音楽メディア・フリーマガジン

グッドモーニングアメリカ

彼らが投じた一石はギターロックシーンにたくさんのきっかけを生んだ

2/4に渋谷O-EASTで開催した自主企画フェス“あっ、良いライブここにあります。2012”を大成功させたグッドモーニングアメリカ。

まだ自身の音源を全国リリースしていなかった2010年8月、V.A.『あっ、良い音楽ここにあります。』を企画してギターロックシーンに新たな風を吹き込んだ彼らは、たった1年半の間に大きな成長を遂げ、現時点で持ち得るものすべてを詰め込んだ3枚目のミニアルバム『輝く方へ』を完成させた。

デビュー前からしつこいくらいに彼らを取り上げまくってきた我がJUNGLE☆LIFEでは、その歴史とバンドの成長を振り返りつつ、パッションがファイヤーする新作について全メンバーインタビューを敢行した。

Interview

「やるべきことはまだいっぱいあるので明確になったというわけではないんですよ。でも以前よりもやらなきゃいけないことが減った」

●"あっ、良いライブここにあります。2012"は大盛況でしたね。チケットもソールドアウトしたし、13時という早い時間の開演でしたけど、お客さんも最初から最後まで盛り上がりっぱなしで。

渡邊:でもすごく大変でした。その分楽しかったんですけどね。自分たちが主導でやっていたし、バンド数も多かったし。

●それまでは渋谷O-EASTに行ったことがなかったメンバーもいたという。

渡邊:そうなんですよ(笑)。O-EASTに行くのもステージに立つのも初めてだし、こういうイベントも初めてだし。初めてのことが多かった。

金廣:もうライブどころじゃなかったですよ。疲れきってライブをした感じ。朝の9時入りで夜の9時に本番だったんですよ。

●12時間…集中力途切れますね。
ペギ:自分たちのライブをやる前からけっこう疲れちゃって、ライブどころじゃないような状態でやったのが印象的でしたね。

たなしん:途中はホントに疲れてた。

●特にたなしんは、他のバンドが演奏している間は客席で暴れたり踊ったりしていて。女の子のお尻を触ったりもしていましたね(※注:嘘です)。

たなしん:それで回復していました(※注:嘘です)。他のバンドを観ていてすごく印象的だったMCがあったんです。それはghostnoteなんですけど「今、自分がやれることをやればいいんだよ」と言っていたんです。正直そのとき疲れていて、内心"こんな風に会場でワーワーやっているけどいいのかな?"と思っていて。

●さすがのたなしんも疲れてたと。

たなしん:疲れると気持ちも下がるじゃないですか。でも、そのMCを聞いて"今できることを頑張ろう!"と思えたんです。ghostnoteがまた更に好きになったし、たくさんのバンドに支えられたと感じた日でしたね。いい1日だった。

●疲れていたのかもしれないけど、グッドモーニングアメリカはすごくいいライブだったという印象でしたよ。その中でも特に印象的だったのは、グッドモーニングアメリカのライブはペギくんが支えていると実感したことで。ライブで目立つのはやっぱりフロントの3人じゃないですか。アクションも大きいし。でもバンドをしっかり支えているのはペギくんだなと改めて思ったんですよね。

渡邊:そうですね。支えてもらっています。

●ベースの人なんかちゃんと弾いてないですからね(※注:嘘です)。
ペギ:そういうことは自分の任務として、日頃から重く考えていますね。ウチのベースはちゃんと弾けないので(※注:ちゃんと弾けます)、俺がしっかりしなきゃと思うから余計にがんばってます。

●4人の役割が音楽でもライブでもしっかりしてきたからこそ、バンドが上手くまわっているんでしょうね。CDデビューから1年半となりますが、振り返ってみるとどうですか?

渡邊:え? もう1年半になるのか? いや~、びっくりですね。本当にあっという間でした。やっぱりそれだけ濃かったんでしょうね。

●たなしんなんて1年半前はキャラも定まっていなかったですよね(笑)。ライブで引かれることもあったのに、今では全員に受け入れられている感じがある。

たなしん:そうですね。最近のチヤホヤ感はすごいです。今は逆にいつ飽きられるかが不安で…。

●一発屋芸人か!

渡邊:1年半を振り返ってみると、さっき言ってくださったように、それぞれの役割がしっかりと分担されて、それがハマってきたのかなと思います。それは"成長"という言葉ではないのかもしれないけど、1年半前と比べたら4人それぞれのやるべきことがより分かりやすくなってきていると思います。1年半前は、もっと迷っていましたもん。金廣がMCをするという話も出ましたからね(笑)。

●そんなこともあったんですね。

たなしん:実際にしましたよ。「ステージに上がって来いよ!」みたいなMCだった。

金廣:もう大変で(苦笑)。

●そんなこと言うキャラだっけ?

渡邊:とあるライブで金廣が、前にいたお客さんに「おいでよ」と言ってステージに上げたんですけど、上がったらすぐに「飛べー!」って(笑)。

●アハハハハ(爆笑)。

渡邊:確か"もやし"だったよね。

金廣:そう! そいつに名前を訊いたら「もやしです」って言われて。

●金廣くんのMCは、ライブのひとつの試みとして?

金廣:そうです。心が折れそうになりながらがんばりました(笑)。

●その当時から比べると、やるべきことがちゃんと見えてきたんですね。

金廣:見えてきたというか、やらなくていいことが分かったという感じです。やるべきことはまだいっぱいあるので明確になったというわけではないんですよ。でも以前よりもやらなきゃいけないことが減ったんじゃないですかね。

INTERVIEW #2

「以前は"こういうのがいいんじゃない?"となんとなくでやっていたんですよ。でも今はビジョンがある状態で曲を作れるようになった」

●5/9には3rdミニアルバム『輝く方へ』がリリースとなるわけですが、今作はいつくらいから着手したんですか?

渡邊:前作の2ndミニアルバム『ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ』(2011年7月)はもともと2011年4月リリースの予定だったんですけど、7月に延期になったんです。その辺りから、漠然と意識をし始めて。

●結構前から腹積もりとしてはあったんですね。

金廣:でもどういう曲を入れるかは、曲がある程度出揃ってから考えようかなと。M-4「ミサイルをぶちかましてぇな」とM-5「いつもの帰り道 」、M-7「届いたらいいのに」は既にあったんですよ。それ以外は、M-6「だけど不安です」のリフくらいしか作っていなくて。前作からの流れで、ライブ重視なところは外さないでおこうとは思っていて。その中で自分が何をやりたいのか考えて。

●前作のリード曲「ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ」は、音源で聴いたときとライブで聴いたときとの印象が全然違うんですよね。歌詞の内容的には"金廣節"とも言える刺々しい曲だし、ノリはいいけどキラーチューンになるとは想像していなかった。でも今はライブの定番曲というか、いちばん盛り上がるくらいの1曲になっていて。そういう流れで今作のM-2「マリオネット演者ノ詩」が生まれたのかなと思ったんですが、作品としてもやはりライブからのフィードバックが大きいんでしょうか。

金廣:そうですね。ライブの情景が想像つきやすい曲が多いです。以前は"こういうのがいいんじゃない?"となんとなくでやっていたんですよ。でも今はビジョンがある状態で曲を作れるようになったので、かなり楽になりました。特に「マリオネット演者ノ詩」やM-6「だけど不安です」はライブでやったときの反応のイメージがつきやすいです。

●曲作りのモチベーションが変わったわけではなく、出し方が分かったということなんでしょうね。

金廣:そうですね。出し方が分かっただけで、モチベーションは変わっていないです。

●金廣くんが以前から言っている「痛みがない音楽は作りたくない」という部分は健在なんですね。

金廣:そうですね。それに、以前はポップな音楽なんてクソくらえと思っていましたけど、聴きはしないですけど最近はポップも徹しきっていればかっこいいなと思えるようになりました。ブレていなければ。

●でも今作のタイトルにもなっている「輝く方へ」や「届いたらいいのに」は、ポップとは言わないまでも、楽曲としてポジティブなベクトルがあって、新境地というか、今までとは違った印象を受けたんです。「輝く方へ」なんて、タイトルだけでもポジティブな印象がありますよね。…まあ"輝く方へ"ということは、まだ今は暗いところに立っているんでしょうけど(笑)。

渡邊:アハハハハ、確かに(笑)。

たなしん:今作のインタビューでよく「ポジティブだ」と言われるんですが、僕はそんなにポジティブな印象を持っていないんですよね。曲の持っている匂いは金廣だなと思います。

●「輝く方へ」はどういうきっかけでできた曲なんですか?

金廣:実は今作に入れるつもりはなかったんですよ。アコギ用の曲というか、1人でアコギを持って弾き語ってやる曲として作ってみたんです。その後、いい曲だったらゆくゆくはバンドでやればいいかな~みたいなノリで。

●なるほど。

金廣:なんとなく1人で作っていた時に、スタジオに入ってきたたなしんが「これいいじゃん!」と。そこからゴリ押しでこれが今作の推し曲になりました。

●ということは、あれこれ考えずに自然に作った曲なんですね。

金廣:そうですね。すごく自然にできました。この曲は"こういう曲があったらいいな~"程度で、バンドの重みを背負わずに作ったので。

●それをたなしんがあざとく見つけたという(笑)。

たなしん:「これはいけるぜ!」と(笑)。1stアルバム『空ばかり見ていた』に収録されている「そして今宵は語り合おう」という曲も、僕が金廣の家にたまたま遊びに行ったときに聴かせてもらった曲なんですよ。あのとき「いいじゃん!」と思った感覚にすごく似ていて、今回の「輝く方へ」を聴いたときに、直感的に"この曲は今後もずっとグッドモーニングアメリカでやっていく曲になる!"と確信したんです。

●たなしんの名曲アンテナがピーンと立ったんですね。

たなしん:しかも、たまたまその前日にスタッフと話していて、「こういう曲があるといいと思う」と言われていたんです。

●それはスタッフが考える理想の曲ということ?

たなしん:そうです。「温かくて前向きになれるような、お客さんに伝わる曲ができたら、今のお客さんも喜ぶと思うし、新しいお客さんにも繋がると思う」と言われて。

●イメージのみで言われたのか(笑)。

たなしん:僕もそういう曲があればいいなと思っていたので、「うんうん」と聞いてて。で、次の日にスタジオでこの曲を聴いて、"この曲には俺やスタッフが思っていたイメージの歌詞が乗るんじゃないかな"と。

●最初から曲のベクトルは見えていたんですね。

金廣:最初に適当な歌詞をはめて歌ったときは、サビで"良くなる方に"と歌っていたんです。自分の中ではそれで腑に落ちていたので、ポジティブ方向に行こうぜという歌詞にすることが固まっていました。推し曲にも決まってしまったし。

●あ、歌詞が乗る前の段階で推し曲に決まったんですか。

金廣:そうなんです。だから内心は"ちょっと困ったな、もうちょっと自由に書きたかったな"と(笑)。

●この曲のサビは繰り返しですけど、繰り返しはすごく強いと思うんですよね。"輝く方にさ"という言葉もなんとなく英語のような響きで聴こえるので、日本語で歌っているのにベタな感じがしない。不思議な雰囲気ですよね。

金廣:セカイイチの慧くん(Vo.岩崎)とかplaneのキクさん(Vo./G.菊地)から、「これ洋楽だね」って言われました。

●金廣くんの書く曲は個性的だと思うことが多いんですけど、M-3「ベテルギウスが消えてしまう様に」の展開はシンプルだけど特に不思議だと思ったんですよ。この曲のサビはどこなんですか?

金廣:ああ~、そう感じるんですね?

●最初?

渡邊:いや、リズムが変わるところです。言われてみたら確かにそうですよね(笑)。歌の始まりがサビだと捉える人はいるかもしれない。

●この曲はかなりシンプルな構成ですよね。

渡邊:A→サビ→A→間奏→サビ→サビです。

●いちばん印象に残るのは"ベテルギウスが消えてしまう様に"というキャッチーな出だしなんですけど、よく聴くと"これはサビじゃないかも"と思って。構成もすごくシンプルなんですけど、なんか"シンプルな曲"とは思えない不思議な感じがある。

金廣:サビがどこか分からない曲はすごく好きなんですよ。ふわっと終わる感じがいい。もはや余韻しか残らないような、曲の雰囲気重視で、シンプルすぎて流れていっちゃうような曲。「あれ? もう1回聴きたいな」ってなるような。

●それを意図して作ったんですか?

金廣:いや、これはたなしんが収録か何かでスタジオに遅れてきたときに…。

●彼はもはや売れっ子ですからね。

金廣:そうそう、彼は芸能人なので。

たなしん:いやいやいやいや!

金廣:だからミュージシャンの3人で「2ビートの曲を作ろう」と言ってスタジオに入ったんです。

●ミュージシャン3人で。

金廣:でも今までにあるような曲はあまりやりたくないなということで、2ビートはこのくらいで、リフはこんな感じで弾いてみて、サビは縦ノリで…という感じで作っていったんです。

渡邊:たぶん、今作でいちばんすんなりできたんじゃないですかね。作り込むというよりは、金廣が持ってきた元ネタを合わせてみたら「いいねえ」と。そこから構成を詰めていきました。

金廣:そこで全体像が見えたら、ほぼそのままな感じで完成しました。

●ミュージシャンの3人が作って、芸能人のたなしんは後から聴かされたと。

たなしん:遅れていって、「それいいねえ!」つって。

一同:アハハハハ(笑)。

●ベテルギウスのことはニュースにもなって旬だし(※太陽の次に地球に近い恒星で、いつ超新星爆発してもおかしくないと言われている)、響きがキャッチーな言葉だとは思いますけど、ベテルギウスのことを歌おうとした理由は? なかなか歌詞に"ベテルギウス"という言葉を入れるのは難しいと思うんですけど。

金廣:僕は星や宇宙が好きで、今回入らなかったんですけど「グリーゼ」という曲を作ったんです。グリーゼという人が約20.40光年離れたところに見つけた"グリーゼ581"という恒星があるんですけど、その惑星のうちの2つがハビタブルゾーン(※宇宙の中で生命が誕生するのに適しているゾーンのことで、恒星との距離や銀河系内の位置によって決まる)にあって、地球と同じような環境の星らしいんですよ。そのことを知ってから気になって「グリーゼ」という曲を作り、その流れで星シリーズの楽曲を作っていこうかなと(笑)。「グリーゼ」から始まり、星シリーズのアルバムでも作ってみたいんですけど。

たなしん:それいいじゃん!

●僕も宇宙や星が大好きなので、そのアルバム買います!

金廣:アハハ(笑)。その流れでこの曲を作って、サビは同じなんですけど、歌詞は今とはちょっと観点の違う内容だったんですよ。もともとは人生についてと人間同士の別れや痛みについて歌っていたんです。でも曲がこんなに短いんだから、ひとつのテーマだけに絞って書いたほうがいいんじゃないかということになり、今のような恋愛っぽい歌詞に固めて。

●ふむふむ。

金廣:でも"ベテルギウス"という言葉を使っていなくて。そこから歌詞の内容に則した"儚く消えるものって何だろう?"とキーワードを考えたときに、ベテルギウスを思いついたんです。

グッドモーニングアメリカ INTERVIEW #3
「前は自分の芯を曲げなきゃいけないと思っていたんですけど、今はそうじゃなくなったというか。その分、やりたいことも増えてきているんです」

●一方で、「いつもの帰り道」はすごくパーソナルな視点の楽曲ですよね。

金廣:歌詞は少し変えているんですけど、昔のデモに入っていた曲なんですよ。もともとこの曲を作ったとき、本当はドラムを打ち込みにしたかったんですよ。この曲を作ったのはペギが入る前だっけ?
ペギ:入ってすぐくらいじゃないですかね。たぶん2年半くらい前の曲です。

●それをなぜこのタイミングで?

渡邊:ミニアルバムを作ると決まったときに、今までの曲を並べてみて、ライブでやったときの印象が強く残っているということで、候補に入れてみたんです。

金廣:展開とかも含めてすごく好きな曲なんですよね。

●この曲は温かい曲ですよね。あとこの歌詞を見ても星が好きなことが伺えるというか、金廣くんはいつも空を見ているという。

金廣:空ばかり見てますね(笑)。

一同:ハハハハ(笑)。

●最後の「届いたらいいのに」も新鮮だったんですよ。これはグッドモーニングアメリカなりの応援歌ですよね。

金廣:最初の公式音源というか、2009年12月にリリースされたV.A.『Melodizm2』に入れた曲を撮り直したんです。

渡邊:ライブではあまりやっていないんですけど、この曲を気に入ってくれているお客さんも多いんですよ。もちろんV.A.にしか入っていないし、もっとたくさんの人に聴いてもらいたいという想いもあった。いちばん最後に入れることで、ミニアルバムとしてもいいものになるんじゃないかと思って。

●たしかにこの曲が入ることによって、聴き手との繋がりが見えるというか、距離が近付くというか、体温を感じさせる作品になりますよね。作品全体の印象でもあるんですが、シンガロングとまではいかないでしょうけど、コーラスというか、一緒に歌える余地が多い気がしたんですよ。意識はしたんですか?

金廣:いや、そういう要素は別に頭で考えて入れるわけじゃなくて、できちゃったんですよね。特に「ベテルギウスが消えてしまう様に」に関してがそうで。ミュージシャン3人で作っていく中で、メロディも適当に歌っていたんですけど、最初からいいメロディができていたのでそのまま決定して。

●ミュージシャン3人で作っている時点であのコーラス部分もできていたんですね。

金廣:そうですね。「輝く方へ」も最初から浮かんでいましたね。

●話を聞いてて思ったんですけど、金廣くんは曲作りにあまり苦しまなくなった?

金廣:苦しみますよ。

●でも前作の取材とか、曲作りの経緯とか訊いたらすごく嫌そうに話していましたよ(笑)。

金廣:嫌だったんです(笑)。

●嫌だったんか(笑)。

金廣:でも今は、少しずつ結果も出てきていますし、お客さんの盛り上がりを見ていて"こういうのがいいんだ"と分かってきたので、それに対して応えるだけというか。そこを今までやってきたレベルよりも上を目指してやればいいと思って作ったんです。そこに対して、もはや自分のプライドもないし、そこへのテンションのもって行き方も分かったので、前に比べて苦労はないですね。

●そういう感覚だと、自分の本質とのギャップを感じたりすることはないんですか?

金廣:うーん、ギャップというか、これも自分の一部だと思えるようになったというか。

●ということは、以前はお客さんが求めているものに合わせるようなことはできなかった?

金廣:できないというか、かっこ悪いと思っていました。

●みんなが聴きたいと思う曲をやるのはかっこ悪いと思っていたということ?

金廣:そうそう。以前は"やらなきゃいけない"という想いが強かったんですよね。義務感というか。でも今回は「こういう曲がいいんじゃない?」と、自分で選んだという感じ。そこに対してのストレスはないです。

●以前は心を曲げるくらいの感覚だったんでしょうか。

金廣:そうですね。前は自分の芯を曲げなきゃいけないと思っていたんですけど、今はそうじゃなくなったというか。その分、やりたいことも増えてきているんです。

●そういった変化は、なにかきっかけがあったんですか?

金廣:やっぱりソロで先輩たちとアコギツアーをまわらせてもらったことが大きいと思います。ギターロック全盛期の世代のヴォーカリストばかりだから、改めて自分の音楽に対する接し方を考える機会になりました。そのツアーを経験してから今までの曲に対する感じ方も変わったし、自分でも成長したなと思いますね。

●視点を変えたら楽になったと。

金廣:そうですね。今は精神衛生的にすごくいいです。まあ、逆にへそが曲がったのかもしれないですけどね(笑)。

●アハハハ(笑)。確かにすごく捻くれて、本心を出さなくても平気になった、という見方もできますね(笑)。

金廣:でも自分のスタンスとして、それがミュージシャンなのかなと。

●曲を聴いているだけでも、以前との違いを感じるんです。「精神衛生的にすごくいい」とおっしゃいましたけど、以前は見ていてちょっと心配になる瞬間とかありましたから。

金廣:ハハハ(笑)。

INTERVIEW #4

「僕たちのことを知らないお客さんがたくさんいると思うので、そういうお客さんを持っていきたいですよね。楽しいからこっちに来なよ! って」

●今作でミニアルバムは3枚目ですよね。今までフルアルバムは…。

渡邊:出していないですね…。出したいです。

金廣:出すなら星シリーズで(笑)。

●いきなりそこか(笑)。

金廣:まあでもおもしろいことはしたいです。

●"フルアルバムを出したい"という想いはあるんですか?

たなしん:そりゃあ、ゆくゆくは出したいですよね。

金廣:曲数もあるし、作ること自体が楽しそうですからね。

●フルアルバムも楽しみにしています。そして6月からはツアーがありますが、グッドモーニングアメリカは今までもツアーごとにたくさんの出会いや感動があって、それで成長してきたバンドじゃないですか。最近のライブのモードというか、モチベーションはどんな感じなんですか?

渡邊:今作に収録されている新曲たちはまだライブでやっていないんですよ。だから早くリリースして、新しい曲をライブでやりたいなという気持ちですね。

●いい感じでライブができている?

渡邊:そうですね。リリース前なので、最近は今までの曲を組み合わせながらやっていて。先日、初めて高松に行ったんですけど、すごくたくさんのお客さんが来てくれたんです。初めての土地であんな反応がくるのは今までになかったのでびっくりして。しかも、サーキットイベントだったから時間の被りがあるにも関わらず、たくさんの人が来てくれたのは本当に嬉しかったですね。

●今回はどんなツアーにしたいですか?

渡邊:毎回いろんな出会いがあるし、今回は各地をいろいろなバンドとまわるので、すごく楽しみです。初めて対バンするバンドもいますし。

●今まで様々なバンドと対バンしてきたけれど、更にその輪を拡げるという。

たなしん:もっと攻めています。

渡邊:単純に自分たちが一緒にやりたいと思ったバンドに声をかけさせていただきました。あと、北海道と広島は今のメンバーで行くのが初めてなので、楽しみですね。

たなしん:ツアーは本当に強力な対バンを用意できると思っていて。そことの空気感がどうなるものか、全く想像がつかないので、それが本当に楽しみです。
ペギ:俺は、前回のツアーも今回のツアーも気持ちは変わらず…自分のやるべきことをやるというだけで、とくに深くは考えていないですね。

●いい意味で肩に力が入りすぎていないと。
ペギ:そうですね。今までやってきたことを、いつも通りやれたらいいなと思います。

●こうやって取材でペギくんと話すのは2度目なんですけど、ペギくんってストイックなんですか?

渡邊:ザ・ストイックですよ。

●この肉体を見れば分かる通り?

渡邊:肉体も然り、音楽に対しても。ペギはドラムのことを第一に考えているんですけど、ドラムだけじゃなくバンドのこともすごく考えてくれていて。ドラムだけだと「俺はこういうドラムを叩きたい!」ってなると思うんですが、バンドに合ったドラムを叩いてくれるタイプですね。金廣もペギのことをすごく信頼しているので、ドラムのことはペギに全面的に任せているし。もちろん「こっちの方がいいんじゃない?」という部分はスタジオでやり取りするんですけど、骨組みを金廣が作ってきて、あとはペギのセンスでいろいろ変化していくことが多いんです。

●なるほど。たなしんのキャラはすっかり浸透してきましたが、さっき自分で「いつ飽きられるかが不安で」と言っていたじゃないですか。そういう恐怖感はあるんでしょうか。

渡邊:でも、まだそこを恐れてライブをブレさせたくはないんですよね。

●確かによしもと新喜劇的な、やればやるほど強くなる感じはありますけどね。たなしん自身はどう考えてるんですか?

たなしん:そこはもう自分を信じるしかないですね!

渡邊:すっげーアーティストっぽい発言(笑)。

たなしん:自分の運を信じるしかないです!

●運かよ!

一同:(爆笑)。

●最初の頃は、その日のライブでなにをやるかとかどういう登場をするかとか、メンバーにも内緒にしていたことがありましたよね。

たなしん:うーん、ライブをやればやるほどですけど、それが型になってきている部分は否めないですね。昔はなんとなくでやっていたんですけど、今はそれありきで考えているというか。

●それが重荷にはならないんですか?

たなしん:重荷ではまったくないです。むしろありがたいことですよ。自分の存在価値がそこにあるような感じで(笑)。マンネリ的な空気になるときもいつかあると思うんですよね。でも、それがまた自然と違う空気になっていくんじゃないかなと思っています。まだこの1年くらいは新しいお客さんも増えるんじゃないかと思うし…。

●そこを恐れてジタバタするのではなく、自分(と運)を信じてこれからもファイヤーいくと。

たなしん:はい。まだまだこれを続けていくし、楽しく盛り上げられたらいいかなと思っています。フェスとかでも、まだ僕たちのことを知らないお客さんがたくさんいると思うので、そういうお客さんを持っていきたいですよね。「楽しいからこっちに来なよ!」って。

●これからのご活躍も楽しみにしてます。では最後にお願いいたします。

たなしん:それではみなさんご一緒に! 3! 2! 1!

一同:ファイヤーーーーー!!!!

Interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:Hirase.M

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