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イツエ

相反する感覚さえも共存する 彼らの世界は危うく、そして美しい

 童話のようにどこか暗く、愛おしい“ダークメルヘン”な世界観を造り出すイツエ。

昨年には“RO69JACK 2011”入賞や“MINAMI WHEEL 2011”への出演、さらにはタワーレコードのバイヤーが耳と直感だけでセレクトしたネクストブレイク候補“タワレコメン”に大抜擢されるなど、着実に地盤を固めてきた彼らが、3/7に1stミニアルバム『いくつもの絵』をリリースする。

痛み・悲しみ・優しさ・暖かさ…いくつもの感覚と情景が交錯する日常の中で生まれた彼らの世界は、儚くも鮮明で、どこか捻くれていながらもまっすぐで、美しい。

Interview

●今作は『いくつもの絵』というアルバムタイトルの通り、情景が浮かんでくるような曲が並んでいますね。1曲1曲がひとつの"絵"という感覚なんですか?

馬場:そうですね。それにタイトルを略すと"イツエ"になるじゃないですか。このアルバム自体がまさにイツエそのものみたいな作品になったので、バンド名にも繋がるタイトルにしたくて。

●"絵"という言葉は、このバンドにピッタリ当てはまる言葉だと思います。

久慈:曲にしてもそういうイメージはありますね。作曲は色を付けたり塗ったりしていく作業。

馬場:曲というよりも"作品"の方がしっくりくるかな。アルバム全体を通して1冊の小説を読んでいるようなイメージですね。だからM-1「目次」はページをめくるように音が左から右へ流れているんです。

●作品の流れを大切にしているのは曲順からも伝わってきます。特に「目次」から流れるように入るM-2「青い鳥」のイントロは、始まりを予感させるようなギターがすごく良い。

久慈:ギターはイントロ先行で作るので、絶対的に良い音で掴みにいく感じです。

●どうりで印象的なイントロの曲が多いわけですね。M-3「言葉は嘘をつく」もそうですし。

馬場:これはこのメンバーで初めて作った曲なんですけど、スタジオに入った瞬間、速攻で出てきましたね。今では代表曲になっているくらいの出来です。

久慈:あらかじめ曲のイメージを持っていたわけじゃなくて「ギターはこう来て、次はこうで…」っていう風に、馬場がその場で指示しながら作りました。

●レコーディングではいつも馬場さんが指揮を執りながら進める感じ?

馬場:そうですね。ゼロから作るのは苦手なんですけど、ヒントさえもらえばそこから広げられるんです。この曲に関してはガチガチに作り込むんじゃなくて、やりたいようにサクッと作ったかな。

瑞葵:まだAメロが出来ていない段階で、サビのメロディが出来たんです。基本的にイントロから順に作っていくので、先にサビが出てくるのって珍しいんですよ。

●それこそ"バンド感"が出ていると。サビのメロディもすごくキャッチーだし、歌詞がまた個性的というか。

久慈:瑞葵の言葉ってすごく耳に残るんですよね。

●"肺すらも残して消え去ってしまおう"っていう表現も、普通はなかなか出てこないと思います。

瑞葵:歌詞を書いている当時に、よくランニングをしていたんですよ。走り終わったあとってすごく肺が痛くて"肺が邪魔! いらない!"って思っていたから、自然とこの言葉が出てきた。

●イツエの曲ってどこか物語的な雰囲気があるんですけど、歌詞には日常の風景が見えるんですよね。浮遊感があって幻想的なんだけど、すごくリアリティがある。

瑞葵:私の歌詞ってその時思ったことが反映されていて、内容から当時の心境が見える事も多くて。だから現実感も出ているんだと思います。

●なるほど。あと、「言葉は嘘をつく」はミュージックビデオを撮影したんですよね。

吉田:僕としては何よりもこのミュージックビデオを見てほしいです。冒頭部分はドラムの映像から始まるんですけど"嘘なんか気にすんな!"って気持ちを込めて叩いてるんで。

瑞葵:全然歌詞の意味を捉えてないじゃん。

●ある意味真逆ですね。正直、吉田さんのキャラが良く分からない(笑)。

瑞葵:吉田は追いつめると面白くなりますよ。

●扱いが酷いというか、完全にいじられ役なのか(笑)。

瑞葵:昔はイケメン担当だったんだけどなぁ。

馬場:それだとムカつくんで、カッコ良いイメージを全部壊したらこうなりました。

●(笑)。アルバムの話に戻りますけど、全体を通してダークな要素がありつつ、それだけで終わらない暖かさや力強さを感じます。

馬場:それはかなり意識していますね。イツエの魅力って、サウンドと世界観とのギャップだと思うんです。繊細な印象を与えるボーカルに対して、男にしか出せないような力強さを上手く重ねるというのが大きなコンセプトになっていて。

瑞葵:温度差というか、微妙なラインがあるよね。

●ライブでも黒い服を着た男性陣の印象と、白い服を着た瑞葵さんとの対比が不思議な雰囲気を醸し出していますね。ある種の危うさがあるというか。

馬場:すごく暴力的なのに哀しくて、暖かい。その絶妙な均衡を表現したいんです。

●なるほど。こうやって作品が形になったわけですが、作り終えた今の心境はどうですか?

久慈:僕は"ありがとう"っていう気持ちが大きい。初の全国リリースから生まれる責任や、関わってくれた人たちへの感謝があります。

馬場:本当にそうですね。今まで"世に知れ渡ったらいいな"という思いはあっても、具体的な行動はしていなかったというか。でもこの作品が完成した時、もっと人に向けて発信したいと思うようになりました。

吉田:初の全国リリースを出すにあたって関わってくれた人に本当に感謝していますし、期待に応えるためにも大勢の人に知ってもらいたいです。

馬場:僕らって初めは堅苦しい人間に見られがちなんですよ。でもみんな結構話しやすいと思うんです。いつもくだらないことばかり話して笑ったりしてるし。だからこの記事を読んだ人たちがライブに来てくれたら、どんどん話しかけてほしいですね。「ジャングルライフを見ました!」って言ってくれたら吉田がビールをおごりますので。

吉田:え? マジで?

●楽しみですね。キッカケがなんであれ、誰かに知ってもらえる機会が増えるのは良いことだと思います。

久慈:そうですね。ツアーを回るのは初めてなので、どんな出会いがあるのか今から楽しみです。

Interview:森下恭子