音楽メディア・フリーマガジン

たんこぶちん

女子高生バンド、卒業。新たな旅立ちへと弾みをつける集大成的1stアルバム

AP_tankob佐賀県唐津市在住の現役高校3年生5人組ガールズバンド、たんこぶちんが初のフルアルバムをリリースした。昨年7月にメジャーデビュー以降、“ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013”をはじめとする数々の夏フェスにも出演を果たすなど、短期間に注目度を一気に高めてきた彼女たち。そういった貴重な経験も着実に吸収しつつ、地元では日常の学生生活も送る中で作り上げられたのが今回の作品だ。中学生の頃に初めて作ったオリジナル曲から、元チャットモンチーの高橋久美子やプリンセス プリンセスの中山加奈子といった豪華作家陣の手による曲まで、バラエティ豊かな全12曲を収録。小学6年生で結成してからの7年間の集大成でもあり、未来への期待感と覚悟も感じられる1枚となった今作について、MADOKA(Vo./G.)に話を訊く。

 

 

●初のフルアルバムが完成したわけですが、学校もある中でのレコーディングは大変だったのでは?

MADOKA:レコーディングは夏休み中に始まって、土日も使ったりして。学校が終わった後に、福岡のスタジオで歌入れしたりもしましたね。去年の7月から11月後半までやっていたんですよ。4ヶ月って長いんですけど、終わった時は「もう終わったんだ」というか…まだ続きそうな感じがしていました。すごく楽しかったです。

●場所は福岡が多かった?

MADOKA:福岡以外にも、沖縄や東京でも録りましたね。あと、藤沢で合宿レコーディングもしました。

●沖縄でも録ったんですね!

MADOKA:“The 7th Music Revolution”沖縄大会にゲスト出演した時に、ついでにレコーディングもしようということになって。スタジオがすごく広かったです。近くに色んなお店があったので、ハンバーガーやタコスを食べながら楽しくやれましたね。あと、美ら海水族館にも行きました(笑)。

●沖縄を満喫しながら、作業できたと。

MADOKA:夏休みが始まってすぐに行ったんですけど、その時が今回で一番最初のレコーディングでした。沖縄ではM-2「カラフルスニーカー」をレコーディングしましたね。

●「カラフルスニーカー」はトロピカルな雰囲気の音が入っていて、南国っぽいなと思っていました(笑)。

MADOKA:あれはスティールパンの音をシンセで弾いているんですよ。今回収録するにあたってアレンジしてもらった時に、あの音が加わって。元々のバージョンとは全然アレンジが違っていて、リズムからガラッと変わっているんです。

●この曲は、中3の時に初めて作ったオリジナル曲なんですよね。

MADOKA:そうなんです。初期からライブでもよくやっていたんですけど、その時のアレンジとは全然違っていて。色んな音も加わっているし、間奏にはみんなでリフを弾くところもあって楽しいですね。

●レコーディングでは緊張しなかった?

MADOKA:ギターはみんながいる前で録るので、ちょっと緊張します(笑)。1人でブースに入るわけじゃなくて、ミキサー卓の後ろで録っているんですよ。プロデューサーの鎌田雅人さんが横にいて「ちょっとやってみようか」と言われたものを弾いてみたりして、その場でアレンジも変わっていくんです。リハーサルで練習してきたものとは結構変わることが多いですね。

●M-3「ソラノナミダ」は、最初に書いていた歌詞から変えたそうですが。

MADOKA:変えましたね。アレンジしてもらったものを聴いた時に、元々の歌詞だとちょっとイメージが違うなと思って。YURI(G.)と2人で全部書き直しました。

●歌詞の内容自体も変わっている?

MADOKA:元々の歌詞は、悩んでいる人に対して「私がいるから大丈夫だよ」という内容だったんです。それを「一緒に頑張っていこう」という感じで背中を押せるような歌詞にしたいなと思って、書き直しました。

●他にも歌詞を書き直したものがあるんでしょうか?

MADOKA:M-11「走れメロディー」は歌入れをしている最中に、結構変えましたね。歌詞全体が春夏秋冬の流れになっているんですけど、最初は色々と説明を詰め込みすぎてしまっていて。ゴチャゴチャしていてわかりにくかったので、もっとわかりやすい表現になるように直しました。

●この曲はメンバー全員で歌詞を書いたんですよね。

MADOKA:この歌詞は、学校や地元に対する気持ちを書いていて。“卒業”をテーマに5人それぞれが書いてきた歌詞を、パズルみたいに組み合わせて作ったんです。

●ということは元々、歌詞が5パターンあったと。

MADOKA:そうですね。でも“坂道”とか“友達”や“ありがとう”という言葉はみんなが使っていました。この曲は地元のことをテーマにしているので、友達や地元の人たちへの感謝といった気持ちがこの曲を聴いていると込み上げてきます。

●地元には坂道が多いんですか?

MADOKA:みんな、学校が坂の上にあるんですよ。他にもたとえば“自販機のミルクティー”というのは私の中でHONOKA(Dr.)をイメージしていて、“たい焼きを分け合って”はYURIをイメージして書きました。

●メンバーをイメージしたフレーズも入っているんですね。「走れメロディー」という曲名はどんなイメージから?

MADOKA:サビの歌詞はYURIが書いてきたものが反映されているんですけど、最初はこの言葉が入っていなくて。私が書いてきた歌詞に“メロディー”という言葉があったので、それを組み合わせた感じですね。あと、「走れメロディー」という曲名にしたら、『走れメロス』にもかかっていて面白いかなと(笑)。

●そういうことですよね(笑)。自転車で登校中に鼻歌を歌っていたりするイメージとも重なっているのかなと思いました。

MADOKA:よく歌っていましたね。学校からの帰り道はほとんど人通りがなくて周りも工場ばかりだったので、普通に歌いながら帰っても誰にも聴かれる心配がないから(笑)。

●中山加奈子さんの作詞によるM-10「We Gonna ROCK」は、ライブでみんなが歌っているイメージが浮かびます。

MADOKA:ライブでは「We Gonna ROCK」の掛け声を、みんなで一緒にやれたらいいなと思います。去年に福岡と東京、大阪でやったワンマンではライブ中にM-7「シアワセタランチュラ」の掛け声を練習したんですよ。大阪が一番声が大きくて、しかもCHIHARUの誕生日が近かったのでお客さんが「ハッピーバースデー」を歌ってくれたりして嬉しかったです。

●そんなエピソードがあったんですね。「We Gonna ROCK」はハードロック調で、今作の中でもちょっと異色な感じがします。

MADOKA:異色ですね。YURIは激しい曲調が好きなので、こういうタイプも1曲入れたいと言ってきて。この曲はYURIがリフを考えて、私がメロディを付けたんです。テンポも速いし、他の曲よりもテンションを上げて勢いよく歌っています。基本的に録ったものをそのまま使っていて、後から直していないのですごくライブ感が出ているんじゃないかな。

●この曲のように、歌詞だけを他の人に書いてもらうパターンは珍しいですよね?

MADOKA:初めてでした。最初は自分たちで歌詞を書こうとしていたんですけど、何を書いたら良いのかわからなくなって…(笑)。それで中山さんにお願いしました。

●M-5「闘うばい!」とM-8「唇はもっと」は、元チャットモンチーの高橋久美子さんの作詞ですが。

MADOKA:チャットモンチーが好きなので、高橋さんに書いてもらえて嬉しかったですね。「闘うばい!」は佐賀弁なんですけど、最初の歌詞は関西弁で書いてあって。それを私たちが普段使っている方言に変えたらいいんじゃないかと、高橋さんから言って頂いて書き直したんです。

●「闘うばい!」の歌詞は地方から東京に出てきた人の気持ちが描かれているので、共感できる部分も多かったのでは?

MADOKA:「目と目合った 背けないで笑って」とか「ぶつかった ごめんねって嬉しい」「地方だって いろいろあるっちゃん」というところはすごく共感できましたね。でも「渋谷駅 甘栗って名物と?」や「新宿は 黒服の行進」というのはよくわからなかったです(笑)。

●まだ東京に住んでいるわけじゃないですからね。東京への憧れや上京したい気持ちはある?

MADOKA:いずれは出てみたいと思いますけど、憧れは…そんなにないです。唐津のほうが騒がしくないので、のんびりできるっていうか。東京はみんなせかせかしているから…。何でも揃っているのは便利だと思いますね(笑)。

●もう1曲、高橋さんの作詞した「唇はもっと」はどんな印象でした?

MADOKA:大人っぽい歌詞なので、最初はすごく難しいなと思いました。「闘うばい!」とは対照的な感じで、歌詞の内容を理解するのが難しかったんです。強く言っている感じがしたので、自分も強気で歌うようにはしましたね。

●自分で書いていない歌詞だと、感情移入するのが難しい場合もありますよね。

MADOKA:そういう時はイメージトレーニングをして、自分なりに解釈するようにしているんです。M-12「そんなに遠くない未来に」は最初にデモをもらった時に、仮歌がすごく大人っぽい声で。今までこういう感じの曲を歌ったことがなかったので、「私で大丈夫かな?」と思いましたね(笑)。最初に自分で歌ってみた時は、全然この曲の切ない感じが伝わってこなくて…。だからレコーディングまでに頑張って、イメージトレーニングしたんですよ。自分が高校を卒業して地元へ戻ってきて、道を歩いている情景を思い浮かべながら歌いました。

●曲調も切ない感じですよね。

MADOKA:この曲はイントロがピアノ始まりなので、CHIHARU(Key.)は「責任重大だ!」と言って練習をずっとしていました(笑)。私自身にとっても、初めてのスローな曲調だったんですよ。この曲を歌えたことによって、今後またこういう曲に出会っても迷わず歌えるかなと思います。

●この曲を今作のラストにしたのは、曲調や歌詞のイメージから?

MADOKA:M-1「ドレミFUN LIFE」が最初で、「走れメロディー」〜「そんなに遠くない未来に」が最後というのは全員一致で決まっていたんです。明るく始まりたかったので「ドレミFUN LIFE」を最初にして、最後の2曲はストーリー的なところを意識しましたね。「走れメロディー」は卒業までを歌っていて、「そんなに遠くない未来に」は卒業後やこれからのことを歌っているから。

●高校を卒業するのは、やっぱり一大イベントという感じ?

MADOKA:まだ卒業するっていう実感はないんですけど、やっぱり大きいですね。小学校や中学校の卒業式でも泣いちゃったので(笑)。

●アルバム全体としても“卒業”がテーマになっているんでしょうか?

MADOKA:それもテーマになっていますね。最初に作ったオリジナル曲も入っているので小学6年生からバンドをやってきた7年間の集大成でもあり、“卒業してからも頑張っていくぞ”というアルバムになっているかなと思います。

●今後への期待感も感じられる作品なのかなと。

MADOKA:それはありますね。楽しみな感じやウキウキ感は出ているかな。発売前からラジオで流してもらったりしているのを聴いて、“この前まで自分たちしか知らなかった曲をみんなに聴いてもらえるんだ”ということにドキドキしています。

●ジャケット写真も、未来に向かって走っていくような印象があります。

MADOKA:この写真の他にメンバー全員でジャンプしている写真があって、どちらも良かったので悩んだんですよ。最終的にみんなでじゃんけんして、こっちに決めました(笑)。

●これは実際に走っているところを撮ったんですか?

MADOKA:走りました。最初は重なってしまったりして、難しかったですね。YURIはおじいちゃんみたいな走り方だったりして(笑)。何回も走った中で、奇跡の1枚が撮れたと思います。

●付属のDVDにはジャケット撮影時のオフショットも入っているんですよね。

MADOKA:今回のものは入っていないんですけど、これまでシングル2枚のジャケットを撮った時のオフショットが入っています。それぞれに色々なエピソードがあるので、楽しみにしていてほしいですね。あと、「シアワセタランチュラ」のミュージックビデオは90秒のショートバージョンしかYouTubeにはアップされていないので、今作を買った人だけがフルバージョンを見られるんですよ。“宇宙人”のシーンが初めて公開されるので、それも楽しみにしてほしいですね(笑)。

●“宇宙人になりたい”という歌詞の部分が、映像でどう表現されているのかもお楽しみにと(笑)。リリース後には“卒業ライブ”が予定されています。

MADOKA:“今まで応援してくれてありがとう”という気持ちもあるんですけど、“これからもよろしくね”という想いもあって。ライブはいつも楽しいものにしたいと思っているので、そうなるように頑張りたいなと思います。新曲もやる予定なので、これから猛練習ですね(笑)。

●最後に卒業後の目標をどうぞ!

MADOKA:これまでの自分たちの良いところは変わらずに持ち続けて、どんどん成長していきたいです。卒業して環境も変わるので、感じることや思うことも変わっていくと思うんですよ。そういうものをたくさん曲にしていきたいですね。

Interview:IMAI

  • new_umbro
  • banner-umbloi•ÒW—pj