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【Web限定 不定期連載】インディペンデントな人々: 第1回 シン(オトドケモノ)×栗原志穂子(CAMPFIRE )対談

シン(オトドケモノ)×栗原志穂子(CAMPFIRE)

インディペンデントな人々

5/21にシングル『夢に敵えば/終電を待つ』をリリースしたオトドケモノ。前作『テーマソ
ング』ではクラウドファンディングサイト“CAMPFIRE”を利用し、見事に目標額を達成。
音源制作からプロモーションまでを自らの手で行うという、バンドシーンにおける新たな
活動スタイルを実践している。彼らはいかにしてクラウドファンディングを使い、プロ
ジェクトの成功を収めたのか。今回オトドケモノのVo./A.G. シンが、プロジェクトを担当
したCAMPFIREのキュレーター栗原氏と対談を行い、自らその模様を取材した。

シン(オトドケモノ)×栗原志穂子(CAMPFIRE )対談

「インディーズミュージシャンとクラウドファンディング」

■お金に誇りを託す。

シン:まずはCAMPFIREと、栗原さんご自身のお仕事の紹介をお願いします。

栗原:CAMPFIREはクラウドファンディングのサイトです。実現したいことがあるアーティストやクリエイター、イベンターの方々から投稿されたプロジェクトを掲載し、そのために必要な資金をサイト上で募るという、夢を叶えたい人と、それを応援したい人を繋ぐプラットフォームです。CAMPFIREでは、まず投稿者がプロジェクトを掲げ、目標金額を設定します。プロジェクト支援者は「パトロン」と呼ばれ、自分で金額を決めて支援することが出来ます。プロジェクトの目標金額が達成された場合は、パトロンには金額に応じた「リターン」と呼ばれるお返しが投稿者から贈られる、という仕組みです。その中で私はキュレーターと言って、まずはオトドケモノのようなプロジェクト投稿者の投稿内容を吟味・選定します。そして掲載することが決まった方に、掲載内容やリターンの設定などをアドバイスしてプロジェクトをブラッシュアップし、目標金額達成のためにプロモーションの提案などをして投稿者をサポートしていく役目です。

シン:オトドケモノの場合は、「普通の大学生がCDを全国リリースする」というプロジェクトを掲げ、そのための制作資金を募りました。結果的に50人を超える方から合わせて39万円近くの支援が集り、プロジェクトは無事に達成、CDも全国リリースされました。それが前作のミニアルバム『テーマソング』だったわけですけど、その時に栗原さんに、色々とアドバイスしていただいたんですよね。

栗原:そうですね。素晴らしいプロジェクトだったと思います。

シン:当時のこと覚えてらっしゃいますか?

栗原:もちろんですよ! 初めてお会いしたのは柏の呑み屋さんでしたよね。実は投稿者の方と直接お会いすることって珍しいんですよ。CAMPFIREの投稿は基本的にメールで行われるので、フィードバックもすべてメールなんです。だからよく覚えています。

シン:当時僕らは、ある流通会社の方から「次のCDはうちから全国流通にしましょう」とお声がけ頂いていたんです。学生生活も終盤に差し掛かっていたので「なんとしてもこのチャンスを逃したくない!でもレコーディングするにはお金が足りないし、どうしよう…」という状況で、その矢先に栗原さんと知り合ったんです。それで点と点がつながったというか。「クラウドファンディング…これだ!」と思ったんですよね。最初に相談を受けた時、どう思われました?

栗原:「これはいける!」と思いました(笑)。

シン:おぉ、そこ詳しく教えてください(笑)。

栗原:オトドケモノの場合は、自分たちが達成したい目標も、そのためにすべきことも、明確だったんですよね。それに加えて自分たちのお客さんのことを一番に考えていて、ファンの方を信頼していたので、大丈夫だと思いました。

シン:自分たちの音楽を誰に聴いてほしいかっていうのが、ものすごく明確だったんです。同じ境遇、同じ世代の人たちに届けば、絶対に伝わると思っていたので。でも自分たちは全国流通という環境を活用できるだけの資金を持ち合わせていなかったので、それをクラウドファンディングで克服したいと考えたんです。その一方で、お金を集めるという行動自体がお客さんに良いイメージを与えないんじゃないかっていう懸念もあって。

栗原:シンさんはそれをすごく心配していらっしゃいましたよね。

シン:要するに、「お金ください!」ってシステムじゃないですか。でも、お金を集めることは目的ではなく手段なんだって伝われば、共感してくれる人は現れるだろうという希望はあったんです。

栗原:それで結果的に「その葛藤をすべてそのまま文章で綴りましょう」ということになったんですよね。

シン:そうそう。そんなアドバイスを頂きました。最初は順序立てて無駄なく論理的に…って考えていたんですが、そこにある迷いも、心配も、全部言葉にしようということになりました。

栗原:文章の修正作業だけでも、4、5回やりとりしましたよね。

シン:そうですね。書いては消し、書いては消しを繰り返しました。

栗原:タイトルや、リターンの文言、ちょっとした表現まで細かくチェックしましたよね。

シン:読んでくれた人が「自分が話しかけられている」と思うような文章を心がけました。

栗原:そうでしたね。だから分かりやすくというより、敢えてまとまり過ぎないように意識したり。温度感を大切にしていましたよね。…本当に大変でしたよね(笑)。

シン:うん。すごく大変でした。もちろんあれだけの文章を書き上げるってことも苦労したんですけど、それ以上に「これからオトドケモノがどういうスタンスで音楽を続けたいのか」という地固めというか、方針を決めるのに苦心しましたね。このプロジェクトがきっかけで、オトドケモノのイメージや今後の見え方が決まってしまうと思ったので。

栗原:そうですよね。良い意味でも悪い意味でも、こういう取り組みをするとイメージが付いてしまいますもんね。

シン:はい。だからオトドケモノを再定義する、音楽との向き合い方を一旦整理するのが大仕事でしたね。

栗原:文字数はなるべく減らしてシンプルに伝えたいことだけを載せるのが一般的な型なんです。お客さんも文章が長いと、それだけで興味が薄れたり飽きてしまったりするので。でもオトドケモノの場合は、必然的に文章量が多くなってしまったけど、それを良しとしたんですよね。

シン:僕らはお客さんに対して、「ちゃんと書けばちゃんと読む人たちだ」という信頼があったので、敢えて長くて複雑な文章を掲載しました。結果的にそれが理解を得たと思っています。嬉しかったのは、お客さんたちが自発的にSNSで宣伝をしてくれたんですよね。それが拡散して、これまでオトドケモノを知らなかった人にも気付いてもらえたんです。

栗原:それもクラウドファンディングの良いところですよね。CAMPFIREのサイトにもSNSとの連動機能があるし、支援者の力がダイレクトに結果に反映されます。拡散していく様子を見て、普段からファンの方とコミュニケーションがしっかり取れていたんだなあと改めて感じていました。

シン:支援した人が、また別の人に紹介してくれたり、広めてくれたりするのって、その人自身が自分の行動を誇りに思っているからじゃないですか。「私はこの人たちが好きです!」って大声で言ってるみたいなもんだから。僕はそれが嬉しかったんです。オトドケモノを好きだということに、誇りを持ってくれている人たちがいるってプロジェクトを通じて知れたのは大きかったですね。音楽やってて良かったなって。

栗原:なるほど。

シン:ライブしてるだけじゃそこに気付けないんですよね。そういった意味で、CAMPFIREは支援者側にとっても表現の場として機能していると思います。

栗原:それは他のプロジェクトを見ていても思います。投稿者だけでなく、支援者にとっても発信するきっかけになるんですよね。

シン:だから、単純にお金を払っているだけではなくて、そのお金にそれぞれが気持ちを託しているというのが伝わってきました。なんだか途中から、お客さんもメンバーに思えてきたんです。これだけ真剣にオトドケモノのことを考えてくれているんだって。もはやこれは4人目のメンバーだなって。

■経験はカブらない。

シン:CAMPFIREでプロジェクトが成功してから思ったのは、オトドケモノにとってはCDをリリースすることが目的だったはずなんですけど、もはやそれさえも「手段」だったのかなって。僕らが本当に実現したかったのは、みんなの力を借りてCDをリリースすることで、「バンドって、こんなやり方もアリなんだぜ」って、音楽との付き合い方の幅を提示することだったんじゃないかと思うんです。CDだけが作品なんじゃなくて、CDを出すまでの取り組み自体が大きな作品だったというか。

栗原:分かります。あの出来事を仕掛けたこと自体が、ストーリーになりましたよね。

シン:クラウドファンディングって、今の時代にすごくマッチしていると思うんです。何かモノを買うのではなくて、出来事自体にお金を払うっていうシステムじゃないですか。今はモノが溢れていて、スペックも見た目もあまり変わらないものばかりで、みんな同じようなものを所有している。でも、それを手にするまでの経験やストーリーは一人ひとり特別なものですよね。そんな中で、例えばオトドケモノの場合はCDを作るプロセスと、その後リターンが届くっていう一連の流れに参加する権利を買ってもらっていたんだと思うんです。そこに価値を見出だして、支援者の方はお金を払ったんじゃないかと。それはすごく興味深いし、ミュージシャンとしては、今何が求められているのか、常にアンテナを張っていなくてはいけないと思います。

栗原:オトドケモノは「完成したCDをメンバーが直接自宅まで届ける」というリターンがあったりして、支援者の方も一度きりの特別な体験ができましたもんね。そんな風に、ただCDを買うことだけでは得られないプラスアルファが、クラウドファンディングの魅力なんだと思います。

■共感が人を巻き込む。

シン:ところで、僕らのプロジェクトは栗原さんに投稿のご相談をしてからすぐに掲載に向けて動き始めましたけど、当然掲載されないプロジェクトもあるわけですよね。選定の判断基準はどこにあるんでしょうか?

栗原:まずは、「目標金額が集った時に本当にプロジェクトが実現されるのか」を見極めます。お金が集っても、プロジェクトに実現の可能性がなければ掲載はしません。実現されなければパトロンの方の信用も失いますし、サイト自体のクオリティも担保できないので、それが一番困るんですね。そういった意味で、実現への具体的な段取りが組めていて、現実味がある方の投稿を選んでいます。

シン:そうなんですね。僕はてっきり、「お金が集るかどうか」が第一義なのかと思っていました。

栗原:お金が集るかどうかは、実は投稿段階では見極められないんです。どんなに良さそうに見える投稿でも、実際にふたを開けてみたら告知が上手くいかずに達成できなかったりもします。逆に投稿段階ではビジュアルや掲載文章で魅力が伝わりきれていなかったものでも、私たちがお手伝いをしてブラッシュアップすることで多くの方から支援が集った、というケースもあります。

シン:なるほど。僕はCAMPFIREを見ていて、自分が掲載した経験から「メッセージがブレてないプロジェクト」が成功しているんじゃないかって思うんです。一本筋の通ったコンセプトなのかどうか、実現したいこととお金が必要な理由の間に、矛盾がないかどうか、それを支援者の方は見ているんじゃないかなって。ちゃんと地に足が着いていて、夢があるのに現実的なプロジェクトが支持されていますよね。

栗原:そうですね。投稿者本人がしっかりとビジョンを持っていて、それを丁寧に伝えなければ成功しないですね。ユーザーの方も、共感しなければお金を出そうという気にはならないので。

シン:共感ですよね。大事なのは。

■クラウドファンディングという選択。

シン:CAMPFIREはいろいろな人がプロジェクトを投稿していますが、音楽系の投稿にはどんな印象をお持ちですか?

栗原:オトドケモノが投稿した当時に比べて、今は倍くらいの数のミュージシャンのプロジェクトがあります。以前に比べて自分たちの魅力を自分たちの言葉で伝えられる方が増えている印象がありますね。

シン:なるほど。ミュージシャンに対して思うことはありますか。

栗原:そうですね…もっと積極的にこのシステムを使ってほしいなって思います。やはり最初は不安だと思うんですね。どうやってプロジェクトを形にしていくんだろうとか、ちゃんと支援額が集るのかとか。でもそういう時のために私たちキュレーターがいるので、色々チャレンジしてみてほしいです。

シン:オトドケモノは比較的、理論立てて物事を整理したり、音楽以外の発信で伝えるということが性に合っているので、CAMPFIREは相性が良かったと思うんですけど、ミュージシャンの中には理詰めよりも直感と瞬発力で活動していて、それが魅力的な人も大勢います。そういう人たちにもCAMPFIREを利用してもらうにはどうすればいいんでしょう?

栗原:確かに、オトドケモノはセルフプロデュース能力に長けているという長所があって、それとCAMPFIREのメリットがマッチしていたとは思います。でも見せ方とか伝え方って、それだけではない気がするんですよね。

シン:もっとこう、「この指止まれー!」みたいな勢いだけでもいいわけですよね。「面白いことしまーす! 一緒にやる人ー!」みたいなね。その場合は文章で伝えるより、動画や写真で訴えればいいわけだし。

栗原:とにかくやりたいことが明確であれば、それに対する手立てはいくらでも提案できますしね。どうすれば伝わるのかを一緒に考えますので。

シン:そうですよね。まずは青写真が描けているかどうかが大事ですよね。

栗原:もしまたオトドケモノがクラウドファンディングを使うとしたら、何をしたいですか?

シン:そうですね…。次やるなら、やりたいことを先に決めるんじゃなくて、まずメッセージがあって、それを伝える為に何をしたらいいかっていう逆算で考えると思いますね。例えばオトドケモノはこの春から全員サラリーマンになったんですけど、「サラリーマンとバンドマンは両立できます!」っていうメッセージを伝えたいとしたら、「新橋駅のホームを貸し切って、通勤ラッシュ時にフェスをする」とかね。

栗原:それ面白いですね(笑)。でもそれくらい自由な発想を待っています。

シン:僕らが何か新しいことをしたいと思った時に、無意識に「お金」っていう条件が前提として組み込まれていると思うんです。そのせいで予め発想が狭められている部分ってあるんですよね。「お金」という制約から解放された時、本当に面白いアイディアが生まれるはずですよね。それがミュージシャン発信であってほしいです。

栗原:私も次のオトドケモノのアクションを楽しみにしています。今後も私たちがあっと驚くような発想を期待していますね。

シン:はい! 今日はありがとうございました!

栗原:こちらこそありがとうございました!

オトドケモノ対談2

TEXT:シン

■CAMPFIRE-クラウドファンディング・プラットフォーム-
http://camp-fire.jp/