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赤い公園_編集部クロスレビュー

女子4人組“ポストポップバンド”がデビュー! [黒盤]と[白盤]から、その不思議な世界に迫る

女子4名による“ポストポップバンド”、赤い公園。2010年に高校の軽音楽部の先輩後輩同士で結成されたという彼女たちが、メジャーデビュー作を2枚に分けてリリースする。

ひりひりした[黒盤]こと『透明なのか黒なのか』と、きらきらした[白盤]こと『ランドリーで漂白を』。

そんな赤い公園の二面性を表した両作品に対して、編集長/副編集長による[黒盤]/[白盤]の各レビュー&何の脈絡もない10名のカオティックなコメント集で、JUNGLE☆LIFEなりに迫ってみた。

Review

ひりひりしてる副編集長(IMAI、32歳)による[黒盤]レビュー

あなたがいる世界と、不思議な赤い公園をつなぐ扉は今開かれた

初めて観た時から彼女たちは、“何か”違っていた。1年ほど前に某ライブハウスで出会った、赤い公園。白いドレス的な衣装に身を包んだ4人の女子、その姿はまだアングラ感が漂っていたように思う。だが、その奏でる音には仄暗い中にも、ポップな明るさがあった。闇の中でこそ輝きを増す光のように、小さなライブハウスからオーバーグラウンドの広い世界へと飛び出す可能性にきらめいていたのだ。
…とか言えばカッコつけすぎで大仰な感じがするが、強烈なインパクトを残されたのは事実なわけで。ストイックな音楽好きにも訴求しうる先鋭的なサウンドと、子どもから大人まで届きそうなポップネスが不思議なバランスで同居している。それはまさに[黒盤]を聴いた時の感覚と同じだ。彼女たちは僕の直感通り、この『透明なのか黒なのか』を手にメジャーというオーバーグラウンドのシーンへとやってきた。
ドアを開けるような音で始まるM-1「塊」は、彼女たちが新しい世界への扉をこじ開けた音か。いや、開いたのはもしかしたら逆に彼女たちの不思議な世界へと誘う扉なのかもしれない。とりあえず、その先には[白盤]こと『ランドリーで漂白を』が待っている。

きらきらしてる編集長(山中 毅、40歳)による[白盤]レビュー

すべての音がみずみずしくて、透き通っていて、痛々しくて

もしかしたら赤い公園のルーツは音楽ではなく、マンガとか映画とか携帯とかお母さんとか学校とか部活とか学園祭とか学校の帰り道に友達とマクドナルドで過ごした想い出とかなのかもしれない。曲の途中でびよよーんとかぽこんとか鳴ってるし、インタールードには男性の声や綱引きをやっているっぽいおっさんの掛け声が入っていて、斜に構えてオルタナティブロックをやっているのか、真面目にポップミュージックをやっているのかよくわからない。どちらとも言えるし、どちらでもないような気もする。
いろんな表情の楽曲よろしく、ヴォーカルは曲によって年齢や性格を変えていく。ほのぼの、あっけらかんとしていたかと思えば、急に大人になったり壊れそうになってハッとさせられる。それはまるで2012年の日常そのものじゃないか。いろんなものが楽しくて、悲しくて、辛くて、儚くて、良いものも悪いものも原色に見える日々。歌だけではなくすべての音がみずみずしくて、透き通っていて、痛々しくて。そんな感じがとてもいい。
特筆すべきはM-10「何を言う」。ピアノと歌声と言葉の美しさにうっとりしていたら、最後にはものすごいことになってびっくりした。衝撃曲。

ひりひりしてたり、きらきらしてたり、黒かったり、白かったり。色んな人たちに、赤い公園を聴いてもらいました。

「ヤバイ! 感動っていうか揺らぎました」
女子高生(18歳)

「どうして働かなくてはいけないのだろう? どうして生きなくてはならないのだろう? 赤い公園は、そんな疑問を抱えながら毎日生きていないんだろうな。赤い公園は、やりたい事やるべき事やった事で溢れてる」
匿名(元ひきこもり、29歳)

「普段はあまり音楽をしっかりと聴かないのですが、こういう機会を与えて頂き曲をじっくり聴きました。思ったことは一つ。ライブってどうやったら見れるんですか?」
スズキゴウ(消防士、27歳)

「混沌とみせておきながら、これは感覚の和声法だ、とおもった。もはや罵るように感情を迸らせてもその方法論はもはやサブでもカウンターでもない。この二枚はまっとうな「プロの音楽」だ。さあ、誰が喰らいつくんだろう」
chori(詩人)

「腹が減ったのでカップの天ぷらそばにお湯を注ぐ。僕はサクサクのまま天ぷらを食べるのが好きなので、まだカップに天ぷらは入れない。そうこうしているうちに、2枚の音源を聴き終えた。天ぷらを自分の好きなタイミングで食べるように、飾ることのないバンドだ」
赤木 潤平(立川市在住フリーター、26歳)

「不確かで常に揺れるメロディーに一点、確かにポップが存在する。濁りの無い白、下に何色も存在しない、透明の上に零された白色だと感じた。時に荒々しく、時にしとやかな中に不意に現れるキャッチーなフレーズに完全に心を奪われました」
椎名もた(ボカロP、17歳)

(聴き入りながら一言)「へんなのー」
女子小学生(2年生)

「えげつない社名の会社で事務員やってます。[黒盤]は掴みどころのないクレイジーな感じ、AVで言うと部位フェチ(尻など)作品のような風合いでした。[白盤]はポップでしたがやっぱり若干クレイジーなのでSM作品のよう。エロ変換しかできない私でございます」
石田 忍(企画ものAVの老舗メーカー・ビッグモーカル広報、27歳)

「聴き終えてなお鳴り続ける、そんな経験ありますか? 静と動、柔と剛。まるで予定調和を嫌悪するかの様に、溢れ出すアイデアを削がずにズラリと並べて見せたアレンジの妙。そして何よりも日本人の良心的歌心を携えて描き出す、このプログレッシブなポップ・ソングの数々に思わず夢うつつ」
山中 明(diskunion渋谷店サイケ/プログレ担当、33歳)

「“私はわがままのん気なひねくれ者よ!”というセリフの吹き出しが背中についてる女の子が現れた。女にしかわからないんじゃないかと思ってしまうようなその可愛げにくすくす笑ってしまう。いい気持ちでぽわーんと聴いてたら白盤最後の曲がすごかった。繰り返し繰り返し聴く。ささやき声のようなちいさな歌声が徐々に叫びだすとき、わたしの心はハッとする。そうだよ、そのとおりだよ。明るさの奥底にしまいこんでる影こそがほんとのわたしだよ」
編集長の嫁(40歳)

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