音楽メディア・フリーマガジン

徳永憲 / ねじまき

アコギを抱えたシンガーソングライター。1998年、ポニーキャニオンよりミニアルバム『魂を救うだろう』でデビュー。以来、内向的で篭りがちな性格と戦いながら、これまでに7枚の傑作アルバムを発表している。高い文学性を誇る歌詞は特にすばらしく、変則チューニングで作られる曲はポップ且つ、独創的。

その昔、僕がデビューした頃、初めてインタビューなるものを受けた。そこで僕はある質問で絶句してしまったことがある。“どういった人達に聴かれたいですか?”
それまで僕はそんなこと考えたこともなかった。だから困った。困って絶句して、その後、ボソッと“…わかりません”と答えたものだ。そういう歯切れの悪さだから、その問答は記事に載ることはなかったのだが、僕の心の中にはその質問が“衝撃”として残った。ああ、音楽ライターさんってのは鋭い所を突いてくるなぁ、と思った。つまり、そのライターさんは僕の音楽を聴いて、どこへ向けられたものなのか、どこへメッセージを放ったものなのか、見当がつかず疑問に思ったのだろう。僕はと言うと、そのインタビューの後、帰宅中にもう一度激しく考えてみた。しかし、やはり答えは出なかった。僕は何も考えずただ赴くままに、自分なりの音楽をやっていただけだった。逆に言えば、対外的な聴かれ方など関心がなかったのである。世間のしがらみと対峙した音楽ではあったが、そのしがらみの中に聴き手がいるということを考えていなかったわけだ。不覚であった。
2013年の現在。今の僕であるが、実は、その頃と何も変わっていない。今や完全に開き直り、聴く層やターゲットを絞った音楽など汚れている、とさえ思っている(少し論点がずれてる)。新しいアルバムは『ねじまき』。また自由に作らせてもらった。無論ターゲットなどいない。ないけど、敢えて挑発的に書くのなら“ターゲットになんかなりたくない”という人がいたら、きっと僕の音楽を気に入ってくれる、と思う。きっとね。

徳永憲

6/28(金) 下北沢440 “ねじまき/レコ発ライブ!”
出演:徳永憲/直枝政広(カーネーション)
Guest:小島麻由美
徳永憲HP予約:http://tokunagaken.blogspot.jp/

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