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攻め続ける生粋のライブバンドの新たな衝撃作

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「自分はこういう人間だっていうことがバレちゃった方がいいというか、バレるバレないというところを心配している場合じゃない。とにかくいい曲を書きたい」

●昨年7月にリリースしたミニアルバム『さよならリリー』のツアーファイナルが11月に渋谷O-WESTでありましたが、すごくいいライブでした。ライブバンドらしい、熱くて激しくて気持ちが伝わってくるステージで。

河内:ツアーはすごく濃かったんですね。全部で50本くらいやったんですけど。

●え? そんなに多かったっけ?

ショウダ:最初は30本くらいの予定だったんですけど、増えちゃって(笑)。

河内:このツアーで感じたのは、ライブ1本1本の価値を見い出せるようになってきたかなって。今まで、ライブはライブ、みたいな感じだったんですよ。

●は?

仲道:すみません、ちょっと日本語が下手なので(笑)。

●哲学みたいな話かと思った。

河内:どこでやろうがライブはライブ、という感覚だったんですけど、このツアーでは1本1本の価値というか、その日にそこでやる意味とか理由みたいなものを見い出せるようになってきたんです。

ショウダ:対バンとかも含めて。

●その日は二度と無い、という部分で。

河内:ツアーは本数が多いから混沌とするかなと想像していたんですけど、そんなこともなく。そういう感情面での変化を感じたツアーでした。

ショウダ:初めて行く土地とか初めて出るライブハウスが多かったんですよ。そういう意味でも得るものは多かったですね。

伊井:演奏面もかなり変わったという実感があって。バンド自体がどんどんストイックになってきているというか。それは今作のレコーディングにも言えることなんですけど、なあなあで終わっていた部分が、ツアーくらいから変わってきたかなと思います。

仲道:より「4人で」という意識は増えてきたよね。演奏面もそうだし、ircleはそれぞれの我が強い部分もあるんですけど、自分たちを俯瞰して見ることができるようになってきたのかなって。そういうことをちゃんと具現化できるようになってきたのは最近なんですけどね。

●以前はもっと好き勝手にやっていた?

仲道:無意識的にというか、割と身体から出たものをそのままやっていて、それが4つ集まってircleになっていたんでしょうけど、その純度が高まっているし、“高めるためにどうしたらいいんだろう?”と考えたとき、調和感みたいなものを意識し始めたというか。

●その“調和感”というのはすごく納得するんですけど、メンバーの共通認識があるからこそ、何が起こるかわからないドキドキする度合いも強くなっている気がしたんです。同じことをやっていたとしても、観るたびに印象が違うんですよね。ライブに事件性がある。

伊井:10年以上一緒にやっているから、言わずもがなで共通認識みたいなものはできていると思います。今はヴォーカルが攻めてるから自分は下がるか、みたいな。それは誰に対してもそうですけど、空気を読みつつというか。以前はメンバー全員がちょっとKYだったんですよ。

●その絶妙なバランスが事件性に繋がっていると思うんです。全員が好き勝手にやればバラバラになるし、共通意識だけでやっていたらつまらなくなる。

河内:共通しているのは、みんなが意識を前に飛ばそうとしている部分で。内側の爆発を、みたいなタイプのライブではないと思うんです。昔だったら俺がドラムセットに突っ込んだりしたこともあったんです。「事件性」と言われたように、“何かやらかしてやろう”という想いは昔から変わっていないんですけど、同時に“届けてやろう”という気持ちが揃ったんだと思います。

●なるほど。ところで今回リリースとなるシングルですが、もう表題曲のタイトルからびっくりして。『失敗作』…自分の感情を込めることができないと歌えないという河内くんらしいタイトルではあるんですが、ちょっと出し過ぎやろ(笑)。

一同:ハハハハ(笑)。

河内:もともとM-2「セブンティーン」をタイトルチューンにしようかという話をしていたんです。

●「セブンティーン」はライブ映えするircleらしい楽曲ですよね。

河内:そうそう。わかりやすいロックチューンだから表題曲にしようということで作っていたんですけど、そしたら「もうちょっとおもしろいことしよう」となって。

●予想を裏切ろうと。

河内:聴き手だったらいい意味で裏切られたいし。そういう話をしつつ、M-1「失敗作」を録ってたんですよ。それで「これいいじゃん」って。イメージはガラッと変わるんですけど。

●今までのグイグイ攻める感じではなく、ちょっとミドルな曲調ですもんね。それに歌詞を読めば“失敗作”というタイトルの意味はわかるんですけど、「次の新作は『失敗作』です」と聞いたときの衝撃がすごい。「え? 失敗作出すの?」という。

一同:ハハハ(笑)。

ショウダ:やっぱり歌詞を聴いて、俺らも「これでいこう」となったんです。

伊井:でもパンチがあるタイトルですよね。

河内:作品のことを“失敗作”と呼ぶということ自体、そもそも考えてなかったんです。

●あ、発想すらなかったのか。

河内:でもタイトルチューンになって、逆におもしろいなと。

●「失敗作」はすごくいい曲だと思うんですが、歌詞の内容としてはダメな自分を“失敗作”と呼んでいる、要するにひどい内容で(笑)。

河内:両親にも謝りました。「あなた方が悪いわけではないです」って。

●ハハハハ(笑)。

河内:そしたら母ちゃんは逆に「いや、結構あんたはいい作品ではないかも」って言われました。

一同:アハハハハハハハ(爆笑)。

ショウダ:やべぇ(笑)。

●この曲おもしろいな(笑)。この歌詞の内容はリアルなことなんですか?

河内:そうですね。まとめですね。自分のひどい部分のまとめ。

ショウダ:河内の失敗の部分のまとめ。「悪いところを一旦整理しとこう」と(笑)。

●でも、それをさらけ出す勇気がすごいと思う。

仲道:たぶん誰にでもある部分だと思うんですけど、でも普通は言えないし出せないですよね。

●うんうん。

ショウダ:誰もがそういう部分を隠して生きているわけじゃないですか。それを河内はさらけ出しているという。

河内:そこまでかなぁ?

●すごいな(笑)。

仲道:河内のモードが、この曲を作っているときはこういう感じたったんですよ。

●いつ頃作ったんですか?

河内:去年の年末くらいです。

●最近じゃないですか。

河内:いやいや。この曲で歌っている女性とは、もう何年も前にお別れしました。長くお付き合いしていたんですけど。

●ということは、めっちゃ引きずってる。

河内:いやいやいやいや(笑)。その間にも色んな失敗がありましたし。

ショウダ:きっと1人だけではないんでしょうね(笑)。色んな経験があってできた曲という(笑)。

●ハハハ(笑)。なぜこういうことを書こうと思ったんですか?

河内:自分の中で、自分のダメな部分をどうにかしたいという想いが常々あって。どうにか誠実な人間であろうっていう。そういう曲にしたかったんです。でも、そういう曲ばかりですよ。自分のダメな部分やネガティブな気持ちをどうにかしたいっていう。それを時には人に置き換えたりして歌詞にしているんですけど。

●そんな中で「失敗作」は自分のことをストレートに歌った曲だと。

河内:それも特に考えたわけではなく、自然に自分のことがストレートに出てきてしまった感じというか。特に隠すつもりもないんです。むしろ自分はこういう人間だっていうことがバレちゃった方がいいというか、バレるバレないというところを心配している場合じゃない。とにかくいい曲を書きたいんです。

●お。

河内:みんなが持っているようなところをちゃんと曲に書きたい。バレることを恐れている場合じゃないし、もっと言えば気にしたこともないです。今から考えたら「バレちゃった」と思うようなことばかり歌詞にしてますね(笑)。

●心の真ん中に近いものばかりを曲にしていると。それは誠実なことですね。

河内:曖昧なことを言ってもしょうがないじゃないですか。

●そういう意味でも河内くんらしい曲ですね。あとM-3「カゼサイテデリコ」はアッパーで爽やかな雰囲気のある曲ですが、どういう経緯でできたんですか?

伊井:デモの段階では「デリコ風」という仮タイトルだったんです。

●え? やっぱりそういうこと? 全然LOVE PSYCHEDELICOっぽくないですけど。

河内:「デリコ風」な曲にしちゃうとありがちですけど、全然LOVE PSYCHEDELICOっぽくないから、逆にタイトルをLOVE PSYCHEDELICOっぽくしたらおもしろいんじゃないかなって。良は逆にLOVE PSYCHEDELICOを意識して作ったつもりらしいんです。

ショウダ:でも僕なんかは全然通ってないので、「デリコ風」とか言われても全然イメージに沿えなかったです(笑)。

●ハハハ(笑)。LOVE PSYCHEDELICOを意識したというのは、幅を拡げたかったんですか?

仲道:そうですね。まずアイディアとしては、最初のコーラスみたいなフレーズが浮かんだんです。あそこをみんなで歌いたいなと思って、LOVE PSYCHEDELICOからインスパイアされて作ったというか。今までこういう軽快な感じの楽曲はあまりやってこなかったんですけど、でもいいかなと。

●新しいものを採り入れたいというか、可能性を拡げたいという想いは常にあるんでしょうか?

4人:ありますね。

河内:「ircleといえばこうだろう」みたいなイメージはかなり固まってきていると思うんです。

●今作でいえば「セブンティーン」みたいな。

河内:そうそう。バンドの個性みたいなものは固まってきている実感があって。だからそれ以外のところでは思い切りやりたいですね。

仲道:真ん中の幹がどんどん太くなってきているから、遊びの部分を思い切りやってもとっ散らからないというか、いい遊び方ができるようになりました。

●そしてリリース後はツアーがありますが、アルバムツアーに比べると今回はやや少なめですね。

ショウダ:色んなお誘いがある中、この本数にするのは苦渋の決断でした。

河内:キラキラのツアーにしたいですね。今作の曲も当然やりつつ、まだ発表していない新しい曲も色々とやろうと思っています。

interview:Takeshi.Yamanaka

 

 

 

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