音楽メディア・フリーマガジン

東京カランコロン

ポップセンスと強烈な個性を同居させた音楽の秘密

 男女ツインヴォーカルが織りなすキャッチーな歌メロ、男性が綴った少女目線的な歌詞、定評のあるバンド感溢れるライブでその名を急激に広めている東京カランコロン。ポップセンスと強烈な個性を同居させた中毒性の高い音楽を生み出す彼らが、今年5月にリリースしたミニアルバム『あなた色のプリンス』に続き、バンドとして初めてのシングルをリリースする。今回はいちろーとせんせいの2人に、シングルのことはもちろん、その音楽性の秘密について迫った。

Interview

●「少女ジャンプ」は"シングル曲を作ろう"という意識で作ったんですか?

いちろー:そういう意識があったわけではないです。僕らは常に曲を作っているんですけど、ここ最近曲を作っていく中で「少女ジャンプ」がシングルっぽさを持っていたというか、「スパーン!」っていう感じがあったんですよ。

せんせい:「ラブ・ミー・テンダー」(『あなた色のプリンス』収録PV曲)もそうやったな。

いちろー:うん。「こんなに早く曲ができたことないな」っていうくらい安産で、前作とは曲の雰囲気も違うし、曲が持つ力があるなと思ってシングルにしたんです。

●確かに「少女ジャンプ」の歌とメロディは今まで以上にポップだと感じました。

いちろー:この曲はサビのメロディから作ったんですけど、その時点からちょっと激しいというかアップテンポなものにしたかったんです。イメージとしては"はやる気持ち"というか"止められない感じ"というか、"ノンストップ感"を出したくて。そういうイメージが最初にあって、そこから歌詞やアレンジ、細かい部分のアイディアまでどんどんいい具合に出てきて形になったんです。こういうリズムワークは僕らが割と得意とするところだし。

●メロはポップなんですけど、東京カランコロンというバンドはとても個性的な意外性のあるアレンジをするバンドでもあって。だから「少女ジャンプ」はポップさと個性の両方が濃く出た曲になっていますよね。あのギターの気持ち悪いフレーズとか…「気持ち悪い」って失礼ですけど…メロディに当たっているかもしれないけどすごくおもしろい。

せんせい:綺麗に整頓しようとはしないんですよ。ギターをメロディに当てるのが好きやんね?

いちろー:うん。感覚的に、僕とかはDeerhoofやBlurの『Blur』が好きなんですよ。例えば日本でああいう音楽をやっている人がいたら、誰かが「サブカルだ」と言うだろうし、そういう評価をされると思うんです。でも僕はそう思ってないというか、むしろかっこいいと思う。基本的な概念が違うのかもしれないんですけど、「でもかっこいいでしょ?」っていう感覚なんです。"気持ち悪い"というより"かっこいい"なんですよね。

●あ、"かっこいい"という感覚なんですね。

いちろー:そうですね。僕はその価値観を提示したいだけなんです。だから"敢えて変なことをする"という指向性ではなくて、自分たちのセンスとして"おもしろいよね"とか"これかっこいいよね"っていうものを提示している。

●表現として、自分のセンスや感覚に忠実であるからこそ音楽に個性が出ているんですね。…でも、さっき言ってましたけど"日本ではサブカルと評価されるかもしれない"という自覚はあるんですよね? ということは、いちろーさんは日本のシーンで活動していく中で、疎外感や孤独感、もっと言えば怒りみたいなものは感じたりしないんですか?

いちろー:うーん、若いころだったらそういう感情もありましたけど、音楽に限らず100人いれば100人ともみんなそれぞれセンスや好みは違うと思うんですよ。だから"怒り"みたいな気持ちは今更ないですね。自分たちのセンスを信じてやること以外は興味がないというか…それ以上無理して、自分の価値観をねじ曲げたり合わせたりしてもストレスになるだけだと思うし、最終的には自分にとって健康的じゃないと思う。

●活動を重ねていく中でそういう心境になったんですか?

いちろー:うーん、どうなんだろうね?

せんせい:前は「みんな消えればいいのに!」くらいに荒れてた(笑)。でも考えてみれば、ここ最近はそういうのが全然ないな。

いちろー:若いときってみんなそうじゃないですか(笑)。でもみんながそれをいいと思ってやってるんだったら別にいいんじゃないかと思えるようになったというか。

●なるほど。

いちろー:例えば僕らがめちゃくちゃストレートなことをやったとき、それがもしかっこいいと思えるんだったらそのままやると思います。そこで"敢えてストレートなことはやらない"という選択肢は自分の中にはないです。"おもしろい"や"かっこいい"と思ったものを選ぶっていう感じなので。

●なるほど。今作だと「ぽっかりsweet」の方が、さっき言っていたようなバンドの個性が色濃く出ていますよね。イントロと間奏とアウトロとかめちゃめちゃ大胆なアレンジで。

いちろー:僕はMaroon 5やスティービー・ワンダーも好きなんですけど、以前からそういう曲を作りたいなと思っていたんですよ。で、「ぽっかりsweet」のメロディがフッと降りてきたとき、"これだったらMaroon 5みたいな曲が作れるんじゃないかな"と思ってスタジオで作っていったんです。ブラックミュージックっぽい感じというか、自分的にはイントロとかスティービー・ワンダーのようなイメージがあるんです。

●だからアウトロで"ドゥワドゥワ"言ってるのか。

いちろー:わかんないですけど(笑)、いかんせん僕は小学校のころからJ-POPを聴いてきたという積み重ねがあるので、どうしてもブラックミュージックっぽくならないんでしょうね。自分の中ではダンスミュージックを作ったつもりなんですけど。

●あ、ダンスミュージックですか。

いちろー:「踊れるよね」っていう。

せんせい:でもこの曲でお客さんが踊ってるの見たことないよな(笑)。

いちろー:全然踊ってないね(笑)。

interview:Takeshi.Yamanaka

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