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サロメの唇 / 終

03年結成以来、高円寺を拠点に活動を続ける歌謡バンド。現在の和モノシーンにおいて中心的バンドの1つに上げられる。結成以来“昭和40年代の歌謡曲”をテーマにしながらも、あくまでオリジナル楽曲にこだわり独自の世界観と音楽観を追求している。今では数少なくなった本物のグランドキャバレーでの定期的な公演も行っている。

新譜『終』をリリースした。このバンドを作ってもう3枚目のアルバム。気がつけば来年で結成10年。結成した時はただ女性ボーカルで歌謡曲をやるバンドを作りたい! って思いだけで、何枚アルバム出そうとか、何年このバンドやるなんて考える事ももちろんなかった。僕は結成当時、歌謡曲自体よりも歌謡曲を作る作曲家/作詞家/編曲家にものすごく魅力を感じてたんだけど、曲を書いても書いても自分の作る曲が当時の作家に追いつけないって、ずっと歯がゆく思ってた。でもその歯がゆさがきっと楽しかったんだと思う。僕はその頃、当時の影響を受けた今の何かではなくて当時のリアルを求めてた。でもそれってもう過ぎ去った時間や空間にあるものだから、もちろん追いかけても追いつくものではなかったんだよね。それが、前のアルバムを出した直後かな? 急に追いかける事に冷めたっていうか、「現代にカバーではなくオリジナルでできる“当時の再現”の限界はもうやってたんだ」って思ったんだよね。そしたら急にテンションが下がって。それからしばらく何を目標にしてサロメの唇を続ければいいのかわかんなかった。やりたい事をやれたのにすごく虚しくて、心が空っぽになった。
でもせっかく聴かせたい、見せたいものができるようになったんだから、みんなに聴いてもらおう、見てもらおうと思ってライブも続けてきた。曲を作るのは勝手に僕の欲求がやってくれた。そんな中、もう追いかけなくていいのなら、自分の好きなように曲を作ればいいやって思うようになってきた。作りたいように曲を作っても、何年も僕が追い求めてきた、音楽観や世界観は勝手に染み出てくるだろうし、ただ単純に作りたい曲を作っていこうと。
長い前置きになったけど、今回のアルバム『終』はそんな感じで単純に作りたい曲を作って、僕が自分でも聴きたいって思う曲を入れただけのアルバムです。悪い言い方をすると聴く人の事を考えずに、僕の欲望のままに作りました(笑)。でもたまにはこういう作り方もいいのかなって。気が向いたらネットでも少し試聴できるので聴いてみてください。それで気に入ってもらえたなら最高に嬉しいです。
Ba. 水のさとし

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