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京都大作戦2012参戦後記

京都大作戦2012〜短冊に こめた願いよ 叶いな祭〜 2012年7月7日(土)7月8日(日)@京都府立山城総合運動公園 太陽が丘特設野外ステージ

2007年、台風の接近によるまさかの第1回目開催中止をバネにして、2008年から現在の2日開催となってたくさんの奇跡を起こしてきた“京都大作戦”。

5回目の開催となる今年も、朝早くから太陽が丘に続く道にはたくさんの観客が長い行列を作っていました。

もはや夏の風物詩と化した、キッズのキッズによるキッズのためのフェスは、とにかくみんなのテンションが異様に高いのが特徴。今までこのイベントを経験した人たちが口を揃えて「最高のフェス」と絶賛する由縁は、出演者だけではなくスタッフや関係者、そしてもちろんオーディエンス…全員が“全力で楽しもう”と思っているからこそ。

会場の至るところに高揚した汗まみれの笑顔が溢れている僕らの夏フェス。今年も2日間、全力で楽しみました。

Report

2012年7月7日(土)

心配された雨も開演前には止んでくもり空。地面には水たまり。しかしそんなことはお構いなしとばかりに参戦者たちのテンションは高く、水たまりではしゃぎ、声を上げ、下半身泥まみれになって暴れる者も多数。いつものことながら、太陽が丘は開演前から異様な興奮に包まれている。10-FEETの3人がステージに出てきてラジオ体操、そしてMOBSTYLES田原氏の挨拶、カウントダウン開始。客席エリアから「ウワー!」と声にならない声が沸き起こり、いよいよ“京都大作戦2012”がスタートした。

OVER ARM THROW

OVER ARM THROW

トップバッターはOVER ARM THROW。Ba.鈴野が「ライブハウスから来ました。OVER ARM THROWです」と告げてライブ開始。Vo./G.菊池が空を指さして「晴れて良かったぜ!」と叫んだ通り、雲の合間からは太陽の光が会場まで射し込んでくる。

ステージの3人は笑顔。もちろん客席も笑顔。笑顔のままダイバーが宙を舞う。“全力で楽しもう”というOVER ARM THROWの想いがそのまま形になったようなステージ、そして3ピースから繰り出される小気味良いアンサンブルは、我々オーディエンスの気持ちを代弁しているようで、観ているこっちのテンションも激アガリ。泥にまみれながら、ステージの上も下も全員がキッズになって心から楽しんでいる。

「Dear my songs」のメロディが広い空に突き抜け、ラストの「All right all wrong」では数え切れない程のダイバーが舞う。途中のMCで鈴野が「楽しいときもあれば辛いときもあるじゃん。毎日楽しいわけねぇだろ? 今日は楽しもうね!」と叫んだ瞬間、今年もここに帰って来たことを実感する。

9mm Parabellum Bullet

9mm Parabellum Bullet

牛若ノ舞台ではCOUNTRY YARDが登場。美しいメロディと疾走感のあるサウンド、熱量の高いステージでガツンと魅せてたくさんの観客を暴れさせた後、源氏ノ舞台では9mm Parabellum Bulletのライブがスタート。怒号のような歓声と数えきれない程の腕が挙がり、手拍子と共に会場全体が踊り狂う。その光景はまるで祭り。G.滝が理性を裏返すようなギターを奏で、Vo.菅原が叫ぶように歌う。彼らの力強いメロディと言葉、リフとリズムは大きな一体感を瞬く間に生み出し、ライブ開始早々に熱気は沸点へ到達。「新しい光」で大合唱、10-FEETのTAKUMAが乱入した「Supernova」、観客以上のテンションでメンバーがステージを転げまわった「Punishment」と、一瞬一瞬の光景と体験が記憶と身体に焼き付けられていく。9mm Parabellum Bulletはとにかく瞬発力と破壊力が抜群。ライブが終わる頃には雲の合間から青空が見え、ジリジリと焼け付くような太陽の光が太陽が丘を照らし始めていた。

BOMB FACTORY

BOMB FACTORY

ヘヴィかつキレのあるサウンドで、数々の現場を駆け抜けてきた百戦錬磨のBOMB FACTORY。彼らのステージは攻撃力が半端ない。更に、ハードながらキャッチー過ぎるメロがグサグサと突き刺さる快感もありつつ、尚且つアンサンブルが頂点に達したときの飛距離が凄まじい。要するに無敵。ロックを体現しているような彼らの生き様がビシビシと伝わってくるステージに当てられ、観客が狂喜と賛美の声を上げる。BOMB FACTORYの背中を見て今まで活動してきたというTAKUMAとROTTENGRAFFTYのVo.N∀OKIが「HOW DO YOU FEEL?」のステージに出てきて沸かせた後、ラストの「BREAKUP」では大きな会場が“興奮”の一色に塗り潰される。全員がジャンプしたかと思えば腕を振り上げて歌い、4人と気持ちをぶつけ合う光景は本当に素晴らしかった。

MAN WITH A MISSION

MAN WITH A MISSION

ぽっかりと雲が開け、青空から陽の光がさんさんと降り注ぐ。灼熱の源氏ノ舞台に降り立つ次のアクトはMAN WITH A MISSIONだ…と思っていたら、和装の男女がステージにしゃなりしゃなりと出てきて尺八と琴を演奏し始める。会場がザワザワし始めたところで満を持してメンバーが登場。常に我々の意表を突いてくるオオカミたちは、1曲目の「ワビ・サビ・ワサビ」から最後の「FLY AGAIN」の音が鳴り止むまで存分に我々を楽しませた。Vo./G.Jean-Ken Johnnyが「Thank you very much! おおきに!」と叫んで地鳴りのような歓声を浴び、「Smells Like Teen Spirit」や「distance」といったキラーチューンを連発。巧みなアレンジセンスと確かな技術に裏付けられたステージは、ライブ好きのツボを心得ていることこの上なし。DJ.Santa Monicaが舞妓はんの如く踊った「Get Off of My Way」、無数のタオルが舞った「DANCE EVERYBODY」、そして会場が揺れるほどの手拍子に包まれた「FLY AGAIN」。昨年、牛若ノ舞台に出演したオオカミたちは今年、源氏ノ舞台で2万人を見事に魅了した。

氣志團

氣志團

SUNSET BUSが哀愁感抜群のメロディとヘヴィなサウンドで牛若ノ舞台を汗まみれ&ダイブまみれにした後(ちなみにここでもTAKUMAとN∀OKIが乱入)、源氏ノ舞台はいよいよ氣志團の出番。毎年のことながら、出演者がバラエティに富みまくっているのが京都大作戦の魅力の1つ。“音楽”と“楽しむ精神”を持ち寄って2万人が心を1つにしたステージに、氣志團が圧倒的な存在感を放ちながら見参。とにかく彼らのエンターテインメント精神には度肝を抜かれっぱなしだった。「日本人 w/微熱DANJI」ではたくさんの拳が宇治の空を突き上げながらの日本人コール。各メンバーの息がピッタリ合ったステージングは最高で、神々しく見えるほどハイレベル。更に、ロック魂が溢れる「東京」のエッヂィなアンサンブルで会場を1つにしたり、MCで笑わせたかと思えば観客全員で肩を組ませたりと、1秒も余すことなく楽しませる貪欲さ。「One Night Carnival」をみんなで歌い、みんなで暴れ、みんなで踊り、みんなで叫び、みんなで笑い、みんなでジャンプして終演。贅沢なライブにみんな大満足だ。

RIZE

RIZE

客席エリア後方までギュウギュウに観客が詰めかけた牛若ノ舞台を沸かせたのはHOTSQUALL。そして源氏ノ舞台に据え付けられた大型ビジョンに“RIZE”の文字が浮かび上がる。Dr.金子ノブアキが強烈な1発をかまして太陽が丘が揺れる。サポートギターのRioを含む4人編成のRIZEが、全身全霊を注いで音を合わせていく。毎度のことながら、1曲目の「THE SUN」から限界を超えたテンションで突っ走る鬼気迫るステージ。Vo./G.JESSEが「全部忘れてゼロになれ!」と叫んで始まった「ZERO」の太く重い音の圧力に負けじと観客全員が腕を振り上げ、更にその上をダイバーが舞うという異様な光景。そして、いつ何が起こるかわからない雰囲気を帯びたライブは後半で奇跡を起こす。

Ba.KenKenのスラップが炸裂する「カミナリ」でJESSEが「歌えるやつ上がって来いよ!」と客をステージに次から次へと上げ、ステージでは50人近い観客が歌い、暴れまくる。かと思えば、当のJESSEは客席エリアでセキュリティに担ぎ上げられながら魂の叫びを上げている。「な、なんだこれは!」と、我々が“奇跡の瞬間”に圧倒されている中、ステージの客を乱暴に掻き分けて戻ってきたJESSEが「ロックバンドでした」と告げて終了。常に限界の向こう側でライブを繰り広げるRIZEならではというか…とにかく強烈な体験だった。

dustbox

dustbox

トリッキーかつフックの多いサウンド構成にも関わらず、強烈な歌の吸引力を武器に抜群の一体感を生み出して牛若ノ舞台を盛り上げたアルカラの後、源氏ノ舞台には京都大作戦皆勤賞のdustbox(とBa./Vo.JOJIに扮した10-FEETのNAOKI)が登場。1曲目の「Neo Chavez 400」から高い熱量で繰り出す疾走感のあるリズムとグルーヴ、そして貫通力が高いメロディ(とハンドマイクのJOJIによるキレキレのパフォーマンス)で圧倒する。徐々に空が暗くなっていく中、dustboxのステージからは気迫と気合いと最高の遊び心しか伺えない。JOJIが「さあここからだ!」と叫び、オーディエンスが「オオオオー!」と腕を振り上げる。客席エリアの至るところではサークルモッシュ。「Right Now」や「Try My Luck」というキラーチューン連発にダイバー乱発、まさにここはライブハウス。Vo./G.SUGAが「自分の目の前の壁を壊せ!」と叫んだように、彼らは3ピースの限界を超えた楽曲とステージングで魅せる。SUGAがマイクを通さずに「最高だね」と笑えば、会場全体から大きな大きな歓声が起こる。10-FEETのDr.KOUICHIがSUGAのモノマネでタイトルコールした「Tomorrow」、そして急遽追加した「Next Story」「Just One Minutes」まで、ステージ上の3人も会場のみんなも、全員がリミッターを取り払って暴れまくったライブは流石のひと言。

10-FEET

10-FEET

そしてトリはもちろん10-FEET。SEが鳴り響く中、ステージに出てきて握手を交わす3人。「hammer ska」が始まり、ステージ最前から客席エリア後方の土手の上まで、そしてバックステージやステージ袖に至るまで、会場全部のテンションが加速度的に限界を超える。京都大作戦で観る10-FEETはやはり特別で、一瞬が永遠に、そして永遠が一瞬にも感じるような不思議な感覚に包まれていく。“京都大作戦で聴けば泣く率10割台(by 筆者)”の「VIBES BY VIBES」へと続き、ステージ方向ではなく、360度全方向から音が怒涛の如く迫ってくる(なぜなら周りのみんなが大声で歌っているから)。NAOKIが広いステージで所狭しと暴れて煽る。「super stomper」ではJESSEがラップで乱入、「2%」では大阪籠球会がステージに登場して沸かせる。その後、TAKUMAが「今日という1日も、きっと一生も、限りがあるから楽しい。永遠に生きられたらがんばれる理由がたくさんなくなると思う」と言って始まった新曲「シガードッグ」は、とても温かくて優しくて、どこか懐かしい響きにグッと惹き込まれた。

「毎日毎日後悔しないように生きるなんて、そんなもんいつまで経ってもどうやっていいかわからへん。ただ1曲分やったらできるかもしれへんから、今からの俺たちを見ててくれ!」とTAKUMAが泣くように叫んで最後の「1sec.」。限界を超えて鳴らされた同曲では、ステージで叫ぶTAKUMAだけではなく、NAOKIもKOUICHIも、そしてこの日この場所に集まった2万人の全員が持ち寄った、この1年の間に溜め込んでいた様々な想いと感情がグチャグチャに入り乱れてひとつの大きな大きな塊とる。心がブルブルと震えるこの感覚は、絶対にここでしか味わえないもの。強烈な余韻に浸りつつ、京都大作戦2012の1日目が幕を閉じた。

2012年7月8日(日)

昨日の興奮も覚めやらぬ中、快晴の空の下でたくさんの人が詰めかけた太陽が丘。開演前から鳴り響くBRAHMANやマキシマム ザ ホルモンのBGMに興奮したのか、既にオーディエンスは臨戦状態。晴れているとはいえ、昨日2万人の観客が暴れまくった地面はまだぬかるみも多く、既に下半身がドロドロになった観客も少なくないが、構わずテンションを上げる。今日も熱くて暑い1日になりそうだ。

HEY-SMITH

HEY-SMITH

2日目のトップバッター、HEY-SMITHは気合満点。G./Vo.猪狩の「京都! 踊り狂え!」という号令をきっかけに、広い会場を埋め尽くす観客が踊り狂う。ザクザクとした縦ノリと、ユラユラとした横ノリを字のごとく縦横無尽に操る5人は、客席を見て更にテンションを上げ、緩急のあるライブを展開していく。「ここは天井のないライブハウス。思いっ切り遊んでいけ!」と猪狩が叫んで始まった「Drug Free Japan」の濃縮されたロックに会場の熱はうなぎ登り。2年前は牛若ノ舞台に出演し、1年前は客の1人として京都大作戦に参戦したという猪狩が「だからみんなの気持ちがめっちゃわかる!」と叫んで会場が更に沸く。アクティブなホーン隊と揺るぎないリズム、哀愁感を帯びたリフとメロディに全員が身体を揺らして暴れまくる。最後はSiMのVo.MAHとcoldrainのVo.Masatoがステージに現れ、更に10-FEETのTAKUMAとNAOKIも参加して「Come Back My Dog」を2回演奏。猪狩とMAHが客席エリアに身を投げ、最高の幕開けを飾った。

OLEDICKFOGGY

OLEDICKFOGGY

牛若ノ舞台ももちろん負けておらず、EDDYがキャッチーなメロディとタイトな演奏でどっかんどっかんとダイブを乱発させる。源氏ノ舞台には10-FEETのメンバーがライブを観て一目惚れしたというOLEDICKFOGGY。確かな演奏力から繰り出されるアイリッシュ的要素が入ったサウンドと、胸のいちばん深いところに突き刺さってくる歌に、初見だった筆者は我を忘れて聴き入ってしまった。陽気なサウンド、どこか憂いを帯びたメロディと大地を想起させる雄大な世界観。マンドリン、ウッドベース、バンジョー、アコーディオンといった楽器の音が響き渡る。他の出演者とはやや方法論が違い、曲を重ねていくごとに熱を徐々に増していくような加熱型セットリスト。ほぼMCなしで進行した彼らのライブ、最後は哀しみをふっとばすような「チブサガユレル」で沸かせる。TAKUMAも乱入して客席エリアではダイブが多発。強烈な存在感を見せつけてステージを後にした。

LOW IQ 01

LOW IQ 01 & MASTER LOW

LOW IQ 01 & MASTER LOWとしては初の出演、幕開けは「FIREWORKS」。息もつかせず「LITTLE GIANT」「SWEAR」と続き、オーディエンスは腕を上げてLOW IQ 01と一緒に歌い、そして全身で音楽を味わい尽くす。会場の至るところでおもしろいように人が跳ね、腕が挙がり、笑顔が溢れている。急速に上がっていったテンションは、緊張感のあるメロディが印象的な「AAA」で最高点に到達。そして「FAY」では重厚感のあるサウンドと絶え間なく移り変わる展開で魅せ、埋め尽くした手拍子が会場をピースフルな空間に。この日はMCも少なめに、次から次へと彩り豊かな楽曲を展開していく。客席エリアの前から後ろまでが1つの塊のようになってうねった「WAY IT IS」、そして最後はTAKUMAも乱入した「WHAT A HELL'S GOING ON」。ロック感溢れる贅沢な時間に、オーディエンスは声を上げながら全身で喜びを表していた。

FIRE BALL with HOME GROWN

FIRE BALL with HOME GROWN

気温がぐんと上がってきたころ、FIRE BALL with HOME GROWNが源氏ノ舞台に登場。抜群のグルーヴを生み出すHOME GROWNと、アクティブに言葉を操るFIRE BALLの4人が強い存在感を放ちながら歌を繰り出していく。今年15周年を迎えてますます勢いを増す彼らに2万人が歓喜。そのステージは、“レゲエ”という言葉だけでは説明しきれない唯一無二の空間。15年の歩みを振り返ってメドレー(「LIGHT UP THE FIRE」〜「BRING IT ON」〜「BAD JAPANESE」〜「KOOMINA」)で魅せ、数えきれないほどの色とりどりのタオルが宙を舞う。絶対的な支配力を魅せつけたステージは、説得力とメッセージに溢れた「Dreamer」で盛大に幕を閉じた。

一方で、牛若ノ舞台ではSHANKが熱いライブを展開。パンパンに詰めかけた人の上をダイバーが次から次へと舞う。ステージから放たれるグッドメロディーと疾走感あるサウンドに、観客が大合唱とモッシュ&ダイブで応える光景はライブの素晴らしさを物語っていた。

Dragon Ash

Dragon Ash

そして源氏ノ舞台では、dustboxと並んで皆勤出演となるDragon Ashが登場。今年4月に急逝したBa.IKÜZÖNEの意思を継ぐRIZEのKenKenがベースを手にし、ライブは最初からフルスロットル。1曲目の「AMBITIOUS」で太陽が丘全体が地鳴りのような興奮に包まれたかと思えば、ダンサーのATSUSHIが赤と青で配色されたフラッグを掲げて今日一番の大歓声。胸を焦がす想いが綴られた力強い新曲「Walk with Dreams」と続け、大盛り上がりするオーディエンスを前にKjが「新曲でそんだけ盛り上がれるのはお前らくらいだバカヤロー!」と喜びを露わにする。更に10-FEETの「What’s up?」をカヴァーしてTAKUMA乱入、観客は上へ下への大騒ぎ。そしてKjは、我々がその言葉を待っていたのを見透かすように「ミクスチャーロックは好きですか?」と叫んで「Fantasista」を披露。その音楽に高揚し、そのステージングに魅せられ、その鋭くて熱い言葉に胸を焦がす。眼光鋭いKjの鬼気迫る表情に、観客は必死で食らいついていく。「ありがとう。やれてよかったです。ロックバンドDragon Ashでした」というKjの最後の言葉には胸を打たれるものがあった。毎年彼らを観て思うことだが、Dragon Ashのライブにはまったく非の打ち所がない。

くるり

くるり

Dragon Ashで汗を流した後は、爽やかに吹き抜ける京都の風を想起させるくるりの登場。サポートドラマー・あらきゆうこを含む5人体制。ロック感溢れるバンドサウンドに乗せ、「ワンダーフォーゲル」「argentina」とグッドメロディを紡いでいくVo./G.岸田。新曲「everybody feels the same」辺りで会場の空気はくるり一色に塗りつぶされ、まるで時空を超えながら世界を旅していくような同曲の世界観にオーディエンスはずっぽりとハマっていく。ほぼMCなしで丁寧に楽曲を重ねたかと思えば、最後は言葉の1つ1つが突き刺さってくる鋭さを持った「glory days」。過去の楽曲の歌詞をサンプリング的に取り入れつつ、ハッとさせる言葉で綴られた同曲は、肌触りの良いそのサウンドとは対照的に、強烈な存在感を放っていた。

ケツメイシ

ケツメイシ

空が少しずつ暗くなり始め、トリ前のケツメイシが源氏ノ舞台へと姿を現した。1曲目の「闘え!サラリーマン」から会場中にタオルが舞い、客席エリア後方の土手の上まで余すことなくそのステージへと巻き込んでいく怒涛のエネルギー。イントロだけでたくさんの悲鳴が沸き起こった「夏の思い出」から始まった「また君に会える」「お二人SUMMER」という贅沢な夏メドレーで魅せ、曲の合間合間に挟み込んだ小芝居では大爆笑。コール&レスポンスが次第に大きくなっていき、太陽が丘はケツメイシの支配下に。出演者はみんなそうだが、とにかく自分たちの世界にオーディエンスを引き込む力とスピードが尋常ではない。新曲「LOVE LOVE Summer」も、まだリリースされていないにも関わらずアッパーなビートとたまらなくキャッチーなメロディで惹き付け、オーディエンスは腕を振りながら3人と一緒に歌う。そして最後は「ボラーレ〜 Nel Blu, Dipinto Di Blu」という、これまた夏にドハマリの名曲で大合唱。暑さと疲れを吹き飛ばす、まるでビールのような最高のライブだ。

10-FEET

10-FEET

今年もまた終幕が近づいてきた。残りの時間を全力で楽しもうとする観客は、今にも溢れ出さんばかりの期待と興奮を胸に抱いて抑えつつ、その瞬間を待ちわびる。ちょうど太陽が沈んだ頃、10-FEETの3人がステージに登場。TAKUMAが「ぶっとばすからな!」と叫び、NAOKIが「行くぞ! 京都大作戦!」と気合一閃、「goes on」が開始。広い客席エリアは前から後ろまで隙間なく人で埋め尽くされ、その1人1人がわけがわからないほどにテンションを上げて暴れまくる。TAKUMAの煽りに全員が腕を上げると会場が腕の肌色で埋め尽くされる。こんな光景、他で見たことなし。

振り切れっぱなしのテンションのまま「その向こうへ」でその向こう側へと突入した太陽が丘は、「RIVER」で狂喜乱舞。会場の至るところでサークルが生まれては潰れていく。しかし何かが物足りない。そう、「RIVER」でKjが出て来なかったのだ。そんな我々の疑問に答えるように、TAKUMAが「あいつを見んと俺らの夏が終わらへん」と告げて「Fantasista」の演奏がスタート。Kjがステージに現れ、客席へと飛び込んで歌う。「1回しか言わねぇからな! 馬場育三と京都大作戦オールスターズにでっかい拍手を!」というKjの言葉で、でっかいでっかい拍手と歓声が空を埋め尽くす。

朝から後先考えずに全力で楽しみ、体力がほとんど残っていないであろう観客と10-FEETの3人は、まるで競い合うように自らの限界に挑戦する。TAKUMAが「限られた時間や。見せろ。普段おとなしいやつ。見せろ。ほんまは踊れるところ俺らに見せてくれ。手遅れなんてない。2回目の純粋、あるって」と叫んで「風」が始まる。2009年の京都大作戦で初めてTAKUMAが弾き語りで歌い、そして2011年に歌詞が“僕”から“僕ら”に変わった同曲。京都大作戦で聴くこの曲は特別だ。

本編最後の「4REST」では2万人が声を振り絞って歌い、アンコールではTAKUMAが「俺らが普段ライブハウスでやってる曲やります」と「back to the sunset」、そして最後は無数のタオルが宙を舞った「CHERRY BLOSSOM」。恒例となったKOUICHIの“絶対に1本では締まらない1本締め”で締めた後、TAKUMAが「年によっては来られへん人もおるやろうけど、白髪になるまで続けようと思います。ありがとうございました」と頭を下げた。

今年も全力で楽しんだ。ここに来ることができて本当によかった。10-FEETと出演者、運営してくださったスタッフや関係者、そして2万人のみなさん、ありがとうございました。

TEXT:Takeshi.Yamanaka
PHOTO:HayachiN / みやざきまゆみ

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