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サクラメリーメン

進むべき道がわからなくなったとき、彼らを導いたのは自分たちの音楽だった

 結成2年というキャリアながら2007年7月にシングル『サイハテホーム』でメジャーデビューを飾り、この5年間の中でシングル8枚とアルバム3枚をリリース。煌びやかでポップネスが溢れる良質なロックナンバーと、人間らしさを感じさせる熱いライブで多くのリスナーから支持されてきたサクラメリーメン。デビュー5周年を記念し、過去のシングル曲と配信限定曲、インディーズ時の代表曲も収録したコレクションアルバム『NAME』がリリースされるこのタイミングで、3人にこの5年間を振り返ってもらった。

Interview

「今まで作ってきた曲を並べて過去を振り返ってみたとき、結果的に僕らは自分の表現を大事にしてきたんやなと思いました」

●デビュー5周年を記念してコレクションアルバム『NAME』がリリースとなりますが、今日はこの5年間を振り返る話を訊きたいなと。

透太:いきなり音楽に関係ない話かもしれないですけど、「会ってみたら印象が変わる」っていうことをすごい言われ続けた5年やったんですよ。

亮太:アーティスト写真とのギャップとかな。

イッペイ:音源ともな。

●だって音楽とか佇まいとか爽やかですもん。僕も直接会うまでそう思ってました。とっつきにくい感じというか、モテそうな人たちというか。

イッペイ:ついこないだも言われたよね(笑)。

透太:実際お会いしたら「気さくな方たちですね」とか言われるんですけど。

●うん、会ったら気さくな関西の兄ちゃん。

亮太:僕ら関西弁のままやから、逆に「キツい」と言われたりもするし。

イッペイ:こうやって取材してもらう人とかも「音源とかからはすごく爽やかなイメージがあるけど実際ライブを観てみたら男臭くて熱い」とか言われたり。

●そのギャップ自体は、自分たち的には良しとしているんですか?

透太:それはね、正しい形のひとつやと思ってるんですよ。自分たちはやっぱり音源のように、王道なポップソングがやりたくてこのバンドを始めたんです。キラキラしてて、メロディも綺麗で、場合によってはストリングスもキーボードもバンバン入れたりしたいんですけど、根本はやっぱり3人でありたいんです。バンドでありたい。

●ふむふむ。

透太:すごいエンターテインメントがしたいし、カラフルなことがしたいんですけど、あくまでそれは最少人数でやっていたいんです。だから「会ってみたら違う」という見られ方をしてしまったのは、自分自身納得がいくことでもある。間違いではないとも思える。

イッペイ:うん、間違いではないよな。

透太:ただ、関西弁に関してはどうかと思うけど。

一同:アハハハハハハハハハ(笑)。

●5年前、カルピスウォーターのCMソング「サイハテホーム」で華々しくデビューしましたけど、今から振り返ってみると5年前の自分たちはどうだったですか?

イッペイ:結成して2年くらいで、そのころ僕と透太は20歳やし、デビューすること自体が「そりゃ嘘だろう」くらいに思ってて。田舎もんなので"東京から来た大人に騙されてるんちゃうか?"って思ってました。

●現実味がなかった?

亮太:なかったですね。

透太:神戸でインディーズでやってたころは「デビューしたい!」と思ってがんばってたんですよ。だから"自分たちはこういう音楽だからこういうやり方でデビューした方がいいんだ"とか、そんなことまったく考えてなかったし。

イッペイ:そりゃそうやな。わかってなかったからな。

●メジャーデビューがひとつの大きな目標だったということは、デビュー当時はフワフワしてた?
3人:フワッフワしてました。

●アハハハ(笑)。

イッペイ:まだ若かったし、周りのバンドは先輩ばっかりやったんですよ。そんな中でやってたから、余計にフワフワになりますよね。デビューが決まったのは結成1年半やったし。

透太:運やったと思います。実際、デビューが決まった瞬間は"奇蹟や!"と思ってん。環境にもタイミングにも恵まれて、たまたま自分たちに奇蹟が起きたんやなって。でもそうは思いたくない自分もいて。"俺天才ちゃうか?"っていう。

一同:(笑)。

透太:要するに、あのころはちゃんと自分というか、芯を持ってなかったんでしょうね。"奇蹟や"と思う自分もいるし、"実力や"と思いたい自分もいる。確固としたものがないままデビューしたんやと思います。

●今作の収録曲にそういうデビュー時の心境の、その後の変化が見てとれたんですよね。M-4「コロナ」は2007年4月にリリースした4thシングル曲ですけど、バンドをやっていく中で生じた葛藤や悩みや、そこに向かって出した自分なりの決意が歌詞に表れているように感じたんです。さっき「確固としたものがないままデビューした」と言ってましたけど、そういった部分をデビューして1年くらいのタイミングで見つめ直してみたのかなと。

透太:そうですね。やっぱりデビューしたときはフワッフワした自分が東京に出てきて、180度世界が変わったわけですよ。そこで価値観が変わって、楽曲を制作する期間とか設けてもらったりして。それまでは自分たちが"いい"と思うものを作ってたし、"これ楽しい"っていうのがバンドのモチベーションやったんです。でもメジャーデビューして、突然"作品"を作らなくちゃいけなくなったんです。責任を持たなくちゃいけない。そこを越えるのがめっちゃ大変やって。

●ああ~。

透太:考えましたね。"どうしよう?"って。で、そういう自分に向けて歌ったのが「コロナ」です。

●歌詞に「進むべき道の方向が"わからない" そんな時は/君が一番好きな歌を唄おう」とありますけど、まさにそういう心境だったんですね。

透太:1年目は特に、音楽だけじゃなくてこういう取材の発言とかもそうですけど、色んなものに責任が生じるなと思ってすごく怖くなったんですよ。3人で田舎から東京に出てきて、右も左もわからんっていう状況で。そんな中で"信じれるものって何や?"と考えたら、自分たちが作った曲しかなかったんですよ。

●ああ~、なるほど。この5年間の中で、自分たちが"これだ"と思えるような芯というか、自己を確立したと実感があったようなタイミングとか作品はあるんですか?

亮太:どうやろう?

透太:毎回毎回、作品を作るごとに"これが俺たちだ!"って思って、次の作品を作るまでに"いったい自分たちって何なんだろう?"って悩んで、でまた作って"これだ!"となる…そういう繰り返しですね。全部の曲を僕が作っているので、バンドの作品性は僕に依るところが大きいと思うんですけど、この5年間は浮き沈みばっかりでしたね。

●あ、そうなんですか。

透太:それはずっと昔からひとつのテーマなんですけど、"自分って何だ?"という闘いというか、ずっと自分探しをしているような感じなんです。作品って区切りじゃないですか。そこでいい答えを出すためにガムシャラにやってたというか。だから未来を想定してやってこれなかったんですよね。

●ああ~、なるほど。

透太:"今やってていちばん楽しいものは何か?"というスタンスでデビューしちゃったから、そのスタンスは変えれないというか。今いちばん自分の中で新しいもの、今いちばん自分の中でおもしろいと思えるものをやりたい。"そこに自分の芯を置いちゃダメでしょうか?"みたいな(笑)。

●ハハハ(笑)。

透太:そこで大きくブレないだろうというところは自分の人生を信じるとして、ちょっとずつちょっとずつ芯を作っているというか、今もその途中なんだと思います。作品ごとに「お前の芯は何や?」という自問をして、自己分析しながらそのときに色々と考えてぐるぐるとなった末に「これです!」って出したものが形になっているんだと思います。

●今までの曲を振り返ってみると、どの曲も"生きていく上で感じる痛み"とか"葛藤"のような、ネガティブなものを乗り越えるための手段を求めている。それが"愛"だったり"希望"だったりするんでしょうけど、全体的にそういう視点で曲を作っていますよね。

イッペイ:はいはい。

●要するにずっと悩んでるのかなと(笑)。

亮太:全部前向きな曲なんですけど、基本的にネガティブスタートやったりするんですよ。例えばデビュー曲の「サイハテホーム」の歌詞に"ツライ人生"とか"暗い人生"と出てきますけど、既にデビューの時点で人生はツラくて暗いものだと決めつけてますからね。

一同:アハハハハハ(笑)。

透太:基本は根暗なんだと思うんです。その根暗をどうやって夢や希望に乗せてお伝えするか? っていうところをサクラメリーメンでやってきたような気がする。でもホントにね、伝えることって難しいんですよ。ずっと難しい。ずっと難しかったし、今も難しい。伝えることってめっちゃ難しいってずっと思ってた。

●何回言うねん。

透太:ずっと思ってた。

●その"伝えること"について…タイアップの経験が多かったサクラメリーメンは常に直面していたと思うんですけど、多くの人に伝えようと思ったら"わかりやすい言葉や表現"が求められたりするじゃないですか。100人いたとしたら100人の共通言語を探す作業というか。でも多くの人の共通言語を探せば探すほど、表現としての自分の個性は薄まっていくような気がするんです。要するに没個性にしないと100人中100人には伝わらない。

透太:はいはい。

●でも表現者のエゴから考えたら、没個性だと「別にこれ俺がやらなくてもいいやん」となりますよね。もちろん二元論で片付けられる話ではないと思うんですが…。

透太:そうなんですよ。僕は昔からサザンオールスターズが好きでMr Childrenが好きでスピッツが好きで、王道のJ-POPと呼ばれるものが好きだったんですよ。だからそういう人たちに憧れる部分が身体の半分側で持ってるんですよ。こっからこっちで(手振りで身体の左側を指す)。

●左側で持ってると。

透太:あ、別に右側でもいいんですけど。

亮太:どっちでもええわ!

一同:ハハハハ(笑)。

透太:"大衆性"っていうんですかね? 100人いたら100人に伝えたいっていう。デビューするまではその左側で作ってたんですよ。それが楽しかった。

●うんうん。

透太:でもデビューして制作する時間をいっぱいもらって、さっき言ってたみたいに"自分の芯は何や?"という感じで自分と向き合うと、自分の中にいる表現者がいっぱい顔を出してくるんです。それが右側なんです(手振りで身体の右側を指す)。

イッペイ:お、出てきた。

透太:そこで「お前そんなこと言うてるけど実は表現したいのはこっちやろ?」って言ってくるんですよ。だから100人100人に伝わる表現を選ぶのか、それとも100人中1人でもいいから人生を変えるほど突き刺さる表現を選ぶのかめっちゃ迷います。今も迷ってます。答えは出せないですよね。だから僕たちは作品にバラエティを求めるんだと思います。

●ああ~、なるほど。

透太:だからホンマにね、こういう話すると結局は芯がないのか? という結論になる。

一同:アハハハ(笑)。

●そういう話じゃないと思うけど(笑)。

イッペイ:というか、結局僕らって個性を強く出したものが100人に伝わればいいなと思ってると思う。どっちも欲しがってるんじゃない?

透太:ああ~、そうやな。結局"大衆性"みたいなもので包んでくれたのはスタッフだったりしたのかな。僕らはデビューのタイミングから"暗い人生"って決めてる部分があるし(笑)、そういう人間性の部分は隠しきれてないんやと思う。コレクションアルバムとして今まで作ってきた曲を並べて過去を振り返ってみたとき、僕らは自分の表現を大事にしてきたんやなって思ったし。
イッペイ&
亮太:うんうん。

interview:Takeshi.Yamanaka