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空想委員会

これぞあっち側の人間による魂のギターロック。共感したら負け組です。

 Vo./G.三浦 隆一のシニカルな感性と、草食系男子的な恋愛負け犬根性だだ漏れの歌詞を、爽やかなギターロックサウンドに乗せて奏でる異色の逆セックスシンボル・空想委員会。

“モテたいからバンド始めた”という、よくある初期衝動とは対極のところで鳴らされる音楽とバンド活動そのものは、彼らの真っ直ぐな生き方でもあり、世の中に溢れる恋愛下手に贈られた鎮魂歌でもある。

空想委員会の記念すべき処女作『恋愛下手の作り方』、共感したら負け組です。

Interview

「実際にはフラれるまでもいかないんです。踏み込まないで終わっちゃう。要するにすべて頭の中で起こっていることです」

●空想委員会は2010年に現メンバーで活動を開始されたということですが、結成のきっかけは何だったんですか?

佐々木:最初、岡田と俺でバンドをやっていたんですが、ヴォーカルが脱退して解散してしまったんです。そんなとき、知り合いに「いいヴォーカルがいるよ」と紹介されたのが三浦で。しかもちょうどそのタイミングで彼もバンドをクビになって…。

●え? クビ?

岡田:というか、三浦が辞めさせられたのではなくて、三浦以外のメンバーが全員脱退してしまうという。だから実質的なクビってやつですよね(笑)。

三浦:僕はずっと空想委員会という名前のバンドを続けてきているんですが、1人空想委員会状態が過去に2回ほどありました。

●え? 2回も?

佐々木:元メンバーに捨て台詞で「バンド向いてないよ」と言われたこともあるらしいんです(笑)。

●アハハハハハ(笑)。

三浦:よく辞めなかったですよね。

●でも佐々木さんと岡田さんは今もここにいる。ということは、三浦さんに魅力を感じているわけですよね?

岡田:歌唱力がずば抜けていいと思ったし、歌詞も人間性もかなりクセが強いので、それが魅力になるんじゃないかと。こいつは間違いないと思ったんです。

佐々木:俺は曲を聴いて、初めて"この人の曲のギターを作りたい!"と思ったんです。一緒にバンドをやるしかないだろうと。

●空想委員会は何年くらい続けているんですか?

三浦:もう7~8年になりますね。歌っている内容は当初から一切変わっていないです。

●ずっと同じようなことを歌詞にしている…空想委員会の歌詞は草食系というか、明らかに"負け組"とか"非モテ"と呼ばれる側の人間の歌じゃないですか…ということは、普段から女性に関してあまりいい思い出がないんですか? 1回や2回フラれただけではここまでの歌詞にならないと思うんですが。

三浦:そうですね(苦笑)。

●音楽を作る原動力は、辛いことや悲しいことなんですか?

三浦:そうですね。辛いと思ったことを歌にすることで他人事のように客観視できるんです。そして次に進むことができる。

●ちなみに、今回リリースとなった処女作というか童貞作『恋愛下手の作り方』の収録曲は以前からあった曲?

三浦:いや、全て新曲です。メンバーやスタッフに「昔の曲はもういいから!」と言われたので、このアルバムのために書き下ろしました。

佐々木:「新しい女に目を向けなさい!」と(笑)。

●新しい女にもフラれてるけどね。

一同:ハハハ(笑)。

岡田:今までと曲の指向性は同じですけど、今作はより三浦隆一の本心が出ているように感じますね。今までよりストレートになったことで、より彼の深い部分に近づけるんじゃないかな。

●その発言からすると、三浦さんは少しひねくれた部分があった?

三浦:ひねくれまくっていました。基本的には本心なんて絶対に言わないし、遠回しな言い方をして"気付いてよ!"という性格です。

●めんどくさっ!

佐々木:めんどくさいですよね(笑)。

三浦:それに歌詞は実体験を書いているわけじゃなくて、実際にはフラれるまでもいかないんです。踏み込まないで終わっちゃう。要するにすべて頭の中で起こっていることです。

●だから"空想委員会"なのか。

三浦:"あの子のことが好きだな"と思ったときに、頭の中でいろいろ事件を起こすだけで実際には何もないんですが。

●ガチでキモい。

三浦:片思い経験というか、空想経験は多いんですけどね…って、我ながらキモい。

●でもM-1「独占禁止法」とかは、学生時代に誰もが経験したことがありそうですけどね。クラスのマドンナと付き合うのは決まってイケメンのクラスメイト、みたいな。

三浦:あ、その曲は実体験に基づいています。学生時代にクラスのイケメンとマドンナが一緒に帰っているところを目撃したことがあって。「お前、裏切ったな」みたいな。実際はイケメンと約束なんてしていないんですけどね。それをこの年になって歌にしました(笑)。

佐々木:喧嘩じゃなくて詞にするっていうね(笑)。

●でもそんなことって、普通に生きていると忘れてしまうというか、別に大人になってからモヤモヤと考えなくてもいいような気がするんですが。

三浦:僕はそれが普通なんです。

岡田:深く考える部分がズレているんだと思います。三浦は普段から「そこをそんな風に思うの?」と驚くことが多いんですよ。

佐々木:"三浦フィルター"がありますね。ものの見方もそうだし、普段俺らが話している言葉も、三浦フィルターを通すと全然違うものになります。

岡田:独特の言い回しがあるよね。

●歌詞を見ると、確かに言葉選びは独特ですよね。

岡田:普段の会話も面白いですよ。固いというか漢字のイメージが強い。

三浦:でも別にそういう自覚はないんですよ。普通に話しているだけですし、歌詞も特に何かを意識しているわけではない。

●例えばM-8「恋愛下手の作り方」に出てくる"担当失格者"とか、ちょっと独特な表現ですよね。

三浦:そういう漢字の羅列というか、響きが好きなんです。今作も、当初はもっと漢字の比率が多かったんです。でも歌詞をチェックしてもらう時点で「わかりにくい」という意見が大半で削ったんです。

●でも文学的という感じでもないんですよね…。本とかよく読むんですか?

三浦:ビジネス書以外の本はあまり読まないです。

●は? ビジネス書?

三浦:"どうやったら商品が売れるのか"みたいなビジネス本。マーケティング理論とか。

佐々木:「これはやばいでしょ!」って言いながら見せてくれるのは毎回そういう本ばかりなんです(笑)。

●お節介な上司か!

三浦:バンドに活かしたいんです。別に仕事でそういう本を読んでいたわけではなくて、バンドを始めて、バンドのために読むようになりました。

●バンドマンらしくないですね。

佐々木:僕らはたぶん3人とも真面目なんです。空想委員会はライブ後に打ち上げをしないくらいですからね。

●なんで打ち上げしないんですか?

三浦:打ち上げの時間がもったいないからです。

岡田:みんなで反省会をしています。

佐々木:ライブ後に次のリハに入ることもあります。

●お酒が苦手だとか、人見知りとかではなく?

佐々木:お酒は大好きです。

岡田:それに人見知りというわけでもないんですけど、優先させるのはそこじゃないですから。

●真面目というか堅い。キモくて堅い!

一同:ハハハ(笑)。

●アルバムの話に戻りますけど、M-5「エンペラータイム」は他の曲とはちょっと指向性が違いますよね。失恋にまつわる曲が多い中、「エンペラータイム」はこのバンドを肯定している曲というか。この曲を聴けばこのバンドがなぜ音楽をやっているのかが伝わってくる。僕は今作にこの曲が入っていて嬉しかったんですよね。バンドの本質を知ることができたような気がして。

三浦:でも空想委員会らしくない曲ですよね。本当はアルバムに収録する気がなかったんですよ。

●いい曲なのに!

三浦:でもスタッフに「いい曲だから入れよう」と言われて。

佐々木:ほとんどライブでやってなかった曲なんです。今まで2回だけやったんですが、2回とも演奏ミスやトラブルで失敗してしまったので、ちょっとトラウマになっているという(笑)。

岡田:強気に前へ出る感じの曲だからパフォーマンスが追いつかなかったんです(笑)。この曲は"来いよ!"という感じじゃないですか。

●でもそこまで"来いよ!"という曲でもないような気が…。

岡田:僕らは普段から強く出ることに慣れていないんです(笑)。

●ダメ男か。

佐々木:この曲は作り方から違いましたし。「ちょっと肉食系っぽい曲をやってみたいね」という遊び心からできたんです。草食系が肉食ぶってみた曲ですね(笑)。

●でもそういう遊び心から作った曲だからこそ、ポロッとバンドとしての感情みたいなものが歌詞に表れたんですね。

三浦:そうかもしれませんね。

●ところで空想委員会は"草食系"というか"非モテ"なりの感情が音楽の原動力になっているわけじゃないですか。今後、もしも人気が出てモテ始めたら矛盾が生じませんか?

三浦:来てもらう分には全然いいんですよ。問題は、それで僕らの中身が"モテ系"になるかどうかという話で。

岡田:周りがどうなろうと、三浦さんの中身が変わらなければいいんだと思います。

●あ、そうか。イケメンになるわけがないと。

三浦:例えば女の子が寄って来たところで「俺は騙されないぞ」ってなると思います。「いくらステージ上でかっこよく見えても、日常生活を知ったらどうせみんな離れていくんでしょ?」と。バンドマンは売れれば売れるほど、ステージ上の華やかさと日常生活との落差が大きくなると聞いたことがあるし。

佐々木:売れれば売れるほど駄目になる(笑)。

●三浦さんの日常生活ってどういう感じなんですか?

三浦:ずっと本を読んでいます。

●ビジネス書を?

三浦:はい。あとはYouTubeで動画を観たりしています。

佐々木:彼は家にTVが無いんですよ。

●地デジ化に乗り遅れたんですか?

三浦:TVがあると一日中TVばかり観てしまって、作詞などのバンド活動に支障をきたすんです。だから地デジ化の機会にTVを捨てました。その代わりに本を読もうと。面白いですよ、本。

●しかもエンターテインメントではなくて、人の欲求についてのピラミッドが書いてあったり、AIDMA(消費者の心理のプロセス)とかが書いてあるような本ですね。

三浦:そうです! 本当にそんなことが書いてあります!

●こんなバンドマン初めてだ。

三浦:でも本当に、今はバンド以外に興味がないんです。他のことをやる暇もないですし。以前働いていた会社も辞めちゃったし、本当にバンドだけしかない。バンドがあればいいかな。

●発言だけ聞くとかっこいいですね。実際は"非モテ"で全然かっこよくないけど。

三浦:でも、ただ曲を作って演奏するだけでは面白くないんです。"これを売りたい"と思って戦略を考えるのが楽しい。だから、バンドは個人で会社を経営している感覚に近いのかもしれませんね。自分でYouTube用のCMを作ったりすることも本当に楽しい。仕事と遊びを兼ねていて、非常にいいバランスを保てています。

●ということは、お客さんに「共感した」とか「感動した」とか言われると報われる?

三浦:そうですね。でも基本的にひねくれているので「共感したら負け組ですよ」と言います。あ、そういう"共感したら負け組"とかのコピーを考えるのも楽しいですね。

●では最後に、3/31のワンマンに向けてひとことお願いします。

三浦:顧客満足度を高められるようなライブをしたいと思います。ワンマンに向けて、CDを買ったりYouTubeきっかけで知ったりした人たちに1人でも多く来てもらえるように戦略を練ろうと思います。

interview:Takeshi.Yamanaka
assistant:Hirase.M