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小林太郎

一歩一歩確かめながら成長し続ける2013年のロックの形

Main_A-0772012年7月、新レーベル・STANDING THERE,ROCKSから1st EP『MILESTONE』でメジャーデビューした青き咆哮・小林太郎。インディーズ時代の様々な活動を経て、ミュージシャンとして、そして1人の人間として大きく成長を遂げた彼は、「自分のやりたいことというよりも、自分のやるべきことをやる」という宣言の下で生み出した前作に続き、待望の1stフルアルバム『tremolo』を完成させた。苦悩の末に見つけた道を歩き、肌で感じた感覚のままに音楽が溢れ出した今作。センセーショナルなエネルギーに満ちた小林太郎の音と言葉は、聴く者にとって何かを気づかせるきっかけとなる。

 

INTERVIEW #1
「大切なのは、道がどういう形をしているかではなく、自分が本当に歩けるのかという部分を確かめること」

●前作1st EP『MILESTONE』について「色々な苦悩を経て見つけた答えは、“ロック”という得体の知れないものを作ろうとするのではなく、自分の中から出てきたものが今の音楽で、もともと持っているものをそのまま還元するだけのこと」という話をされていましたよね。

小林:はい。

●それはちょっとした視点の変化だったと思うんです。『MILESTONE』はそういう心境の移り変わりがあった上での作品だった。対して今作は、小林太郎を主体としたときの“僕”と“君”が作品全体のテーマになっている気がしていて。“僕”のことをさらけ出している曲もたくさんあれば、“僕”と“君”という他者との最小限の関係性を歌っている曲もある。中にはちょっとエロい曲もありますけど…(笑)。

小林:ムラムラしながら書きました(笑)。

●ハハハ(笑)。そういう印象をなんとなく受けたんです。音楽のフォーマットについても、既成のものに捕らわれていないというか。例えば、どの曲もメロディがすごく印象的だったんです。バラードからは今までの小林太郎らしさを感じるんですが、俗に言うロックな曲のメロディは“ブレスはどこに入るんだろう?”と思うような、既成の枠にはまっていないものが多くて。

小林:そうですね。

●ある意味、歪な形のメロディが散見されるというか。『MILESTONE』からの進歩という部分でも、“自分の個性をいかにして出すか”ということが形になっている作品なんじゃないかと思ったんです。

小林:その通りですね。時間が空いちゃったな〜。

●え? これで取材終わり?

小林:アハハハ(笑)。

●今作は『MILESTONE』から地続きになっている作品なんでしょうか?

小林:そうですね。『MILESTONE』で新しい土地が発見されたというよりは、自分が歩いてきた道が1本あるんだけど、その道を自分がちゃんと歩けるのかが分からなかったという感じだったんです。でも『MILESTONE』で、道はただ歩くもので自分が作るわけではないから、背負い込まずに“道はあるだろうから、歩くだけでいいんだね”という安心感を感じることができたんですよ。

●うんうん。

小林:そこからの作業としては、“でも本当に道があるのかな?”とか“本当に自分は歩けるのかな?”といった部分。道は曲がりくねってもいいんです。大切なのは、道がどういう形をしているかではなく、自分が本当に歩けるのかという部分を確かめること。それが今作なんです。

●なるほど。確かに『MILESTONE』で気付きがあったとはいえ、今作でもまだ少し悩んでいますよね。そういう心境が伺える。

小林:だから、今歩いている道はそういう道なんだと思うんです。外的な要因がなければ、自分で無理をして早歩きする必要もないし、違う道に変える必要もない気がするし。

●ふむふむ。

小林:『MILESTONE』で気付くことができて、『tremolo』でも変わらずにそういう気がしているから、そのまま歩いてみようかなって。重い一歩だったけどやっと踏み出せましたね。

●『MILESTONE』から次への一歩は重かったんですか?

小林:重かったです。それに歩くだけでも大変ですよね。俺、体力がないから(笑)。

●創作の部分でハードルがあったんですか?

小林:自分でコネコネと考える体力を使わなくてよくなった分、自分の無意識から出てくるものが出ないとっていう苦労がありました。要するに、出るまで出す作業になってくるので…。

●なるほど、そういうことか。

小林:無理矢理下痢をしている感じです(笑)。

●例えがひどいな(笑)。

小林:“もう出ねえよ!”って思いながら…。

●出るまで待つというのは、どういう感じなんですか? ギターを持って待つ?

小林:ギターを持っても持たなくても、そこは関係ないんです。“出るんだろうな。出なきゃできないもんな”と思ってずっと待つんです。

●ひたすら待つと。

小林:そこで“どうしても出さなくちゃ。出すためにはこうしなきゃ”という論理的な思考は入れずに、ただ待つ。探しに行ったらダメだから。

●難しいな。

小林:そう、難しい! その状態をずっと続けるのも難しいんです。だからある程度のものができたら「これでいいや」って言いたくなるんですけど、“待てよ?”と思って。本当はそこから探しに行きたいんだけど、そうすると違う話になっちゃうから、「うーん…」と、すごく大変でした。

●ということは、前回のインタビューで言っていたように、自分の中に創作の器があったとして、その器に創作の元となるものがいつかは溢れるだろうから、それが溢れてくるまで待つという感じ?

小林:そうですね。その中身を一度ジャーッとこぼしちゃって、ひっくり返すと空になるじゃないですか。

●『MILESTONE』で一度空になりましたよね。

小林:そうそう。そのひっくり返すタイミングが、俺の場合はリリースとかライブなんですよね。でもそれがいついっぱいになるのかは分からないから不安なんだけど、それは多分ずっと不安で。不安だからこそ、自分には分からない部分で決まっていることに対して不安になるよりも、“まあ返すときには貯まっているんだろう”という気持ちでこのアルバムを作れたと思います。

●つまり自分でコントロールするというわけでもない。

小林:それに自分で自分をコントロールができるほど優れてもいないというか。どちらにしても、ものはできるじゃないですか。それなら変な力を加えずにそのまま出そうと。『MILESTONE』はそう気付けたタイミングだったんです。

●なるほど。

小林:今回はそれを実践できました。「自分がもらったものや器に流れ込んでくるものが何かは分からないけど、出してみますよ」ということで実際に出してみたら、なんとこんな曲が流れ込んできていたんです。それで無事に出すことができました。そういう意味では、『MILESTONE』がどう受け止められたのかという反応はすごく刺激になったんです。

●というと?

小林:『MILESTONE』を買ってくれた人、聴いてくれた人の全員が俺に何かを言ってくれるわけではないので、当然分からないところもあるんですけど、10月に“MILESTONE”という名前を冠したワンマンツアーができたんです。あのツアーでは、聴いてくれている人たちの層が、なんだかすごく広がった気がしたんですよね。“いろんな人がいるな”と以前よりも思うようになって、ライブの盛り上がりというか、みんなで作るライブ感みたいなものがすごく活き活きしているように感じたんです。実際にどうだったかはわからないし、俺がそう感じただけかもしれないけど、そこで“『MILESTONE』ってこういうものだったんだろうな”という実感があった。今までの自分を少しだけ引っ張ってくれたんです。すごくありがたいアルバムだった。

●“これでいいんだ”と、肌で感じたものがあったんですね。

小林:肌で感じましたね。いろんな人に言ってもらえたことももちろんありがたかったけど、自分の肌で『MILESTONE』という作品の意味をちゃんと理解できたのはあのツアーだったかもしれないです。

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INTERVIEW #2
「俺やいろんな奴らには分からないほど確かなものっていうのは分かりづらくて、簡単には見えないんですよね。きっと簡単すぎて見えない」

●先ほど今作の一歩目を踏み出すのが大変だったとおっしゃっていましたが、今作はどの曲からできていったんですか?

小林:いちばん最初に元が出来上がったのはM-11「星わたり」だったんですよね。

●あ、そうなんですか。

小林:高校3年生のときに作ったんですよ。

●え? マジで?

小林:4年くらい前ですね。そのときに全部作っていたんです。

●歌詞も?

小林:歌詞もギターソロもアレンジも。

●というか、小林太郎という人はいつも作品の最後に次を象徴する曲を収録してきたじゃないですか。

小林:あ、そうですね。今回はぜんぜん違うわ(笑)。

●だから高3のときに作ったと聞いてびっくりしたんですけど(笑)。

小林:俺も今気付いたんですけど、自分でも意外でした(笑)。というか、今までのアルバムも、別に意識して最後に次を象徴するような曲を入れていたわけではなかったんですよ。

●あ、そうなんですね。

小林:作り終えてみて、自分で改めて見てみると“たしかにそうなっているな”という感じ。作品の曲順を決めるときも意識していたわけじゃなくて、なにか新しいものを感じたから最後にしたんだろうと思うんです。でも、今回はそういうニュアンスはまったくなかったですね。

●高校生のときに歌詞も作っていたんですね。

小林:ちょうど上京するときに書いたんですよ。俺の曲の中で、いちばん自分の気持ちとリンクしているものですね。

●なぜこのタイミングで作品に入れようと?

小林:いつか出したいとは思っていたんです。技術的な話になるんですけど、この曲は楽器が新しかったんですよ。シンセがバリバリ入っていて。

●あ、なるほど。

小林:今までの作品はシンセが入っている曲ってなかったわけですよ。今回、『tremolo』の他の曲ではちょこっと入っているものもありますけど、ガッツリ入っているわけじゃない。でも「星わたり」を作ったとき、ものすごく凝っていたから当初から鍵盤とかがしっかり入っていたんですよね。

●当時のデモの段階でシンセまで入れていたと。

小林:貸してもらったProToolsを使って、初めて自分でやったんです。

●アレンジもかなりじっくり作ったんですか?

小林:そうですね。すごく凝って作ったんです。だから今回の「星わたり」のアレンジは当時そのときのままなんですけど、今まで俺が発表してきた曲とは雰囲気が全然違うじゃないですか。でも不思議なことに、最初にできたのはこっちだったんですよね。最初にこの曲があって、インディーの音源を作って、『MILESTONE』ができたという流れ。

●どんどんアレンジの幅が広がっていったというわけではないと。

小林:順を追っていけば、インディーの1枚目もゴリゴリじゃないですか。2枚目もゴリゴリ。そして『MILESTONE』…。

●要するに、今まで入れどころがなかった(笑)。

小林:そうなんです。「星わたり」はアレンジも全部出来上がっていたから、あとは音源に入れるだけだったのに、入れるタイミングが難しくて。そんなときに、『MILESTONE』で自分がフラットというかナチュラルになれた気がして、ロックでもロックじゃなくても別にいいし、自分が良ければなんでもいいという風な心境になれて、『MILESTONE』に収録した「白い花」や「泳遠」みたいな曲ができた。まあ、あの2曲はシンセがガッツリ入っているわけじゃないんだけど、そういうことが今回の「星わたり」に繋がったんですよね。

●なるほど。

小林:『MILESTONE』の制作で「白い花」や「泳遠」ができて、「次はもうちょっと入れてもいいかもね」ということになったんです。俺自身はシンセとかのアレンジも大好きだし。で、今回は偶然にも他の曲でシンセを入れることができて、その流れでシンセから始まる「星わたり」も入れることができたんです。

●今までと経緯は違うかもしれないけど、最後にこの曲が入っていることはやはり何かの象徴かもしれないですね。

小林:きっと“この曲を作ったときのままでいいんだよ”ということなのかな?

●そうなんでしょうね。原点回帰じゃないけど。

小林:“なんでもいい”ということは、いちばん最初のそのままでいいんだという。でもちょっとわがままを言えば、その後に経験したことを周りにくっつけながら、ひと回り大きくなったくらいがいいんだと思うんです。『MILESTONE』で発見した自分の安心感とかをくっつけて。このアルバムは、なんだかそういう作品じゃないかと思います。

●特にM-1「frontier」とM-2「答えを消していけ」は、『MILESTONE』を作る以前からあったであろう苦しみや痛みの心情が、かなりリアルな音になっていますよね。「答えを消していけ」は今作の推し曲にもなっていますけど。

小林:この曲が推し曲になるなんて夢にも思いませんでしたけどね(笑)。けっこうヘヴィーなギターから始まって、俺はかっこいいと思っていたんですよ。でも一歩引いてみたときに、“俺がかっこいいと思うということは、他の人から見るとどうなんだろう?”と思って。

●最近自分のことが分かってきたからね(笑)。

小林:実は、ずっとそういう想いはあったんですよ。今まではそう思っても自分の好きなようにやれていた環境だったけど、いろんな人が期待してくれる次のフルアルバムとなると、“もう少し気を遣わなくちゃいけないんじゃないかな? でもかっこいいな…”と思っていたんです。

●なるほど。

小林:それで曲を持って行ってみたら、けっこうスタッフの反応がよかったんです。頭からすごく重かったので、メロディも歌詞もイメージに合うようなものにして、“重すぎる”なんてことは考えずに作った曲だったんですけど(笑)。

●理性的でなく、思うがままにぶちまけたと。

小林:まあ全曲理性的に作ってはいるんですけど、他の曲よりも思うままにやりすぎたので、“いいのかな?”とちょっと思いました(笑)。

●でも「答えを消していけ」は、小林太郎というミュージシャンが持つ刺々しさや荒々しさが詰まっている曲だと思うんです。この曲はフレーズの繰り返しが多いじゃないですか。そういうキャッチーさが抜群にあるし。瞬発力というか、貫通力というか、破壊力がある。だからこれが推し曲だと聞いてすごく納得したんですけどね。

小林:そうだったみたいですね。サビは確かに分かりやすいけど、イントロとかはどう考えても重いじゃないですか。

●重いですね(笑)。

小林:AメロとかBメロもハードだし…。「よく推し曲になったなあ」と、感動しています(笑)。

●「答えを消していけ」と「frontier」は、歌詞の志向性が既成の枠にはまらない自分なりのものというところが共通していると思うんですけど、そういう“自分なりのもの”は、ミュージシャンに限らず誰もが何かしらで直面することだと思うんです。自分なりのものって、誰にも分からないじゃないですか。まさに答えがない。

小林:「答えを消していけ」とこの曲で言った理由というのは、きっとそれまでに出してきた自分の中途半端な答えが何の役にも立たなさそうだったから、それを全部一旦消して、答えじゃなくても自分の中にあるものを書けばいいと思ったからなんです。

●ふむふむ。

小林:もちろん分からなかったら書かなくてもいい。『MILESTONE』以前に俺が“ああなんじゃないか?”、“こうなんじゃないか?”とやってきた試行錯誤が無駄だったとは言わないですよ。でもそれが有用か無用かといえば、無用だった気がするんですよね。

●おお、なるほど。

小林:それを気付けたのが『MILESTONE』で、心情的にはあまり変わらないんですけど…変わらないということを言っているんです。自分が言いたいのは、皮肉的なことだけど皮肉の列挙じゃなくて、だからといって誰かにその答えを求めているわけでもないんです。それでも自分もあなたもよくなれたらいいんじゃないかって。他は他として、“俺”は“俺”で“お前”は“お前”。何も考えなければそうなりがちな俺が、そうなったという。

●人生の経験で出してきた自分なりの答えって色々ありますよね。そういう答えがあった方が、思考的には楽だと思うんです。例えば“女性とはこういうものだ”という答えが自分なりにあったとして、その答えに全部当てはめて考えれば生きていくのがすごく楽というか。“女性はこういうものだから、結局こうなんだ”と。

小林:はい。

●でも、そうすると女性についての思考をそこで止めてしまうんですよね。要するに、答えを出すことは進歩を止めることにもなる。

小林:俺はそこで藻掻いていたいというか、藻掻くのが普通なんだろうけど、200年や300年生きられたのならともかく、まだまだな状態で答えを出しても中途半端なだけだろうと思うんです。

●なるほど。

小林:それも中途半端だと決まったわけじゃないから、もしかするといちばん最初に出した答えがいいのかもしれない。きっと「答えを出した」と言っても正しいかもしれないし間違っているかもしれないし、変わるかもしれないし消えるかもしれない。確かなものが存在するかもしれないけど、“確かなものがあった方が楽だから存在してほしい”と思ったときに、確かなものが「しょうがねえな、存在してやろう」と存在してくれるようなことは現実にはなくて。俺やいろんな奴らには分からないほど確かなものっていうのは分かりづらくて、簡単には見えないんですよね。きっと簡単すぎて見えないんです。そこに気付いたとき、俺が“ああなんじゃないか?”、“こうなんじゃないか?”って決め付けようとしていたものを全部消した方がよかったのかなと思ったんです。

●なるほどね。

小林:そういう想いでここまで来て、このタイミングで色濃く出た曲なんじゃないかな。

●心境をありのままを封じ込めたと。

小林:そうですね。

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INTERVIEW #3
「“僕”と“君”という表面的な部分で共感したいんじゃなくて、そこから繋がる心の世界で共感したい。孤独感というか…君がいるから僕が独りなんだと分かる」

●個人的にいちばん好きな曲がM-10「愛のうた」なんです。

小林:この曲、いいですよね〜(笑)。

●初めて聴いたときに、“この曲が最後なのかな”と思ったくらい。先ほど言ったような「frontier」とか「答えを消していけ」みたいな曲がありつつ、こういう曲もある。もともと小林太郎はそういう側面を持ったミュージシャンでしたけど。

小林:「愛のうた」の歌詞はすごくスラスラと出てきたんですよね。

●あ、そうなんだ。

小林:何も考えなかったです。これっぽっちも考えなかった。“今日の昼飯は何にしようかな”という方が、よっぽど考える。

●軽いな!

小林:メロディと一緒に出てきましたからね。構成までスラスラスラスラッと。“いつもこうだったらいいのに”と思いましたよ(笑)。ポンッという感じで。

●この曲で歌っているようなことは、普段から考えていたんですか?

小林:あまり考えていないと思うんですけどねえ…。でも、普段からいろいろと考えてはいたから、それがすごく上手く出たのかなと思っています。本当に楽にできた曲でしたね。楽にいいものが出た感じ。

●この曲は、サウンドからすごく安心感や安らぎを感じるんですが、歌詞の内容は決してPEACEなだけじゃないですよね。“結局どっちなんだろう?”みたいな。答えがよく分からないというか、見えていない。

小林:俺の曲ってそんなのばっかりですよね(笑)。逆説的というか、間接的というか、はっきりとは言っていなくて、むしろタイトルがいちばんはっきりしているくらいで。

●ハハハ(笑)。確かに(笑)。

小林:最終的に愛が何なのか分からないんです。「どちらでもあるよ」ということが言いたかった気がしていて。「愛の歌を歌いましょう」と言っても、愛にはいろいろあるじゃないですか。“愛って素晴らしい”と思うこともあれば、“こんなものがあるから俺は今大変なんだ”と思うこともあって、振り回される。

●うんうん。

小林:それこそが書きたかったことなのかもしれないなぁ。愛が分からないというか、分かるんだけど“いろんな顔があってついて行けないよ!”というか。でも愛にいろんなジャンルがあるとすれば、最終的に“俺はこの愛でいいのかな”というところで終わっている曲のような気がするんですよね。“優しいような愛でいいんじゃないかな?”と。

●僕の解釈としては、小林太郎が書く音楽の形を歌っているんじゃないかなと思ったんです。今作にはいろいろな曲があるけど、いろんな形の“愛のうた”が入ったアルバムというか。

小林:そうですね。自分を受け入れながら、相手を受け入れながら、そのまま音楽にしてみようとか、俺だったらロックもバラードも好きだけど、どちらかに決めなきゃいけないんじゃなくてどちらも好きでいいじゃないかというのが“僕”と“君”なのかもしれない。そういう意味では、「愛のうた」はいちばん俺の音楽を象徴する曲になっているのかもしれませんね。ジャンルがどうのこうのではなくて。

●今の小林太郎を知るいろいろな材料が、このアルバムにあるという。

小林:うん。素直に出した曲が多いから、いつもよりも俺の今を構築している素材がバラバラにたくさん入っている気がします。中でも「愛のうた」にはまとまって入っているのかもしれないです。

●うんうん。

小林:“こういう俺もいて、ああいうお前もいる”ということで悩んできたけど、最終的に“どちらもいいな”と(笑)。っていうか、そのままがいちばんいいと。そういう想いが「愛のうた」には込められているのかもしれないです。

●ところで、最初に「今作は“僕”と“君”の視点が描かれている作品だ」と言いましたけど、届ける対象の“君”という部分は、作っているときに意識したんですか?

小林:意識…したのかなあ?

●自然とこうなった?

小林:今作では“君”という視点がすごく強く出たと自分でも感じるんですけど、多分無意識に“僕”と“君”に偏っていって、こういう作品になったのかなと思います。もしかしたら“僕”と“君”を何にでも置き換えられるという自由さがあったからなのかもしれませんね。表面的に歌詞を見れば“俺”と“お前”なんですけど、自分の中にある葛藤の“あれ”と“これ”かもしれないし、要するに何にでも置き換えられる。主観と客観。でもそれはなんだか精神世界の話になってしまうんですよね。

●そうですね。

小林:心の中の問題として振り切ってしまったのは、もともとがそういうものなんだと思っていたからで。“僕”と“君”という表面的な部分で共感したいんじゃなくて、そこから繋がる心の世界で共感したい。孤独感というか…君がいるから僕が独りなんだと分かる。自分1人なら孤独であることも分からないじゃないですか。少し形は違うかもしれないけど、多かれ少なかれ誰でも持っている孤独感のようなもの。寂しくもあるかもしれないし、1人になったときに少しホッとすることもあるかもしれない。でもそれはあまり人に話すことではないじゃないですか。

●そうですね。歌詞のように心情を出すものがない限り、人に話したりするようなことはあまりないかもしれない。

小林:電車の中で人がたくさんいるけど、何か1つ大きな仕事が終わって“1人になれた”とホッとする。電車の中は1人じゃないけど、なんだか1人になれた気がして安らぐことってあるじゃないですか。でも、そういう心から出てくる孤独感って、あまり人に話すものじゃないんですよね。

●そうですね。

小林:そういう感情が俺は人より強かったから、こうやって音楽にも強く出ていて、そういう部分を誰かと共鳴したいんだろうなと。だから“僕”と“君”がすごく多くなるんだと思うんです。

●なるほどね。今作が出来上がって、自分のそういうところに気付いたんですね。

小林:そうです。今気付きました。

●今か(笑)。こうやって話をする機会をたくさんいただいていますが、小林太郎というミュージシャンは、1枚1枚で常に進んでいるというか、話す度にたくさんの自分を見付けていっている気がする。

小林:見付けてもらっている気がしますね(笑)。

●ハハハ(笑)。曲から自分に気付くことがすごく多いし。

小林:頭で理解するのは作り終えた後なんですけど、きっと作り始めるときにはもう無意識で理解しているんだと思いますよ。だから、なぜかは分からないけど、曲作りが以前よりもスムーズになった。大変なところも出てきたけど、確実に何かが前と違う気がするんです。

●無意識かもしれないけど、こういうことを歌詞に書こうと思ったのは、潜在的に大事だと思っていたからなんでしょうね。

小林:そうですね。

●制作は以前よりも少しずつ楽になってきましたか?

小林:楽なんですけど…疲れたなあ(笑)。

●でも、それも必要な痛みなんでしょ? “痛みを伴う上昇志向です”と歌っているし(「答えを消していけ」の歌詞より)。

小林:そうですね(笑)。大変っちゃ大変かもしれないけど、これでいいんだと思えた安心感はすごくあるんです。最初の話に戻りますけど、道が曲がりくねっても途切れてもいいから、まず歩けるのかどうかというところで、歩くにはこうしたらいいんだと。何も考えずに歩くのがいいと思うのなら、それがいちばんいいんだろうと『MILESTONE』で気付いて、今回また歩けたからそれだけで十分。道が細くなって歩くのが大変になることもあるかもしれないんですけど、歩けなかったりどうやって歩けばいいか分からないことはこれからないだろうから、そういう意味では純粋に楽しみなんですよね。

●楽しみだと考えられているんですね。

小林:“どんな道になるだろうか”とか。

●歩けないかもしれないことはない?

小林:道が原因で歩けないことはあるかもしれないけど、自分が原因で疲れちゃったり足が痛くなったり、“歩き方ってどうだっけ?”ということはないかな。今までは右手と右足が同時になるとか、自分のせいで歩けないことがあったんですよ。でも、自分のことを考えないで、ただ歩くことだけに専念しようという考えになれたから、“これからはどんどん歩いていけるぞ!”と思うんです。体力の限りなのか、道が続く限りなのかは分からないけど。まだまだ道はあるだろうし、これでやっと何にも縛られずに音楽ができるから、すごく楽しみなんです。

●なるほど。いいことですね。

小林:ただ“いいな”と思うものを探していけるから、本当に楽しみ。

●心境的にはすごく健康的なんですね。

小林:そうですね。大変は大変だったけど、『tremolo』で確認できたから。

Interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:Hirase.M

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