しばらく「喜怒哀楽恥」で生きてきたけど、最近は「喜怒哀楽緊張」だ。もう約9年間アイドルをやっているのに、ずっと人前に立つことに恥じらいがあって、最近はずっと緊張している。緊張と入れ替わった恥じらいは消えたわけではなく、それを上回る緊張に今は偶然飲み込まれているだけだ。そのうちまた出てきそう。
数えきれないくらいやっているはずのライブも、どんな規模感であろうと、みぞおちあたりがゾワゾワして、体の感覚が自分から遠のいていく。とにかく緊張している。感覚がこれ以上遠のいていかないように、ステージに出る前私は私の体を満遍なくブッ叩く。夢じゃないことを確認する時にほっぺたをつねるみたいな…私の場合はちょっとバイオレンスすぎるかもしれないけど意図は近い。痛みこそ現実。ブッ叩けばそこそこ大丈夫になる。そんなブッ叩きを見て、同じグループのメンバーはいつも軽く引きながら笑ってくれる。
そんな私の緊張はファンの人には気づかれない。緊張は気づかれない方が良いに決まっているから嬉しいけど、不思議だ。どんなに緊張していても「堂々としてる」とか、私の中でどれだけ揺らいでいようが「安定感がある」と言ってもらうことが多い。
確かに、ステージに立っている時の私は正直強そう。みんなが安心してついて行きたいと思えるようなヒーローになりたいから、できるだけ弱い部分は見せたくない。強く頼もしく、無敵でありたい。
でも、どれだけ緊張や弱さを押し殺しても歌は正直だ。練習やリハーサルの時に歌えた歌が本番で歌えなかったり、大事なパートも緊張で喉が締め付けられることが多くなった。その度に、私が憧れるヒーローとの距離を知る。
緊張するのが悩みだと話した時に、「どうでも良くないから緊張するんだよ」と言ってもらったことがある。確かに、全然どうでも良くない。全部どうでも良くなさすぎるからこんなに緊張してるんだ。隠しきれない弱さも知ったけど、私がこのアイドル活動を心から大切に思っている気持ちにも気づけた。
長くやっていればそのうち慣れて、緊張なんてしなくなると思ってた。私の場合、強化されたのは「慣れる」ではなく、「どうでも良くない大切なものが増えていく感覚」だった。
多分これからもずっと、私のアイドル人生全部全部どうでも良くないから、ありえないくらい緊張するだろう。だってどうでも良くないんだから仕方ない。体をブッ叩いているうちに、いつか本物のヒーローになれるかな。絶対なりたいな。