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黒猫チェルシー

攻撃モード全開、前のめりに突っ走る4人は誰にも止められない

 今年5月、1stフルアルバム『NUDE+』をリリースし、全国12都市のワンマンツアーを大成功に収めた黒猫チェルシー。

実り多きツアーを終えた4人は一瞬も立ち止まることなく、次のステージへと駆け上がるためのシングルを完成させた。

今までの経験を糧に、バンドの芯は更に太く荒々しく、そして表現力はより繊細かつ芳醇に成長させた黒猫チェルシーによる1stシングル。攻撃モード全開、前のめりに突っ走る4人の新たな一手に要注意!

Interview

「とんでもないものになるという意味での爆弾です。だから楽しみにしていてください」

●前作アルバム『NUDE+』のワンマンツアーが7月に終わりましたが、あのツアーはどうでした?

澤:初めて10曲以上のフルアルバムを作って曲も増えたので、今まででいちばんたくさんの曲数をやったし、『NUDE+』には色んなバリエーションの曲があったから、ツアーをやっていく中で曲自体が変わっていったり、最初スタジオでやっていたときとは解釈が変わっていったりして。

●自分たちの中でも曲の解釈が変わった?

澤:そうですね。演奏しているうちに。例えば「Hey ライダー」という曲は最初タイトだったんですけど、ライブを重ねていくウチにもっとアゲアゲな感じになっていったりとかして。「泥カーニバル」という曲も、タイトル通りドロッとしているイメージを僕たちは持っていましたけど、ライブでやってみると意外と盛り上がったりとかして。実際にライブで何度もやってみて、新たな発見があったんです。

●そういう反応は想像していなかった?

澤:そうですね。「泥カーニバル」とかもう少しダークなイメージだったんですけど、客席はけっこう「おおー!」となっていて。そういう刺激がすごくあるツアーだったと思います。

渡辺:僕は毎回ライブが終わったら映像を観て、"次のライブに繋げよう"とか考えたりしているんです。今回は初のワンマンツアーということもあって、1回1回のライブで"次はどうしていくのか?"ということを、自分だけじゃなくてみんなで考えながらやれたのが大きかった。今までそういうことをやってこなかったんですけど、1本1本をより大事にできたツアーだったと思います。
岡本:今までにないムードを持った曲が増えてきて、ライブの流れ方も今までと全然違ったんですよ。そういうライブを12カ所でやったので、ライブに対する感覚が変わったというか、色んな流れに自分の身体を持って行ける様になったという実感があります。

●あまり動じなくなったということ?
岡本:そうですね。

宮田:啓ちゃん(岡本啓佑)が言ってたこととけっこう近いんですけど、今までステージに上がってから「どうすんねん?」ってなっていたところが、あのツアーでは意識的にやれるようになって。だから質が上がった感じがありますね。やろうとしていることをしっかりやれたというか。

●実りの多いツアーだったんですね。

宮田:やっぱり『NUDE+』というアルバムを作ったことが大きかったのかもしれないです。あのアルバム制作を通して、メンバーひとりひとりが成長できた。

●『NUDE+』は1stフルアルバムということもあって、バンドとしてのひとつの区切りだったと思うんです。そこを目標にそれまで動いてきて、ツアーも無事終わった。「次はどうしますか?」というところで、バンドとしてはどう考えたんでしょうか?

渡辺:『NUDE+』は自分たちのできるバリエーション豊かなものを1枚の作品として作ったので、やっぱり「シングルを作ろう」となった時は色々考えたんです。アルバムは全体で自分たちを表現できるけど、シングルは1~2曲なので、だからシンプルで勢いがあって、自分たちが自然とできるものを求めたというか。黒猫チェルシーのテーマと呼べるものを作りたいと思ったんです。

●意地悪なこと言いますけど、シングルは黒猫チェルシーのイメージになかったんですよ。

渡辺:ですよね(笑)。僕らもあまり考えていなかったんです。それこそ『NUDE+』を作っていた時は、"シングルを出した後にアルバムを出す"という流れは自分たちに必要ないと思っていたくらいで。

●ということは、最初は戸惑いがあったんですか?

渡辺:戸惑いというか、"シングルの曲数で作品をまとめるというのはどういうことか?"とか、"シングルはどういう物であるべきなのか?"ということを考えました。何しろそれまでは考えたこともなかったので。

●なるほど。「アナグラ」はどういう経緯で出来た曲なんですか?

澤:『NUDE+』のツアーが終わって「曲出しをしよう」となった時に、すごくシンプルなものをみんなで演奏していたんです。なんとなくですけど直感的に"シンプルな方向かな"と思って曲を作り始めて。

●セッション的な感じで作り始めたということ?

澤:そうですね。そこから、僕らが結成当初からもともと持っていた要素とか、ライブで演奏していて"どういう曲が自分たちはしっくりくるのか"という感覚だったり…そういうことを突き詰めていって。で、スタジオで色々素材を撮ったりしている時に「アナグラ」ができたんです。

●ふむふむ。

澤:そういう経緯でストレートな曲になったんですけど、最初は『NUDE+』の後ということもあったから、「バリエーション豊富なアルバムの後に出すシングルがストレートな曲ってどうなんやろう?」と思ったりしていたんです。でも、レコーディングしていく中で面白い曲になったという手応えがあった。

渡辺:ライブのテンションみたいなものは曲自体が持っているかもしれないけど、レコーディングではライブの勢いを収める感覚だけじゃなくて、もうちょっと遊び心を入れる感じでやったんです。

●イメージなんですけど、「アナグラ」という曲は"ストレート"というのがひとつの形容かもしれないけど、生命力に溢れているというか、喉が渇いている感じというか。

渡辺:それは意識しました。

●え? 喉が渇いている感を意識した?

渡辺:そうですね。

一同:(笑)。

●ホンマかそれ? (笑)

渡辺:最初はもう喉が渇いてる歌みたいな感じで…。

●うわ、乗っかってきた(笑)。

宮田:でも決してそれだけの曲ではないという感じに仕上がったから、この曲は満足度が高いんです。そういう"ガーッとやったれ!"みたいなことだけではなく、今の自分たちから出てきた遊び心も含めて収まっているのが、自分で言うのもあれですけど「ようやったな」という(笑)。こういうものを作れるんだなと思いましたね。

●もともと黒猫チェルシーは遊び心をすごく持っているバンドだと思うんですけど、カップリングの「マタタビ」にもそういう要素は上手く入ってますよね。

渡辺:「マタタビ」は歌詞の造形というか並びが壺みたいな感じじゃないですか。実は今まででいちばん気に入ってるんですよね。

●歌詞の並びが壷? なんだそれ?

渡辺:歌詞カードに歌詞がバーッと並ぶじゃないですか。その形が…(※長くなったのでカット)。
※補足説明:渡辺は以前から、歌詞カードで1曲の歌詞(文字の塊)が作り出す造形の美しさにこだわって作詞をしていた。「マタタビ」の歌詞(文字の塊)は壷のような形をしていて、今まででいちばん満足度が高いらしい。渡辺曰く「たまらん」とのこと。

●「マタタビ」はどういう経緯でできた曲なんですか?

渡辺:いつも思いついた言葉とかをノートにメモしているんですけど、岳ちゃん(宮田岳)が最初のネタを持ってきた時、そのメロディにメモしていた言葉を当てはめてみたらしっくりきたんです。それですんなり形になった曲ですね。歌詞はもともと何行か書いてあったので、それにサビとBメロの部分を付け足したんです。

●宮田くんが最初に持ってきたネタはどういう状態だったんですか?

渡辺:最初からほぼ今の形に近かったんです。既に"ミラクル"っていう言葉も入ってて。

●え? 入ってたの?

渡辺:鼻歌みたいな感じで歌メロが入ってたんですけど、サビの"ミラクル!"のところだけ何故か歌詞が入ってました(笑)。

●アハハハハ(笑)。

宮田:最初にノリとかリズム感みたいなアイディアがあって、感覚的なところであまり考えずに作ったんです。"ミラクル!"もその時点で感覚的に歌ってたんですけど、結果的にそのまま採用されました。

●さっき澤くんが「アナグラ」について「レコーディングしていく中で面白い曲になったという手応えがあった」と言ってたじゃないですか。今までの経験によって、レコーディングとかスタジオで表現できる幅みたいなものが広がってきたんでしょうか?

澤:ちょっとわかってくることとかはありますね。"もっとこういうことができるんじゃないか?"とか、"次はもっとこうやろうか?"みたいなこととか。

●レコーディングはスムーズだったんですか?

澤:すごくスムーズでした。特に「マタタビ」は1時間かからんかったんちゃう?

宮田:そうやな。

●めっちゃエコやん。

一同:エコ(笑)。

澤:歌以外は1時間ちょっとぐらいだったんですよ。楽器録りはすごく早かったですね。

●イメージをみんなでスッと共有出来たんですね。

澤:特に「こういうサウンドのイメージで」とか話したわけではないですけど、でもなんとなく最初にスタジオで合わせた時から、"こういう感じの音かな?"みたいなイメージが各自あったからスムーズにいきました。

●感覚的と今おっしゃいましたけど、両曲とも感覚にけっこう直結している感じなんですかね?

宮田:骨組みはそうだと思います。肉付けのギターとかコーラスは、いい感じに美しくしようという。

●この2曲ができあがって気になるのは、黒猫チェルシー今後どうなっていくのか? というところなんですよね。おそらく近い将来に次のアルバムが控えていると思うんですけど、どうなっていくんでしょうか?

宮田:爆弾ですね。

●は? 爆弾?

渡辺:とんでもないものになるという意味での爆弾です。だから楽しみにしていてください(笑)。

澤:アルバムのコンセプトを作るわけでもなくて、どういうやり方で作るとか話し合うわけでもなくて、それぞれが思いついたことをやるだけっていう。その中で、「爆弾みたいなアルバムにするにはどの曲を入れようか?」という感じ。だからまだわからないですね。でも、前作よりももっといいアルバムになるんじゃないかという予感がしていて。
岡本:共通点としては、みんな完全に攻めモードということです。

●バンドとしていいテンションなんですね。今日の発言も攻めに攻めてるというか、「歌詞の並びが壷」とか「爆弾」とかインタビュアー泣かせのわけわからん発言も飛び出したし。

一同:アハハハハハ(笑)。

●リリース後はツアーがありますけど、どういうツアーにしたいと思っていますか?

渡辺:今回新曲が2曲ということもあって、ちょっと今までと違う雰囲気でできればいいなと考えていて。今も既にこの2曲を入れたセットリストでライブをやったりしてるんですけど、そのセットリストにもうちょっと新しい曲を入れられたらなと思っています。

●あ、未発表の新曲をこのツアーでやろうと?

渡辺:そうですね。先手を打つじゃないですけど、新しい黒猫チェルシーを見せることができたらなと。どれだけ形になるかわからないですけど、爆弾ですよね(笑)。

●それ「爆弾」って言いたいだけやん。

Interview:Takeshi.Yamanaka
Edit:HiGUMA

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