音楽メディア・フリーマガジン

ガガガSP

破天荒な4人による 青春と日常のアフォリズム

PHOTO_ガガガSP1結成15周年記念ツアーの真っ只中、桑原康伸が倒れてツアーの中止を余儀なくされたガガガSP。今までにもコザック前田の体調不良による活動休止、山本聡の骨折によるライブ延期など、様々な困難にぶち当たる度に不死鳥の如く復活を遂げてきた彼ら。ツアーは中止になったものの、精力的にアルバム制作を行なってきた彼らは、新生桑原康伸とニューアルバムを携えてこの1月に見事復活を果たした。結成16年、決してブレることのないガガガ節にはますます磨きがかかり、ふざけるときには他の誰よりもふざけるというそのスタンスはここにきていよいよ堂に入ってきた。2013年のガガガSPは不惜身命&明鏡止水の精神で暴れまくる。

 

INTERVIEW #1
「繋ぎ目の時期のアルバムであることは事実ですね。それでまた自分のことがわかって、よしと思えるようになった」

●今日の山本さんは長髪センター分けに銀縁の丸メガネとカーキ色のミリタリージャケット…ジョン・レノンを意識しているんですか?

山本:そうです。

コザック:やっぱりわかります? パンクスが革ジャン着たりとかロックンロール好きがリーゼントにしたりはありますけど、このラインで格好から入るヤツは居ないですよね。みんなジョン・レノンとかビートルズ好きって言うてるくせに、スタイルから入っているヤツが居ない。そこに憤りを覚えたらしいです。

●ハハハ(笑)。

山本:というか、最近はみんなシュッとしてたころのポール・マッカートニーみたいな格好してるじゃないですか。それは違うやろと。『Power to the People』(1971年発表のプラスティック・オノ・バンドのシングル)のころを思い出せというメッセージを込めています。

●そうですか…。ところで2012年は結成15周年という節目の年でしたが、ツアー中に旦那(桑原)が病気で倒れるということがありましたね。

コザック:そうですね。今でも忘れない去年の8月14日なんですけど、なんで覚えているかというと、レコーディングの最後の歌入れの日やったんです。レコーディングは東京でやっていたんですけど、ドラムは録り終えていてコーラスもしないのでたぁじん(田嶋)以外の3人で東京に来ていたんです。

●はい。

コザック:やまもっちゃん(山本)の自家用車で3人で東京に行って。旦那はそのときからブツブツ言うてたよね。

山本:なんか言うてましたっけ?

コザック:やまもっちゃんの自家用車はCDプレイヤーのみでナビも付いてなくて。「こんな娯楽のない車に乗せられて…」みたいなことブツブツと。

山本:そうでしたね。悪態をついてましたね。

コザック:「早よ買い替えんかい!」って。で、夜に東京の宿についたら「娯楽がなかったから飲む」と言い出して。僕らは次の日が歌入れやからビール1本くらいで済ませようと思っていたんですよ。そしたら旦那は何を思ったか、いいちこを1人で1本空けたんですよ。

●えっ?

山本:800mlのいいちこを買ってきて、「娯楽がないから飲む」って。その前からツアー中に手が動かなくなったりしていたんですけど。

●ええっ!?

コザック:酔い潰れて変な格好で寝るから、朝起きたら手が痺れて動かなくなったりしていたんですよ(笑)。

山本:だから結構ギリギリの状態でツアーしていたんです。歌入れの前の日も「あんたそんなにいっぱい飲んだらまた右手動かんようになるで!」とか言うてたら、すい臓が動かなくなってしまったんです(笑)。

●そうだったんですか(苦笑)。

コザック:その次の日のレコーディングで僕が歌ってたら「なんかお腹痛いっすわ」と言うてたんですよ。でもやまもっちゃんは厳しくて「お前が飲み過ぎてるからじゃアホ!」みたいな感じやったんです。そしたら旦那の顔がだんだん透明になってきて、その場で救急車を呼んだんです。後から聞いたら、あと12時間遅かったらヤバかったって(笑)。

●ええええっ!?

コザック:それから約1ヶ月入院ですよ。東京女子医大にお世話になったんですけど。

●急性すい炎と聞きましたが…。

コザック:そうです。やまもっちゃんは厳しくて「東京女子医大で女子大生に囲まれやがって」と悪態をついてましたけどね(笑)。

山本:それには理由があるんですよ。旦那は順調に回復していったので安心したんですけど、最初はトイレにも自分で行けないほどだったのでオムツを付けていたんですよ。すごく可愛い看護師さんにオムツ替えてもらってると思ったら腹が立つじゃないですか。たださえツアー中止して色んな人に迷惑かけてるのに。

コザック:それに、最初に倒れたときはそれほど深刻だと思わないじゃないですか。胃炎か何かかなと思って。僕が救急車を呼んだんですけど、その理由は救急車で運ばれる旦那を写メで撮ってfacebookにアップしたかっただけなんです。アップしたら、スタッフに「シャレにならないんで写真削除してください!」とすぐ怒らて「すみません」って削除したんですけど。

山本:アホですわ(笑)。

●そうだったのか(笑)。

コザック:でも僕が“旦那が救急車で運ばれるところを撮りたい”と思って救急車を呼んだことが、結果的に旦那を救ったんですよ。冗談は人を救うんやなって思いましたね。

山本:確かにそうですね。冗談が結果的に1人救ったんですからね。

●ハハハ(笑)。笑い話にできてよかった(笑)。

コザック:でもそこからガガガSPとしてのライブは一切できなくなりまして。この1/14にやっと復活できたという。

●ガガガSPというバンドは本当に色々ありますね。

コザック:色々ありますね(笑)。

●8月の歌入れの最中に旦那が倒れたということは、今回のアルバムは結構前から着手していたんですね。

コザック:そうなんですよ。8月には全部録り終えて、もともとは去年の秋に出すつもりやったんです。でも旦那が倒れたからこのタイミングになりました。

山本:すべては桑原のせいです。

●今作のクレジットを見ると、作詞/作曲には前田さん山本さん旦那の3人の表記があって。みんなで曲を持ち寄ったんですね。

コザック:そうですね。僕があまり曲を書けなかったというのもあるんですけど、みんなで持ち寄った結果できたアルバムっていうんですかね。だいたい今までは先にコンセプトを決めて、それに沿って僕が作っていくという感じだったんですけど、今回は結構やまもっちゃんの曲とか旦那の曲もあったし。

●最初にコンセプトを決めなかったのは、何か理由があるんですか?

コザック:もう何も思い浮かばなくて。2012年は完全に枯れ切っていました。最近はまた水が入ってきたんですけど。なんでかわからないですけど、去年は曲作りに於いていちばん枯れていた年でしたね。自分の曲に飽きている時期っていうのがあるんですよ。サイクルなんですけど。

●あ、そうなんだ。

コザック:自分の曲って自分で想像できるメロディじゃないですか。最初の方は“こんな曲書けるんや!”とか“これは新しいな!”と思って、それで10年以上やってきましたけど、“俺はまたこれか?”というような自問自答の時期に入ってたんじゃないかなと。だから書いたらまた同じパターンの曲は書けるんだろうけど、枯れたというか“またこれか!”と思うというか。

●ずっと同じAVを見続けるみたいな。

コザック:ああ〜、そんな感じですね。ときめきがない。自分で自分のことを飽きない行為がいちばん大事だと思うんです。ライブに関してはそんなことはなかったんですけど、曲作りに関しては自分のメロディに飽きてしまってましたね(笑)。自分が飽きているものを人が喜んで聴くのかなっていう。そういう状態では熱量が入る曲が作れなくなるというのは事実としてありましたからね。

●なるほど。

コザック:30歳過ぎのころにそういう時期が来る人も居るみたいで。燃え尽き症候群っていうんですかね? 泉谷さん(泉谷しげる)とかも言うてはったことがあって、長いこと続けていると風邪を引くみたいな。自分が泉谷さんと一緒やとは思わないですけど、そういえば泉谷さんも言うてはったなって。

●ああ〜。

コザック:そういうことを思っているうちにアルバムのコンセプトもなかなかできなかったんですけど、今回はやまもっちゃんがすごく力を発揮してくれて。そういうときは、やっぱり他の人の曲を歌うのがいちばんいいんですよね。やまもっちゃんのメロディは新鮮に歌えるんですよ。そういう繋ぎ目の時期のアルバムであることは事実ですね。それでまた自分のことがわかって、よしと思えるようになったので。だから「また水が入ってきた」と言ったんです。

●そういうことだったんですね。

コザック:その一方で、やまもっちゃんはパソコンでハイテクに。

●えっ? 山本さんパソコン導入したんですか?

山本:ちまちまやってるだけです。
 

INTERVIEW #2
「枯れ出した気持ちだった中で、“自分みたいなもんでもやれることがあるんじゃないか”というか“やるべきだ”と思って書いたんです」

●山本さんと旦那の曲の数が多いということが関係しているのかもわからないんですけど、今作は悪い意味での刺々しさや毒みたいなものはあまり感じなくて。“優しさ”や“柔らかさ”、もっと言うと“弱さ”みたいなものを感じるんです。人間らしさが全面に出ているアルバムだなって。

コザック:そうですね。1曲1曲で考えた結果というか、「こういう曲ができたから次はこういう曲を作ろう」とアルバム単位で考えられてないというか。そういう意味ではバラバラな感じがあるかもしれないですけど、曲単位で捉えてもらえるとわかってもらえるアルバムかなと思うんです。

●“作詞/作曲:コザック前田・山本聡”というクレジットになっている曲も多いですよね。M-2「赤秋 -せきしゅう-」、M-4「大勝利」、M-5「ただひたすらの日常アナーキー」、M-6「これこそが」、M-12「人生強騒曲」の5曲ですが、こういう曲はどうやって作っているんですか?

コザック:「赤秋 -せきしゅう-」とかは、僕が大昔に作っていた曲なんですよね。それが掘り起こされて、そこにやまもっちゃんがメロディを付け足して、歌詞も付け足して。補正作業をしてくれたというか。

●パソコンで?

コザック:はい。例えば「ハードコアで急にわけわからんポップスになる曲を作りたいわ」と言ったらやまもっちゃんが作ってきてくれて、それをその場でワーワー言ったものをそのまま歌詞に採用したりとか。

●それ「ただひたすらの日常アナーキー」ですね(笑)。

コザック:そういう作り方が僕には向いているということが、16年目にしてやっとわかってきました。自分の性格が。

●ハハハ(笑)。

コザック:学生でいうと長く机に座っておけないタイプですね。その場のひらめきだけでしか物事ができなくて、シコシコ作ることはできないという。「人生強騒曲」ってどういう感じで作ったっけ?

山本:「人生強騒曲」は合唱で歌っている部分しか僕がメロディを持ってなかったんです。後の部分は、前田さんが別の曲で作っていたものを使わせていただいたんです(笑)。

●バンド内パクリがあったのか。

コザック:そうや。クレジットを見て「これやまもっちゃんが作った曲ちゃうの?」って訊いたら「いや、前田さんが昔作ったメロディですよ」というやり取りがあったという、とてつもなく意思の疎通ができていないアルバムです。

●ハハハ(笑)。

コザック:見事な寄せ集めです。急場しのぎです。人生後付け。

山本:「人生強騒曲」はタイアップ(カルピスソーダTVCMソング)の話があったので、実際のところ時間がまったくなかったんです。作曲に使える時間は半日くらいという。

●そんなにギリギリだったんですか。

山本:なんとかしのがないと首がまわらんようなるなと思って必死でした(笑)。

●タイアップが付いている曲は今回3曲ですよね。「人生強騒曲」の他にも、M-1「燃やせ!!」がNHK“ロボコン 2011”のテーマソングで、「大勝利」が「びっくりパチンコ巨人の星」のタイアップソング。

コザック:3曲ともタイアップの話をいただいてから書いた曲ですね。

●「燃やせ!!」はアルバムの幕開けに相応しいパワフルさがあって、シンプルだけど今までの経験があったからこそ歌える説得力というか、今だからこそ歌える曲というか。グッとくるんです。

コザック:“ロボコン 2011”の話があって書くことになったんですけど、そのときに震災があって現地に行ったりとかして、そういうところもすごく影響してます。やっぱり心が死んでしまったらどうしようもないなと思ったから書いたんです。だからあまり“ロボコン 2011”を意識したわけではないんです。1つのきっかけというか。震災やからどうこうっていう歌を作るつもりはなかったんですけど、そこもひっくるめて思ったことを歌ったという感じですね。

●「これこそが」も震災が影響しているんでしょうか?

コザック:そうですね。この曲はやまもっちゃんが弾いているコードに僕がメロディを乗せて、歌詞も僕が全部書いたんです。この曲を作ったのは、ちょうど震災1週間後にゲリラライブとかをやっていたころで。枯れ出した気持ちだった中で、“自分みたいなもんでもやれることがあるんじゃないか”というか“やるべきだ”と思って書いたんです。

●いい話だ!

コザック:これはWeezerの影響やんな?

山本:完全にWeezerです。

コザック:僕が書いた歌詞は別にWeezerは関係ないですけど、「これこそが」のサウンドはWeezerからの影響です。アルバムに絶対1曲はWeezerみたいな曲を入れるという。

●それ、10年くらい前から言っているような気がする。

山本:みんなWeezer好きでしょ? 僕はあまり聴いたことないですけど。

コザック:俺もCD1枚くらいしか持ってないけど。

●Weezerっぽいかはどうか別にして、すごくいい曲ですよね。最近前田さんはブログで「33歳という年齢になったけど、単純に人に喜んでもらえることへの嬉しさを感じるようになりました」というようなことを書いていたじゃないですか。

コザック:うんうん。

●そういった心境が出ている曲で、そういうのがなんかいいなと。

コザック:これは敢えての苦言なんですけど、自分の世界観を出すバンドが多すぎて。それってどうしても悲劇になりがちなんですよね。曲調が。

●ああ〜。

コザック:例えば悲劇を歌っていたとしても、最終的には多少喜劇にならないと救いがないんですよ。物事全部同じだと思うんですけど。うちは失恋の歌をたくさん歌ってますけど、全体的に見たら滑稽ですよね。

山本:そうですね。そこしか魅力がないですからね。

コザック:悲劇を語って相手を泣かしたり感動させたりするっていうことじゃなくて。何かの本で読んだんですけど、チャップリンが子供のころ、家の近くに養豚場があって、その養豚場から豚が大量に逃げたらしいんですよ。そしたら養豚場のおっさんは急いで豚を追い掛けまわすじゃないですか。

●はい。

コザック:おっさんからしたらそのまま豚が逃げてしまったら養豚場が潰れてしまって悲劇なんですけど、周りの人から見たら笑えるんですよ。1つの角度から見たら悲劇やけど、別の角度から見たら喜劇っていうことがあるじゃないですか。その両方を持っとかないと“人間”と言えへんなと思うんです。人間って暗いだけじゃないし、真面目なだけじゃないですよね。それをアルバム全体で出したいというのは意識しているんです。

●確かに毎回アルバムはそうですね。真面目なこと歌ったと思ったら、死ぬほどふざけていたりする。

コザック:だから「これこそが」のような歌はちゃんと真面目に歌っていますけど、この曲のいちばんデカいポイントは“ガガガSPは今回もWeezerを入れている”ということなんです。

●ひねくれているというかなんというか(苦笑)。

山本:ファンが聴いたら“全然Weezerと違うやん”と言われそうですけどね。

●震災の影響という部分では、山本さんはどうだったんですか?

山本:それはすごく思うところはありました。今回は震災前に作った曲もあるんですけど、震災後に作った曲はやっぱりそういう想いが入ってますね。「赤秋 -せきしゅう-」とか「人生強騒曲」は特にそうやと思います。

●はいはい。

山本:よく「政府が悪い」とか「なんちゃらが悪い」とか言うじゃないですか。それは確かに悪いところもあるかもしれないし、逆にちゃんと出来ている人も居るやろうし。でもそんなことより「ちゃんと自分のケツを持とうぜ」ということを言いたかったんです。そういう意味でアルバムタイトルが『日常アナキズム』なんです。“アナキズム”は“無政府状態”という意味ですけど、総理大臣もコロコロ変わってよくわからんじゃないですか。この国に生きとったら日常的に無政府状態じゃないですか。だから「自分のことは自分でやろうぜ」って。

●おおっ、山本さんが真面目なこと言った!

コザック:社会的なメッセージとかはなく僕らは音楽をやってますけど、なんか「これはやらんとこうぜ」っていう暗黙のボーダーはあるよね。

山本:そうですね。色々とやってもいいと思うけど、“手が届く範囲のことを歌おう”みたいな。

コザック:そうそう。だからそういうところの共通認識みたいなものはあるよね。

●確かに日常的なことをよく歌ってきましたよね。

コザック:日常的なことしかわかりませんからね。

山本:ラブ&ピースとかわからん!

コザック:あんたラブ&ピースの最大手の人の格好真似とるやないか!

山本:わからんから形から入ってるんです!

●ところでタイアップがついているもう1曲「大勝利」は、「びっくりパチンコ巨人の星」のタイアップソングということですが、これはまさにパチンコがモチーフになったような曲ですね。

コザック:これなんかはまさにそうですね。「確変になったときの曲を作ってほしい」という感じのオファーだったんですけど、僕はパチンコしないので確変がなにかわからなかったんですよ。だから「やまもっちゃん頼むわ」って。

山本:僕もパチンコしないんですけどね。
 
一同:アハハハハハ(爆笑)。

山本:メンバーで唯一パチンコするのは田嶋さんなんですけど、田嶋さんは曲を書かないので。「どないしたもんやろ〜?」って思いながらもなんとか書きました。

 

INTERVIEW #3
「やってないと良くはならない。だから良いライブができるとは思ってない。ただ、がんばってライブします」

●個人的にすごく好きな曲は「ただひたすらの日常アナーキー」なんです。すごくガガガSPっぽい曲と思っていたら、途中で語りが入り、そして急にピースなメロディになって。

コザック:あれ好きなんですよね。あそこで急にオシャレになってかっこいいじゃないですか。

●さっきおっしゃっていましたが、前田さんが山本さんに「ハードコアで急にわけわからんポップスになる曲を作りたい」と言ってできた曲なんですよね?

コザック:そうです。提案だけしたんです。「作ってきてくれや」と。で、やまもっちゃんが作ってきてくれた曲に好きなように歌を乗せたので共作という形になりました。

●遊びみたいなノリの延長線上でできたと。

コザック:まさにそうです。冗談は人を救いますからね。

山本:実際に1人救ってますからね。

●さきほど山本さんがパソコンを導入したという話がありましたが、前田さんからのムチャぶりもパソコンでひょいひょいと?

山本:そうですね。まあできることとできないとはありますけどね。

●この曲、資料を見ると「※歌詞は製作者の意図を考慮して割愛させていだきます」とありますけど。

コザック:その場でひらめきで歌ったので、自分でも後から聴き直さないと何を歌ったか覚えてないので。単にその理由だけで割愛したんです。

●そんな理由だったんですか。

コザック:僕はあまりこだわりがないんですよ。音楽もそうだし、生きてても。

●生きてても?

コザック:「どこどこの飯が美味い」とかそういうことも。

●そういうこだわりもないんですか。

コザック:そうなんです。昔は昼飯にいくらかかったとか10円でも安いところでとかすごくこだわっていたんですけど、最近はなくなりました。もともとね、ツアーに行ったら観光地に行きたいとか、ギターはこのメーカーがいいとかのこだわりもなくて。

●なんでもいいということですか?

コザック:なんでもいいというわけではないんですけど、物もあまり大事にしないですし。ただ、時間をかけるのだけは嫌なんです。“こだわり抜かない”というこだわりがあるくらい。3ヶ月かけたものと、3分でできたものも、良ければ自分の中では一緒ですし。

●ああ〜、なるほど。

コザック:時間をたっぷりかけたから良いとか、そういう感覚がないんです。

●だから「ただひたすらの日常アナーキー」の歌詞も、その場でひらめいたものだから別にわざわざ載せる必要はないと。

コザック:そうです。人生後付けです。

●なんかどんどん禅の坊さんみたいな感じになってきてますね(笑)。

コザック:そうなんです。僕、これから“良寛”という名前にしようと思います(※良寛:酒を飲み恋もした曹洞宗の僧侶)。禅です。禅の敷居の元に生きていくんです。

山本:これも後付けです。

●確かに前から前田さんのインタビューは禅問答みたいな感じではありましたけどね。禅って破壊坊主が多いじゃないですか。

山本:ハハハハハ(笑)。

コザック:なまぐさ坊主でないとアカンのです。恋多き生き方をしないといけないんです。禅の世界です。今からアルバムタイトルを『禅』に変えてもいいくらいです。

山本:それは次のソロアルバムでいきましょう。バンドでやったら思想の違いが出てきますから。

●ハハハ(笑)。

コザック:なんでもでまかせみたいな感じはあるんですけど、そこからしゃべっていて紡ぎ出していく言葉というのは、普段本を読んでいたりとか、たくさん物を見ていたりとかするから色々と出てくるわけじゃないですか。

●確かに。

コザック:そういうのがひとつのおもしろさだという気がするんです。1つの視点からしか物を見ていなかったら、ほんまに同じ言葉しか出てこないし、同じ発言しかしないし、考え得るような言葉しか出ないっていうのはおもしろくないという気がするんです。1つの思想や考えにこだわっていたらおもしろくないと。

山本:要するに人間性が破綻しているんです。

コザック:禅ですからね。

●ハハハ(笑)。山本さんが作詞/作曲の曲もたくさんありますけど、中でもM-10「狭い部屋」という曲が印象的で。どうしようもないポジティブな曲というか、どうしようもないネガティブな曲というか。

山本:この曲はね、洗濯物をたたんでいるときに思い付いたんですよ。洗濯物をたたんでいるときに“俺は何をやってるんやろ!”と思って作ったんです。

コザック:ハハハハハハ(笑)。

山本:別に落ち込んで作ったわけでもないんですよ。“自分の予想ではもうちょっとロックスターになっているはずやったのにな〜”みたいなことって誰にでもあるじゃないですか。“まあでもこんなもんでええか”っていう曲です。

●現状を肯定するというか。

山本:僕のニュアンス的には“受け入れたいな”っていう感じですかね。この曲を作る前にユウテラスの爽遊さんと電話でちょっと話をしていたんですよ。その影響も出てるんじゃないかなと。

コザック:俺はこの曲は今回のアルバムのTheピーズやと思ったんやけどね。

山本:あ、Theピーズっぽいですね。じゃあTheピーズで。

コザック:だから1曲1曲コンセプトはあるんですよ。“今回のWeezer”とか“今回のTheピーズ”とか。ただ1つ言えることは、自分がないんです。禅なんです。

●会話がめちゃくちゃだ!

2人:ハハハハハハ(笑)。

●旦那の曲は3曲ありますが、どれもすごく女々しいですよね。

山本:そうですね。全部そうですね。

コザック:あの人ほど高校時代から発想が変わってない人は居ないんですよ。それがすごいと思うんです。

山本:震災があってもブレないわけですからね。

●確かに旦那は毎回こういう感じのこと歌ってますよね。高校時代の失恋をどれだけ引きずってるねんっていう話ですが。

コザック:たまに“俺、歌うんか?”って思うときありますもん。

山本:歌詞見て「マジで?」って言うてますよね。

●アハハハハハ(笑)。

コザック:修学旅行のこと歌詞に書いててびっくりするときありますからね。「30歳過ぎてまだ修学旅行のこと歌うんか」って。

山本:でも急性すい炎を経て成長しているかもわかりませんよ。新生桑原康伸(※すい炎を経て復活した桑原のこと)になってからの曲はまだ僕ら聴いてませんからね。これからどう変わっていくのか? っていうのが楽しみですよ。

コザック:そうやな。

●そして1/14に5ヶ月ぶりの復活ライブを果たし、3/3からはツアーが控えていますね(※取材は2012年12月末)。

コザック:楽しみですね。でもやっぱり期間が空くと力が入り過ぎる場合がありますからね。“力を入れてるな”ということが自分でわかっていればいいんですけど、そうじゃないときはほんまに力み過ぎますからね。だからちゃんとできる力の入れ方をしないといけないなと思います。

●山本さんはどうですか?

山本:ブランクもブランクなので、ぶっちゃけやってみないとわからないですね。期間が空いているので、ええライブができるとはハナから思ってないんですよ。

コザック:うん、そりゃそうやな。

山本:期間が空いてるのに、機械的に以前と同じライブがポーンとできるようなバンドって気持ち悪いでしょ?

●確かに(笑)。

山本:だから、これだけ空いてるねんからボロクソのライブしたったらええねんと思ってます。それがリアリティやと。

コザック:そうかも知れへんね。

山本:そういうもんやと思うんですよ。やってないと良くはならない。だから良いライブができるとは思ってない。ただ、がんばってライブします(笑)。

●それは正しいかも。少なくとも誠意はある。

コザック:やまもっちゃんがいちばん正しいかもね。それこそ禅やね。ジョン・レノンはそういうことは言わへんけど。

山本:イマジン?

コザック:曲名だけ言うのやめてくれへん?

●ツアー楽しみですね。旦那の復活ツアーという側面もあるし。

山本:なんで俺らがあいつのリハビリに付き合わなアカンねんっていう話ですけどね。ツアーの前に1人で弾き語りでツアーまわれよっていう話ですよ。

コザック:“弾き語りはやらん”って決めてるらしいからね。

山本:しょうもない奴やで。このインタビューにも来うへんし。

コザック:ハハハハハ(笑)。

Interview:Takeshi.Yamanaka
Cover Photo:殿村任香

 

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