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イツエ

儚くも美しい四つの季節

今年3月、初の全国流通盤となる1stミニアルバム『いくつもの絵』をリリースし、全国ツアーを成功させたイツエ。激しくダイナミックな音で情景を描き出し、瑞葵の歌がそこでみずみずしい感情を表現するというその音楽は、観る者を一瞬で惹き付ける魅力がある。そんな彼らが12月にリリースする1stシングル『優しい四季たち』は、生命力と人間味を感じさせる「海へ還る」を筆頭に、進化を遂げたイツエの新たな魅力を感じさせる4曲が収録。動的に繰り出されるサウンドの雨に打たれながら、真っ白な花のように開いていくメロディに触れて欲しい。

 

●前作『いくつもの絵』のツアーはどうでしたか?

馬場:それまでのイツエの中でいちばんいいライブができたんじゃないかと思います。やっぱり経験が浅い部分もあったし、それまでのライブには波もあったんですけど、ツアーでは色んな場所でライブをして、東京に帰ってきたときに成長できたという実感があったし、ファイナルでは待っててくれたお客さんに気持ちを届けることができたと思います。

瑞葵:ツアーの最初の頃、とあるライブハウスの店長さんに色々と喝を入れられて、私は悔しくて泣いたんですよ。でもその店長に「歌に歌われろ」と言われた言葉がずっと残っていて。ファイナルではなんとなくその意味が理解できたし、ツアーの最初で喝を入れられたことが良かったなと思います。

久慈:前回のツアーでは『いくつもの絵』というものをどう見せるか? ということを1本1本のライブでずっと考えていて、ファイナルでは自分たちのベストのものを表現できたと思うんです。

吉田:前回のツアー当時は僕しか免許を持っていなかったので、ずっと運転していたんですよ。行く先々で街並みが違っていたのが印象的でした。中でもいちばん印象に残っているのは大阪の街並みなんです。大阪って高架下に…(以下、長くなったので省略)。

●1人だけ音楽に関係のない話ですね…。ツアー初日のライブを観たんですけど、作品から受けた印象といい意味でライブが違ったんですよね。前作は“いくつもの絵”…情景を表現した作品だったと思うんですけど、ステージはかなりダイナミックな見せ方で、3人の真ん中に居る瑞葵さんがバンドの感情表現を担っていて。役割分担じゃないですけど、“瑞葵さんと3人”という表現の対比が良かったんですよね。

馬場:はいはい。

●3人が持っているものと彼女が持っているものは一見矛盾している要素だと思うんです。ライブのダイナミックさと人間らしさというか。でもそれがうまく融合していたので、観ている側も自然に惹き込まれる感覚があって。

瑞葵:ツアーが終わってから更にそれが強くなりました。イメージでいうと、『いくつもの絵』を作っていたときのイツエはまだ平面だったんですけど、ツアーを経て肉付けがされたというか。今作『優しい四季たち』ではまた新たな面が出せたような気がするんです。イツエは活動を重ねていく事にその新しい面が増えていくようなバンドだと思っていて。

久慈:俺たちも全体の形はまだわからないというか。

馬場:うん、活動を重ねる度に気付かされることがすごく多いんです。自分たちでも気づかなかったバンドの新たな面がわかるというか。前回のツアーを経て、意外と自分たちは色んな表現ができるということが見えてきた。

瑞葵:バンドに対する自信が付いたね。だから試すことに勇気が持てるようになった。曲を作るにしろ、ライブのパフォーマンスにしろ、イツエであることに少しずつ自信が持ててきたから、変わることが怖くなくなりました。どうなるかわかんないけど、今後たくさん変わっていくんだろうなって。

●今回1stシングル『優しい四季たち』がリリースとなりますが、ツアーでも未発表曲をやっていたりしたので結構ストックはあったと思うんです。今回の4曲はどういう基準で選んだんですか?

馬場:ライブでM-1「海へ還る」を歌っている瑞葵の背中を見ていて感じたんです。この曲の瑞葵は感情が強く出ていて、前後のMCも含めて曲の中に深く入っているんですよね。別に瑞葵はこの曲を今作の代表曲にするつもりはなかったと思うんですけど、いちばん自然に気持ちが出ていて印象的だったんです。だからこの曲を収録することをまず決めて、そこから他の曲を選んでいった感じです。

●「海へ還る」は激しい曲ではないですけど、メロディが開いている感じがあるんですよね。包み込まれるというか。それは他の曲からも感じるんですけど、今作の開いたメロディは前作との違いというか、バンドとしての変化のような気がしていて。

馬場:そうですよね。『いくつもの絵』がなかったらこうはならなかったというか。瑞葵のメロディも変わってきていると思います。

●メロディに生命力が溢れているんですよね。4曲とも、歌詞からは瑞葵さんの“死生観”みたいなものを感じるんですが、メロディが持つ温かみと相まって人間味が出ている。

瑞葵:全面綺麗は好きじゃないんです。美しいものだけを描きたくなくて、ちょっと人間らしい部分があった方が逆に美しいと思う。

●歌詞について、メンバー間でやり取りはあるんですか?

馬場:いや、ないですね。基本的には瑞葵に任せているんです。

久慈:やり取りはないんですけど、不思議なことに瑞葵が歌う歌詞と3人がイメージしたものがズレることはないんです。

瑞葵:「なんでわかったの?」とか多いよね。

久慈:M-4「時のゆらめき」とか、歌詞の中に昔話が出てくるんですけど、その歌詞が出てくる前に3人ともそういうことを意識していて。

馬場:具体的に言うと、「時のゆらめき」は途中で3拍子になってまた4拍子に戻るんですけど、その世界観の変化が瑞葵の歌詞ともリンクしていて。「海へ還る」もそうで、自分としては深海をイメージして作ったら、瑞葵がこういう歌詞を付けてきて。

●メンバーが感覚を共有できるっていいことですね…吉田さんは知りませんけど(笑)。

吉田:僕は車の運転ができます!

●結成して2年くらいになりますが、メンバーの感覚がどんどんシンクロしてきていると。リリース後は1月からツアーが予定されていますが、前回のツアーの手応えからすると更に楽しみですね。

馬場:楽しみですね。前回のツアーは“繋がりを作ろう”というのが目標だったんですけど、今回のツアーではその繋がりをより強くしていきたいと思っていて。あと、「JUNGLE☆LIFEを見た」と言えば吉田がビールをおごりますので是非ライブに来てください。

Interview:Takeshi.Yamanaka

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