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儚く脆くあっけなく散っていく覚悟をまとい、 遙かなる天空へと突き抜けていく永久の弾丸

アー写main結成から10年目を迎える2014年、最初のリリースとなるニューアルバム『GALLOWS(ギャロウス)』をlynch.が完成させた。昨年に発表した前作『EXODUS-EP』では、バンドが本来持っている凶悪なまでに魅惑的な“ダークネス”を解放した彼ら。それによって次なる次元へと到達することを予感させたとおり、最初から最後まで中毒性を秘めたキラーチューンが続く最高傑作となっている。激しさ、美しさ、そして人の心を捉えてやまない妖しさ。10年という歴史の中で研鑽してきた比類なきオリジナリティが理想的なサウンドクオリティによって表現された今作こそ、まさしく彼らの“代表作”と呼ぶに相応しい。そんな1枚の発売を祝して、メンバー5人全員に訊く10,000字スペシャル・インタビュー。

 

Special Interview #1

「僕からすると、(歌っていることは)どれも一緒なんですよ。切り取る角度や視点が違うだけで、全部が“生まれて死ぬまでにどう生きるか”ということを歌っていて。その中でも今作は特に“ヤバいぞ”っていう気持ちが出ているのかもしれない」

●前作『EXODUS-EP』リリース時のインタビューでは「次のフルアルバムではバンドの幹となるものを作れたら」ということをおっしゃられていましたが、当時から次作のビジョンは見えていたんですか?

葉月:大体は見えていましたけど、まだ曖昧な感じでしたね。前作で軸になるものを作れたので、そこから広げていきたいなというくらいで。作品ができていくに従って、どんどん見えてきたという感覚です。

●曲作りの過程で、ビジョンを明確化するキッカケになる曲はあったんでしょうか?

葉月:曲ができていった順番というのは当然あるんですけど、“これを軸にしてアルバムを作っていこう”みたいなキッカケになる曲はなかったんですよ。M-5「ENVY」とM-7「MERCILESS」は『EXODUS-EP』制作時にはあった曲で、そのレコーディングが終わって最初に作ったのがM-2「GALLOWS」とM-13「PHOENIX」だった。次にM-3「DEVIL」ができて、あとはMERRYとまわった去年秋のツアー中に作りましたね。でも作っている間は“これで良いのかな?”という感じで、ずっと手探り状態だったんです。

●なかなか確信が持てなかった。

葉月:「(今作を)絶対に勝負作にしなきゃいけない」とは思っていたけど、そのキッカケになるような曲がなかったから不安でしたね。でも出来上がった時に“これは絶対に大丈夫だ”と思えるような逆転現象があったんです。

●前作のレコーディング後にまずできたのがタイトル曲の「GALLOWS」だったわけですが、それがキッカケになったわけではない?

葉月:僕にはそういう意識はなかったですね。結果的にはそうだったのかもしれないけど、“じゃあ、こういう感じの曲を作っていこう”というものではなかったから。

●“絞首台”という不吉な意味を持つ“GALLOWS”をアルバムタイトルにしたのは、何か深い意味があるんでしょうか?

葉月:不吉ですよね(笑)。最初は単純に“GALLOWS”という字面が良いなと思って、辞書で意味を調べてみたんですよ。そしたら“そんな意味だったんだ!”というところでのインパクトがまず第一にあって。あと、今回のアルバムに対する僕らの意気込みとして、背水の陣のような気持ちで腹を括ったというところもあったんです。そういうところでもイメージがつながったので、良いかなと思ってこのタイトルにしました。

●「PHOENIX」の歌詞に出てくる“此処に生きて 此処に死ぬ”という言葉も、そういった覚悟を感じさせるものかなと。

葉月:元々そういう歌詞は多いんですけど、この曲はKくん(2012年末に急逝したPay money To my Painのボーカリスト)がキッカケになった曲なんですよ。ああいうことを経験したことで、“生きているだけですごいことなんだな”と思うようになって。元々“どうせ死ぬんだから、ちゃんと生きていないとアカンでしょうが!”という歌詞が多かったんですけど、その色がより濃くなってきた気がするというか。意識が変わったのかもしれませんね。

●前作収録の「BE STRONG」もKさんについての曲でしたよね。

葉月:あれは彼(K)に向かって歌っている感じでしたけど、「PHOENIX」は彼が亡くなったことを受けて“じゃあ、自分はどうするんだ?”という歌詞ですね。

●自分の覚悟を問いただすような歌詞という意味では、「MERCILESS」も近いものを感じます。

葉月:これも“背水の陣ソング”ですね(笑)。でも僕からすると、(歌っていることは)どれも一緒なんですよ。切り取る角度や視点が違うだけで、全部が“生まれて死ぬまでにどう生きるか”ということを歌っていて。その中でも今作は特に“ヤバいぞ”っていう気持ちが出ているのかもしれない。“もっと気張れよ、お前”っていうことを自分に言っている感じはありますね。

●勝負作や背水の陣という意識はメンバー全員にあったんですか?

一同:………(沈黙)。

葉月:そうでもないみたいです(笑)。

●ハハハ(笑)。本当に…?

悠介:いや、今年で10年目を迎えるんですが、僕の中ではまだまだ成長の途中段階だなと思っていて。でも“ここでドカンとインパクトのあるものを出さないと”という気持ちはあったので、制作時にはプレッシャーも感じていましたね。そういった意味では、背水の陣だったのかなと。

明徳:10年目に出すフルアルバムということで、やっぱり気合は入りましたね。気分を引き締めて、“みんなで同じ方向を向いてやっていくぞ”という意識が今回はすごく高かったんですよ。それが“背水の陣”という表現にも当てはまるんじゃないかな。

●良い作品を作るためにというところでのプレッシャーは全員が感じていた。

明徳:プレッシャーはありましたね。“最高のアルバムを作るために”というところで、今回も全員で曲作りをしようということになって。でも作っても作っても自分の中でボツにしちゃっている間に終わっちゃいました…(笑)。

●前作に続いて、今回もメンバー全員での作曲に取り組んでいたと。

玲央:曲作りに手は付けていましたけど、自分の中で“ちょっと違うな…”という想いがあって。“こういう作品にしたいな”というイメージが先にあって、自分から出てくるものがそこではなかったんですよ。あと、他のメンバーが得意とするところが色濃く出るようにということを考えた時にも、“違うな”っていう感覚がありましたね。

晁直:僕も一応作ろうとはしたんですけど、(lynch.として出す)クオリティに達するにはあと何年かかるかなっていう感じで…。

葉月:たぶん、それぞれに自分の中でハードルがあって、そこを超えられなかったんでしょうね。今回は「ENVY」とM-12「RING」が悠介くんの作曲で、あとは僕なんですよ。かといって他のメンバーの曲を却下したわけじゃなくて、単純に(候補曲が)出てこなかったという(笑)。

●悠介さんの2曲は前作の「BE STRONG」に引き続き、ミドルテンポでメローな曲調が特徴的ですよね。

悠介:そういう曲しか作れないんで…(笑)。でも激しい曲やリフものの曲なら、葉月くんがクオリティの高いものを作れるわけだから。それと同じものを自分が目指すのは違うし、無理して作ることもないなと。

●だから、自分の中から自然と出てくるものを形にしたと。

悠介:「RING」に関しては自分の中でイメージがあって、落ち着いたスローテンポな曲に葉月くんの声が乗ったら絶対に良い曲になるだろうなというのがあったんですよ。「ENVY」は前作の時から一部のパーツだけはあったものを引っ張り出してきて、新たに再構築しました。メンバーとも色々とやりとりして元になるものを作って、そこからアレンジしていったんです。どちらもアルバム全体のイメージを考えて作ったわけではないけれど、流れの中で良いフックになっている気はしますね。

●葉月さんの曲とは違う色を持つ悠介さんの曲が、アルバムの中での良いフックにもなっているのでは?

葉月:そういう部分はありますね。1人で作っている時からフックという部分は意識していたんですけど、やっぱり作る人が違うほうがフックになりやすいだろうから。「ENVY」は、最初に聴いた時に「なんてイヤらしい曲なんだ」と思ったんですよ。イントロからもうドロドロのねちっこさが印象としてあったから、「歌詞では遊べそうだな」と思って楽しみにしていました(笑)。

●イヤらしい感じといえば、M-4「GREED」の歌詞はすごくエロチックで…(笑)。

葉月:これはもう、ただのアホですから(笑)。

●ハハハ(笑)。Twitterではこの曲の「パチ男っぷりがすごい」とつぶやかれていましたが。

葉月:それはベースのスラップがすごいという意味ですね。スラップをする時、僕は彼(明徳)を“パチ男くん”と呼ぶんです。

明徳:そう呼ばれるようになりました(笑)。

●確かに最後のスラップはゴリゴリでしたね。

葉月:アウトロのパチ男具合がもう…(笑)。

明徳:最後、急にスラップが現れるんですよ(笑)。ミックスの時にも「もっと上げよう! もっと上げよう!」という感じで(ベースのボリュームが)どんどん上がっていくので、自分でも「良いんですか?」って心配になるくらいで(笑)。でもベースを前に出す狙いがあってのフレーズなので、ああいう展開にできて良かったなと思います。

●歌詞にも遊び心が溢れているというか。“継続する絶頂(アレ)のような”という言葉遊びも面白いなと思いました。

葉月:う〜ん…言葉遊びと言って良いのかな? 言葉遊びっていうのは、もっと高度なものだと思うんですよ。これはそんなに良いものじゃないです(笑)。この曲はまずインチキ英語で仮歌を歌って、そこに日本語の歌詞を当てはめていったんですよ。日本語で歌っているんですけど、英語みたいな感じに聞こえるようにするという挑戦でしたね。

●日本語で歌うと、どうしても歌謡曲っぽいメロディになるのは避けられないですよね。

葉月:今までは僕もそれをできていなかったので、今回は初めての試みでやってみました。あとは「GUILLOTINE」の“ヒトにゃ関係ないこったし”という歌詞で“にゃ”というのを使うのも、僕にとってはすごい勝負だったんです。「“にゃ”で本当に良いのか?」っていう(笑)。

●“〜こったし”というのも、今までの歌詞ではあまりなかった表現かなと。

葉月:でも“ことだし”って言っちゃうと、違うんですよね。“ことだし”でも歌えるんですけど、それだと日本語がちょっと耳に付きすぎる。字で見ると身近すぎる表現な気もするけど、歌うと“こったし”のほうがハマるんですよ。これも日本語として聞こえすぎないものを目指した結果ですね。

●日本語に聞こえすぎない歌詞や歌い方を意識していた?

葉月:日本語が日本語として耳につきすぎると、喋っているみたいに聞こえちゃうので今までは嫌だったんです。でも今回は、喋り口調みたいな歌詞もすごく多いんですよ。というのは、実はそうしたほうが逆に言葉の聞こえ方は英語に近かったりして、メロディに乗せやすかったからなんですよね。他でそういう言葉を使っているバンドも少なかったですし、やってみようと。

●自分にしか書けないようなオリジナリティのある歌詞というか。

葉月:“激しいロックサウンドなんだけど、サビだけは日本語で歌謡曲的なメロディ”みたいなスタイルにはどうしても二番煎じ的なところを感じていたし、海外至上主義的な視点からは“そういうものはニセモノだ”という印象もあったので頑張って英詞を書いたりもしてきたんですよ。でも“それで果たして自分を100%出せているんだろうか?”ということは考えていて。ふと気付けば周りも英語で歌っているバンドばかりになっていて、これは英語で歌詞を書いている場合ではないんじゃないかという気がしたんです。

●最近のラウド系シーンのバンドは英詞がメインですからね。そこで歌詞に対する考え方も変わったんですか?

葉月:今までは日本語で書くのが嫌だと思っているところがあったので、かなり抽象的な歌詞だったんですよ。でも日本語で書くと腹を括ったなら、わかりやすい表現もバンバン入れていったほうが(インパクトも)強いわけで。「じゃあ、そうしよう」と心を決めて書いたから、今までとは全然違うんですよね。

●メジャーデビュー当初は、歌詞に深い意味はないと公言されていましたが。

葉月:そこから今回は、“意味がわかる歌詞”という感じになりましたね。今まで好きだった人からしたら“ここまで思い切ったか”と言う人もいるだろうし、英語の音楽しか聴いてこなかった人からしたら“日本語って面白いな”と思ってもらえるかもしれない。ちょっと不思議な感じになっていると思うし、“個性”として1つ掴めたかなと。

Special Interview #2

「10周年だからどうだということは、あまりなくて。何年で辞めると決めているわけでもないし、ずっとやり続けようという想いでやってきて今が10年目というだけだから。“10年も経ったんだから、これくらいのものは作れなアカンでしょ!”っていう感じですね(笑)」

●歌い方も意識的に変えた部分はあったんでしょうか?

葉月:今回はもう何も意識せず、自然にやっていましたね。日本語が多いので、やっぱり歌いやすかったんですよ。英詞だと発音のほうに意識が引っ張られちゃうんですけど、それがないことによってストレスなく良い感じに録れたと思います。でも(全英詞の)「MERCILESS」も良い感じに録れましたけどね。今まで録ってきた英詞の歌のテイクでは、これが一番好きです。

●今回、全英詞はこの曲とM-10「MAD」だけですよね。あと、「GALLOWS」も前半は英詞ですが。

葉月:シャウトがやっぱり日本語だと難しくて。そこもいずれクリアできたら良いんですけど、別にシャウトが英語じゃダメというわけでもないからそのままで良いといえば良いかなと(笑)。

●シャウト・パートが減ったわけではないんですが、以前よりも刺々しくない印象があって。今作はハードかつヘヴィでありながら、すごく聴きやすく感じられました。

葉月:昔のほうが耳に痛いシャウトをしていたとは思いますね。そこは喉の使い方だったり、自分の中でも明確に違いがわかっていて。以前とはシャウトの仕方も違うし、録っているマイクも違うし、ミックスの音も違うんですよ。あと、サウンドクオリティ自体も今回は圧倒的に高いので、聴きやすさが全然違うんじゃないかな。

●サウンド自体の質も今まで以上に高まっている。

玲央:元々、僕らはケバケバしい感じの音よりも、上質な音のほうが好きなんですよ。それを今回、ちゃんと形にできたのはうれしかったです。

●葉月さんはTwitterでも「ずっとこんな音にしたかった」とつぶやかれていましたね。

葉月:特にドラムのことですね。(こちらに向かって)音が飛んでくる感じや立体感を出したいということは、ずっと前から言っていたんですよ。今回は初めて一緒にやるエンジニアさんだったんですけど、その方とがっちりハマった感じで。ヘヴィでハードなロックを得意とする方だったので、深いところまで説明をする前に「こういう感じね。わかった」と言って下さったんです。

晁直:(やりたいことを)理解してくれる人だったということが一番大きかったですね。僕らの理想をすんなり具現化してくれたので、すごくありがたかった。

●エンジニアさんの役割も大きかった。

葉月:一発録りしたものをそのままリリースするようなバンドではないので、エンジニアさんの役割が重要になってくるんですよ。相当作り込まないとダメだから、エンジニアさんにかかる部分は大きいですね。

●作り込まれている部分もありつつ、今作は人間味を感じさせる音にもなっていますよね。

葉月:歌詞や歌い方、サウンドだったり全部がそうだと思うんですけど、“人がやっている”感じを今回は強く出したかったんです。ドラムは打ち込みに頼らず実際に叩いているし、そういう空気感は自ずと入ってくるものなんですよ。どれだけ録り直そうが、人間がやっているものだから。あと、今回は特にコード感というところを、ギターの2人にはお願いしていて。

●コード感というのは?

葉月:ヘヴィでストレートなバンドだったらパワーコードでジャーンと弾いたほうが前に音が飛ぶんですけど、今回はそうじゃなくて。ゴシックな雰囲気の音を得意としているバンドって、ややこしいコードを押さえたがるんですよね。そういうところをあえて取り入れたというか。僕らも元々そういうものを得意としていたし、そこにもう1回注目したんです。だから2人には“パワーコード禁止”と言って、複雑なコードでやってもらいました(笑)。

●あえて複雑なコードを取り入れたんですね。

玲央:僕の中では、そこまで複雑なコードだとは感じないんですけどね。過去の作品に比べると、“広がりを作るにはどうしたら良いか”というところに重きを置いて考えました。今まではユニゾンで押し切ったり、僕と悠介で別々のものを弾くというアプローチが多かったんですけど、今回は2人の響きで1つのものを作るというような感じで。どちらかが欠けると完全に成立しないような音の構築美といったところに、今回は特にこだわったんです。

悠介:コード感やリズム感を作っていかなきゃいけないという中で、色々と苦労はしましたね。ツインギターの面白さというものも大事にしないといけないし、逆に“パワーコード禁止”という制限があったからこそ今回の作品ができたと思っていて。苦労したり悩んだりもしたけど、発見もあったので楽しかったなと。

●苦労したのはたとえばどんな部分で?

悠介:普段はあまり使わないようなコードもあったので、音を探すような感覚があって。玲央さんとの掛け合いも結構大変だったんですけど、やっていて楽しかったですね。

●今まではギター2本の掛け合いというのはあまりやってこなかった?

玲央:そこまで多くはなくて、どちらかと言えばユニゾンが多かったかもしれない。音圧の壁を作ろうという方向に、意識が向いていた感覚はあるので。でも今回はそこよりも音の広がりや奥行きというところを重視した結果、歌が浮かび上がったという部分はありますね。だから、本当に“やってみて正解だったな”と。この2人のギターの立ち位置について、スタンダードが1つできたというか。“lynch.というバンドのギター隊って、こういう感じだよね”っていうものが、今回でハッキリ見えたかなって思います。

●そこのスタンダードも発見できたと。

玲央:色んなやり方を今まで試してきた中で、(今回のものが)一番シックリくるという言い方が近いかもしれない。やっぱり作品ごとに弾いている人間も歳を重ねていくわけで、その時その時で音楽的背景が違っていたりもするんですよ。自ずと“これが正しい”と思う形も変わってきたけど、今回は今後もそんなに大きくは変わらないであろうスタンダードな形というものを自分自身も理解できたし、聴いてくれる人たちにも理解してもらえるんじゃないかなって。

●リズム隊のお2人はどうでしたか?

明徳:僕は前作の時にやってみて、気付いたことがあって。ベースが一歩下がることによってバンドサウンドにもたらす効果というものをすごく感じられたので、今回はそこを追求したというか。ギターの音と合体しつつ、ドラムとギターの隙間を埋めるっていう接着剤的な役割を今回は意識しましたね。その結果、バンドの音が良くなったので“これで間違いないな”と。

晁直:自分は無意識的に、音数を増やした気がします。邪魔にならないところにフィルを入れてみたり、わかりやすい部分では「DEVIL」のサビで途中に裏打ちを入れてみたりもして。小節で言えば“ここからフィルが入るであろう”という部分の1テンポ前からフィルを入れたりして、そういう意外性も意識しながらやっていましたね。

●バンドとしての幹も、前作以降で太くなったんじゃないですか?

葉月:あれ(前作)がキッカケであって、これ(今作)が“原点”であって良いと思っているんです。それは“新しい”原点という意味であって、原点“回帰”したというつもりは全然なくて。歌詞の書き方やギター2人の立ち位置なんかも含めて、ここでやっと1つ元になるものができたのかなという気がしています。

玲央:“初心”というよりも、“基本”という感じが近いですね。

●昔からの“原点”に戻ったわけじゃなくて、新たな道へと踏み出すための“原点”を作ったというか。

玲央:そうです。“これからの原点”ということですね。

●今後へつながる作品でもあるし、“代表作”と言っても良いような自信作になったのでは?

明徳:最高傑作だと思います。

玲央:自分自身も1リスナーとして挙げるなら、これが代表作かなって。

葉月:実際にそう言ってもらえるだろうなと思います。だから早く発売して欲しいんですよ。早くファンの人からの評価を聞きたいんです。やっぱり“代表作”って自分で決めるものじゃないから。僕らが決めても良いなら、これが代表作だって言いますけどね(笑)。

●リスナーからの反応が待ち遠しい。

悠介:リスナーの方にはまだ届いていないので、とにかく聴いてもらって。解釈の仕方はそれぞれで違うものだから、そこでの反応も楽しみなんですよ。僕ら自身もまだ気付いていないような部分がひょっとしたら出てくるかもしれないですからね。

晁直:『GALLOWS』が持っている力はすごいと思うし、それを作ったことも自信につながると思う。10周年目にこのアルバムができたというのが良かったですね。

●結成から10年の歩みがあったからこそ作れた作品という部分もあるんじゃないですか?

玲央:少なからず、そういうところはあると思います。やっぱり入れ替わりの激しい業界なので、活動を続けること自体もすごく難しいと思うんですよ。でも続けてきたからこそ手に入れられるものというのがあって、そこを今回はちゃんと音として表現できているんです。結成1〜2年のバンドでは表現できない部分も色々と詰まっているし、自ずと音に出ているんじゃないかな。

葉月:若いバンドには負けないぞと(笑)。毎回作り終える度に反省して「次はこうしよう」と進んでいく感じなので、過去がなかったら確実にできていない作品だと思いますね。

●10年続けてきたということへの感慨もあるのでは?

玲央:でも僕らは元々、長く続けることを前提にメンバーの人選もしているので、“続いて当たり前”であって欲しいんですよ。

葉月:実際、10周年だからどうだということは、あまりなくて。何年で辞めると決めているわけでもないし、ずっとやり続けようという想いでやってきて今が10年目というだけだから。“10年も経ったんだから、これくらいのものは作れなアカンでしょ!”っていう感じですね(笑)。

●「BULLET」の“僕らは永久の弾丸”という歌詞は、進み続けるバンドの姿勢を象徴しているようですごく良い言葉だと思いました。

葉月:この曲の歌詞は、歌録りの直前まで迷っていて。特に最後の1行は「あと1行だけ書くんでちょっと待って下さい」と言って、勢いで書いたものなんです。

●それが“つらぬけ ドタマかち割れ”っていう…。

葉月:インパクトはあるんじゃないかな。化粧して「ドタマ」って言うバンドは、他になかなかいないと思いますよ(笑)。

●ハハハ(笑)。ジャケットの鴉も自分たちを象徴している?

葉月:自分たちの衣装も真っ黒ですからね。以前にも鴉をジャケットにしたことがあったんですけど(インディーズ時代のアルバム『SHADOWS』)、今回は代表作になるものだからアートワークも僕らを象徴するものにしたいということで、鴉にしました。処刑台の周りに飛んでいるイメージもあったし、良いんじゃないかなと。

●初回生産分の外箱のデザインもすごくカッコ良くて、実物を持っておきたいアイテムになっていますね。

玲央:これだけパッケージングされたものに対して価値を見出してもらえない時代になっているので、“そうじゃないんだよ”っていうことを示したいんです。紙だからこそ伝わるものを表現していきたいし、みんながずっと手にしておきたいと思える作品を作りたいんですよ。買ってくれた人が手元にずっと残しておきたいと思えるものというところには、こだわりを持っていますね。

●そしてリリース後のツアーは5月から始まりますが、4/23のSHIBUYA-AXはその前哨戦という感じでしょうか?

葉月:結果的にそうなった感じですね。時期が近いので「TO THE GALLOWS」というタイトルを付けましたけど、元々はとにかくAXでもう1回ワンマンをやりたかったということだけだったんです。

●“ABSOLUTE XANADU”というサブタイトルは“完全な桃源郷”といった意味?

葉月:これは“AX”の頭文字を取っているんですけど、僕にとっては常にそういう場所なんですよ。ここが一番好きで、一番楽しい場所だから。僕なりの“AX”の解釈です。

●みんなもそこへ楽しみに来いよと。そして、ファイナルは目黒鹿鳴館2デイズというわけですが。

玲央:ワンマンライブとしては鹿鳴館では2005年以降、ファンクラブ限定を除いては一度もやっていないんですよ。

●ほぼ10年近い時を経て、ワンマンを再びやるわけですね。

玲央:過去にワンマンをやった会場で、今改めてやることで自分たちの成長を見てもらえるというか。同じ環境で同じアーティストを数年後に観るっていうのは、(ファンにとって)すごく感慨深いものがあると思うんですよ。だから、面白いものになるんじゃないかなと思っています。

Interview:IMAI

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