全国15万部を誇る日本最大級のミュージックフリーマガジン on Web!!

twitter instagram

キツネの嫁入り

誰一人欠けても成立しない唯一無二の作品が完成した

どこかアイロニカルな歌詞と多彩なサウンドを織り交ぜ、破壊力のある楽曲を生み出す京都発バンド“キツネの嫁入り”。

新たにCho./Contrabass.藤井都督を迎え現在の4人編成になったことで、グルーヴ感と独自のポップ感に更なる広がりを見せている彼らが約2年半振りのニューアルバム『俯瞰せよ、月曜日』をリリースした。

PV制作からレコーディングまで様々なアーティストの協力を得て完成した今作は、その誰一人が欠けても成立しない唯一無二の作品となっている。

#Interview

「この4人でキツネの嫁入りと名乗る以上は、伝えたい事を共有した上で、全員が納得のいく音を作り、キツネの嫁入りでしかない音楽を作る事にこだわりたいんですよね」

●前回の1stアルバム『いつも通りの世界の終わり』を2009年にリリースしてからは、どのような活動をされていたんですか?

マドナシ:東京や福岡にツアーに行ったり、前々からやっていたんですけど、引き続き定期的に"スキマ産業"という主催イベントをしていました。さらに今年は廃校になった立誠小学校と木屋町UrBANGUILDを借りて、2日間に渡って"スキマアワー"というイベントの第2回もやりましたね。

●"スキマアワー"は「学校では教わらなかった音楽」というコンセプトで2011年に始められたそうですが、その中でも"この人を呼ぼう"と思った決め手は何なんでしょうか?

マドナシ:単純に僕達が好きな人だという事と、世間の評価は含まずに"彼や彼女にしか出来ない音を作っているか"という事ですね。後、学校では体育館・職員室・和室の3会場を使用したんですけど"この会場でこの人を観たい"っていうイメージがぴったり合う人達を呼びました。

●普段やっている"スキマ産業"の拡大版的というか。

マドナシ:そうですね。フェスのように雰囲気を楽しむ感じではなくて、しっかりと音楽に耳を傾けるようなイベントにしたかったんです。それに学校は京都市の持ち物なので、飲食の出来る場所が限られていたり、アルコールが禁止だったりしたんですよ。

●フェスとは決定的に違いますね。

マドナシ:かつ和室の会場は土足も厳禁なんです。初めはそれがデメリットかと思っていたんですけど、長丁場になるので靴を脱いでくつろいだ方が楽しめるという声があって。意外と大きなメリットになりましたね。学校というロケーションやアルコールが禁止なことから、子ども連れの方にも来てもらいやすかったし。

●親子で来るお客さんも多かったんですか?

マドナシ:20歳の頃はライブで生の音を体感していた人達でも、大人になって子どもが生まれると、なかなかライブハウスに足を運びにくくなるじゃないですか。だから裏コンセプトとしては、そういう人たちに向けて"音楽を生で楽しめる場所を提供したい"という想いもあって。

●見事に意図が結実したんですね。そして前作から約2年半振りにニューアルバム『俯瞰せよ、月曜日』を発表したわけですが、M-1「俯瞰せよ、月曜日」とM-4「雨の歌」はPVが作られていますよね。バンドのイメージにぴったりな内容ですが、映像を作るにあたって何かテーマがあったんでしょうか?

マドナシ:"合成ものとアニメーションの2パターンを作りたい"という希望はあったんですけど、内容はほとんど任せきりでした。制作を担当してくださった麻田弦さん、永田ナヲミさんのおふたりは信頼できる方達だったので、変に注文をつけるよりも音源だけを渡して任せた方が良いだろうと思って。結果的に、思った通りの素晴らしい映像になりましたね。

●音源だけであの仕上がりになるのはすごい! 今作ではバイオリンにイガキアキコ氏(a.k.a.たゆたう)を迎えたりと、様々な方とコラボしていますよね。

マドナシ:たゆたうの2人は結成当初から付き合いがあるんですよ。"これはバイオリンが入ったら面白いだろうな"というイメージの曲があったので、バイオリンならイガキさんだということで参加して頂きました。僕らのことをすごくよく理解してくれているんです。

●M-6「結局、そう」でテンポが急激にあがる部分がありますけど、あのバイオリンのテンションはちょっと衝撃でした。

マドナシ:初めはもっと凄まじかったんですけどね。「もうちょい控えめにしてください」っていうくらい(笑)。
ひさよ:遊び心のあるバイオリンと言えば、イガキさんかなと。人間的にも大好きな人です。

●一緒にやるからにはそれが大事ですよね。東京のシンガーソングライターでフルートも吹くmmm(ミーマイモー)氏やサックス奏者の北村(a.k.a Djamra)氏も、古くからのお知り合いですか?

マドナシ:mmmさんは近年、急速に仲良くなりました。基本的にはギターと歌を中心に活動されているんですけど、フルートも素敵なんですよ。僕らが東京でライブをする時は、彼女に参加してもらうこともあって。北村さんについては、僕らが昔から彼の大ファンで。北村さんも僕らのことを気に入ってくださったので、今回ゲストとしてレコーディングに参加して頂きました。

●管楽器はどうしても目立った音に耳が向きますけど、北村さんのサックスはさり気ないアレンジまでもが素敵ですね。全体的にそうなんですが、みなさんの曲は音の掛け合いが絶妙だなと思いました。M-2「東西南北」のアコーディオンとコーラスの感じがすごく良くて。
ひさよ:他の曲はピアノとアコーディオンを一緒に弾いていたりするんですけど、これはアコーディオンを活かした曲ですね。"最初はテンポよく進めて全体の導入部分を作る感じ、コーラス部分は広がりを持たせて次の展開を暗示する感じ"っていう風に、展開によって音色を変えているんですよ。ただ、途中であんな変わったコーラスを入れるとは思いませんでした(笑)。

マドナシ:曲を作っている途中でふと"こういうコーラスが欲しいな"と思って、お願いしたんです。

●現在の4人編成になってから、共作やセッションの要素が増えたそうですが。

マドナシ:この4人でキツネの嫁入りと名乗る以上は、4人が納得するものをやりたいので。曲に関しては僕の中で明確なイメージは、あるようでなくて。逆に言うと、みんなでやるということにこだわりたい。それに案を持っていっても、少しでも違和感があったらメンバーがやりたがらないんで…。
ひさよ:"なんか違うな"って思ったら、急に演奏を止めちゃうんですよね。無言の抵抗みたいな(笑)。

●あはは(笑)。でも今回はこだわりがある歌詞についても、共作した部分があるんですよね。

マドナシ:基本的に歌詞は僕が書いているんですけど、曲のイメージを全員が共有した後に「こういう歌詞を作りたいねんけど…」という感じでみんなに考えてもらうこともあります。例えばM-5「せん」という曲の"だれか ひいた せんが~"というポエトリーリーディング的な部分は、ひさよさんと藤井くんに任せました。
ひさよ:その中でも前半部分は私が考えて、後半は藤井くんのアイディアです。

●他の曲でも"雑音がこの目をふさぐ"(M-3「エール」)、"あぁ、これが傘だっけ"(「雨の歌」)みたいな独特の表現が多いですよね。あと、全体を通して"○○かい?""○○なのさ"といった口調が多いのも印象的でした。

マドナシ:そう言われてみればそうですね。"他がどうかはわからないけど、俺はこうやねん"的なニュアンスはあるかもしれない。
ひさよ:押し付けがましい感じにはしたくなかったですね。言い切るよりも促す感じというか。断定するのが好きじゃないから"私は○○だと思うけど、どう思う?"みたいな表現になっているような気がします。

●受け手側の感性に委ねている?

マドナシ:もちろん自分の中では一言一句に意味があって歌っているし、どの曲も一貫して"既存の何かに対して警鐘を鳴らしたい"というテーマはあるんですよ。でも僕の意見をただ押し付けるんじゃなくて、聴いた人それぞれが解釈できる余地をある程度は残しておきたいんです。僕の中では対象があって書いているんですけど、その歌詞から別の解釈が膨らんでいくのも面白いなと。

●後、歌詞は辛辣な表現が多い割には曲調はわりと軽快なハネたリズムが多いのも面白いと思いました。

マドナシ:僕の書く歌詞は辛辣であったり、直接的な言い回しが多かったりするので、それをオブラートに包む意味もあって若干ノリを良くしたいっていうのはあります。

●逆に「エール」は歌詞的にはポジティブに見えますけど、曲調的にはマイナー調ですよね。

マドナシ:でも実は、あれでもだいぶノリを良くした方なんですよ(笑)。
ひさよ:ギターのリフだけ聴いたら絶望的な感じがするもんね(笑)。最初は歌詞の内容ももっとキツい表現だったんです。"それはナシじゃない?"っていうくらいの。

マドナシ:あまりにも辛辣なことを書き過ぎて、この人(ひさよ)の承認が降りなかったんです。

●どんな内容だったんだろう…(笑)。M-6「結局、そう」はアルバムの中でも異質というか。

マドナシ:異質かもしれませんね。なんせ歌詞が短い。これは速攻で出来た気がします。時々"自分でちゃんと考えているのかな"って思うような場面に出くわすんですよ。みんなが笑っているから笑ったり、泣いているから泣いてみたり…"集まってああだこうだするばっかりで、それって楽しいんですか?"と。
ひさよ:それが「楽しい」って言い切れるなら良いと思うんですよ。

マドナシ:だから否定はしていないんですよね。訊いているだけなんで(笑)。

●逆にM-7「ヤキナオシクリカエシ」は歌詞がすごく長い。

マドナシ:歌いたい事がストレートに出ている曲の一つかもしれません。

●言葉というより、もはや文章ですからね。この曲はトライアングルの音がすごく効果的だと思いました。
ひさよ:それは嬉しいですね。実はトライアングルにはかなりこだわっているんですよ。単純に好きだから、随所で入れています。

●"トライアングルってこんな表現ができるんや!"って感動しました。M-9「家探し」はかなり前にデモ音源で出ていた曲ですが、現メンバーになって変わった部分もあるんでしょうか?

マドナシ:最初に2人(マドナシ、ひさよ)で始めた時に作った曲なんですけど、僕の中ではずっと未完成だったんですよ。でも藤井くんのコーラスとベース、カギちゃんのドラムのおかげでようやく納得のいく出来になりました。だから昔の曲ではあるけど、今回のアルバムに入れたんです。

●M-8「ブルー、始まりと終わりと」は、その藤井さんのベースイントロから始まる曲ですね。

マドナシ:これこそ、今の四人になったからこそ出来た曲です。これまではあまりロックテイストな曲が出来ていなかったので、これで"ただのアコースティックバンドじゃないんだぜ"というのを見せたい気持ちもあります。
ひさよ:新しい扉を開いた感じがあったよね。ずっとやりたかった速いテイストの曲をできるということで、その喜びが詰まってます。他の曲はわりと感情を抑え気味にしている感もあるけど、この曲ではそれを剥き出しにしているのが私は好きなんです。

●元々やりたかったことを実現した曲でもあるんですね。

マドナシ:たまたま今のようなアコースティックな編成になっていますけど、音楽的に通って来た道は全然違うところですからね。

●いろんなジャンルの音楽を聴いてきたことが、今のサウンドに反映されている。
ひさよ:そうとも言いますね。ただ、ジャンルという事に関してはあまり意識していません。

マドナシ:"良いと思ったら良い"っていう感覚は持っておきたいですね。

●そういう自分たちの感覚を信じて主催されている"スキマ産業"も現在31回目ですが、次の予定は決まっているんですか?

マドナシ:このアルバムのレコ発を兼ねて、東京で32回目をしようかなと考えています。今回のレコ発であっちゃこっちゃ行って、9月頃には京都でファイナルをしたいですね。

Interview:森下恭子

「この4人でキツネの嫁入りと名乗る以上は、伝えたい事を共有した上で、全員が納得のいく音を作り、キツネの嫁入りでしかない音楽を作る事にこだわりたいんですよね」

●前回の1stアルバム『いつも通りの世界の終わり』を2009年にリリースしてからは、どのような活動をされていたんですか?
マドナシ:東京や福岡にツアーに行ったり、前々からやっていたんですけど、引き続き定期的に“スキマ産業"という主催イベントをしていました。さらに今年 は廃校になった立誠小学校と木屋町UrBANGUILDを借りて、2日間に渡って“スキマアワー”というイベントの第2回もやりましたね。
●“スキマアワー”は「学校では教わらなかった音楽」というコンセプトで2011年に始められたそうですが、その中でも“この人を呼ぼう”と思った決め手は何なんでしょうか?
マドナシ:単純に僕達が好きな人だという事と、世間の評価は含まずに“彼や彼女にしか出来ない音を作っているか”という事ですね。後、学校では体育館・職 員室・和室の3会場を使用したんですけど“この会場でこの人を観たい”っていうイメージがぴったり合う人達を呼びました。
●普段やっている“スキマ産業”の拡大版的というか。
マドナシ:そうですね。フェスのように雰囲気を楽しむ感じではなくて、しっかりと音楽に耳を傾けるようなイベントにしたかったんです。それに学校は京都市の持ち物なので、飲食の出来る場所が限られていたり、アルコールが禁止だったりしたんですよ。
●フェスとは決定的に違いますね。
マドナシ:かつ和室の会場は土足も厳禁なんです。初めはそれがデメリットかと思っていたんですけど、長丁場になるので靴を脱いでくつろいだ方が楽しめると いう声があって。意外と大きなメリットになりましたね。学校というロケーションやアルコールが禁止なことから、子ども連れの方にも来てもらいやすかった し。
●親子で来るお客さんも多かったんですか?
マドナシ:20歳の頃はライブで生の音を体感していた人達でも、大人になって子どもが生まれると、なかなかライブハウスに足を運びにくくなるじゃないですか。だから裏コンセプトとしては、そういう人たちに向けて“音楽を生で楽しめる場所を提供したい”という想いもあって。
●見事に意図が結実したんですね。そして前作から約2年半振りにニューアルバム『俯瞰せよ、月曜日』を発表したわけですが、M-1「俯瞰 せよ、月曜日」とM-4「雨の歌」はPVが作られていますよね。バンドのイメージにぴったりな内容ですが、映像を作るにあたって何かテーマがあったんで しょうか?
マドナシ:“合成ものとアニメーションの2パターンを作りたい”という希望はあったんですけど、内容はほとんど任せきりでした。制作を担当してくださった 麻田弦さん、永田ナヲミさんのおふたりは信頼できる方達だったので、変に注文をつけるよりも音源だけを渡して任せた方が良いだろうと思って。結果的に、 思った通りの素晴らしい映像になりましたね。
●音源だけであの仕上がりになるのはすごい! 今作ではバイオリンにイガキアキコ氏(a.k.a.たゆたう)を迎えたりと、様々な方とコラボしていますよね。
マドナシ:たゆたうの2人は結成当初から付き合いがあるんですよ。“これはバイオリンが入ったら面白いだろうな”というイメージの曲があったので、バイオリンならイガキさんだということで参加して頂きました。僕らのことをすごくよく理解してくれているんです。
●M-6「結局、そう」でテンポが急激にあがる部分がありますけど、あのバイオリンのテンションはちょっと衝撃でした。
マドナシ:初めはもっと凄まじかったんですけどね。「もうちょい控えめにしてください」っていうくらい(笑)。
ひさよ:遊び心のあるバイオリンと言えば、イガキさんかなと。人間的にも大好きな人です。
●一緒にやるからにはそれが大事ですよね。東京のシンガーソングライターでフルートも吹くmmm(ミーマイモー)氏やサックス奏者の北村(a.k.a Djamra)氏も、古くからのお知り合いですか?
マドナシ:mmmさんは近年、急速に仲良くなりました。基本的にはギターと歌を中心に活動されているんですけど、フルートも素敵なんですよ。僕らが東京で ライブをする時は、彼女に参加してもらうこともあって。北村さんについては、僕らが昔から彼の大ファンで。北村さんも僕らのことを気に入ってくださったの で、今回ゲストとしてレコーディングに参加して頂きました。
●管楽器はどうしても目立った音に耳が向きますけど、北村さんのサックスはさり気ないアレンジまでもが素敵ですね。全体的にそうなんですが、みなさんの曲は音の掛け合いが絶妙だなと思いました。M-2「東西南北」のアコーディオンとコーラスの感じがすごく良くて。
ひさよ:他の曲はピアノとアコーディオンを一緒に弾いていたりするんですけど、これはアコーディオンを活かした曲ですね。“最初はテンポよく進めて全体の 導入部分を作る感じ、コーラス部分は広がりを持たせて次の展開を暗示する感じ”っていう風に、展開によって音色を変えているんですよ。ただ、途中であんな 変わったコーラスを入れるとは思いませんでした(笑)。
マドナシ:曲を作っている途中でふと“こういうコーラスが欲しいな”と思って、お願いしたんです。
●現在の4人編成になってから、共作やセッションの要素が増えたそうですが。
マドナシ:この4人でキツネの嫁入りと名乗る以上は、4人が納得するものをやりたいので。曲に関しては僕の中で明確なイメージは、あるようでなくて。逆に 言うと、みんなでやるということにこだわりたい。それに案を持っていっても、少しでも違和感があったらメンバーがやりたがらないんで…。
ひさよ:“なんか違うな”って思ったら、急に演奏を止めちゃうんですよね。無言の抵抗みたいな(笑)。
●あはは(笑)。でも今回はこだわりがある歌詞についても、共作した部分があるんですよね。
マドナシ:基本的に歌詞は僕が書いているんですけど、曲のイメージを全員が共有した後に「こういう歌詞を作りたいねんけど…」という感じでみんなに考えて もらうこともあります。例えばM-5「せん」という曲の“だれか ひいた せんが~”というポエトリーリーディング的な部分は、ひさよさんと藤井くんに任せました。
ひさよ:その中でも前半部分は私が考えて、後半は藤井くんのアイディアです。
●他の曲でも“雑音がこの目をふさぐ”(M-3「エール」)、“あぁ、これが傘だっけ”(「雨の歌」)みたいな独特の表現が多いですよね。あと、全体を通して“○○かい?”“○○なのさ”といった口調が多いのも印象的でした。
マドナシ:そう言われてみればそうですね。“他がどうかはわからないけど、俺はこうやねん”的なニュアンスはあるかもしれない。
ひさよ:押し付けがましい感じにはしたくなかったですね。言い切るよりも促す感じというか。断定するのが好きじゃないから“私は○○だと思うけど、どう思う?”みたいな表現になっているような気がします。
●受け手側の感性に委ねている?
マドナシ:もちろん自分の中では一言一句に意味があって歌っているし、どの曲も一貫して“既存の何かに対して警鐘を鳴らしたい”というテーマはあるんです よ。でも僕の意見をただ押し付けるんじゃなくて、聴いた人それぞれが解釈できる余地をある程度は残しておきたいんです。僕の中では対象があって書いている んですけど、その歌詞から別の解釈が膨らんでいくのも面白いなと。
●後、歌詞は辛辣な表現が多い割には曲調はわりと軽快なハネたリズムが多いのも面白いと思いました。
マドナシ:僕の書く歌詞は辛辣であったり、直接的な言い回しが多かったりするので、それをオブラートに包む意味もあって若干ノリを良くしたいっていうのはあります。
●逆に「エール」は歌詞的にはポジティブに見えますけど、曲調的にはマイナー調ですよね。
マドナシ:でも実は、あれでもだいぶノリを良くした方なんですよ(笑)。
ひさよ:ギターのリフだけ聴いたら絶望的な感じがするもんね(笑)。最初は歌詞の内容ももっとキツい表現だったんです。“それはナシじゃない?”っていうくらいの。
マドナシ:あまりにも辛辣なことを書き過ぎて、この人(ひさよ)の承認が降りなかったんです。
●どんな内容だったんだろう…(笑)。M-6「結局、そう」はアルバムの中でも異質というか。
マドナシ:異質かもしれませんね。なんせ歌詞が短い。これは速攻で出来た気がします。時々“自分でちゃんと考えているのかな”って思うような場面に出くわ すんですよ。みんなが笑っているから笑ったり、泣いているから泣いてみたり…“集まってああだこうだするばっかりで、それって楽しいんですか?”と。
ひさよ:それが「楽しい」って言い切れるなら良いと思うんですよ。
マドナシ:だから否定はしていないんですよね。訊いているだけなんで(笑)。
●逆にM-7「ヤキナオシクリカエシ」は歌詞がすごく長い。
マドナシ:歌いたい事がストレートに出ている曲の一つかもしれません。
●言葉というより、もはや文章ですからね。この曲はトライアングルの音がすごく効果的だと思いました。
ひさよ:それは嬉しいですね。実はトライアングルにはかなりこだわっているんですよ。単純に好きだから、随所で入れています。
●“トライアングルってこんな表現ができるんや!”って感動しました。M-9「家探し」はかなり前にデモ音源で出ていた曲ですが、現メンバーになって変わった部分もあるんでしょうか?
マドナシ:最初に2人(マドナシ、ひさよ)で始めた時に作った曲なんですけど、僕の中ではずっと未完成だったんですよ。でも藤井くんのコーラスとベース、 カギちゃんのドラムのおかげでようやく納得のいく出来になりました。だから昔の曲ではあるけど、今回のアルバムに入れたんです。
●M-8「ブルー、始まりと終わりと」は、その藤井さんのベースイントロから始まる曲ですね。
マドナシ:これこそ、今の四人になったからこそ出来た曲です。これまではあまりロックテイストな曲が出来ていなかったので、これで“ただのアコースティックバンドじゃないんだぜ”というのを見せたい気持ちもあります。
ひさよ:新しい扉を開いた感じがあったよね。ずっとやりたかった速いテイストの曲をできるということで、その喜びが詰まってます。他の曲はわりと感情を抑え気味にしている感もあるけど、この曲ではそれを剥き出しにしているのが私は好きなんです。
●元々やりたかったことを実現した曲でもあるんですね。
マドナシ:たまたま今のようなアコースティックな編成になっていますけど、音楽的に通って来た道は全然違うところですからね。
●いろんなジャンルの音楽を聴いてきたことが、今のサウンドに反映されている。
ひさよ:そうとも言いますね。ただ、ジャンルという事に関してはあまり意識していません。
マドナシ:“良いと思ったら良い”っていう感覚は持っておきたいですね。
●そういう自分たちの感覚を信じて主催されている“スキマ産業”も現在31回目ですが、次の予定は決まっているんですか?
マドナシ:このアルバムのレコ発を兼ねて、東京で32回目をしようかなと考えています。今回のレコ発であっちゃこっちゃ行って、9月頃には京都でファイナルをしたいですね。

Interview:森下恭子