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BLUE ENCOUNT

これまでの軌跡とこれからの希望が詰まった最高の1stフルアルバム

プリントここ1〜2年でのBLUE ENCOUNTというバンドの躍進ぶりは、まさに目をみはるものがあった。2012年4月に発表した2ndミニアルバム『HALO EFFECT』以降から徐々に支持を受け始め、翌年1月に会場限定で発売したEP『SIGNALS』は1000枚を完売。飛躍への予兆を感じさせたとおり、同年6月の3rdミニアルバム『NOISY SLUGGER』リリース後は各地の夏フェスに参戦し、強烈な話題とインパクトを沸き起こしていった。11月には盟友MY FIRST STORYらと共にスプリットアルバム『BONEDS』を世に放ち、今や新世代インディーロックの寵児となった彼らだが、ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。いや、それどころか普通のバンドには想像もつかないような苦難の道のりだったと言えるだろう。そこを乗り越えてきたからこそ、今の彼らがあるのだ。2014年2月、満を持して発売される1stフルアルバム『BAND OF DESTINATION』には、これまでの軌跡とこれからの希望が詰まっている。感動と衝動に満ちたライブパフォーマンスを想起させるような、熱すぎるインタビューにぜひ目を通してほしい。

 

「過去の曲がたくさん入っているのに、未来が想起できるような作品になったんじゃないかな。過去曲が一切、過去を見ていないっていうか。完成してみて、僕ら自身も驚いているくらいです」

 

●最近はすごく良い状況にあるわけですが、BLUE ENCOUNT(以下、ブルエン)は元々すごく苦労してきたバンドという印象があって…。

田邊:苦労しかしていないですからね。体力的にも精神的にも…もう全部(笑)。余計な苦労が多かったんですけど、それが今になって実を結んだとは思っていて。僕らはとにかく闇雲にライブをしていた時代があったんですよ。

辻村:1年中ツアーみたいな感じでした。

●確かにすごくライブをやっていた印象があります。

田邊:地方のライブハウスに行っても、「ブルエンはまた来月も来るからいいでしょ?」くらいに思われていて。だからこそ付いてきてくれたお客さんもいるんですけど…、まあ動員は増えませんでしたね。

●ライブが多いわりには反響が少なかったと。

田邊:僕らも万全の体制で行けていなかったですからね。ツアー先に移動しては車中泊して…という感じで。学生時代にバンドとして夢見ていたことが全部ただの夢でしかなかったことを実感した時代というか、理想と現実が全く一致していなかった。

辻村:あの時はあの時でもちろん全力でやっていたんですけど、何か手応えがなくて。だから自分たちでもしょうがないと思っていたんですよね。「バンドとしてこんな状態だから、こうなって当然だ」と思って、ただひたすら耐えている感じでしたね。

●バンドとして苦難の時期があった。

田邊:僕らには“魔の2年間”というのがあって…。2010年に初めての盤(1stミニアルバム『the beginning of the beginning』)を出して、その年はそれを売るために必要なことなんだと受け止めてドサ回りみたいなツアーをしていたんです。今思えば最初の1年は他力本願な感じで、「誰かが何とかしてくれるだろう」と思っていたというか。でも次の年になっても新しいCDが出せなくて、「このままじゃ売れないな」と気付いたんですよ。そこからが地獄の極みというか、メンバーともすごくケンカしましたね。I-RabBitsとMISSPRAYと一緒にまわらせてもらったツアーが転機で…。

江口:福岡の飯塚っていうところでライブ後に、ちょうど2対2で意見が分かれてケンカになったんです。これまではケンカといっても無言の圧力みたいな感じで口には出さなかったんですけど、その時初めてバチバチやり合って。その時に初めて“4人サッカー”という言葉が生まれたんですよ。

●“4人サッカー”?

江口:「“4人サッカー”で行こうよ!」って(笑)。

辻村:「4人で1つのボールを蹴ろうよ」っていうことですね。そこから僕らの中で、その言葉がテーマになったんです。

田邊:その翌日がちょうどツアー最終日だったんですけど、当時の状況の中ではすごく良いライブができたんですよ。

●本気でぶつかり合ったことで、良い方向に行けた。

田邊:その後にircleとSUPER BEAVERと3バンドでスプリットツアーをまわった時にも、自分の中で転機があったんです。その2バンドは地方でも固定のお客さんがいたし、ライブ力もすごかったので自分たちとの実力差を眼前に叩きつけられて。物販でも2バンドの前にはすごい行列ができているのに、僕らの前には誰も並んでいなかったんですよ。

辻村:あれが一番悔しかったよね。

江口:力の差が歴然と見えて。しかも同世代なんで、余計に悔しかった。

●そこでの転機とは?

田邊:事情があって、大分のT.O.P.Sには僕らだけが出られなかったんです。でも店長さんの計らいで、僕が1曲だけ弾き語りで歌わせてもらえることになって。その時に「誰よりも。」というバラードを歌ったら、会場で1枚だけ僕らのCDが売れたんですよ。そこで自分のボーカルという生き方にすごく自信が持てたし、メンバーの間でも“もっとボーカルを大切にしなきゃいけない”という意識に変わっていったんですよね。さらに次の日はすごく良いライブができて、3バンドの中で一番CDが売れたことでもまた1つ自信が持てました。

●そのあたりから手応えを感じ始めてきた?

田邊:その日のライブは「もう細かい音や演奏とか関係なく、気持ちを前面に出してやってみよう」という感じだったんです。そしたら物販でもCDが売れたので、「やっぱり、こっちのほうが自分たちには合ってるんじゃないか」となって。今思えば、それまでは音やMCにも気持ちが乗っていなかったのかなと思うんですよ。それからライブに対する価値観が変わってきましたね。でも動員は全く増えなかったんですけど…。

●まだ大きな反響はなかったと。

田邊:実はまだ今までのライブに毛が生えたくらいだったのに、僕らの悪い癖でその時の現状に満足してしまったんですよね。それでナアナアのまま過ごしていたら、2011年の末に辻村が急に「辞める」って言い出して。そんなこと思ってもいなかったので、「ええっ!?」と。

江口:予兆はあったんですけど、僕らは気付けなかったんですよ。

辻村:逆に自分からは「なんで気付かなかったの?」っていう感じだった(笑)。そこで「俺はこうだと思ってるんだ!」ということを一気に吐き出したんです。

●溜まっていたものを吐き出したわけですね。

田邊:2年分の溜まってたものを全部言われたので、僕らもぐうの音も出ないというか。そこで我に返ったし、本当の意味でメンバーに気を遣ってやれていなかったんだなと気付いたんです。でもその時点では既に2枚目のミニアルバムをやっと出せることが決まっていて、もう「どうしよう?」というので頭が真っ白になって…。その時に発した一言目が「いや、ちょっと考え直してくれんか?」だったので、辻村もビックリしていましたね(笑)。

辻村:自分としては「じゃあ、他の人を探すわ」と言われると思っていたので。

●辻村くんにとっても予想外の反応だった。

田邊:その時に言ったのが「次のCDを出した後に2ヶ月に渡るツアーがあるから、そこまでで終わりにしないか?」ということで。僕ら自身も半信半疑だったんですよね。次のCDで状況を変えられると半分は思っていたけど、変わらないんだろうなという気持ちも半分あって。そこまでの2年間で何も変わっていないという、負の実績があったから(笑)。

江口:だから、そこまでに状況が変わらないんだったら、1回キリをつけようということになったんです。

●そこで2012年の4月にリリースしたのが、2ndミニアルバム『HALO EFFECT』だったわけですよね。

田邊:何とか無事にリリースできて、お店でも展開に力を入れて頂いたりして。M-4「HALO」のMVの再生回数がすごく伸びたりして、お客さんが少しだけ増えたんです。

江口:そこから少しずつだけど、光が見えてきましたね。全国32本のツアーをまわったんですけど、その途中で今のマネージャーさんから連絡をもらってツアーファイナルを観てもらったんです。

●そして、今に至る流れが生まれたと。

江口:ツアーファイナルの翌日から不思議なくらい色んな方から声をかけて頂いたんですけど、最終的に今の事務所でやることを決めて。そこから本当に物事が良い方向に回るようになってきましたね。

田邊:まず2013年1月のワンマン(@渋谷O-Crest)がSOLD OUTして、そこからお客さんがどんどん増えていったんです。去年はフェスにもたくさん出させて頂きましたし、気付いたら年末のワンマンツアーもSOLD OUTしていて、本当に最高の1年だったと思うんですよ。スタートラインにようやく立てた1年だったので、今年からやっとスタートダッシュできるな…というところで、2/5に初のフルアルバムをリリースします!

一同:ハハハ(笑)。

●でも今思えば1stミニアルバムのタイトルは“始まりの始まり”という意味だったわけで、去年1月のEP『SIGNALS』は“予兆”で、その後に6月の3rdミニアルバム『NOISY SLUGGER』でカッ飛ばして、今作を迎えるわけですよね。まるで全てを予見していたかのような…。

江口:言われてみれば、確かにそうなっていますね(笑)。

田邊:今回はその集大成として、“目的地”(『BAND OF DESTINATION』)というタイトルなんですよ。目的地へ向かう途中で生まれた色んな絆を1枚にまとめたいなって。だから、いわゆるベストアルバム的な位置付けもあるんですけど。

●過去の作品に収録されている名曲たちを再録しているんですよね。

江口:新たに作った3曲以外は基本的にそうですね。

田邊:去年出した音源に収録していたものに関してはミックスでちょっとニュアンスを変えたくらいですけど、あとはガッツリ再録させて頂きました。レコーディングは、去年の『NOISY SLUGGER』発売前後から開始していたんですよ。そこで一気に過去曲を再録したことによって、自分たちの曲を見つめ直せたところもあって。新しいCDが出てツアーをまわるっていう時に、自分たちの気持ちがすごくブラッシュアップされましたね。

●ブルエンの“武器”みたいなものがわかりやすく詰まった作品だと思いました。

田邊:まさにそうですね。ライブでやる曲ばかりを選んだから。これから新たに知ってもらうお客さんも含め、色んな人に対して「下手は打てないな」というプレッシャーはありました。だから余計なリアレンジはせずにライヴでやっているイメージそのままに録ったので、非常に攻めている感じがするんですよ。ライブでやる定番曲だからこそ、録る時は気合の入り方が違いましたね。

●ライブで磨かれてきた分、曲の強度も増しているのでは?

田邊:良い意味でも悪い意味でも、前は衝動でやっていた部分があったんです。でも今回のレコーディングでは、そこも1つ見直せたところで。昔の音源と聴き比べたらわかるんですけど、同じことをやっていても全然違う曲に聞こえるんですよね。「HALO」なんかは特に攻め方が全然違うというか。元々はギターロックからエモへ進化する過程という側面が強かったんですけど、今回の「HALO」はエモさ全開で、繊細に弾いているところでさえも攻めている感じがするくらいなんです。

辻本:何かもう、迷いがない感じがする。

●吹っ切れた感じというか。

田邊:前作までの録音ではまだ色々と探りながらやってきたんですけど、今回はそこを超えられたんですよね。それはやっぱりライブをずっとやってきたからこそというか。「HALO」やM-5「HANDS」といったライブでも定番中の定番みたいな曲を、ちゃんと音源で表現できたなと思います。今までは“ライブを思い出す1枚”になっていたと思うんですけど、今回は“ライブへの欲求を駆り立てられる作品”になったんじゃないかな。

●ブルエンのライブが観たくてたまらなくなるような作品になっている。

田邊:やっと「BLUE ENCOUNTはライブバンドだ!」って言えるようになりました。今までもそう言われていたけど、自分の中では釈然としないところがあって。そう思えるようになったのは自信がついたからだし、だからこそこういう音源を録れたというか。あと、今までの曲に負けないものが作れたという自負もあって、今作は最初と最後に新曲を入れたんです。やっぱり1つのストーリーとして聴いて欲しいので、こういうセットリストで作ったんですよ。

●ライブのセットリストをイメージした曲順になっているわけですね。

田邊:ライブというところは意識しまくりましたね。この曲順で、本当にライブがやれますから。

●ライブこそが自分たちの“居場所”というか。新曲のM-2「DESTINATION」やM-15「PLACE」の歌詞にも出てくる、この“居場所”という言葉が今作のキーワードなのかなと。

田邊:僕らにとって、音楽っていうのが“居場所”だから。居心地が良くて、つらい現実から逃げられるような場所を自分たちが作っておきたいということを去年は、1年間考えながらやってきたんです。その結果、12/19の渋谷O-WESTではあれだけの人がブルエンを居場所だと思って集まってくれたことで、本当に「バンドをやっていて良かったな」と思えた。よく「ぼっちで参戦」って言うじゃないですか? でも僕らはその人が「1人じゃない」って錯覚するくらいの場所を作れたらなっていう想いがあって。これからの展望としては「Zeppから武道館、スタジアムへ」という感じでバンドとしてはどんどんステップアップしていきたいんですけど、その先でもお客さんの目線に立った時に「1人でも全然怖くない」って言える場所にしたいんです。

●自分たちのライブを、1人であることを感じさせないくらいの場所にしたい。

田邊:僕らもつらい時期には4人でバンドをやっているはずなのに、1人になってしまっていた時代があって。「4人がいて強くなれる。1人じゃないんだ」なんて、まさかこのバンドをやっていて感じるとは思ってもいなかったから。それをいつまで経っても伝えていきたいなって思うから、“居場所”っていう言葉が歌詞にもよく出てくるし、キーワードになっているんでしょうね。

●今作はこれまでの歴史を総括しつつ、新たなスタートを切るような作品になっていると思います。

田邊:本当にそうですね。過去の曲がたくさん入っているのに、未来が想起できるような作品になったんじゃないかな。過去曲が一切、過去を見ていないっていうか。完成してみて、僕ら自身も驚いているくらいです。

●では最後に直近の未来ということでツアーに向けての意気込みを、ここまで全く喋っていない高村くんに語ってもらえたらと(笑)。

高村:今回のツアーではまた1つキャパを上げて、東京では渋谷CLUB QUATTROでやるんです。僕らは少しずつキャパを大きくしていって、その都度SOLD OUTすることで“みんなと一緒に登っている”ということを感じたいんですよ。それを6月のツアーでは体感しに来てほしいなと思っています。

田邊:一生忘れないような日にする自信はあるので、ぜひ来て下さい!

●結局、田邊くんが喋るのか…(笑)。

高村:でも気持ちは4人とも一緒なので。

江口:僕らは彼(田邊)が言った間違いを途中で修正する係なんです。

一同:ハハハ(笑)。

Interview:IMAI
Assistant:馬渡司

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