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amenoto

社会からこぼれ落ちた孤独でネガティヴな魂が すべて、憂鬱な夜のために紡ぎ出した音と言葉

AP_amenoto“徹底的にネガティヴ”というタイトルで今年1月号から始まった本誌連載でも、少なからず興味を抱いていた読者も多いだろう。全詞曲を手がけるVo./G.石井翠のソロプロジェクトとして、2013年初夏より始動した“amenoto(アメノト)”。UKロック、ポストロック、オルタナティヴ、シューゲイザーなどを基盤に鳴らされるダークなサウンドは、エモーショナルでありながらどこか乾いている。その根底にあるのは、まだ23歳という彼女の心性にあるのは間違いないだろう。社会からこぼれ落ちた孤独でネガティヴな魂が、自らの生を切り刻むように激しく切なく歌い上げる。そんな楽曲たちを生み出す“石井翠”とは、一体どんな人間なのか? 処女作となるデビューミニアルバム『すべて、憂鬱な夜のために』のリリースを前に、パーソナルな部分も含めた彼女の深層に迫ったスペシャル・インタビュー。

●今回が初のミニアルバムとなるわけですが、作る上でのイメージはあったんですか?

石井:曲はもう少しあるんですけど、明るいものは外して選んでいきました。明るいよりも暗いほうが好きなので、(作品として)暗いものにはしたかったんです。

●一応、明るい曲もあるにはあるんですね。

石井:人には「明るい」って言われないですけど…(笑)。やっぱり同じような曲ばかりだと似ちゃうから、たまにはちょっと違うものを作ろうかという感じですね。

●逆に言えば今作に収録した曲はどれも暗いけれど、何らかの違いはあるということでは?

石井:違う“暗さ”みたいな…。原因が違うというか。

●自分でも暗いというのは自覚している?

石井:人に「暗い」って言われるから、暗いのかなって。

●“暗い”といっても、たとえばリストカットしちゃうような感じではないですよね。

石井:そんなことしたら注目されちゃうじゃないですか…。

●注目されたくない?

石井:放っといてくれたら良いのに…って思います。周りに優しくされたら自分も優しくしなきゃいけないのかなと思ってしまうので…、あんまり優しくしないでほしい。

●それはM-1「ハーモニー」の“優しさに溺れ いつも いつも死にそうだ”という歌詞にも出ていますね。

石井:学校にいた頃は、いつもそういう感じでした。自分じゃなくて、誰かが周りにかまわれているのを見かけても“怖いな…”って思っちゃう。

●周りとの関わりや協調性を強制される感じが嫌だった?

石井:無理やり、そういうふうにしてほしくない。だから、“協調性”という意味で、「ハーモニー」というタイトルにしたんです。

●“僕らには もう 僕ら さえなくて”という歌詞は、集団の中で個別の自我が奪われていくことを表現しているのかなと。

石井:(集団に)取り込まれていくというか…。はみ出したものは全部、矯正されていっちゃうから。

●M-3「仲間はずれ」でも“溶けて混ざっていく人々”と歌っていますが、そうはなりたくないわけですね。“仲間はずれ”になるのが嫌ではない?

石井:無理して友だちを作るよりは、全然いいです。

●無理に仲間に入ろうとは思わないと。

石井:できないから、もうあきらめようっていう。よく「変わっているよね」とか言われるんですけど、“何でかな?”って思います。変わっているというより、少数派なんじゃないかなと。

●ということは、自分は“まとも”だと考えている?

石井:実際、そこですごく悩んだ時期があって。大勢の側ではないので、自分がおかしいのかなとも思ったんです。でもそうだとしたら自分がおかしいんだと思っていること自体もおかしいのかもしれないから…、もう自分がまともで周りがおかしいことにしようと思いました。

●だから、“仲間はずれ”になるのも平気だと。

石井:逆に“私は何で今まで、(仲間はずれになることが)そんなに嫌だったのかな…?”という感じです。

●そういう心境になれたのは?

石井:学生じゃなくなってから…かな。それまでもやんわり思ってはいたんですけど、確信を持って“そうだ!”と思うようになったのはそこからですね。“あんまり無理しなくてもいいな”って。

●「仲間はずれ」の歌詞は“ひとりでも、いいよ”と言い切っている。

石井:それまで歌詞をやんわりと抑えすぎていたので、この曲では変えてみようと思ったんです。

●それまで歌詞をソフトに抑えていた理由とは?

石井:全部を直接的に言ったら、歌詞が耳に入りすぎてうるさいっていうか。ストレートに言うのがあまり好きではなくて。雰囲気も出ないし、自分が聴く側だとしたら歌詞を読んで考えたいから。“これは何なんだろう?”と思いたい。だから、ぼやけていたほうがいいなと。

●聴いた人に想像の余地があるほうが好きだと。

石井:はい。“どう取ってくれてもいい”という感じです。

●M-7「ぼくは、ぼくら。」の“投げ出したい言葉 そればかり”というのはどういう意味?

石井:“言いたいことはあるけどなぁ…”っていう。それをどう言ったらいいのかわからないので、“じゃあ、言わない”ってなるんです。

●それは上手く表現できないから言わないという意味か、思ったことをそのまま言うと周りに引かれるからという意味のどちらでしょう?

石井:どっちもあります。最初は普通に思ったまま言っていたら、周りが“何それ?”みたいになって。“じゃあ、言うのはやめておこう”となっているうちに、どうやって伝えたらいいのかわからなくなって…。それでずっと喋らない感じになっちゃったんです。

●言いたいことはあるけど、他人への伝え方がわからない?

石井:“どう文章を組み立てたらいいんだろう?”という感じで。その場ではまとめられないんです。中学・高校で全然喋らなかったので、“どうやって会話するんだっけ?”という感じになった部分もあると思います。“どう話したらいいんだろう?”と考えちゃうというか…。

●昔は明るかった時期もあるんですよね。

石井:小学4年生までは明るかった…はずです。

●それが変わるキッカケは何だったんですか?

石井:本を読みだしてから、そっちのほうが楽しくなっちゃって。自分の頭の中にあることで“これは何なんだろう?”と思っていたものが、本を読んでいると“ああ、そういうことか!”とわかったりするんです。

●好きな作家に挙げている伊藤計劃の作品『ハーモニー』が、今回の同名曲の由来になっていたりもする?

石井:それを読んで色々と考えたことから作りました。“自分はこういうことが言いたかったんだな”というのがわかったので、“自分だったらこう言うな”っていうことを歌詞に書いたというか。

●本を読むことで、自分の中にある感情が何だったのか気付くというか。

石井:そういうことが結構あります。

●そして、それを表現するために音楽をやっているわけですよね。

石井:はい。…喋れないので(笑)。

●喋れない分、自分の中には溜め込んでいる?

石井:…日記みたいなものは書いています。人に話すと“お時間を取らせて申し訳ありません”という気持ちになってしまうので(笑)、ノートに書いて“はい、おしまい!”という感じですね。

●そのノートに普段書いていることが、歌詞にもつながるんでしょうか?

石井:書いていることをそのままは使えないんですけど、雰囲気は近いと思います。

●基本的に悲しかったことや嫌だったことについて書いている?

石井:そうですね。でもよかったことも書いているかもしれない…。いや、書いていないかな? …書いてあったらいいな(笑)。

●ハハハ(笑)。いつ頃から書き始めたんですか?

石井:大学の時に書き始めたんですけど、途中で一度やめたりしながらまた書き始めて…という感じです。ずっと書いていたわけじゃなくて、1年くらいは空白の期間がありますね。

●その空白の期間は何かがあった?

石井:大学1年の時は真面目に通っていたので、講義の課題に追われていて忙しかったんです。だから書く機会もなかったんですけど、1年の終わり頃に“もう無理だ”となって。

●そうなった原因とは?

石井:高校で一緒にやっていた子たちとは(進学で)バラバラになっちゃったので、大学でまた新しくバンドを組もうと思ってサークルに入ったんです。でもオリジナル曲でやりたいという人がほとんどいなくて…。やりたいことが全然できないし、何とかバンドを組んでも全然上手くいかなくて、“もうダメだ!”と。そこで“もう楽しくないな”となっちゃった。大学も人が多すぎて嫌だし、“もう無理だな”っていう…。

●それで大学を中退して、音楽専門学校に行ったんですよね。

石井:大学の時に音楽から一度離れた時期があって、そこからどんどん自分がダメになっていったんです。だから(音楽を)やっていたほうがいいんだなと思って。音楽をやっているほうが、(他のことも)頑張れる。音楽をやっていなかったら、ただの引きこもりとかニートになっている気がします(笑)。

●一般社会の中では生きづらい感じというか。M-6「雨を待つ」の“生きているだけで泣きたくなる日々を”という歌詞はすごく象徴的な気がします。

石井:“生きているって素晴らしい”みたいな歌が多いけど、“そういうの、勘弁してほしいな”って思うんです。そこから始まった曲ですね。“幸せ”って当たり前のものじゃないのに、“何でそういうことを言うんだろう?”って思うから。

●“前を見て歩いていけない”という歌詞も、よくある“振り返るな。前だけを見て進め”みたいな曲とは正反対ですよね。

石井:そうすることで、今までのことを忘れちゃったら嫌だなって思うから。

●苦しかったことや悲しかったことも含めて、過去のことを忘れてしまいたくない。

石井:大学時代は嫌なことがあった時に、家で布団をかぶって大音量で音楽を聴きながらよく泣いていたんです。そういう時に聴けるアルバムにしたかったので、今回は『すべて、憂鬱な夜のために』というタイトルにしたんですよね。

●自分と同じような気持ちを抱えている人に聴いてほしい?

石井:そういう人もいるはずだし、…いてほしいと思います。自分の周りにはあんまりいなかったので、どこかにはいる…と願いたいですね。

●リリースしてからの反応が楽しみでは?

石井:楽しみ…というか、怖いです(笑)。でもどっちもあるかな。批判でも別にいい。無責任な批判は嫌ですけど、ちゃんとした批判なら別にいいというか。実際にライブを観た人がメールをくれたりするのはありがたいですし、これからもっと反応が増えるとうれしいですね。

Interview:IMAI