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HOTSQUALL

その音に込めた想いは永遠に色褪せない

hyo1_HOTSQUALL雨が降ろうが、誰かが泣いていようが、常に最高のテンションでライブを続けてきた愛すべきメロディックパンクバンド・HOTSQUALL。その根底には、結成当初からずっと変わらない純粋な想いが溢れている。自主レーベルONION ROCK RECORDSを設立して3年、3/15に主催イベント“ONION ROCK FES 2014”を大成功させた彼らが、その代表曲「Laugh at life」を冠したアルバム『Laugh at life』をリリースする。表紙特集となる今月号では、結成15周年を迎えて更に勢いを増す3人に、15年の歴史とバンドの核となるマインドについて訊いた。

 

INTERVIEW #1

「周りのバンド連中はどんどん名前が売れて、いろんなビッグバンドと対バンしたりとか。そういうのを見ていて“羨ましいな”っていう気持ちがだんだん出てきたんです」

●今回のアルバム『Laugh at life』は結成15周年というタイミングでのリリースですので、この機会にHOTSQUALLの歴史を振り返ってみたいと思うんです。20歳のときにHOTSQUALLを結成したとのことですが、それまではそれぞれバンド経験があったんですか?

チフネ:ありました。地元が千葉なんです。俺らはもともと同じ中学の友達で。最初は別々にバンドをやっていて、周りにもいくつかバンドがあったけど、高校を卒業するときに自然と辞めていったやつが多くて。「またバンドをやりたい」って言いながらも就職していってフェードアウトしていく感じが多い中で、続けていたのが俺らで。と言っても、正直「バンドやってた」ってほどでもないんですよ。前にやっていたバンドでも、ライブなんか全部で3回くらいしかやってないし(笑)。

●ハハハ(笑)。就職や進学は?

チフネ:俺は大学生で、18歳の頃は前のバンドをやっていたんです。その頃Hi-STANDARDが全盛期で、“AIR JAM”に行ってメロコアをやりたいと思うようになって。メロコアをやりたいということで意気投合したのがこの3人です。

●3人が描いていた夢みたいなものが、Hi-STANDARDを観て具現化したというか。

チフネ:そうですね。当時そういうバンドってめちゃくちゃ多かったと思うんです。ストリートカルチャー的にも“AIR JAM”は一大ムーブメントだったし。

●当時から“ずっとバンドを続けよう”という意志は固かったんですか?

チフネ:いや、ぶっちゃけ俺たちはそこまで深く考えていなかったと思います。

アカマ:“楽しいし、かっこいいからからバンドやろうぜ”みたいな。楽器を持って「イェー!」ってやるきっかけが、Hi-STANDARDを観て“3人でもできるんだ”みたいなところだったので。でも俺は結成した瞬間に自衛隊への入隊が決まって。

●お。

アカマ:「HOTSQUALLやるぞ!」って言った瞬間に自衛隊から「お前は自衛官になれます」っていう合格通知が来て、「じゃあ行ってきます」みたいな。自衛隊をやりながら音楽をやるっていうのを当たり前のような感覚でやっていたし、自衛隊と音楽のどっちを選ぶかっていうことをそこまで考えてもいなかったです。

●音楽もやるし、日本も守ると。

アカマ:そういう感覚でやってました。だから結成当初はライブもそんなに入っていなかったし、俺が土日に自衛隊から帰ってきて「久し振り! 合わせる?」みたいな感じで。とにかく3人で合わせているのが楽しくて。

ドウメン:僕は普通にバイトをしていて。大学生からバイトをしながらバンドをやっていました。

●いつ本気になったんですか?

チフネ:実は、そこから6〜7年後なんです。俺らは結成15年って言っていますけど、俺も大学を卒業してから就職していて、普通にサラリーマンをやっていたんですよ。でもバンドは辞めなくて。別に辞める理由もないというか。とは言え、軽くも考えていなかったんです。

●ほう。

チフネ:あのときの感覚って不思議なんですけど、“俺が人生でいちばん楽しいのはバンドだ”ってくらいにははっきりしていたんですよ。曲を作るのが楽しいし、ライブもちょっとでもやれたら楽しいし、デモも作ってみたい。ゆくゆくはCDを出したりしたら超嬉しい、みたいなことは考えていました。そう思いながらも1年2年と経っていって。周りのバンド連中はどんどん名前が売れて、いろんなビッグバンドと対バンしたりとか。そういうのを見ていて“羨ましいな”っていう気持ちがだんだん出てきたんです。“悔しいな”とか“俺らももっとできるのに”みたいな気持ちがどんどんデカくなってきましたね。

●1stフルアルバム『YURIAH』のリリースが2005年ということは、結成から6年くらいかかっているわけですよね。ただ単に少し歩みが遅かったということなんでしょうか。

チフネ:今振り返るとそうだと思いますけど、当時は本当になにもわかっていなかったから。バンドのノウハウとか進め方とかも。まずスタジオに入るってことがすごく楽しくて、俺らにとってはお祭り騒ぎくらいの感じで。その後に乾杯しちゃうくらい。

アカマ:汗だくで出てきて「今日もやったな!」みたいな。

●リハですよね?

一同:ハハハ(笑)。

チフネ:たった2時間のリハがそれです。それくらいの感覚でやってました。

●1stフルアルバムまでは時間がかかりましたけど、リリースはやっぱり嬉しかった?

チフネ:嬉しかったですね。ここが俺らの人生の大きな転機なんですよ。仕事を辞めるんです。

●あ、なるほど。2005年に。

チフネ:7月ぐらいに「夏のボーナスだけもらって辞めようぜ」って。

●会社からしたらめっちゃ嫌なやつですね(笑)。

チフネ:おまけに有給も思う存分使わせてもらって(笑)。それで1stアルバムのツアーに出るんですけど、そのときはなにより“遅れを取り返したい”という気持ちが強かった。

●“遅れている”という感覚があったんですね。

チフネ:ありましたね。俺たちはGOOD4NOTHINGとかが同世代なんですよ。結成したのは同じ頃ですけど、活動は全然向こうの方がやっていたし。dustboxとかも同い年なんですけど、俺らはライブを観に行っていましたね。俺らが就職しながらやってる頃に、向こうは全国ツアーをまわっていたんです。“すげえな”みたいな感じで観に行っていました。

●だから悔しい想いというか、沸々としたものがあったのか。

チフネ:根っこはそこですね。悔しいと思っている部分がずっとあります。

INTERVIEW #2

「生々しいものもよく見えたんですけど、だからこそ、“俺らはバンドマンだから”っていう。そういう意味でのバカになれなかったら、バンドマンじゃなくなっちゃうから」

●1stを出してから、バンドの歩みが駆け足になっていくわけじゃないですか。さっきGOOD4NOTHINGやdustboxの名前が出ましたけど、リリースしてツアーをやればいろんなバンドと知り合うことになりますよね。今のHOTSQUALLの活動を見ていると、そういう“繋がり”が大きいと想像するんです。

チフネ:大切な出会いがめちゃくちゃありました。それこそ初めて全国ツアーをした2005年〜2006年に出会った人たちと、今でもずっと仲良くしているようなイメージがあります。そこの出会いがデカいですね。さっきdustboxのライブを観に行っていたと言いましたけど、実はdustboxともそこで出会っているんです。初めは俺らが観に行っていただけで、挨拶をしたのはそのタイミングで。「僕らHOTSQUALLっていうバンドをやっているんですよ」「あ、よろしくです」みたいな。

●まだよそよそしい(笑)。

チフネ:引け目もあるんですよ。“このバンドはお客さんがこんなに入ってるな”みたいな。そういうのもあるから、初めてリリースして「僕らのツアーに出てくれませんか?」って言って、一緒に回って仲良くなって打ち解けてきたというのはあります。OVER ARM THROWとか、STOMPIN' BIRDとかも全部その時期ですね。

●全部“ライブバンド”ですね。

チフネ:それは必然でしたね。ライブに命をかけているバンドっていうか。1stアルバム『YURIAH』でいちばんツアーをまわってくれたのはSTOMPIN' BIRDだったんです。俺らを形成する意味で、あれは大きかった。

●自分たちにとってはライブがやっぱり大事だと。

チフネ:そうですね。ライブがかっこよくないと、なんかちょっと違う。曲を作ったり制作で心血を注ぐのは当たり前なんですけど、かっこいいライブバンドでありたいっていうのは結成した頃から思っていましたね。

●今までフルアルバム3枚、ミニアルバムを3枚、シングルも3枚出しているんですよね。この15年間でバンド的なピンチとかはなかったんですか?

チフネ:うーん、ピンチっていうよりバンドの転機があったとしたら、レーベルを抜けたタイミングが大きいかな。ミニアルバム『Darlin’ Darlin’』(2010年5月)まででTIGHT RECORDSから離れているんです。あれがピンチと言えばピンチかもしれない。

●TIGHT RECORDSから離れたのは、なにか理由があったんですか?

チフネ:なにかを変えたかったんです。レーベル社長のアンドリューとは、ずっと仲はいいんですよ。今でもレコーディングはあの人と一緒にやっているくらいだから。普通は「レーベルを抜けた」と聞けば“ギスギスしたなにかがあったのかな?”とか思うと思うんですけど、全然そういうのじゃなくて。ただ、なんか同じ感じになっちゃってて、それを変えたかったんです。

●時期的にいうと、2010年頃ですね。

チフネ:自分たちも慣れちゃったし、お客さんも俺たちに慣れているっていうか。所詮バンドなんてそういうことと闘っていかなきゃいけないんでしょうけど、バンドでもなんでも新しく出てきた新鮮さっていうのは強いですからね。アンドリューと半年くらい話し合った結果、離れて自分たちでやろうと。

●今のレーベル運営は、実質ほぼ自分たちなんですか?

チフネ:そうです。と言っても、バンドを結成した当初と同じで、3人でツアーを組んでリリースしているだけなので。

●実際に3年近く自分たちでやってみてどうですか?

チフネ:“こういう風に動いているんだな”みたいなことがわかったのが大きかった。専門的に勉強したわけではないんですけど、“こういう感じでやっていると、こういう結果が出るんだな”っていう。物販も搬入も全部自分たちでやるし、ツアーを組むのもそうだし。それで自分たちの結果っていうのもわかって。“これ以上こうするときは、俺らだけじゃ無理なんだな”とかもよくわかった。

●大変かもしれないけど、バンドとしては健康的ですよね。

チフネ:だと思います。それができないよりは、バンドとしてできた方がいいと思う。例えば「メンバーだけでなにかやれよ」って言ったときに、できないから解散なんて嫌ですからね。

●この3人でHi-STANDARDに憧れて始めたのが15年前ですけど、そのときとバンドをやるモチベーションは変わったんですか?

チフネ:変わっていないんですけど、長くやっただけにすげえ生々しくなっていますよね。

●生々しくなってる?

チフネ:「バンドやりたいぜ」「楽しいぜ」っていうのが、いろんな経験や現実を見て、バンドをやるっていうのはそんなに簡単なことじゃないっていうことがわかって。ずっとバンドへの憧れは変わらないけど、その道に立っちゃった以上、道が険しくて長いことを知るわけじゃないですか。その生々しさです。“こんなにオフロードだったか。しかもこんな長えのか”って。当時のイメージとしては、ポーン!と行ったらそこにHi-STANDARDがいると思っていたんですよ。他のバンドのみんなもそうだったと思うんですけど。

●みんなHi-STANDARDにすぐ追いつけると思っていた(笑)。

チフネ:そうそう(笑)。でもそうじゃないことを知って。やればやるほど“やっぱあのバンドはすげえな”って。

●でも“バンドをやりたい”っていう根本の気持ちは変わっていない。

3人:変わっていないですね。

アカマ:レーベルを抜けたときに、“こんなに細かいこともやらなきゃいけないのか”っていうことを知ったというか、実感したんです。そうなるとツアーが始まったら「やった! 初日だ!」っていう感覚も全然違ったし、結果が出たらめちゃくちゃ嬉しいし、結果が出なかったら「なにが原因なのか?」って考えて反省するし。バンドはデカくなりたいし、レーベルに入ってもっといろんな人を巻き込んだら変わってくるのかなっていうのもわかったんですけど、それがわかることによって、なんか強くなるっていうか。芯が固まったっていうか。

●ああ〜。

アカマ:“スタンスが決まったから行くぞ!”みたいな感じはすごくありました。だから独立してからはいい感じで生々しさと向き合ってます。勘違いしちゃいけないとたまに思うんですけど、数字を見たときはやっぱりいろいろと考えますけど、「でも俺らバンドマンじゃん」って。雨が降っていてもバンドマンは「イェー!」ってやるし、誰かが泣いていても「イェー!」ってやるし、そこはバカになれるやつらが集まっているから。音楽を鳴らした瞬間に、生々しいこともいったん置いて「これだぜ!」みたいな。生々しいものもよく見えたんですけど、だからこそ、「俺らはバンドマンだから」っていう。そういう意味でのバカになれなかったら、バンドマンじゃなくなっちゃうから。

●それは「Laugh at life」で歌っていることそのものですよね。HOTSQUALLが発しているメッセージそのままというか。今アカマさんがおっしゃった「俺らはバンドマンだから」っていうのは、このバンドにとってものすごく大切なマインドのような気がする。

アカマ:結成当初から遠回りしてきて悔しい想いもして、入っていたレーベルも離れて自分たちでやって…周りからしたら「なんでお前らはそんなに遠回りすんの?」って言う人もいると思うんですけど、そういう経験があったからこそ“バンドってかっこいいじゃん”っていうのを改めて思えたというか。

●うん。そこに爆発力が出る。

アカマ:俺も結婚して子どももできたし、周りのバンドもいるし、でも大人としての30半ばの友達も当然いるわけで。そんな中でバンドをやっていて、現実を見たから出る音が変わったとかだとかっこ悪いじゃないですか。意地でやっているわけじゃないんですけど、“そこはかっこつけなきゃどこでかっこつけんだ?”みたいな意識はありますね。おっさんとか関係ねえ、みたいな。そうなりたかったし、そうあり続けたいなって。

チフネ:いろんな大変なことがあるから、楽観的な感じでバンドをやれないということは思い知っているし。でもそれは“バンドが楽しい”っていうのとは別問題です。一歩一歩確かめながらやっているから遠回りなんでしょうけど、今は“リリースってこんな感じか”とか“ライブバンドってこんな感じか”からスタートして、“レーベルを抜けて3人でやったらこんな感じか”っていうのを自分たちで確かめて、今は“自分らでやるということはこんな感じなんだな”ということがやっとわかってきたくらいなんです。だからまだまだやらなきゃいけない。

●15年っていうと結構長い時間ですけど、HOTSQUALLの場合は、バンドをスタートしたときの想いを15年かけて少しずつ少しずつ、ものすごく強いものにできたっていうことですよね。よくキャリアのあるバンドだと「一周まわって初心に戻った」とか「一周じゃなくて二周くらいまわった」と言いますけど、HOTSQUALLはまだ一周すらしていないという…すごいな(笑)。

一同:アハハハ(笑)。

チフネ:だから、まだまだやりたいことだらけなんですよね。

●天然なんですか?

チフネ:そうじゃないとバンドできないんじゃないですか?

●あ、認めた(笑)。

アカマ:バンドマンは天然なんですよ。

チフネ:ちょっと痛いくらいじゃないかな(笑)。

●そんな中でメンバーはどういう存在なんですか? 家族みたいなもんですか?

アカマ:家族よりすごいと思いますよ。一緒に人生を歩んでいるから、いいところも悪いところも曝け出して話すんです。「お前はここがいいけど、ここが悪いよね。ここ直そうぜ、かっこ悪いから」ってなるんです。HOTSQUALLがかっこよくなるために、そこを目標に向かっているから。幼なじみだろうがそうじゃなかろうが、なにか言われたら最初は「うるせえよ」ってなるんですよ。だけどHOTSQUALLの1/3がかっこ悪かったら、バンドがかっこ悪くなる。“そうなると俺たちの人生がかっこ悪くなるからあいつは言ってるんだな”って、2〜3日したら思えるんです。

●ちょっと時間がかかりますね(笑)。

アカマ:エゴもあるし照れもあるから(笑)。でもそんなことを言うやつはこの3人しかいないし、そんなことを言われて言うことを聞けるのは、嫁・家族・子ども以外にはこの3人なんですよね。3人で話し合ったことを持ち帰って、素直になって前に進んだときに“はぁ〜”って思うんですよね。大事だなって。

●いい関係ですね。

チフネ:いろんな関係があると思うんですけど、最初からスーパーミュージシャンが集まっちゃうような人たちって、お互いプライベートに干渉しないでバンドを進めていってという感じかもしれないけど、俺らはそうじゃないので。ただ集まって、そこから練習も始めたようなやつらなので、とにかく話し合いをしないと。話して価値観とか意見とか「こんな風にしたい」「こんな音楽をやりたい」「こんなライブをしなきゃ」っていうのを常に話していかなきゃ。

●昔からずっと?

チフネ:そうですね。話し合いができないバンドには俺らはなれないし、なりたくないです。「かっこいいってなんだろう?」みたいな漠然とした宙に浮いているようなことを真剣に話しているっていうのは、ロマンがあっておもしろいですね。

INTERVIEW #3

「同じお客さんだろうが、俺らのことを全然知らないお客さんだろうが、盛り上がっている人がいて盛り上がっていないお客さんもいて。だからこそ毎回新鮮にできる」

 

●今回ベスト的なアルバム『Laugh at life』が出るわけですが、12曲をお客さんの投票で決めて、未発表曲2曲を収録した作品で。作品タイトルは1stアルバムに収録されていた曲名からですよね。

チフネ:そうです。1stをとにかくがむしゃらに録っていった中で、象徴的な俺らのスローガンみたいな、いちばんお客さんに育ててもらった曲の象徴的なものが「Laugh at life」という曲なんです。それに俺らを観に来てくれているお客さんからしたら、「Laugh at life」を選ばないわけがないと思っていて。結局一致してました。俺らがやりたいと思っていた曲と、お客さんの投票が。

●「Laugh at life」は7〜8年前に作った曲だと思うんですけど、今日の話を聴いていると、全然変わっていないという。なにこのバンド。

アカマ:だから録り直したんです(笑)。

チフネ:歌詞を書くときに心がけているのは、自分たちが思っている素直な気持ちは絶対に出したいんですけど、前に押し付けるっていうのは避けているんです。物事をあまり具体的に言うと時間が経ったときに違うなと思っちゃうから。その場にあるような、隣にいるような感覚で歌詞を書いていて。みんなもそう思うんだったら一緒に拳を挙げてくれたらいいし、一緒に笑いましょうっていう感じというか。そういう感覚があるから、ひょっとしたら10年くらい経っても同じような感覚で歌っているのかもしれない。ただ、それがいろんな経験を経て深みが増してくるとは思いますけど。

●今作の既発曲は新録ですよね。ライブで常にやっているとはいえ、今作を録るときはいろいろなことを思い出したでしょうね。

チフネ:めちゃくちゃ感慨深かったですね。そのせいで苦戦しました。全然納得いかないんですよ(笑)。どの曲もいろいろ苦労したんですけど、印象に残っているのはM-8「Lion-standing in the wind」なんです。「あれ? この曲ってこんなに速くないよね?」とか、まずスピードから。

●ライブで曲が育っていると。

アカマ:収録したCDをとりあえず聴いたんですけど、そこからライブでやっているから、俺たちの中では現ライブバージョンが最新になっているんですよ。

アカマ:だから1曲1曲に“最初録ったときはこうだったけど、ライブの景色はこうだよな”っていうのがあって、そのズレがありましたね。

チフネ:「これじゃ録り直す必要がない、もっと越えていかないと」みたいな。そういうことを考えちゃいますよね。

●曲と共に歩んできたバンドの歩みが、1曲ごとにたくさんあるんですね。

チフネ:そこを納得させないと。「なんとなくいい感じだったね」じゃ落とせないというか。“ただ新曲を録る方が楽だったんだな”とやってみて思いました。

アカマ:新曲の方が、全然すんなりと落としどころを見つけられるよね。やっぱり納得いくまでやったんですけど、最後の方はテイクの善し悪しとか上手い下手じゃなくて、気持ちが乗ったかっていうところが基準になっていて(笑)。その曲なりの気合いが入ったというか、雰囲気が出たとか。「今の上手いね」とか「音程がいいね」っていうのは最初の段階でクリアというか、別次元の話なんですよね。録ってるときに想像するのは今まで見てきた景色とか、今歌詞を見て思うこともあったから、英語なんだけど日本語と風景がぱっと浮かんできて。その中で気持ちよく鳴ったときに“できた”って初めて思える。今作の制作はすごくいい経験でした。

●M-2「Gift from you」は新曲ですが、今日話を聞いてきたことに通ずる気がするんです。初期衝動みたいなもの。要するにHOTSQUALLは、10代の頃にHi-STANDARDからもらった大切な“ロックの洗礼”みたいな贈り物を、ずっとこの15年間大切にしてきているバンドだと。この15年の道のりを描いた曲ですね。

チフネ:その通りですね。広げようがないくらいその通りです。

一同:アハハハハハ(笑)。

●あと、M-11「My little universe」は未発表曲ということですが、未発表というのはどういうことですか?

チフネ:大昔にデモに入れていた曲なんです。結成して2〜3年のときに、デモCDで録った曲です。だから知っている人もほぼいないんじゃないかな。ライブでもやってないんですよ。ずっと昔からこの曲が好きだったんですけど、作品のたびに収録候補に挙がるんですけど、なかなか仕上がりきらなくて。

●自分たちの満足のいくアレンジにならなかった?

チフネ:多分アレンジなんですけど、俺ら的には気持ちが入りきらないというか。

●アレンジというかメンタルですね。

チフネ:うん。結構メンタルがデカいですよね。

●話を聞いているとわかりますけど、このバンドはメンタルですね(笑)。

チフネ:魂が入りきらないんですよね。自分たちなりに当時の器で魂を込めているんですけど、「俺たちの経験値ではできない!」みたいな。勝手なハードルです。

●それが今、やっと魂が入ったと。

アカマ:非常に私事な都合ですけど(笑)。

チフネ:俺たちは勝手に想い入れが強い曲。

アカマ:毎回、作品を作るときにはこの曲が傍らにいて“形にしたいな”っていう気持ちがあったんですよね。

●リリース後はツアーが控えていますが、これだけ長く続けていると、お客さんの存在は大きなものになっていると思うんです。自分たちにとってお客さんはどういう存在ですか? お客さんに向かって歌っている曲も多いと感じたんですが。

チフネ:完全に多いです。「Gift from you」もそうですね。音楽が俺たちに与えてくれた影響っていうのもそうですし、お客さんたちが見せてくれたものも大きくて。お客さんたちのおかげで、俺たちが続けられるから。綺麗事みたいに聞こえるかもしれないけど、そんな綺麗な話だけじゃなくて、“あのときダメなライブやっちゃったから、次はこうやらなきゃ”みたいな意識も絶対にあるし。そういう意味では、お客さんとキャッチボールしながらバンドをやっている感じがあります。

●媚びるわけではないけど、かけがえのない関係性ですね。

チフネ:こっちから偉そうにものを言ったことはないし、そんな歌詞を書いたことはないんです。だからこそ俺たちも与えたい。「メンバーと一緒」と言ったらちょっと違うかもしれないけど、いなきゃバンドが成り立たないですよね。

ドウメン:最初に言った“かっこいいライブ”にするためには絶対に必要な存在というか。俺らだけじゃライブを作れないだろうし、そういうのを一緒に作っていく関係でもありますよね。なくてはならない存在というか。

アカマ:あまりちゃんと考えたことがなかったんですけど、同じお客さんですら日によって空気が違うじゃないですか。ハコによっても自分たちのコンディションによっても違うし。だから毎回お客さんが1人いるだけで新鮮になれるんです。同じお客さんだろうが、俺らのことを全然知らないお客さんだろうが、盛り上がっている人がいて盛り上がっていないお客さんもいて。だからこそ毎回新鮮にできる。毎回同じ曲をやっても、俺たちの発信しているメッセージは同じだけど、響き方や響かせ方が違うから、毎回フレッシュなんです。変わらないことを言うんだけど、その気持ちはフレッシュにならざるを得ない。毎回同じ感覚ではいられないから。

●まさに人と人という。

アカマ:毎回初めましての自分を出すし、初めましての人にもそうじゃない人にも新しくいれるというか、「行くぜ!」って気持ちがハマるというか。ライブ1つ1つは繋がっていないから、“昨日やれたから今日もこんな感じ”っていうのは絶対にないし。毎回俺らを新鮮にさせてくれる人たち。だから感謝する。“お金を払って来てくれるから感謝する”っていうのも当然あるんですけど。

●今作で言うとM-14「Rock soldiers never die」では戦っている姿勢を歌っていますけど、こういうマインドがHOTSQUALLのライブに出ているという。

アカマ:でもそういうのも、今だからわかったことなんです。ずっと思っていたわけじゃなくて、そりゃあ40本もあって慣れ過ぎちゃって“ここはどこだっけ?”みたいな気持ちになったときもあったんですよ。だけど今だからこそ、そういう気持ちが大切だと思えるし、毎回新鮮な気持ちでライブをやれるようになりました。

interview:Takeshi.Yamanaka

Assistant:森下恭子

 
 
 
 

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