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喜多村英梨

荒ぶるボーカリスト“キタエリ”が放つ、壮大なシンフォニック・メタル

main.k_eri0316 49839ゴリゴリの重低音が鳴り響くメタルサウンドを大胆にフィーチャーした楽曲で、度肝を抜いた2ndアルバム『証×明 -SHOMEI-』を今年4月に発表した喜多村英梨。そこからわずか1ヶ月にして、早くもニューシングル『掌 -show-』がリリースされた。話題のTVアニメ「シドニアの騎士」エンディング主題歌となるタイトル曲は、前作からの路線をさらに振りきったような壮大なシンフォニック・メタル。カップリング曲で披露した荒ぶるデスボイスでは声優ならではの表現力も昇華するなど、未知なる進化を遂げ続ける彼女が放つ“攻め”の1枚に触れてみて欲しい。

 

「根底の音色としてはメタルや重たいものになるんですけど、世界観や雰囲気といったところでは声優ならではの七変化を見せられると思います」

 

●今年4月にリリースされた2ndアルバム『証×明 -SHOMEI-』以降でメタルやラウドの色が前面に出てきましたが、元々そういうサウンドをやりたかったんでしょうか?

喜多村:実はスターチャイルドでアーティスト活動を始めさせて頂く際に一番やりたかったのはこういうものだったんです。だんだん実績を積ませて頂いたこともあって、長い道のりではあったんですがようやく…。

●実績を重ねてきたことで、自分の元々やりたかったことが作品としても出せるようになった。

喜多村:あとは、デビュー時から基本的に同じサウンドチームでやらせて頂いているというのもあって。これまでの作品を一緒に作らせて頂く中で喜多村の色や、喜多村が持っている引き出しの根底にあるものを知ってもらえたチームと今もやれているということが大きいですね。喜多村チームの中では「やっとここに辿り着けて、腰を下ろせたね」というのが本音なんです。

●サウンドの方向性が定まったわけですね。

喜多村:“喜多村サウンド”は今の方向性で確立していきつつも、アーティスト以外に声優という形で演者としてもアニメ作品に携わらせて頂いていることを強みにしていきたいんです。第三者的な視点からだけでは表現できないことを、楽曲に盛り込んでいきたいんですよね。根底の音色としてはメタルや重たいものになるんですけど、世界観や雰囲気といったところでは声優ならではの七変化を見せられると思います。

●元々、メタルやラウドな音が好きだったんですか?

喜多村:私は雑食なのでトランスやテクノみたいな打ち込み系の音楽も聴くし、ジャンルを問わず洋楽も邦楽もよく聴いていたんです。でもたとえば自分がライブへ行った時に奮い立たされるサウンドは何かと考えたら、嬢メタルとかが浮かんで。北欧メタルもすごく聴いていたんですけど、ライブという面ではNightwish(※フィンランドのシンフォニック・メタルバンド)みたいな紅一点のボーカルがムッキムキの男たちを従えた感じが好きなんですよ(笑)。他にもドリーム・シアターみたいに高い演奏技術に支えられたパフォーマンスや、メタリカみたいにすごく作り込まれた楽曲やパフォーマンスをするようなアーティストが好きですね。

●本当にメタルが好きなのが伝わってきます(笑)。

喜多村:メタルのカテゴリーって、「〜メタル」みたいなものがいっぱいあるじゃないですか。そういう1つの核はありつつも手法や見せ方のヴァリエーションがとても多くて、制限がないようなところに魅力を感じているんです。自分が歌っていても気持ち良いし、聴いて音に浸るのも気持ち良い。作業用のBGMとして流しているだけでもテンションが上がるし、どんな自分の生活シーンにも合うジャンルだなと思います。

●生活の中にメタルがある。

喜多村:仕事の合間に老舗っぽい情緒溢れる喫茶店でご飯を食べたりするんですけど、そういう時もずっとメタルを聴いていたりします(笑)。それでもちゃんと休憩になるし、自分の中ではインプットもアウトプットも掻き立ててくれるようなものがあるんですよ。

●創作意欲を掻き立ててくれたりもするわけですね。

喜多村:1つの楽曲から色んなヴィジョンが見えてくるというところでもメタルの魅力にハマり続けていますし、歌う立場になった時もそういうサウンドで自分の表現をしたいなと思っています。嬢メタルの中でもシンフォニックなものやファッションも含めてゴシックなものが、私は好きで。とてもキレイで女性的な耽美な世界観はもちろん好きなんですけど、ラウドでロックでヘヴィというメタルの荒ぶっているところをバックボーンにして凛と立っていたいというヴィジョンは前からあったんです。

●ステージでのヴィジョンも明確にあった?

喜多村:リスナーとして楽曲を聴いていた頃から「自分がライブでこの楽曲をやるなら、こういうパフォーマンスをしたいな」って妄想するのも楽しかったんです(笑)。今回のシングルを制作するにあたっても、この曲を引っさげてステージに立った時の自分の声や表情や手振りを想像しているんですよね。そういう場面で煽りたいという精神は、メタルに尽きるのかなと思ったりします。

●今回の「掌 -show-」はTVアニメ「シドニアの騎士」エンディング主題歌というのが決まっていた上で、作り始めたんでしょうか?

喜多村:今回のシングルをリリースするにあたっては、嬉しいことにタイアップを頂いて。私は声優としても「シドニアの騎士」に出演させて頂いていたので、資料を見たりアフレコをしたりする中で作品のテーマを知ってから楽曲制作に臨んだんです。時期としては第1話〜2話の音声収録と同じ頃に、楽曲の制作も始まりましたね。

●アニメの制作側から何か指定はあったんですか?

喜多村:まずアニメ制作スタッフ側にどういう方向性が良いか尋ねた時に「エンディングテーマだからといって、いわゆるアニメのセオリーに則ってバラードでしっとり終わらせたくはない。そういうところにとらわれずに、喜多村さんが持っている躍動感や凛とした“強さ”を楽曲のテーマとして出してもらって大丈夫です」と言って頂いたんです。ちゃんと声優アーティストとしての喜多村英梨の色も出した上で「シドニアの騎士」とコラボしていいという監督はじめスタッフからのOKをもらえたことがすごく強みになって、やりたかったことの1つができたという部分はあります。

●確かに普通のエンディングテーマらしくない激しさや躍動感がありますよね。

喜多村:「シドニアの騎士」自体も元々SFの中でも衝撃的というか、重たい部分が強い作品なんですよ。設定背景はとても退廃的で荒廃した世界だったりもするので、そういう本編の後のエンディングを悲しい感じには絶対にしたくないという監督の意向も強くて。だから「掌 -show-」はエンディングテーマとしてどっしりと聴かせるところもありつつ、絶望の中でも希望に向けて抗っていく(登場人物たちの)躍動感というところでは「別にオープニングテーマだと思われてもいい」というくらいに振り切らせて頂きました。

●原作も元からご存知だったんですか?

喜多村:私自身、「シドニアの騎士」の原作がすごく好きだったんですよ。だから1ファンとして「ここは押さえたい」という情景だったり、見せたいテーマ性みたいなキーポイントがいくつかあって。1人のファンとしても、制作に携わった役者としても、アーティストとして楽曲を形にする身としても、色んな方向性から良いとこ取りをできる立場だったのが今回作る上での強みでしたね。

●だからこそ、歌詞も自分で書かれたわけですね。

喜多村:実は最初、歌詞は自分で書く予定じゃなかったんです。元々は、河合(英嗣)さんがデモ音源に載せて書いてきた歌詞があって。それにも共感するところはたくさんあったんですけど、(アニメ)制作の現場に入っていると「ここのワードは押したい」とか「こういう言い方はしたくない」と話し合っている場面を実際に見てきているんですよ。だから「こういう言葉は外したほうがいいな」とか「こうしたほうがアニメを見た後に、より(世界観と)リンクできるだろうな」という意識が強くあったので、監修みたいな形で歌詞にも参加させて頂きました。

●アニメ制作の現場にも参加した視点から、歌詞制作に協力した感じというか。

喜多村:そこも制作チームにちゃんと歩み寄りつつ、「ここは何か違うんだけど、まあいっか」という妥協は一切していなくて。「この言葉をこう変えたほうがファンとしても嬉しいだろうし、私も歌いたいなと思います」という感じで伝えましたね。それをちゃんと受け入れてくれるようなサウンドチームに今は恵まれているというところも、今回の作詞をさせて頂いた経緯につながるところでした。

●単に歌い手としてではなく、制作チームと一緒になって作品を作ってきた関係性が大きいのかなと。

喜多村:『証×明 -SHOMEI-』というアルバムがあったからこそ、生まれた信頼関係というか。でもそこでやりたかったことのリストは、実はまだ他にもたくさんあって。そういうことも含めて「いつかこういうことをしてみたいんです」という会話を制作中にすごくしていたので、今回の『掌 -show-』を作るにあたっても「喜多村とのやり方ってこうだよね」とわかってくれていたからこそだと思います。自分はアーティストでもあり主役でもあるわけなんですが、ちゃんとチームの一員として受け入れてもらった上で一緒に制作できていることがすごく良い方向に出ましたね。

●M-2「Greedy;(cry)」では、デスボイスまで披露しているわけですが。

喜多村:デスボイスのプロの方々には申し訳ないので自分では“ヒステリック・ボイス”と呼んでいるんですけど(笑)、いわゆる“グロウル”というか。スクリーモとかも大好きだし、女性にしか放てないヒステリックな質感が魅力の1つだなとはリスナーとしても思っていたんです。

●それをこの曲で試してみたと。

喜多村:元々、ブラックメタルをやりたかったというのもあって。シンフォニックでゴシックな感じもキレイで情緒があって好きなんですけど、「シドニアの騎士」も『掌 -show-』も同じで“キレイなままじゃいられない”というか。そういう世界観の中に1枚のCDとして収まるようなカップリングの曲は、どこまでもダーティでノイジーなテーマ性が一番適切だったと思うんです。

●曲に対するイメージもあったわけですね。

喜多村:やりたいことのリストの中で今回、自分がずっと温めていたネタを河合さんにお伝えして。私は作曲・編曲はできないんですけど、「ここにグロウルを入れて、ここで転調して」という各セクションごとのプロットは自分の中で温めていたものがあったんです。それをお伝えした上で、生音で録っていくという作業をしていきましたね。

●喜多村さんのイメージを具現化していくような作業だった。

喜多村:自分でもパソコンで仮歌を入れていって、「こういう歌いまわしや声質でやりたいから、オケはこうして欲しいんです」みたいなことを細かくやりとりしながらも、短時間でできあがって。頭の中にあるイメージをそのまま形にできたというところで、すごく理にかなった楽曲制作ができたと思います。まるで我が子のように愛おしい楽曲に仕上がりましたね。

●収録した2曲ともに、喜多村さんの意志がしっかり反映されている。

喜多村:“喜多村英梨”というクレジットで世に残るということは、自分がその曲を一生背負って行かなきゃいけないわけじゃないですか。もしも何となく歌ってしまった曲があったりしたら、絶対に自分の中に入りきらないというか。ライブの選曲リストに挙がらないというのは曲もかわいそうだし、作ってくれた作曲家の人にも申し訳ないし、自分自身にとってもすごく失礼だなと。そこが1つのプライドとしてあるから、絶対に“捨て曲”みたいなものは作りたくない。カップリング曲だろうと、両A面シングルを作るつもりでやっているんです。

●全てがリード曲のつもりというか。

喜多村:私は「全部、“神曲”って言わせるという想いで作っているんですよ!」ってサウンドチームのメンバーに言ったら、「わかったから、よしよし」っていう感じで優しく対応してくれて(笑)。本当にバンドっぽいチームですね。そういう意味でも、私は“荒ぶるボーカリスト”っていう感じなんだと思います(笑)。

Interview:IMAI