブ自体がこのままだったらやばいんじゃないかって。
 
●クオリティ的に?
 
KAZUOMI:そう。やっぱり僕たちにとっては武道館は大きかったし、しかもそれがワンマンっていう。N∀OKIがすごく前半固い感じがしたんですよね。実際あいつめちゃめちゃ緊張してたし、それは別に話してるわけじゃないんですけど。
 
●そうだったんですね。
 
KAZUOMI:僕は周りがどうであれ全部出しきろうと思ってて。で、ステージに立ってる側の僕たち的に、ライブの完成度として「ん?」と思う部分もあったんですけど、やり終わって武道館のDVDを制作しているときに思い返してみても、やっぱり盛り上がりとかお客さんの気持ちとか観に来てくれた仲間の気持ちとか、そういう想いが溢れる異様な空気だったから、普段のライブではありえないような凄い雰囲気になっていて。あの日、僕たち自身が「そんなにいいライブじゃない」と感じていたとしても、あの日は凄い1日になったんじゃないかなって。終わってから凄くそう思いました。
 
●武道館は、お客さんも含めてライブを作っているような感じがありますよね。
 
KAZUOMI:インタビューとかさせてもらう時によく言うんですけど、ROTTENGRAFFTYのライブはステージに立ってる5人だけが主役じゃなくて、お客さんと観に来てくれた人、スタッフとか全部で1日のライブを作り上げると僕は思っていて…それがまさに武道館で「こういうライブを夢見てた」と思えたんですね。
 
●理想のライブだった?
 
KAZUOMI:理想の1つというか。自分も主役だし、来てくれた人たちが声を出す事でライブを作り上げる。去年19周年で理想にしてたものが、ちょっと具体的になったなと思いますね。
 
●うんうん。
 
KAZUOMI:幸せ以外に何もない。すごく満たされていた。それに目標も出来たし、また武道館に立ちたいっていう目標も出来た。武道館を終えて次の目標を立てたいと思えたというか、踏ん切りがついた。
 
●次のステップに進めるきっかけになった。
 
KAZUOMI:そうですね。だからいま、次のストーリーを作り始めているんです。具体的に言うとそれは「楽曲作り」という作業になるんですけど、20周年で何をするかっていうのは発表されているツアー以外にまだ言えない事もあって、その中でもう1回、ROTTENGRAFFTYのここからのストーリーを作ろうと励んでいるところなんです。
 
●KAZUOMIくんはこのバンドの楽曲制作を担っているわけですが、ただ単に新曲とか作品を作っているというわけじゃなくて、ROTTENGRAFFTYの未来を作っている、という感覚なんですよね?
 
KAZUOMI:そうですね。武道館をやって思ったんです。アルバムを作るとか音源を作るだけじゃなくて、それと共にストーリーの終着点をどこに置くか。アルバム『PLAY』だったら武道館だったんですけど、「次はなんだろうか?」という事を頭に置くようになりましたね。
 
●なるほど。それと武道館の後の“ポルノ超特急2018”ですが、印象に残っている事はありますか?
 
KAZUOMI:今だから思う事ですけど、「松原いたなぁ」って。今この世にいない人が去年はいた。
 
●それはどういう感情ですか?
 
KAZUOMI:寂しさはもちろんあるんですけど、時が経つのが早いというか。未だにあまり信じられないんですけど「あ、松原死んだんやな」っていうのが数日に1回来るんですよ。記憶って薄れていくじゃないですか。それでいい思い出だけが残ると思うんですけど、悪い記憶も全部忘れたくない。どんどん遠くなっていくのが嫌で、っていうのを心の中でずっと思ってる。
 
●わかります。
 
KAZUOMI:今のツアー中でも思う事があって。「松原」という言葉は出さないけど、観に来てくれてるお客さんに、僕の中で大事な人を亡くしたときに起きた感情を忘れたくないと思うから、ステージで喋ったりするんです。
 
●そうなんですね。
 
KAZUOMI:1度でもいいから多く会えたほうがいいと思うし、「あいつどうしてるかな」とか気になってる人とか、全然連絡取ってなかった人には会いに行ったほうがいい。会えるだけ会ってその人との時間を共有して、その時間を自分の中に入れて大事にすると死なないと思うんですよ。
 
●うんうん。
 
KAZUOMI:悲しんでるだけじゃなくて、僕らは次のパワーに変えるしかないし。やっぱりそいつが生きた事は無駄にならないし、ポジティブな想いにしたいですよね。だからツアーでは「また絶対会おう」ってお客さんに言うんです。こういう時間をまた共有したいから。1年でも2年でも長く僕らは続けたいし、1回でも2回でも、ひとりひとりとまたこうやってライブをやりたい。そういう意味で「また会おう」と言ってるんです。
 
●なるほど。
 
KAZUOMI:…松原はなんだったんだろう(笑)。
 
●あの人、死んだのに存在感ありすぎですよね(笑)。
 
KAZUOMI:ありすぎ(笑)。
 
●今回のインタビューをするにあたり、松原さんの話は避けられないと思ったし、オーディエンスにとっても松原さんはROTTENGRAFFTYのメンバーの1人くらいの認識だと思うんです。だから松原さんの話を聞くのは意味があると思っていて。
 
KAZUOMI:うん。
 
●ただ、KAZUOMIくんが描こうとしている次のストーリーには松原さんはいないですよね。どのようなものを描こうとしているんですか?
 
KAZUOMI:松原と一緒にやる以前の事とかも僕らは背負ってきて、周りのバンドとは角度やスピードが違えど、結成当初からの積み重ねで少しずつ大きくなってきたと思うんです。武道館がそれまでやってきた事の答えだったとして、次の答えは何なんだろうか? と考えてる真っ最中ですね。楽曲作りも含めて。DVDの制作が終わってからずっと楽曲の制作してるんですけど、今はまだ答えは出ていないんです。
 
●途中の段階?
 
KAZUOMI:途中ですね。でも何かに向かいたい。今からシングル、アルバム出して、その中でもツアーしたりして、2年後3年後に何かをしていたい。“武道館でROTTENGRAFFTYは落ち着いたんだな”と思う人もいると思うけど、松原が死んでから「見とけよ。今から凄い事したるからな」というスイッチが入った。あいつと一緒にやってきたROTTENGRAFFTYが過去になって、その過去があるからまた次のストーリーを作ろうって意気込んでます。
 
●楽しみにしてます。そして“ポルノ超特急2019”の開催を発表されましたが、“ポルノ超特急”はひとつ確立した感じがありますね。“戦いの場所”みたいなイメージがある。
 
KAZUOMI:なんで戦うんでしょうね(笑)。
 
●だって、ROTTENGRAFFTYが戦ってるから。
 
KAZUOMI:ROTTENGRAFFTYはなんでいつもあんな戦う姿勢になるんだろう(笑)。
 
●去年の“ポルノ超特急”、2日目のROTTENGRAFFTYのライブはまさにカオスでしたよね。
 
KAZUOMI:うん。入りすぎてライブあまり覚えてないです。
 
●観ていると、特にKAZUOMIくんとNOBUYAくんの目つきが悪くて(笑)。
 
KAZUOMI:もう入りまくってて。あの瞬間は無敵なんですよね。無敵になれてる瞬間って人それぞれで、ライブだけじゃなくていっぱいあると思うんです。僕の場合、あのチャンネルに入れたライブってやっぱり好きなんですよね。いいライブなのか悪いライブなのか置いといて、好きなんです。
 
●昔から、ROTTENGRAFFTYのライブのツボはそこだと思うんですよね。ギラギラするところ。
 
KAZUOMI:今年はめっちゃギラギラしたろうかな(笑)。「ちょっと狂ったんか?」くらいでいこうかな(笑)。というか、明日のライブそうしようかなと思ってます。昨日、ツアーの合間に“百万石音楽祭”に出て、やっぱり刺激になるし、初めて観るバンドとかいくつかいて。
 
●ほう。
 
KAZUOMI:次から次へと凄いバンドが出てくる。日本ってバンドの人口すごく多いし、もう1回ケツ叩かれた気がして燃えました。「ただ20年やってきたバンド」と思われるのは絶対に嫌だなと。だから明日のライブは普通じゃないライブをする。普通じゃない事を求めてお客さんはライブハウスに来ていて、僕らも非日常をやりに来ていて、準備したものだけで戦うのはなんかおかしいなって思ったんです。
 
●ツアー後半戦、めちゃくちゃ楽しみですね。
 
KAZUOMI:新しい音源を出してないツアーなのにノリノリですよ俺ら(笑)。
 
 
 
 

 
 
 
 
●そもそもこういうツアーって、リリースツアーとはちょっとモチベーションが違うんですか?
 
KAZUOMI:音源作った後のツアーは、いろんな苦しみとか苦労がすぐ最近まであったわけじゃないですか。その感情移入も込みでツアーを回ったりするけど、今回はそういうわけじゃないんですよね。
 
●ツアーはだいたいの場合、何かしらの理由があるわけですもんね。
 
KAZUOMI:でも今回は20周年という形でリリースが無い中でのツアーなので、やる前は“どうなのかな?”と思ったけど、常に「明日は凄い事したろかな」っていう感じ(笑)。「絶対俺ちゃんとしない!」みたいな事を思って気持ちに火を点けてます。
 
●ふふふ(笑)。ちゃんとしない(笑)。
 
KAZUOMI:楽曲もちゃんとしたのなんか作らない。ルール上、理論上ちゃんとしたのなんか作らない。そういう事を決めてるんです。だから苦しいんですけど。
 
●聴いたときに「なんだこれ!」とびっくりするようなものというか。
 
KAZUOMI:「その答えはなんなんだろう?」ってずっと探してる。病気ですよ(笑)。歩いてる時も移動中の時も、なんだったらライブ中の時もずっと探してる。「こんなの聴いたら気持ち動くじゃん!」というものを作ろうと意気込んでるんです。答えがおぼろげにしか見えてないので、現時点では全然わかんないですけど、絶対そういうものを作ろうと思ってる。
 
●例えば過去の曲だと「零戦SOUNDSYSTEM」が僕はそんな感じなんですよね。初めて聴いたときびっくりした。
 
KAZUOMI:そうですね。あれも無心に作ってたな。作ったのが昔過ぎてちょっと覚えてないですけど(笑)、沖縄行って三線を弾いていて、それをヒントに作ったんです。
 
●そうだったんですね。
 
KAZUOMI:ヒントってそこら中にあると思うんです。それを見定める眼力があるかないか、それをパッと拾うか拾わないかだけの違い。
 
●それを音楽にどう結びつけるか。
 
KAZUOMI:ちょっとワクワクはしてるんですよね。そういうものを作ったら、新しいROTTENGRAFFTYの幕開けになると思うし、これからのROTTENGRAFFTYをまだまだ見せていけるなと。いま僕は41歳なので、9年間…50歳までは絶対やろうと思っていて。その9年で「次のROTTENGRAFFTYはこれだ!」っていう提示をあと何回できるだろうってワクワクしてくる。9年間だったらアルバムは3〜4枚は出せるから、楽曲何曲作れるだろうとか。まだまだ全然ROTTENGRAFFTYで未来を見る事は出来るなと思ってます。
 
●20年についての感慨はあるんですか?
 
KAZUOMI:ありますね。20年やれてるんだなって。ありがたい事に同じメンバーで。この5人はすごく変なバランスですけど、ある意味それでやれてこれたんだなっていうのが感慨深いです。僕はこのバンドに天才は誰一人いないと思っていて、だからいいなと思います。凄い才能持った人がいなくても、バンドだから夢を見れるし、立ち向かえる。色んな所から吸収して、色んな人に出会って、色んな所で音楽を学んだりバンドの形を学んだり、人生を学んだり生き方を学んだりして、メンバーが個々でバンドのために成長していく。20年もよく続いてるなあって思いますね。こんな5人で(笑)。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

侑威地(Ba.)

ステージの上でもステージを降りたときも、5人の中で自分の気持ちをいちばん素直に、そしてストレートに表現するのは侑威地なのかもしれない。IKÜZÖNEをリスペクトし続けるROTTENGRAFFTYのベーシストは、KAZUOMIが作る楽曲を愛し、「この4人以外の人と一緒にバンドをやることに興味がない」と言い切って笑う。飾らない言葉でバンドを支え、仲間たちに教えられ、支えられながら、20年間人間として、そしてバンドマンとして成長を続けてきた。ライブで深々と頭を下げて感謝の気持ちを告げる姿が印象的な彼に、昨年のこと、今年のこと、そして仲間やかけがえのないメンバーについて話を聞いた。
 


「仲間が必要だし、スタッフもそうだし、5人だけではもうライブも出来なくなってきた。誰かに助けて貰わないとステージに立てないんです。だとしたら、キチンと1人1人に感謝しながらやっていかなくてはいけない」


 
 
●去年の武道館は2018年の一番のトピックスだったと思うんですが、振り返ってみるとどうでした?
 
侑威地:めっちゃよかったですね。“やってよかった”と思える日になりました。
 
●緊張はしていたんですか?
 
侑威地:びっくりするくらい緊張してました(笑)。最初の3曲くらい覚えてないですもん。それくらい。仲間のバンドがたくさん来てくれてたじゃないですか。打ち上げでめっちゃ言われましたね。
 
●何を?
 
侑威地:「おまえ、フワフワしてたな」って(笑)。「ああいう侑威地、久しぶりに見た」って。俺ら5人が固まり狂ってるのを温かい目で見てくれました。
 
●ステージに出る前から緊張していたんですか?
 
侑威地:いや、そんなことなかったんです。やっぱりステージに立ってみてお客さんが入った感じの画を見たときに「うわ~」となってしまって(笑)。客席との距離感が想像していたよりも近くて。めっちゃ顔が見えるんですよ。それで「えー!」みたいになってしまって(笑)。フェスとか大きな会場のステージから観る景色は“ポルノ超特急”で体験させてもらっていますけど、武道館のステージから見る景色はあそこでしか味わえないと思います。
 
●武道館でワンマンをやることについて、侑威地くんはどう思っていたんですか?
 
侑威地:武道館でみんなやっていたじゃないですか。僕らの仲間であるcoldrain、BRAHMAN、打首獄門同好会、SUPER BEAVER…だから、そんなに大切な場所っていう感じに思えなくて。ぶっちゃけると、そもそも僕は武道館に興味がなくて、やりたくなかったんですよ。それだったら京都パルスプラザとかでワンマンをやった方が、ROTTENGRAFFTYを応援してくれている人たちにちゃんと返せるんちゃうかって。
 
●はい。
 
侑威地:でも社長の松原裕が「やりたい! 今しかないでしょ!」と言うのでみんなスイッチが入って、「社長が言ってるならやろうや」と。その気持ちは強かったと思います。
 
●そして武道館の後の“ポルノ超特急2018”は、今までで一番良かったという印象があったんです。
 
侑威地:“ポルノ超特急2018”は、京都パルスプラザで5回目の開催で、自分たちがようやくちょっと楽しめるようになった感じはありましたね。ペース配分とかも分かるようになってきて。5年目にしてやっと「あ~、こういう感じか」というのがわかりました。身体的にもちゃんと疲れないように。
 
●それに“ポルノ超特急2018”は、銀閣も含めてROTTENGRAFFTYのメンバーがステージで他の出演者と絡んでる機会が多かったですよね。
 
侑威地:多かったですね。ようやく出来るようになった。アルバム『PLAY』を出してツアーをまわり、そのツアーに出てもらったバンドに“ポルノ超特急2018”にも出て欲しかったんです。そうすると、ツアーでグルーヴができているわけじゃないですか。そのツアーの延長で“ポルノ超特急”ができるというか。だからコミュニケーションが取りやすかった。
 
●ツアーの延長線上になっている。
 
侑威地:1年を通した活動の集大成としての“ポルノ超特急”、という流れにすることができるようになったんでしょうね。それにバンド主催のフェスは、仲間のバンドとの関係値が見えないと絶対面白くないと思っているんです。もちろん“ポルノ超特急”ではじめましてのアーティストさんもいますけど、そういう人との関係性はそこから作っていこうっていう。
 
●うんうん。
 
侑威地:例えば去年だったらハルカミライがそれに当てはまるんですけど、先日ツアーでハルカミライとガチでやらせてもらって。去年の“ポルノ超特急”があったからこそ、お互いコミュニケーションを取りやすかったんです。
 
●なるほど。
 
侑威地:僕らはもうROTTENGRAFFTYだけでこの世界で生きてるわけじゃないし、仲間が必要だし、スタッフもそうだし、5人だけではもうライブも出来なくなってきた。誰かに助けて貰わないとステージに立てないんです。だとしたら、キチンと1人1人に感謝しながらやっていかなくてはいけない、とは常々思ってますね。
 
●なるほど。そして現在は20周年記念ツアーの真っ最中ですが。
 
侑威地:はい。一昨日の対バンは四星球で、ガッツリ絡んできました。めちゃくちゃ面白かったです(笑)。KAZUOMIをめちゃめちゃフューチャーしてた(笑)。
 
●まじで?
 
侑威地:KAZUOMIと康雄がコントして曲に入るとかやりましたよ。めっちゃ面白かった。
 
●それヤバくない?
 
侑威地:ヤバいくらい面白かったです(笑)。
 
 
 
 

 
 
 
 
●観たかった(笑)。そもそもROTTENGRAFFTYを20年もやると思っていたんですか?
 
侑威地:全く思ってなかったし、こんな馬車馬のように働いてるとは思ってませんでした(笑)。ありがたいですけどね。ただ、漠然とした不安はありますね。去年アルバム『PLAY』を出して、武道館もあって20周年も控えてたので、要するに目標があったんですよ。でもその先については、いまだに走ってる最中で。
 
●はい。
 
侑威地:やっぱりツアーでライブをやれば楽しいし、新しい曲を作ろうとしてるし。健全なバンドの仕組みというか、“ポルノ超特急”に出てもらってツアーのゲストに来てもらって、そういう人たちが来年とか再来年に僕たちを必要としてくれる。僕たちはまたその恩を返しに行く…そういうサイクルでバンドは成り立っていくのかなって思います。
 
●それと4月に松原さんが逝ってしまったじゃないですか。あの日、ROTTENGRAFFTYはツアーで北海道に行ってたんでしたっけ?
 
侑威地:はい。札幌でした。4日の朝イチに電話かかってきて、3日に札幌に前乗りしていて、4日が札幌のライブ当日だったんですよ。電話がかかってきたけど、ライブ当日だからどうしようもなくて。北海道のツアー3箇所の対バンはcoldrainだったんですけど、あいつらにも社長の話は一切できなかったんです。口に出せなかった。
 
●そうだったんですね。
 
侑威地:来てくれたお客さんたちも「え?」っていうすごい空気感になってしまって。でもそういうときにcoldrainがすごいライブをしてくれて、僕らがやりやすい環境を作ってくれたんです。熱いバトンを渡してくれた。
 
●なるほど。
 
侑威地:ライブが終わった後にcoldrainのメンバーと話したんですけど、ニュースになっていたから当然彼らも知っていて「触れていいかどうかわからなかったから言わなかった」と。「気を遣わせてごめんな」と謝りました。
 
●仲間に支えられたんですね。自分の中で整理はついたんですか?
 
侑威地:おかげさまで、こうやってツアーで色んな人と会えて、仲間たちとも会えて、僕らのことを心配してくれて、励ましてくれたりして。そういうありがたみをすごくを感じるんです。ただ、社長が死んだという実感はないですね。覚悟はしていたんですけど。
 
●はい。
 
侑威地:社長が残してきたもの…ちょっと言い方が変ですけど、僕らはそういう存在じゃないですか。だからそれを、もっともっと伝えていかなきゃいけないなと。苦しくてしんどいけど、辞めてしまうのは簡単な話で、今までもそういうことは何度もあったから今回も乗り越えて、あいつの想いを色々なところで伝えていって、どんどんバンドを大きくしていくことがやらなきゃいけないことだと思っている。
 
●ROTTENGRAFFTYは松原さんの作品だと。
 
侑威地:僕はそういう意識がすごくあるんですよね。馬場さん(IKÜZÖNE)のときもめちゃくちゃ強く同じようなことを思ったんです。
 
●そうだったんですね。
 
侑威地:馬場さんにプロデュースしてもらった楽曲は『SYNCHRONICITIZM』『CL∀SSICK』『えきさぴこ』の3作品に収録されているんですけど、「それを伝えていかなくちゃいけない」と常々強く思っていて。今回もそうやと思うし、社長はROTTENGRAFFTYを色んな意味で作ってきた人なので。そんな俺らが、これからも人間だからいろんなことがあると思うけど、でも逝ってしまった奴に対して、生きてる俺らが出来ることって、しんどくても苦しくても伝えていくことじゃないかなって。
 
●うんうん。
 
侑威地:それが一番喜んでくれることなんじゃないのかなって。俺は今のところは心が折れることもなく頑張っていこうと思ってます。でも僕1人がそう思っていても仕方がないし、他のメンバーがどう思っているかによっては受け入れる覚悟もある。僕は他のメンバーの意見も尊重したい。
 
●その話からふと思ったんですけど、侑威地くんはこの5人じゃないとバンドをやらないと決めてるんですか?
 
侑威地:絶対やらないです(笑)。マジで濃いもん、毎日が。ROTTENGRAFFTYがあって個々のソロ活動をやっているメンバーもいますけど、そういうのはバンドのためになるのでいいと思ってて。俺は音楽で、この4人以外の人と一緒にバンドをやることに興味がないですね。自分らのことでこんだけしんどいのに、なんで他で新しいのやらなあかんねん(笑)。
 
●ハハハ(笑)。
 
侑威地:1人欠けてもROTTENGRAFFTYじゃないと思うし、その気持ちは俺ら5人一緒だと思ってるし、信じてるところでもある。
 
●いいですね。そして“ポルノ超特急2019”の開催が発表されたわけですが、“ポルノ超特急”は回を重ねる毎に“らしさ”が濃くなっていますよね。
 
侑威地:お客さんもそれを観に来てくれていると思うんですよ。好きなアーティストが出て、そのアーティスト目当てで観に来くるのはもちろんそうだけど、そのバンドとROTTENGRAFFTYとの関係性とか、“ポルノ超特急2019”との化学反応を楽しみにしてくれてたりする。それはライブもそうだし、ライブじゃないところもすごく楽しんでくれている感じはしますよね。
 
●バンド同士のバチバチやイチャイチャとか。
 
侑威地:それがときには先輩だったりもして。“ポルノ超特急2019”をきっかけにして知り合うこともありますけど、そこはブレないですね。
 
●バンド主催フェスならではだと思うんですが、その雰囲気って誰に教えられたわけでもないですよね。そういう繋がりは、ROTTENGRAFFTYの世代がめちゃくちゃ強い気がするんです。
 
侑威地:やっぱりそこは10-FEETの存在が大きいですよ。“京都大作戦”というすごいフェスがあって、僕らも出演しなくても毎年行ってるし。10-FEETが築いてる仲間たちとの関係とか、本当に自分たちに足りてないところをいっぱい見せ続けてくれている。だから「なんでこいつらこんなに愛されるんだろう?」とめっちゃ思ってて。
 
●思いますよね。
 
侑威地:すごいなって今でも思ってます。全然俺らまだまだ足りてないと思う。やっぱり“人間”なんですよね。あの3人でしか出せない人間力があって、そこが魅力的で仲間が集まってくるというか。それが自然で、作ってる感じではない。自分らもそうなりたいと思うし、ならなあかんとも思う。ROTTENGRAFFTYのメンバーとも、なんかあったときとかに「TAKUMAくんはこうや」と話したり…こういう話はほぼKAZUOMIや社長が相手なんですけど…「またあいつら俺らとやろうとしたことカブってるやん」とか「先やられた~」とか。いい指針ですね。道標みたいな。
 
 
 
 

 
 
 
 
●こうやって話を聞いていると、侑威地くんはフラットに他の4人を見ているような気がするんです。メンバーそれぞれをどういう目で見ているんですか?
 
侑威地:KAZUOMIは、ROTTENGRAFFTYを引っ張っていく最重要人物ですね。同い年やし負けたくない気持ちもやっぱりある。それにKAZUOMIの作品がすごく好きなんです。「それだけでROTTENGRAFFTYやってる」と言っても言い過ぎじゃないくらい。それを再認識できた去年でもあったし、だから続けたいですね。KAZUOMIが出来る範囲内でいいし、魂を削りすぎてしんどくなったら休んだらいいし、その間は違うことで俺らがサポートできるのであればやりたいって思うし。そんな感じで前に少しずつでも進めたらいいなと。
 
●なるほど。
 
侑威地:NOBUYAはめっちゃ努力家なんですよ。ボイトレとかも行ってるし、すごく真面目なんです。なんか年々真面目になっていくイメージですね(笑)。だからそのまま真面目なところももっと出していけばいいのになって個人的には思いますね。
 
●最近ちょっとバレてきてる気がするんですが(笑)。
 
侑威地:バレてますよ(笑)。そういうところは、ここまで経てきたからこそ逆にかわいく映ったりする。そういう意味ではN∀OKIも一緒ですね。N∀OKIは自分を出しすぎてるところもあるけど、ちゃんと素直な自分をさらけ出せたら人間力のレベルがもっと上がるような気がするんです。
 
●HIROSHIくんは?
 
侑威地:HIROSHIくんはそのままでいたらいいんじゃないかな。もうそれ以上はなにも言わないです(笑)。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

HIROSHI(Dr.)

メンバーや仲間のバンドマンから愛され、実直にROTTENGRAFFTYのリズムを刻み続けてきたHIROSHI。約10年前に脱退を決意するも、KAZUOMIからの言葉で自分が必要とされている事を実感して脱退を撤回。以来、どんな場面でも苦労や苦悩を表に出さず、いつも笑顔を絶やさずに、彼はROTTENGRAFFTYの土台をしっかりと支えてきた。「いつもメンバーに怒られてます」と笑う彼の言葉ひとつひとつから、メンバーと仲間たちに対する愛をヒシヒシと感じるインタビューだった。
 


「みんなが俺らにストーリーを作ってくれて、最後の俺らにバトンを渡してくれる。出演してくれている人たちのライブを観てて、みんなの想いが分かるし感じるし、“もっと頑張らなくちゃダメだ”っていう気持ちにもなる」


 
 
●昨年の武道館ワンマンは、HIROSHIくん的にはどうだったんですか?
 
HIROSHI:リハまでは「よし、いける」みたいな感じだったんですけど、SEが鳴ったときにパッと日本国旗が見えて「ここでやるんや…」と思ったらガチガチになって。
 
●そんなタイミングで(笑)。
 
HIROSHI:もうステージに出るタイミングで「うわ! どうしよう!」となって。一番最初に僕がかっこつけながら登場するんですけど、内心は“どうしよう! どうしよう!”みたいな(笑)。
 
●いつ緊張がほぐれたんですか?
 
HIROSHI:3〜4曲目くらいかな。でもとりあえず最初のブロックはガチガチでしたね。でも僕の位置からもお客さんがよく見えていたし、めっちゃ近く感じたんですよ。曲を重ねていく内に、みんながすごく喜んでくれてるなっていうのが伝わってきて。メンバーひとりずつ感謝の気持ちを伝えるMCがあったじゃないですか。
 
●ありましたね、ライブ後半。
 
HIROSHI:「アイオイ」前かな? その時、僕はイヤモニをしてるのであまり周りの声が聞こえないんですけど、マキシマム ザ ホルモンのナヲちゃんとかDragon Ashのサクちゃん(桜井誠)が客席から「HIROSHIがんばれー!」といっぱい言ってくれてて、それが嬉しかったですね(笑)。僕の母も来てたんですけど、ライブ後に「私の声も聞こえた?」って言われたんですよ。聞こえてなかったけど(笑)。
 
●ハハハ(笑)。親孝行になりましたね。
 
HIROSHI:そうですね。喜んでくれていました。
 
●ところで今年20周年を迎えましたが、20年の感慨みたいなものはあるんですか?
 
HIROSHI:そうですね。まさか20年もやると思ってなかった。しかもメンバーも変わらずできてるって本当に凄い事だなと思うんです。20年やってきたし、やっててよかった。
 
●そもそもHIROSHIくんは一度バンドを辞めると言ってますもんね。
 
HIROSHI:辞める辞める事件ね(笑)。
 
●あれいつでした?
 
HIROSHI:離婚した時なので2009年、『This World』をリリースする前ですね。
 
●それってパインフィールズと出会ったくらいの大切な時期ですよね…。
 
HIROSHI:どうしようもなかったから。離婚して子ども連れて実家に帰ってがんばろうと思ったけど、その1ヶ月後に父が亡くなって。「もうこれは辞めようかな」って。家には母と姉しかいないから、バンドは辞めないといけないかなって。
 
●なぜそれを撤回したんですか?
 
HIROSHI:ROTTENGRAFFTYが嫌いで辞めたいと思ったわけじゃないので。そしたらKAZUOMIから「2人で飲みに行こう」という連絡があって。それで飲みに行って「やっぱりROTTENGRAFFTYはHIROSHIじゃないと。ちょっと考えてくれないか」と言われて。やっぱりそんな事を言われたら嬉しかったんです。
 
●うんうん。
 
HIROSHI:その頃はCDを出せていない時期が長く続いていて、メンバー間であまり会話がなかったんですよ。そんな時期にそうやって言ってくれて、母にも「バンド続けてみるから、チビの面倒とかよろしくお願いします」と頭を下げて。
 
●そうだったんですね。
 
HIROSHI:でも俺が辞めるからという事で東名阪で“ポルノ超特急”を開催して、赤坂BLITZでUVERworldとFLOWに出てもらったんですよ。それは「HIROSHIが辞めるから出てくれ」とお願いした人たちなんですけど。
 
●詐欺じゃん(笑)。
 
HIROSHI:そう(笑)。それで「ごめん、やっぱり辞めないんだけど出てくれる?」とお願いして(笑)。まあみんな快く出てくれたんですけど。
 
●それが今から10年前ですよね。続けてて良かったですか?
 
HIROSHI:うん、本当に良かったです。
 
●それと松原さんの事については、HIROSHIくんはどう感じているんですか?
 
HIROSHI:ツアーで北海道にいる時に連絡があって、まっちゃんがヤバいぞと。俺はまだ本当にヤバいと思ってなかったから「北海道から帰ったら病院行くので場所教えて下さい!」って頼んだんですけど「いや、もうそういう状況じゃない」と。
 
●はい。
 
HIROSHI:そしたら2時間後くらいに「亡くなった」という連絡がきたんです。その時coldrainが対バンだったんですけど、本当に助けられたというか。
 
●助けられたというと?
 
HIROSHI:coldrainのメンバーもライブハウスに入る前に松原が亡くなったっていう事を知ってたはずだし、でも敢えてなにも言わなかったし、いつも通りにしてくれていたんです。後から思うと、結構話しかけてきて、気遣わせないようにしてくれたのかなって。
 
●なるほど。
 
HIROSHI:本当に助けられたなってすごく思います。あの日の対バンがcoldrainで良かったし、まさかそんなすぐとは思ってなかった。松原は奇跡を起こしてきた男やから(笑)。LINEとかしてたんですけど、もっと連絡するべきだったと思うし、もっと会いに行けば良かったと思っています。それが後悔ですね。
 
●彼が亡くなった事実は受け入れられたんですか?
 
HIROSHI:“COMING KOBE 19”に出演した時、松原がいなかったんですよ。だから、寂しいけど受け止めるしかないなって。
 
●松原さんが実行委員長をやっていた“COMING KOBE”で実感した。
 
HIROSHI:今思うと、武道館のライブを観せる事ができて良かったなって思います。武道館はめっちゃ喜んでくれていたし、ライブ終わったあと1人ずつと抱き合っていて。一番印象に残ってるのは、その時のKAZUOMIとまっちゃんがお互いギュッって抱き合ってる姿なんです。
 
 
 
 

 
 
 
 
●今回“ポルノ超特急2019”の開催が発表になりましたが、今年はどんな感じになりそうですか?
 
HIROSHI:20周年なのでいまはツアーをやっていますけど、目標は“ポルノ超特急2019”に集大成を全部ぶつける感じにしたいと思っていて。みんながビックリするような事はしたいなって思ってます。
 
●特別な2日間にしたい?
 
HIROSHI:そうですね。
 
●ライブといえば、HIROSHIくんは位置的に全員が見えているわけじゃないですか。メンバーを見ていて、ライブの良し悪しはわかるんですか?
 
HIROSHI:なんとなくはわかりますかね。特にN∀OKIが凄くわかりやすいです。
 
●どういう部分で?
 
HIROSHI:ROTTENGRAFFTYのMCは彼が担っているので、彼がノッてたらやっぱりお客さんも「ワーッ!」となるし、逆に「あれ?」みたいなときもあるし(笑)。ROTTENGRAFFTYのMCは彼が重要ですよね。どんなMCをするかで「今日のライブいけるぞ!」みたいになるので。
 
●そう考えるとHIROSHIくんは、MCは重要と考えているんですよね?
 
HIROSHI:そうですね。あと曲と曲の間とか繋ぎも重要だと思うし。そういうところを一番イメージしているのはKAZUOMIだから「ここどうする?」って聞いたりしてます。
 
●曲間や繋ぎの話でいうと、“京都大作戦2014”のライブが忘れられなくて。豪雨の中で凄まじいライブをやって、観ているこっちはみんな「ROTTENGRAFFTY最高!」と思っていたけど、ROTTENGRAFFTYのメンバーは何かが上手くいかなくて、ライブが終わったあと楽屋で少しピリピリしてたという話を後から聞いて。
 
HIROSHI:あれはトラウマですね(苦笑)。僕がいきなりミスったんです。1曲目、クリックの音が聴こえなくてズレてしまって、全部がギクシャクしたままのライブになってしまって。それでメンバー全員がやけくそになってたと思います(笑)。みんなはあのライブが良かったと言ってくれるんですけど、僕はトラウマです。思い出したくもない(笑)。
 
●ハハハ(笑)。いまやっているツアー“20th Anniversary Beginning of the Story”は新旧織り交ぜたセットリストになっているらしいですが、どんな感触ですか?
 
HIROSHI:今回のツアーにあたって昔の曲を改めて聴いて気付いたんですけど、新曲みたいな感覚なんですよ。ライブでも1〜2回しか演ってない曲もあったから。「昔こんな難しいフィル叩いてたんだ」とか思いますね。
 
●例えばどの曲?
 
HIROSHI:「……マニュアル06」(2003年リリースの3rdミニアルバム『SYNCHRONICITIZM』収録)とか「変なフィルだな~」と我ながら思います。
 
●自分で考えたフィルですよね(笑)。
 
HIROSHI:でももともとはKAZUOMIがMDかテープに打ち込んできて、それを初めて聴いたときは「こんなの腕が8本ないと無理や」という感じだったから(笑)。
 
●8本(笑)。
 
HIROSHI:「PORNO ULTRA EXPRESS」(2004年リリースの1stアルバム『CL∀SSICK』収録)も初めて聴いたときに「これも腕が8本ないと無理や」って。作ってきたのはKAZUOMIだし、KAZUOMIのイメージに近づけたいと思って、当時は近いニュアンスで叩いていたんです。だから言ってみれば無理やりなんですよ。しかもこの頃のレコーディングは今と比べて音が悪いので、どういうフィルを叩いているのかちゃんと聴こえないんです。
 
●それは大変だ(笑)。
 
HIROSHI:わかりにくいフィルの音が、ギターとベースの音と重なっていて上手く聴こえない事があって。もう覚えてないから「今だったらこうアレンジする」という感じでやってます。だからコピーですね(笑)。
 
●でもそこまでの感覚だと、確かに新鮮ですね。
 
HIROSHI:本当に。他にも「DISCREAM←→DAYSCREAM」(2005年リリースの2ndアルバム『えきさぴこ』収録)は今まで1回しか演ってなかったり。
 
●なぜ1回しか演ってないんですか?
 
HIROSHI:セットリストに入れにくいんですよ。でもかっこいい。更にドラムも結構難しいんです、ちょっとブレイクビーツっぽい速い曲で。
 
●うんうん。
 
HIROSHI:その「DISCREAM←→DAYSCREAM」を今回のツアーで演ったんですけど、見事にミスってしまって。怒られました(笑)。
 
●ハハハ(笑)。今回のツアーはお客さんも新鮮でしょうね。その集大成としての“ポルノ超特急2019”が控えていると。
 
HIROSHI:そうですね。楽しみしかないです。“ポルノ超特急”はみんなが俺らにストーリーを作ってくれて、最後の俺らにバトンを渡してくれる。出演してくれている人たちのライブを観てて、みんなの想いが分かるし感じるし、「もっと頑張らなくちゃだめだ」っていう気持ちにもなる。やっぱりバンドが主催してるフェスっていうのは、どの出演者も気合い入れて臨んでいる気がするし、どのフェスでもそういう熱さはありますよね。
 
●“ポルノ超特急2019”楽しみにしています。それと20周年を迎えて、他の4人のメンバーに対して思う事はありますか?
 
HIROSHI:僕はよくみんなに怒られてるので、「いつもごめんなさい」って思ってます(笑)。
 
●でもそれは、HIROSHIくんがメンバーの関係性を中和しているんじゃないですか?
 
HIROSHI:どうなんですかね。ただ「HIROSHIが中和剤」とは言われます。だから抜けたらダメなんだろうなと。
 
●それがHIROSHIくんの重要な役割になっているんでしょうね。
 
HIROSHI:しっかりしようとはしてるんですけどね(笑)。だからメンバーには「これからもよろしく。あんまり怒らないでね」って言いたいですね(笑)。
 
●じゃあ21年目は怒られないように。
 
HIROSHI:そうですね、たぶん無理だと思うけど(笑)。
 
 
interview:Takeshi.Yamanaka
assistant:Yuina.Hiramoto
Photo:Yukihide”JON…”Takimoto、かわどう
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 

“ポルノ超特急2019”
2019/12/21(土)、12/22(日)京都パルスプラザ

ポルノ超特急2018
 
 
 
https://rotten-g.com/

 
 
 
 
 
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