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フラワーカンパニーズ

泣いているような笑っているようなあの顔を見るために フラワーカンパニーズのロックンロールは鳴り止まない

結成24年、一度のメンバーチェンジも経験せずロックンロールを鳴らし続けてきたフラワーカンパニーズ。唯一無二の人間臭さと突き刺さる言葉、太くて重くて頼もしいロックンロールサウンドで、たくさんの音楽ファンを興奮させ、踊らせ、泣かせ、笑わせてきた彼らが、約2年ぶりとなるフルアルバム『ハッピーエンド』を完成させた。現場叩き上げで突き進んできたバンドの歴史の中で、大きな転機となった昨年のあの日。我々が見上げる先、遠い夜空の彼方から鳴り響く今作について、鈴木圭介とグレートマエカワに訊いた。

 

 

 

INTERVIEW #1
「1回ふっとんだんです。“あれー?”って。それ以前と同じ感じでは曲を作れないし、作り方もよくわかんなくなっちゃった」

●今年の夏はフェスもあればアコースティックワンマンツアーもあり、更にイベント出演もあり…かなり忙しかったでしょうね。

鈴木:そうですね。

マエカワ:詰め込みすぎましたね、正直(笑)。

●ハハハ(笑)。

鈴木:かなり目まぐるしい夏で記憶が曖昧なんですけど(笑)、今年は久々に“FUJI ROCK FESTIVAL”に出させていただいたんです。出番が初日の昼だったので、次の日の夜くらいまでは自由にすごせて楽しかったですね。久々に遊んでまわったというか。

マエカワ:そうだね。唯一の夏休みは“FUJI ROCK FESTIVAL”だったんじゃないかっていうくらい。自分たちの出番が終わって丸2日音楽漬けっていう、すごくいい時間でした。お客さんもすごく集まってくれたし。

鈴木:うんうん。

●いい夏を過ごせたと。

マエカワ:そうですね。いちおう9月末までは自分たちの中で“夏”と銘打ってるんですけど、いまのところは順調にできてるかな(※取材は9月中旬)。

鈴木:体力的にもなんとかギリギリ(笑)。

●ライブで忙しい夏を送れているということは、今回のアルバム『ハッピーエンド』は夏前には録り終わっていたんですか?

マエカワ:3〜4月くらいにはほぼ終了していて、M-3「エンドロール」だけは5月くらいに完成したんです。

●前作のアルバム『チェスト!チェスト!チェスト!』(2010年11月)には“未来”というキーワードが多かったと思うんです。そこには“死”も含まれている、という意味のキーワードとして。

鈴木:はい、そうでしたね。

●対して今作ですが、M-9「246」という曲に“ノートをひろげて 未来って字を書いた/びっくりするぐらいに 頼りなく見えた”という歌詞があって、それが前作との対比としてすごく印象的だったんですよ。

鈴木:はい。

●前作とはまったく違う“未来”が見えているのかなと。…もっとはっきり言えば、歌詞の節々から震災がきっかけになったと思われるような視点を感じたんです。“フラカン節”とも言える圭介さんの哲学というか考え方が一旦リセットされたというか、今作に至るまでの葛藤だったり迷いも伝わってくるというか。

鈴木:やっぱり震災は大きかったですね。それまでも、“未来”や“死”は永遠のテーマとしてずっとあったと思うんですよ。でも『チェスト!チェスト!チェスト!』までは、若干笑いも含めて“死ぬ”ということを表現していたというか。余裕があったんですよね。身近な人が死んでいたりもするんですけど、でもそれを若干笑いに変えながら歌っていたというか。シリアスなことを歌っていても曲調は明るい、みたいな。

●はい。

鈴木:だからいくら“死”が近づいているといっても、そういう風には鳴らなかったし聴こえなかったんでしょうね。「未来はないよ」と歌っていても未来がないようには聴こえないというか。自分の中ではそういう感じだったんですよ。でも…もう震災以降はそういう風にはなれなかったんですよね。僕だけじゃなくて全体が“これは本当にダメかも”って。“ダメになるかもな”っていうのがあって、だから今回はそういった笑いの要素が少ないアルバムになりました。ちょっと真面目な感じですかね。

●そうかもしれないですね。そういうことが関係しているかもしれないですが、今作はアルバム1枚で1つというか、全体で1つのテーマを歌っているという印象がすごく強いんです。

マエカワ:2011年の2月くらいから曲作り期間を設けていたんですよ。で、「なかなかできないな」と言ってたら3月に震災があって。

鈴木:それで1回ふっとんだんです。「あれー?」って。それ以前と同じ感じでは曲を作れないし、作り方もよくわかんなくなっちゃった。というか、震災の直後なんてそれどころじゃなかった。あたふたしてたらすぐにツアーが始まって、そのツアーも手探りだったんです。

マエカワ:「やってもいいのかな?」みたいな感じもあったしね。

鈴木:日比谷野外音楽堂のワンマン(2011/4/16の“フラカン22年祭〜ゾロ目だョ全員集合!〜”)も、直前までできるかどうかわからないくらいの状態だったし。

マエカワ:電気だけじゃなくて電車の問題もあったし。

●そうだったんですね。

鈴木:まあそうは言いつつも、ライブで東北の方にも行ってみると、“やってくれるなよ”というムードではなかったんです。歓迎してくれたり待っててくれた人も居て。ライブをやることによって発散してくれる人もたくさん居たから“これはやっぱりやった方がいいんだろうな”と。

●なるほど。

鈴木:だから決まっているライブはやりつつ、曲を作っていこうかなと思っていたんですけど…できなかったですね。たぶんみんなそうなったと思うんですけど、1回自問自答したっていうか。大袈裟なことを言えば、「歌ってなんだろう?」というところに立ち戻ったというか。

●はい。

鈴木:かと言って、別に音楽は東北の人だけに届けるわけではないですから。その辺もどうなんだろう? と考えつつ、なかなか答えが出ないままツアーをまわって。東北ももちろん行きましたけど、西の方も行きますよね。そこで思ったんですけど、あれってやっぱり“距離”なんですよね。

●ああ〜。

鈴木:東日本と西日本に居る人では明らかに温度差があるということを肌で感じたんですよ。

マエカワ:それは良い悪いの話じゃなくて、全世界どこでも同じことだと思うんですよね。

●そうですね。リアリティの違いというか。

鈴木:そんな中、東京は原発の不安もあったし、僕が住んでいた地域は大丈夫でしたけど計画停電もあったし。「テレビは信じられない」と言いつつニュースは観るし…絶えずそういうことは考えていました。ずーっと考えていましたね。正直に言うと歌どころじゃなかった、というのが本音かな。ライブで歌わない曲もいくつかあったし。「これはちょっと今はやめといた方がいいんじゃないかな」って。

マエカワ:半年近くはそういう感じだったね。

●そうだったんですか。

鈴木:僕が「誤解される恐れがあるからちょっとやめておこう」って。そういうことを具体的に歌っているわけではないんですけど、被災した人たちが誤解して傷つけたりするのはいちばん嫌だなと思って。こっちは元気づけたいので。でも、それもしばらくライブをやっていくうちに、お客さんの元気な「ウワーッ!」っていうエネルギーを見ていて、“そういう小さいことじゃねぇな”とこっちが逆に元気づけられて。

●ライブハウスで感じた肌感覚みたいな。

マエカワ:うん。全部そうですね。やっていきながら「こっちでいいんだ」「これでいいんだ」って。それは元の形ではないのかもしれないけど、徐々に今の形になってきたというか。ちょうど震災から1年半が経ちましたけど、今もそれは続いているのかもしれないです。

●「なかなか曲ができなかった」とおっしゃっていましたが、今作の曲はどういう感じでできていったんですか?

鈴木:ライブをやりつつ、曲ができはじめたのは去年の夏前くらいだったんです。「でもアルバムはやっぱり出したいから作ろう」って。最初は手探りな感じでした。今作の中では「246」がいちばん先にできたんですけど、モロにそのときの心境を歌ったんです。

●迷いというか。

鈴木:そうですね。震災にまったく関係ないことは歌えなかったんですよ。普通にラブソングなんて絶対に無理だったから、やっぱりそこを歌おうか…という感じで手探りで。

マエカワ:結局アルバムの全体像が見えたのは今年の3月くらいだね。25〜6曲くらいデモを録って「どれを入れようか?」と話し合ったのが今年の3月。

●前作は音楽的にも非常にカラフルな作品だったと思うんですが、今作の音のイメージみたいなものはあったんですか?

マエカワ:音のイメージはあまりなかったですね。前作は鈴木が作ってきた曲が良くなるようなアレンジ…例えばピアノだったりパーカッションだったり…をどんどん入れていこうという感じで作ったんです。

鈴木:バンドに縛られないというか、楽曲ありきというか。

●うんうん。

マエカワ:でも今回はそういう話も出なかったし、別に話し合ったわけではないですけど、今のこの4人で出せる音で、ライブですぐにできる感じで作った方がいい、という空気がなんとなくあった。

鈴木:別に「バンド以外の音は入れない」と決めていたわけではないんですけどね。でも、そこまで欲さなかった。

マエカワ:デモを録った段階で「あ、雰囲気がいいな」という感じで完成像が見えていたことも多かったし。

●メンバー間で話し合わなかったのにそういう方向に制作が進んだのは、ライブが見えていたからなんでしょうか? 僕は今作を聴いたとき、ライブのイメージと重なることが多かったんですが。

鈴木:いや、むしろ僕は『チェスト!チェスト!チェスト!』の方がライブが見えていました。ライブで使いやすい曲を作った、という感覚もあるし。

マエカワ:そこはメンバー間でも温度差があるんじゃないかな。俺とか竹安はデモの段階で「これでイケるね」みたいな感じがあったんです。今作はアップテンポの曲が少なめなんだけど、でも「意外と力強い曲が多いからライブは見えるな」という話をしていて。

●なるほど。

鈴木:僕がライブを想定したとしたら、もっとアップテンポな曲を入れるんですよ。賑やかしの曲というか、30分のステージでもポンと入れることができるようなものを。でも今回はそういうバランスを取る余裕がなかったということもあって、25〜6曲は作りましたけど、個人的には「こういう曲はライブでも欲しいな」みたいなところまで頭がまわらなかったな。

マエカワ:候補の中にはアッパーな曲もあったんですよ。それを入れてもよかったんだけど、話し合っていく中で、この13曲がいちばんいいんじゃないかっていうことで落ち着いたよね。

 

 

 

 

 

 

INTERVIEW #2
「常田が赤を入れていく歌詞を見ながら寒気がしたもんな。“あ、プロが居た!”って」

●常田真太郎さん(スキマスイッチ)がプロデュースされたM-3「エンドロール」は、今作を象徴する1曲ですよね。先ほど圭介さんが話されていた、震災後にライブをやっていく中での葛藤や悩みや不安、それと願いが詰め込まれていて。

鈴木:この曲はあれですね。久々に痛い曲を書いたなっていう…「痛い」というのはちょっと言い方が悪いですけど…でも、前作には絶対に入らなかっただろうし、なにしろこの曲がいちばん苦労したんです。

●あ、そうなんですね。

鈴木:震災のことに関しては他の曲でも歌っているんですよ。意識していたわけじゃないですけど、後から自分で見てみると、“たぶんこれは震災以降じゃないとできなかっただろうな”と思う曲も多くて。

●はい。

鈴木:でも、原発のことを歌ったのは「エンドロール」だけなんです。歌詞に具体的な言葉は出していないからそう思われないかもしれないですけど、まぁそういうことを歌っていますよね。

●そうですね。原発事故やその後の状況に対する気持ちというか。

鈴木:そういうことを歌うかどうかもずっと悩んでいたんです。ちょっとハマっていた時期があったんですよ。まったく今までノンポリだったし政治のことなんて興味がなかったんですけど、原発の事故がきっかけで色んな本を読んだりとかして。

●そうだったんですね。

鈴木:そういうこともあって、“震災のことを歌って原発のことを歌わないのはどうなのかな?”という、自分の中でわだかまりみたいなものもあって。

●自分がそのときに感じたり考えたりしていることを歌にしないのはどうなんだろうと。

鈴木:そうそう。でも1曲だけは震災と原発…あの日に関することを曲としてしっかり形にしたかったんです。レコード会社の人も「そう思うんだったらアルバムに入れた方がいいと思う」と言ってくれて、他の曲を作りながら「エンドロール」を並行して作り始めたんです。歌詞は30回くらい書きなおしたんですけど。

●え? そんなに?

鈴木:歌詞は今でもかなり長いですけど、もともとは3倍くらいの長さがあったんです。他の曲はだいたいできたのに「エンドロール」だけは形にならなくて。制作自体が佳境だったということもあって、曲ができなくなっちゃったんですよね。でも言葉は出てくるから、歌詞だけ書いてメンバーみんなにコピーして配って、「曲は任せる」とか言ったりして。

●はい。

鈴木:でも「曲は任せる」とか言っても、僕らは今までそういう作り方をしてこなかったのでできるわけがないんですよ。歌詞を先に書いたから字数が合ってないとかの問題もあるし、当然みんなでやってもなかなか曲が形にならなくて。

●かなり難航したんですね。

鈴木:メンバーだけで形になりそうにない感じだったから、レコード会社の人に「作曲も含めて誰かとコラボレーションするのはどうですか?」と相談したんです。『チェスト!チェスト!チェスト!』のときは亀田誠治さんにお願いしたんですけど、あれは曲が完全にできた状態から入っていただいて、細かいアレンジだったりとか前奏を作って貰ったりとかして。

●そうでしたね。

鈴木:でも今回は曲もできてないから、作曲も一緒にしたいなと。でもそうなってくると、初めて会った人とかだと難しいかなと。変に変えられちゃうのは嫌だし。

●うんうん。

鈴木:「誰かとやりたい」と言ったものの、とりたててやりたいと思う人も思いつかなくて。“どうしようかな? 誰っていうのもいねぇな〜”って考えていたら思い出したんですよ、真太郎のことを。

●もともと交流があったんですか?

鈴木:彼と出会ったのは10年くらい前かな。地元が一緒なんですよ。隣の中学なんです。

●ほう。

鈴木:10年くらい前、他のバンドもいっぱい出ていたライブだったんですけど、真太郎が観に来ていて、僕らのことも知っていたみたいで話しかけられたんです。「隣の中学なんですよ」「あっ、そうなの?」って。それからすぐ2回くらい2人で飲みに行って。まあほとんど僕がしゃべっていたんですけど。

●ハハハ(笑)。

鈴木:スキマスイッチが有名になってからはずっと連絡を取っていなかったんですけど、去年のイベントで一緒になることがあって久々に話したんですよ。「スタジオ作ったから、もし機会があったら使ってください」と言われて「ああ〜、いいね! やるやる!」って。まあそれは社交辞令だったんですけど。

●そうでしょうね(笑)。

鈴木:そのことを「エンドロール」を作っているときにパッと思い出したんです。彼だったら鍵盤ができるじゃないですか。人間的にもまったく気を遣わずに話せるし、なにより地元が一緒。

マエカワ:フラカンのことも割と知ってる。

鈴木:そう。もう完璧だなと。レコード会社の人に「コラボレーションはどうですか?」と相談したその日の夜、深夜2時くらいにまたレコード会社の人に電話して。「こんな夜中に何かあったんですか?」ってびっくりされたんですけど、こっちはテンションがマックスになってるから「いやいや! 思いついたんですよ! スキマスイッチの真太郎はどうですか?」って。

●なるほど(笑)。

鈴木:早速連絡を取ってもらったら、彼はすごく忙しかった時期だったんですけど「やりたい」と言ってくれて。そこからは速かったですね。

●常田さんとはどういう感じで作業を進めていったんですか?

鈴木:これは頼むまで知らなかったんですけど、彼は歌詞も書ける人なんですよ。最初は曲だけ頼むつもりだったんですけど、話を聞いたら「歌詞も書ける」と。でもなかなか時間が取れなかったので、最初はマエカワと2人で彼のスタジオに行って打ち合わせをして、その後メンバーと一緒に5人で半日スタジオに入って。その後レコーディングです。

●え? そんなに短期間で?

マエカワ:そうだったんです。ある程度まで歌詞も曲もできていたから、いちおう音源を録っていたんです。それで2人で常田のスタジオに行って「どうする? まず曲を聴く?」と訊いたら「いや、まず歌詞を見せてもらえますか」と言われて。で、見せたら「おおー! すごいっすね! やっぱり圭介さんの突き刺さる言葉は最高っすね!」って。

鈴木:まず褒めてくれるんですよ。

●圭介さんのことをよくわかっていらっしゃる(笑)。

鈴木:そうなんです。親父転がしが上手いっていうね(笑)。あいついいやつなんですよ。

●ハハハ(笑)。

マエカワ:「いいですね〜。でもちょっといいですか? 2〜3箇所ちょっと訊きたいところがあるんですけど…」みたいな感じで、歌詞に赤鉛筆でアンダーラインを引いて「圭介さん、ここの時系列はどうなってますか?」「ここの季節はどうなってますか?」って。

●ほう。

鈴木:僕は「あ、季節なんて考えたことなかったよ」って。「あと、こことここは入れ替えた方がいいですよ。なぜならここがこうなっているので」みたいな感じで、全部論理的なんです。テクニックで来たんですよ。

●なるほど(笑)。

鈴木:今までも、歌詞のことを言われることはたまにあったんですよ。でもそこまで納得するような感じで言われたのは初めてで。

●今までは感覚的に言われていたんでしょうね。

鈴木:そう。だから曖昧じゃないですか。何か言われても“それって結局好き嫌いの問題じゃねぇのかな?”みたいな感じだったんです。でも真太郎はそうじゃなくて、全部論理的というか数学的というか。「いや、ここで倒置法を使うのはまだ早いと思います。なぜならこれが効いているから」とか「こことここが繋がるから、これは逆にした方がおもしろいと思いますよ」って、ポンポン出てくるんです。

マエカワ:それだけじゃなくて、いいところも言うんだよな。

鈴木:そう。「ここはすごくいいから、絶対に変えないでください」って。

マエカワ:常田が赤を入れていく歌詞を見ながら寒気がしたもんな。「あ、プロが居た!」って。

●ハハハハハハ(笑)。

鈴木:僕の歌詞なんてまったくの自己流ですからね。プライドもあるし、あまりそこは人に相談したこととかなかったんですけど…これはちょっとびっくりしました。“うわぁ!”って。“歌詞ってそういう風にできてるんだ!”って。

マエカワ:音源もその後で聴いてもらったら「いいですね。でも考えたいこともあるので、それを持ってみんなでスタジオに入りましょう」って。

鈴木:その間、僕は言われたアドバイスを元に歌詞を書き直して。

マエカワ:メンバーと一緒にスタジオに入ったとき、「後半の展開とかもうちょっと練った方がいいかな」という話になって、みんなであーだこーだ言いながら合わせてたんですけど、そこで常田のアドバイスがビッシビシと出てきて。そのときも「あ、プロの人が居た!」って寒気がした(笑)。

●ハハハ(笑)。

鈴木:ホワイトボードにコード進行を書き出すんですけど、今までまったく見たこともないような記号とかが出てくるんですよ。“△”とか分数とか。

マエカワ:ギターのコードを表す記号で普通にあるんだけどね。

鈴木:だから最終的には、僕はギターを弾くフリをして全然弾いてなかったですからね。

●ハハハハハハ(笑)。

鈴木:それで形になって、これはイケるなと。歌詞はレコーディングの当日ギリギリまで2人で考えていたんですけど、本当にホップ・ステップ・ジャンプみたいな感じで形になったんです。

マエカワ:周りから見ていても鈴木と常田の相性が抜群だったんです。鈴木は上から目線で「ダメダメ!」とか言ったら絶対にダメだけど、逆に「いいですね! いいですね!」と言い過ぎたらもっとダメなところもあって。

鈴木:褒められすぎたら疑うんですよ。けなされると拗ねるし。

マエカワ:めんどくさいんです。

●めんどくさいですね(笑)。

鈴木:そのバランスが真太郎はちょうどいいんです。

マエカワ:そう。そんな人間を俺は見たことがないから“うわー、この人すごい!”と思いながら見ていて。

鈴木:塾の先生とかやったらすごいと思うよね。だって10歳も年下なんですよ。でも“敬語使おうかな”って思うくらいだもん。

マエカワ:うん、敬語使った方がいいよ。

●ハハハ(笑)。

鈴木:すっげぇなと思いました。僕は歌詞を書き直すのはあまり好きじゃないんですよ。基本的には、いちばん最初に出てきたものがいちばんいいと思っていて、書き直せば書き直すほど新鮮さがなくなっていくと思っているんです。

●はい。

鈴木:それをずっと信じていたんですけど彼は逆で。「歌詞は直せば直すほど良くなると思っています。100回書き直せば、100回分歌詞は絶対に良くなると信じています」って。それを聞いて「すごい!」って。それを僕はまともに信じちゃったんです。だから書き直すのがすごく楽しかった。

マエカワ:短い時間だったけど、それがすごくよかったよね。

鈴木:うん。「よーし!」って更に燃えてくる感じ。積極的に書き直しました。

●奇跡のコラボだったんですね。

鈴木:そうですね。真太郎の場合は地元が同じだからみんなも入りやすかったんです。みんなでスタジオに入るときにまず地元の話で1時間話して、肩を慣らしてからスタジオに入る。

マエカワ:「まだ入らないんですか?」とスタッフに言われるくらいずーっと話してね。

鈴木:最終的には“名古屋会”という会が発足しましたからね(笑)。

●ハハハ(笑)。でもそれでこういう名曲ができるって、すごくいいことですね。

マエカワ:いいことですね。バンド4人では絶対にできなかった形の曲で。こないだもバンドの友達と「誰かと一緒にやるんだったら、俺たちの発想や脳にないことを入れてくれないとやる意味がないよね」っていう話をしていたんだけど、まったくその通りなんだよね。

鈴木:そう。

マエカワ:4人でやれることだったら4人でやればいいわけで。でも足りないことは俺らにもどうしてもあるし、長くやっているからこそ新しい発想はなかなか出てこないだろうし。だから今後も、もしかしたらアルバム1枚につき誰かと1曲くらいはコラボした方がいいかもしれない。

鈴木:うん。その方が血液の循環が良くなるね。

マエカワ:そういうことを常田が教えてくれました。

INTERVIEW #3
「他ではまったく役に立たないような4人でも“ああ、そうか。人数は多くないにしても誰かを元気づけたりすることができるのか”って」

●例えば「ロックンロール」では“ロックンロールは続いていく どこにもたどり着かないで”と歌っていて、M-1「また明日」では“言えるかよ 今さら青臭い言葉”という歌詞があり、M-12「宛のない歌」では“歌はどこへたどり着くんだろう? 響くんだろう?”という、いわば音楽をやっていく上での迷いのような感情が綴られているじゃないですか。そういう気持ちが綴られたアルバムの中で、「エンドロール」の最後の2行は今作の目指すところというかテーマというか、もっと言うと震災を経たフラワーカンパニーズの想いが集約されているような気がしたんです。

鈴木:そうですね。この最後の2行は、まあ自分で説明するのも何なんですけど…。

●すみません、確かにそうですね(笑)。聴けばわかるという。

鈴木:そうですね(笑)。

マエカワ:でもこの最後の2行は鈴木の個人的な想いもあるだろうけど、7分もある長い曲のいい落とし所だと俺も思いました。

●今作は、改めて音楽を向きあって、そしてこれからもずっと音楽をやっていこうという覚悟というか宣言のようにも受け取ったんです。

鈴木:そうですね。まだやれることがいっぱいあるなって。

マエカワ:やってないこともいっぱいあるしね。常田とやって思ったこともいっぱいあるし、震災があって思ったことも…。

鈴木:うん、ある。

マエカワ:つい先日、宮古と石巻にライブに行って思ったこともあるし。国道45号線をずーっと北に登って行ったら、街はまだまだ当時のままっていうところも多かったし。

鈴木:全然復興してないんですよね。

●はい。

マエカワ:やっぱりテレビの画面で観るのと自分たちで車を運転して行くのとでは全然違う想いもあったし。現地の人と会って話を聞いたときにも全然違うんだなと感じたし。

鈴木:うん。でもそうやって東北に行ったりすると、こんなにね、他ではまったく役に立たないような4人でも“ああ、そうか。人数は多くないにしても誰かを元気づけたりすることができるのか”って。

●ああ〜。

マエカワ:それは東北だけじゃなくて他の地域のフェスとかライブでも感じましたね。音楽の破壊力というか、みんなが気持ちを解放できるところというか。それは人のライブを観てもそう思ったな。つい先日の“OTODAMA '11-'12”とか特にそうでした。人のライブを観て素直に“めちゃくちゃいいな”って心から思えたんです。

●前作に収録されていた「雲の形」に“泣いているような 笑っているような そんな気持ちは 何て呼ぼう”という歌詞がありましたけど、フラカンのライブは会場全体に泣いているような笑っているような不思議な気持ちが溢れている印象があるんです。それは、震災以降のライブハウスですごく感じる気持ちで。こんなときだからこそ、フラカンが求められていると僕は勝手に思っているんですが。

鈴木:そうだと嬉しいですね。ライブでは喜怒哀楽を全部出して欲しい…あ、“怒”はあまり出して欲しくないか(笑)。

●ハハハ(笑)。

鈴木:喜哀楽を解放してくれると嬉しいですね。

マエカワ:こっちもそれで解放できるからね。みんなが解放してくれたら、最後の曲が終わった瞬間は本当にたまらない。

鈴木:もらっているものの方が多いからね。

●あ、そういう感覚ですか。

マエカワ:うん。自分らの中ではもらっているものの方が多いと思ってるね。

鈴木:何かをあげているという意識はまったくないですから。だって24年目ですよ。しかもメンバーチェンジを1回もしていなくて。そうなると、そりゃあ飽きることも散々あるわけですよ。

●ハハハ(笑)。

鈴木:同じメンバーでこれだけライブをやって、毎回同じ車に乗って。だからリハーサルのテンションの低さを見たらみんなビビリますよ。リハーサルは4人しか居ないから。

●え? リハーサルだとテンション低いんですか?

鈴木:ライブであんな感じだからリハーサルでもガンガンやってるんだろうなと思っている人もたぶん多いと思うんです。でもリハーサルは座ってますからね(笑)。

●ええっ!? そんなこと載せるとバンドのイメージ悪くなりませんか(笑)。

鈴木:いや、練習はちゃんとやるんですよ。でも人に見せる必要がないじゃないですか。リハーサルどころか、僕は本番直前、SEが鳴ってステージに出た瞬間にお客さんの顔を見てスイッチが入る感じなんです。だからそこでもらってるんですよ。

●なるほど。

鈴木:だからお客さんが0人だったらちょっと困りますけど(笑)、1人でもお客さんの顔を見ることができたら、もうそこでエネルギーをもらえます。

●だからああいうライブになるんですね。

鈴木:そうですそうです。

マエカワ:俺らがまだ地元の名古屋でやっていたときは、ステージの上で俺らが勝手にやっていて、お客さんは座って観ている感じだったんですよ。それで、東京に出てきてお客さんが踊るようになった頃に、今のライブの原型みたいなのができたという実感があって。だからやっている方としてはちょっとニュアンスが違うんだよね。

鈴木:昔は一方通行だったよね。

マエカワ:うん。でもお客さんからもらうようになって今の形になったんだと思います。その延長線上でずーっと今も続いているというか。

●まさに現場叩き上げという。

鈴木:現場叩き上げです。

マエカワ:現場叩き上げじゃなかったら、コード進行で“△”が出てきても誤魔化したりしないです。

鈴木:そうそう。

●ハハハハハ(笑)。

interview:Takeshi.Yamanaka
Cover & Main Photo
Photography:中野敬久(ANARCHIC AGENCY)
Hair & Make up:橋本孝裕(SHIMA)
Stylist:望月唯(Eight Peace)

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