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SiM

すべての現象には理由がある

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今やシーンを象徴する存在として語られるようになったSiM。彼らの評判が頻繁に聞こえてくるようになったのは、2012年10月にリリースした2ndアルバム『SEEDS OF HOPE』前後。確かにその頃から、4人が作り出す独特なステージは鋭さと勢いと一体感を増し、Vo.MAHの佇まいはカリスマ性を帯び、楽器陣3人が創り出すアンサンブルは衝撃的かつ強靭になり、客はそれまで以上にテンションを振り切れさせて暴れるようになった。その勢いは口コミとなってライブハウス界隈に広がり、次に音楽シーン全体に広がり、バンドが活動を重ねるにしたがって会場はどんどん大きくなり、新しい客が増え、SiMは大きくなっていった。肌感覚として、SiMが目覚ましく成長していることは明らかだった。

2013年10月、SiMがリリースした3rdアルバム『PANDORA』はその集大成的な作品だ。結成以来、様々な音楽を昇華させ、自分たちにしか鳴らせない音の次の扉を開いたオリジナリティ。同作は彼らの活動に於けるひとつのターニングポイントだったとも言えるし、新たなスタート地点になったとも言える。同作のリリースツアーは空前の盛り上がりをみせた。全公演がソールドアウトとなった“PANDORA TOUR 2013 - 2014”のファイナル、新木場studio coastでの2デイズは特に凄まじかった。次から次へと人が宙を舞い、大きなstudio coastのフロアで観客が暴れまくり、会場が揺れ、汗まみれの笑顔が溢れた。SiMは、他のどのバンドにも真似のできないライブを作り上げる、シーンを代表する真のライブバンドになったと言える。

湖に投げ入れた石が作った小さな波紋が次第に大きくなっていくように、SiMと彼らを取り巻く状況すべてが大きく強くなってきた10年間。しかしこの10年で彼らがやってきたことは、決して特別なことではない。自分が心から“いい”と思える音楽を追求し、最高のライブをやり、客を大切にし、仲間を大切にし、メンバーを大切にする。どれも他のバンドが普通にやっていることばかり。では、なぜSiMは盛り上がりをみせるラウドロックシーンの枠組みを超えてここまでたくさんの支持を得ることができたのだろうか?

SiMの結成10周年を記念した2nd DVD『10 YEARS』には、その答えが余すことなく収録されている。これは誇張でもなんでもなく、余すことなく全て。以前所属していた事務所のスタッフも登場しているし、現在のレコード会社との契約条件も明かされているし、インタビューではメンバーも泣いている。ある程度事情を知っている身としてもびっくりの内容なのだ。

赤裸々にバンドの背景やバックボーンまでもが語り尽くされているこのDVD作品を観たらわかることだが、SiMはこの10年間、常に全力で、諦めなかった。常に全力で、そして諦めなかったからこそ、SiMはここまで魅力的な存在として活動することができているのだろう。映像にも収録されているが、MAHがステージで言った「お前だけはお前自身の夢に愛想を尽かさないでくれ」という言葉には、SiMの全てが詰まっている。

SiMの2nd DVD『10 YEARS』を観れば、SiMというバンドをもっと好きになるだろう。なぜ彼らが魅力的な輝きを放ち続けているのか、その理由がわかるだろう。そしてもうひとつ付け加えたいこととして、バンドメンバー4人だけではなく、ドキュメンタリー映像に登場する全員が全力ということ。映像に登場する人物全員が、惹き込まれるほどキラキラした表情でSiMを語っているということ。SiMを追い続けてたい、SiMのライブを観たい…心からそう思わせてくれる作品だ。

TEXT:Takeshi.Yamanaka

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