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忘れらんねえよ

もう童貞じゃないけど初期衝動を持ち続ける忘れらんねえよに怖いものなどない。

PH_Wasure2014年5月25日、Vo./G.柴田が実は3年前に童貞を捨てていたこと、3年間ビジネス童貞として我々童貞を欺き続けてきたことを発表したNOT童貞クソバンド・忘れらんねえよ。2011年の鮮烈なCDデビュー以後、音楽シーンに名を馳せ、目覚ましいスピードでファンを獲得してきた彼らが、この6月に待望のメジャー1st両A面ミニアルバム『あの娘のメルアド予想する』をリリースする。JUNGLE☆LIFE初表紙を飾った先月号の柴田ソロインタビューに続き、2ヶ月連続特集第2弾となる今回はメンバー3人に迫り、童貞偽装疑惑の真相、そして心に闇を持つモンスターについてじっくりと訊いた。

 

 

その1:与沢翼とダチョウ倶楽部、ロックバンドに影響を与える。

「覚悟を決めた。そっちの方向で突っ走るべきだなって。ダチョウ倶楽部方向に振り切れた感じがして、ちょっと精神的にスッキリしたんですよね」

●前回の柴田さんソロインタビューで「忘れらんねえよは与沢翼から影響を受けたロックバンドだ」という発言がありましたが、あのインタビューの数日後に与沢さんが「資金が完全にショートしました」と発表されましたよね。

柴田:あれびっくりしました。でもね、与沢さんはやっぱりすごいですよ。“100の常識より1の非常識”を貫いているというか、破綻したことすらも話題にしてますからね。Yahoo!トピックスにあがってますもん。いやぁ、与沢先生やっぱりすごいなって。心酔しましたね。

●まだ影響受けてるのか(苦笑)。

柴田:そういえば前回インタビューしてもらったあと、色んな媒体さんに取材してもらっていく中で考えていたんですよ。忘れらんねえよのキャッチコピーを。

●は?

柴田:それでピンと閃いたんですけど、忘れらんねえよはバンド界のダチョウ倶楽部だなと思って。

●はあ。

柴田:バンドとして、単純にかっこいい音を作ってかっこいいライブをしてかっこいい佇まいをして、それで「以上!」っていうのが許されている人たちがいると思うんですよ。選ばれし者っていうか、それができる才能を持っている人たち。

●はい、いますね。

柴田:俺らはそれだけじゃあダメだと思っていて。プロモーションとかTwitterとかライブのMCとかパフォーマンスとか、そういうところも表現にしなくちゃいけないっていうか。

●確かに“表現”と捉えればわかりやすいかも。

柴田:そこも全部ひっくるめて表現できる…表現しないといけないバンドだと思うんです。それってイコール、ダチョウ倶楽部的というか、身体を張らないといけない。ダチョウ倶楽部ってずーっと芸能界を生き残っているじゃないですか。しかも、ダチョウ倶楽部になりたくてもなれない芸人さんっていっぱいいると思うんですよね、若いお笑いの人たちで。

●うんうん。

柴田:もっと言うと、芸風もちょっと似ているというか。特に俺がそうなのかもしれないけど、人生の削り売りみたいな。でも考えてみると、それができるバンドってあまりいないんじゃないかなって。

●ロックスターって憧れたりする存在ですもんね。

柴田:今回『あの娘のメルアド予想する』のリード曲「ばかばっか」の先行試聴をしたんですけど、正直“大丈夫かな?”とすごく不安だったんです。音楽が無視されるのがいちばん嫌だから。

●そうですか。

柴田:すごく不安だったんですけど、実際にやってみたらすごく反響があって、かなりバズったんですよね。それで大丈夫だなって。「ださっ!」とか「ちっちゃ!」「(爆笑)」みたいなリアクションが多かったんですけど、そういうリアクションがとれるバンドってかなり稀有だなと。

●褒められるだけが評価じゃないと。

柴田:そうそう。「ださっ!」が褒め言葉になるバンドってなかなかいない。そこが俺らの戦場っていうか、ロック界で取れるスペースじゃないかなって。

●別にそこを狙おうというわけではなく、自分たちのキャラを掘り下げた末に自分たちの居場所を見つけた、という感覚ですよね。逆を言うと、諦めたというか(笑)。

柴田:そう。諦めたのもそうだし、もっというと覚悟を決めた。そっちの方向で突っ走るべきだなって。ダチョウ倶楽部方向に振り切れた感じがして、ちょっと精神的にスッキリしたんですよね。

●話の腰を折るようですけど、柴田さん個人はそれでいいと思うんです。でもバンドとして考えたときに、梅津さんと酒田さんはどう折り合いをつけているのかがちょっと気になる。

柴田:確かにそうですね。訊いてみたいところですね。

梅津:柴ちゃん(柴田)がこういうキャラっていうのは、バンドとしてのいちばんの看板だと思っていて。もちろん歌詞とかメロディがパッケージとして完成されていることが前提で、結局は好きになってもらわないとダメだなと思うんです。ダチョウ倶楽部的なところもあるし、かっこいいところもあるバンドだと僕は思っていて。最近は若いバンドと対バンすることも多いんですけど、そのイベントとかを合コンに例えて言うと、僕らはやっぱり振り向いてもらえないタイプだと思うんですよね。

柴田:いい例えだね(笑)。

梅津:「ワーッ!」って盛り上げることはできるかもしれないけど、恋愛対象にはならないっていう。でもお客さんをとらなきゃいけないっていうか、好きになってもらわないといけない。だから好きになってもらうためには、かっこいい部分というか、ダチョウ倶楽部的な部分を持ちつつも、芯を持っていないといけないなとは意識しています。おもしろいだけじゃなくて、バンドとして美しいところっていうか。

柴田:ダチョウ倶楽部的な方向で突き進んで、最終的にはかっこいいバンドにならなきゃだめだよね。

梅津:うん。実際ダチョウ倶楽部もかっこいいしね。

柴田:そう! かっこいい! 俺はまだダチョウ倶楽部にはなりきれてないと思うんですよ。でもそこを…有吉さんとかさぁ…(※しばらくダチョウ倶楽部談義が続いたのでカット)

●酒田さんは?

酒田:お笑い芸人に例えるところが柴ちゃんらしいなって思うんですけど、そう言われてスッと入ってくるところがあるんですよね。結局、説得力だと思うんです。ライブっていう現場で30分なら30分のステージでちゃんと到達点があって、そこに到達できる力があれば、看板が何であれハネると思うし。

柴田:そうだよね、どっちも必要だよね。俺たち練習とかもずっと前からガチでやってるんですけど…。

●え? 練習ガチでやってるんですか?

3人:やってますよ!

柴田:練習は主に基礎練ですね。ライブでガチャガチャになったら意味がないから、ライブが終わった後はちゃんと反省会やるし。そこはガッチリやらないとダメになる楽曲が多いんですよね。

梅津:特に最近はそういう曲が多くなってきたよね。昔はライブでガーッてやってても形になっていたけど、今はそれじゃあ成立しない。

●ああ〜、なるほど。今回のミニアルバム『あの娘のメルアド予想する』を聴いて感じたんですけど、シンプルなのにアンサンブルにすごくキャッチーさがあるんですよね。メロディだけじゃなくて、フレーズがいちいち耳に残るのが腹立つ。

3人:ハハハ(笑)。

柴田:ありがとうございます! それはきっと日々の練習の賜物ですね。努力家バンドです。それでケンカして険悪になったりもしてます。

梅津:かっこいいところではモメないよね。基礎練でモメる。

柴田:うん。「お前ズレただろ!」「俺じゃないです!」みたいな。

●ハハハ(笑)。真面目なバンドですね。

柴田:真面目です。そういうところをちゃんとせずにバカばかりやってたら信用されないと思います。

その2:柴田&酒田、インタビュー中に勃起する。

「好きでもない人としても、ただの超気持ちいいオナニーじゃんっていう。だから感動もなかったし、むしろ“返せ!”と思った」

●というかそんなことよりも、柴田さんは実は3年前に童貞を捨てていたらしいですね…その発表を聞いて、なんかすごく裏切られた気持ちになりました。

柴田:うんうん、そうでしょうね〜。

●僕たちが失ってしまったものを大切にしてきている人だと思っていたのに…新作の話とかどうでもいいので、ちょっと詳しく訊かせてもらえないでしょうか。

柴田:これはね、3年間に先輩と飲みに行ったんですね。すんげぇ酔っ払って、「もう1軒行こうぜ」って先輩が行きつけのスナックに連れて行ってもらったんです。

●はい。

柴田:そこでママのアシスタントみたいな当時36歳の女性がいたんですよ。その人がすごく明るい人で、意気投合したんですよ。その人はバイトなんですけど、「そろそろバイトあがるから飲みに行こうよ」って言われたんです。俺から言ったのかな? 酔っぱらってて記憶が曖昧なんですけど。

●はい。

柴田:それでチェーン店の居酒屋に行って、あ、そうだ、隣同士に座ったんだよね。

梅津&酒田:ああ〜、エロいシチュエーションだね。

柴田:4人がけの席で…あ、ちんこ立ってきた!

●え? 今?

柴田:思い出したらちんこに芯が入りました。

●インタビュー中ですよ? インタビュー中に勃起してるんですか?

柴田:ハハハハ(笑)。

●僕は今までのべ1000組以上のバンドをインタビューしてますけど、たぶん勃起したの柴田さんが初めてですよ。なに勃起してるんですか。

酒田:報告する人はいないんじゃないですか?

●え? いや、そういう話じゃなくて…勃起する人いないでしょ。オフィシャルな場ですからね。

酒田:そう…ですか?

一同:ええーーーーーーーーーーっ!!

酒田:僕は普通にあります。ラジオ中とか。

●え? AM? FM?

酒田:FMです。

一同:マジかよ!!

●もう1人怪物がいた!

一同:アハハハハハ(爆笑)。

酒田:え? みんな勃起しないの?

柴田:だって俺の場合は必然性があるでしょ? 童貞捨てたことを思い出したから勃起するっていう。

●そうそう。まだ柴田さんの勃起は理解できる。

梅津:今までFMとかで女性とかと一緒になったことないよね?

酒田:単純に、オナ禁している期間とか。全然バンド関係ない話ですけど。

●全然いいです。詳しく教えてください。

酒田:精子を出さない方が事が良い方向に進むっていう気がして、それを実践してはまた出してっていうことを僕は人生で繰り返してきたんです。

●はあ。

酒田:で、最近ちょっと恋をして、“恋を成就させるために何かできることはないかな?”と考えて、射精しない“パワーロッキン法”をやっていたんです。

●パワーロッキン法?

柴田:オナニーはするけど射精はしないという、人体のパワーをロックする鍛錬法です。

酒田:はい。だから自分でも気が付かないうちに、自然に勃起するんです。

●うわぁ…ヤバいのもう1人いた…。

柴田:心に闇をかかえた怪物です。

一同:ハハハ(笑)。

●柴田さんの童貞を捨てた話に戻りますけど、スナックの女性と2人で居酒屋に行ったと。

柴田:はい。酔っぱらってたからとにかく楽しくて。で、「彼氏がいるけどあまり相手にされてない」みたいな話をされて、「ちゃんとした彼氏がほしいなー」って。

梅津:おお〜。

柴田:あ、またちょっと勃ってきた。

●マジか。

柴田:気づいたら2人で俺んちにいて、そういう行為になったんです。でも結局、2秒でイっちゃったんですよね。

●ゴムは持っていたんですか?

柴田:えっとね…ゴムは帰りにコンビニで買ったのかな。で、2秒でイって「早っ!」ってびっくりされて「経験人数って何人なの?」って訊かれたんです。俺は「2〜3人かな?」と答えて。

●2人と3人のレベルで曖昧って(笑)。

柴田:そう。きっとその人も気づいていたと思います。で、そのまま寝て、朝起きたんですけど、なんか知らないけど全然帰らないんですよ。“邪魔くせー!”と思って。

●え?

柴田:身の上話とかしてきて“マジどーでもいいよ!”とか思いながら。俺はとにかく“帰ってくれ!”って思ってて。二日酔いでしんどいし。

●付き合うという選択肢はなかったんですか?

柴田:いや、ないです。だって全然好きじゃないから。結論から言うと、俺にとっての初めてのセックスは豪華なオナニーみたいな感じだったんです。「童貞を捨てると世界が変わる」みたいな話って、まことしやかに世間で言われているじゃないですか。

●はい。

柴田:でも結局、何も変わりはしない。好きでもない人としても、ただの超気持ちいいオナニーじゃんっていう。だから感動もなかったし、むしろ“返せ!”と思ったし。

梅津:なんだそれ(笑)。

●返せって…。

柴田:俺、高校から大学、そのあと就職して3〜4年くらいまでは、童貞であることは自分のアイデンティティとしてある程度デカかったんですよね。でも童貞のキャリアをどんどん積んでいくと、超えていくっていうか、童貞の先にいくっていうか。別に童貞ということが重要ではなくなってしまうんですよね。

●童貞の向こう側にいたのか。

柴田:もっと言うと、バンドに夢中になっていてそのことばかり考えていたから、童貞であることはすごく小さくなってしまっていて。だからそれを捨てようが残ろうが、あまり自分の人格に影響を与えなかったという。

●でも3年前に童貞を捨てたんですよね? なんで黙ってたんですか? というか、黙ってただけじゃなくて、「童貞です」って我々を騙してきましたよね?

梅津&酒田:そうだそうだ!

柴田:それがすごく心苦しかったんです。裏切り行為ですからね。

●ファンの子たちには童貞もいると思うし。

柴田:あ、でもそういう子たちには「安心しろ」と言いたいんです。なぜなら、俺は29歳まで童貞だったから。例えば22歳の童貞がいるとするじゃないですか。でも俺は29年間童貞をやってきたわけですよ。だから先輩として「安心しろ。何でも訊け」って。

一同:アハハハ(笑)。

柴田:だから30歳以上の先輩童貞には謝るしかないです。「もうあなたの心に刺さる曲は書けないかもしれません。すみません」って平謝りです。ただ、ヤング童貞たちには「安心しろ」と言ってやりたい。

酒田:柴ちゃんは言い訳が上手いよね。

●屁理屈ですね。

酒田:でも言うタイミングも普通になかったよね?

柴田:うん。インタビューとかでも童貞ネタが出たら「あ、最近はもう童貞推しじゃなくていいんで」って、さりげなく話題を変えてました。

梅津:そう、いつの頃からかそうなっていったよね。

●ひどいな。

柴田:でも「童貞じゃない柴田の音楽なんてダメだ」と言う人がいたとしたら、その人とはもう分かり合えないのかもしれない。俺たちは俺たちのやりたいことをやるし、やりたいときにやりたいことをやるからロックンロールなわけじゃないですか。例えばお客さんが求めてるからって芯をブレさせるのは違うと思うし、そこを非難される筋合いはない。変わっていくこと自体は全然悪いことではないと思うから。というか、3年前に童貞捨ててからも一切ないですからね。経験値は1です。まだレベルアップすらしてない。

●ハハハ(笑)。

柴田:別にそこまでやりたいと思わないんですよね。オナニーでいいじゃんって。俺、オナニースキル半端ないので。

●オナニースキル?

柴田:SBM(SUMATA BY MYSELFの略 / 柴田の造語)という技術があって、みんな素股は風俗でお金払ってやってもらっているじゃないですか。でもよくよく考えてみると、“俺にも股あるじゃん!”と思って。全裸になって風呂場で自分の内腿にボディソープ塗ってちんこ当てると…超気持ちいいっすよ! 灯台下暗しっすよ!

●かわいそうに…。

柴田:いやいや! 今日の夜やってみてください! SBMのトリコになるから!

その3:柴田、他のバンドの名前ばかり言う。

「“これやったら理屈が通らない”とか“これやったらウケるんじゃないか”とか“これ言い過ぎじゃないか”みたいな、左脳的思考を必死に排除する制作だった」

●やっとミニアルバム『あの娘のメルアド予想する』の話に入りますが、童貞を捨てたことを歌詞で告白して断罪されることになったM-1「ばかばっか」というリード曲がありつつ、今作は新曲5曲+ライブ音源が収録されていますが、作品としてはどういうイメージにしようと思ったんですか?

柴田:新録5曲に関しては…“ツレ伝ツアー”で若い子たちに「イケてる」と言われているバンドと対バンしてきましたけど、そういうバンドのファン層って俺たちが獲得できていないんですよね。全然獲れてない。だからイメージとしては、そこのシーンに俺たちの方から歩いて行って、そこで自分たちらしさを爆発させる。そういうテーマで5曲を作ったんです。

●“ツレ伝ツアー”のモードと近いと。

柴田:“ツレ伝ツアー”は俺たちが主催したにも関わらず、モードとしてはアウェイだったんです。フラワーカンパニーズさんやおとぎ話は近い感じですごくいい雰囲気でできたんですけど、基本的にはイケメンたちが行く合コンに最後の1枠として参加させてもらう、みたいな。

●さっき梅津さんがおっしゃっていたことですね。

柴田:実際にできていた曲もあったから、何曲かは“ツレ伝ツアー”で実際に演ってみたんです。“ツレ伝ツアー”をやると決めたとき、例えばKEYTALKとやる場合は物理的に速い曲がセットリストに必要だったから、“そこで通用するものは何だろう?”と考えて。且つ、俺ららしく。

●今回の5曲はどれもすぐに口ずさめるんですよね。普遍的なキャッチーさがある。言葉やメロディだけじゃなくて、フレーズとかも含めてキャッチーさが散りばめれられているというか。

3人:あざっす!!

柴田:2ndアルバム『空を見上げても空しかねえよ』(2013年10月)をリリースした後に、“自分たちらしさって何だ?”と考えたとき、下ネタとかみっともないところをさらけ出すのがソングライターとしての個性だと思ったから、それをやろうと決めたんです。だから“ツレ伝ツアー”に照準を当てつつも、前作以降の流れで作ったというか。

●今作、めっちゃ身のまわりのことを歌ってますよね。

柴田:そうなんです。でも俺、最近まで身のまわりのことを歌えなくなっていたんですよ。1stアルバム『忘れらんねえよ』のときなんて何も怖くないから、パッと歌詞を思いついたとき、そこに大した意味がなくても採用していたんです。でも2ndの頃の俺は、パッと歌詞を思いついても“これ理屈が通ってないな”とか“お客さんわかんない人がいるかも”とか思って、悩み始めたんです。簡単にいえば初期衝動を失っていたというか、1st出してお客さんも増えてきて、守るべきものができていたんですよね。で、“それを失いたくない”とすごく思っちゃって、“事務所から給料も引き続きもらいたい”と思っていたし。

●打算だ。

柴田:打算です。でもみんなあると思うんですよ。「1枚目がいちばんいい」ってよく聞く話じゃないですか。それは守るべきものができて、純粋な表現が難しくなってくるんじゃないかなって。何かを思いついたときに“これはあのお客さんにはウケるかもしれないけど、最近来るようになったあの若いお客さんにはウケないかもしれない”とか考え始めたら、その時点で初期衝動は失われてますよね。“じゃあどっちも喜ぶものはなんだ?”と丸くなる。そこで尖る人もいるかもしれないけど、少なくとも俺は丸くなるタイプの人間だったから。でもそれは、今回のリリースタイミングでは絶対にダメだと思っていたんです。俺にしかできない表現ができなければ、バンドとして立たないなと。

●メンバー中2名がインタビュー中にちんこを勃たせてるけど、バンドとして立たないと。

柴田:だから“これやったら理屈が通らない”とか“これやったらウケるんじゃないか”とか“これ言い過ぎじゃないか”みたいな、左脳的思考を必死に排除する制作だったんです。

●閃きとか本能とか感覚をより生々しく出そうと。

柴田:その作業はすごく怖かったけど、必死でそれをやって。だから「めっちゃ身のまわりのことを歌ってる」と言われたのは、俺にとっての成功なんです。

●しかも言葉を詰め込んでるし。

柴田:最初は言葉がもっとぼやっとしていたんです。でも俺が書く言葉じゃないなと思って。もっと個人的なことを書かないと俺らしくならないんじゃないかと。

●その話はすごくよくわかります。不思議な感覚なんですけど、忘れらんねえよの曲は共感しないんですよ。

梅津&酒田:ああ〜。

●共感しないんですけどものすごく心が揺さぶられて、感動してしまう。それは、濁ったものがないからだと思うんです。共感しないのに感動するってすごいことだと思うんですよね。

柴田:俺、それを最高の形でできているのは神聖かまってちゃんの「ロックンロールは鳴り止まないっ」だと思うんですよ。“TSUTAYAさんで僕はビートルズとピストルズを借りたけど何がいいんだから全然分かりません”って、の子さんの超個人的な日常でしかないけど、あれを聴いたすべての人が鳥肌立ててるし、俺なんでか知らないけど泣いちゃうもん。要するに普遍になっているんですよね。

●他のバンドの話多いな。

柴田:それはロックンロールの魔法だと思うんです。個人を突き詰めると普遍になる。だから今回、それはすごく意識しました。とにかく個人的なことを書く。それで突き抜けられたらラッキーだなと。M-5「バンドやろうぜ」も、とにかく個人的な歌じゃないですか。バンドやっててしんどいと思っている人にしか向けてない。超狭いターゲット。でもそうすることで突き抜けるんじゃないかなって。

●「バンドやろうぜ」はどうしようもないことを歌ってますけど、でもなんか感動するんですよね。

柴田:Mステのこと歌ったりしてる曲ですけど…そういえば今度KANA-BOONがMステに出るんですよ。くっそ〜!

●あ、また始まった。そういう曲に込めた想いって、歌詞だけじゃなくてサウンドにも表れている気がするんです。アレンジは歌詞を意識して作るんですか?

梅津:いや、アレンジの段階ではまだ歌詞はないんです。だから全然考えてないんですけど、曲を聴いて柴ちゃんが歌詞のイメージを膨らませると思うんですよね。

柴田:うん。今回はほとんどそれ。

梅津:だから僕は特に世界観を意識して作らないですね。作りようがないというか。

柴田:オケを聴きながら歌詞を考えるし、オケから出るフィーリングってあるんですよね。ハマっていくというか。

●それは忘れらんねえよの音楽が持つ哀愁感に依るところが大きいと思うんですよね。どの曲もメロディ+サウンドに哀愁感がある。

梅津:ああ〜、展開をドラマチックにしようというのは確かに考えていますね。フレーズもめちゃくちゃシンプルだけど、ちゃんと変化を出して盛り上げるところにピークを持っていくフレーズ作りはやっているつもりです。ベースもメロディを弾けますから。

酒田:ドラムの場合は、歌メロをはねさせるものを意識するようにはしています。あとは、そのパートが展開の中でどういう位置なのかを考えたり。

●楽器でも表現しているというか、ひとつひとつの音が世界観を出しているというか。必然的に音が鳴っている。

梅津:たぶんそれぞれのパート毎にこだわりがあるんですけど、“すげぇプレイをしてやろう”みたいな感覚はまったくないんです。テクニック推しみたいなものは3人とも願望がないというか。

柴田:聴いたときにどう感じるか、どれだけいい音楽にするかっていう。だからここ最近アレンジしているときにずっとやっているのは、録って聴く。構成もそういう感じで客観的に聴いて「ここ要らないから短くしよう」とか「でもライブだったら長くていいよね」みたいなやり取りが多いんです。

●あとM-3「体内ラブ〜大腸と小腸の恋〜」は、Wiennersの玉屋2060%くんとMAXさんが参加されていますよね。Wiennersはサウンドとグルーヴで巻き込む力が強いバンドだと思うんですけど、彼らの個性を見事に忘れらんねえよに採り込んでいて。

梅津:Wiennersは前から仲がいいんですよね。一緒にライブをやることが多くて。

柴田:「体内ラブ~大腸と小腸の恋~」のアレンジを3人で作ってるとき、色んなのを試していたんですよ。で、サビのリズムパターンを思いついたときに「めっちゃハマるね!」となったとき、その雰囲気を更に加速させるために梅津くんが「カッティングのギターがあればいいね」と思いついて。

梅津:この曲、モチーフは西城秀樹の「YOUNG MAN」なんですよ。

●あっ! 言われてみればそうだ! パ、パク…

柴田:インスパイアです!

梅津:僕はこういう16ビートの昔のディスコっぽい曲が好きなんですよ。そういう曲って、Daft Punkの曲にナイル・ロジャースが参加したみたいに、カッティングのギターが入っているイメージがあって。で、周りのギタリストを思い浮かべてみたとき、そういうギターがいちばんハマるのが玉屋くんじゃないかなと。僕はWiennersの「トワイライト」という曲が大好きで、その玉屋くんのギターがパッと思い浮かんだんです。あんな感じで弾いてもらいたいなと。それでお願いしたら快くOKしてくれて。

柴田:すーごかったよね。録ったの聴いて“これはヤバい! 絶対に俺はライブで弾けない!”と思った。

●そっちの「ヤバい」か(笑)。

梅津:フレーズで歌っているというか、メロディアスなんだよね。

柴田:玉屋くんはソングライターだからフレーズがめっちゃ耳に残るんだよね。ギターソロもヤバいよね。相当な化学変化というか、大成功だと思いました。

●大腸とか小腸とかクソとか歌ってる曲ですけど、2人は怒らなかったんですか?

柴田:いや、MAXちゃんとかすごく楽しんでやってくれました。しかも、「大腸! 小腸! …」っていうコーラスをするところ、ラスサビに転調するところで最後に「ワーッ!」ってみんなで叫んでるんですけど、そこではみんなそれぞれ自分の好きな人の名前を叫ぼうということにしたんです。

●お。

柴田:重なってわかんないようになってますけど、実はみんなそれぞれ好きな娘の名前を叫んでるんです。MAXちゃん女子だし“大丈夫かな?”と思ってたんですけど、飼い犬の名前叫んでました。

一同:かわいい〜(笑)。

酒田:レコーディングの現場で俺らは誰の名前を叫んだかバレてるんだけど、柴ちゃんが誰の名前を叫んだか知らないんだよね。

柴田:「えっちゃん」って叫びました(※チャットモンチーの橋本絵莉子)。

●人妻の名前を叫んだのか…。

柴田:まだわかんないですからね。チャンスはあります。

●かわいそうに…。でも今作、名曲が揃ってますね。「名曲です」と言うのがはばかられますけど…。

柴田:その感じがいいですね。

梅津:忘れらんねえよはそのフィーリングです。

柴田:しかも今回のいちばんのセールスポイントは安いっていうところです。お値段1500円。やっぱりね、時代はミニアルバムですよ。1500円と2500円の差は超絶デカいです。ゲスの極み乙女。もミニアルバムばかりだし。やっぱり現場の感覚として思うもん。2500円はクリープハイプレベルになんないと買ってくれない。俺らみたいな位置で闘っているバンドはやっぱり1500円です。

●そうですか。

柴田:お値段据え置き12曲入り!

●「12曲入り」と言っていいのか? って思うんですけど…(※今作は新曲5曲+ライブ音源7曲)。

柴田:言っていい!

●しかもこのライブ音源は去年の恵比寿LIQUIDROOMのワンマンの音源ですけど、前回のインタビューで「あのワンマンはクソだった」と自分で言ってましたよね?

一同:アハハハハハハ(爆笑)。

梅津:あ、やばい(笑)。

酒田:これ大丈夫か(笑)。

柴田:俺のMCがクソだったんです。曲は最高でした。

interview:Takeshi.Yamanaka

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