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バンド限定オーディション“BAND ON THE RUN”

“BAND ON THE RUN”開催記念 Great Hunting シニア・プロデューサー加茂 啓太郎氏 2ヶ月連続インタビュー

PHOTO_加茂さま04EMIミュージック(当時は東芝EMI)内の新人発掘プロジェクトとしてスタートし、Art-School / Base Ball Bear / フジファブリック / 氣志團 / 相対性理論 / The SALOVERS / 赤い公園など多くのバンドを発掘・育成してきたGreat Hunting。同プロジェクトはEMIミュージックがユニバーサル・ミュージックと経営統合した後も継続され、15周年を迎えた今年、ロックシーンに新たな歴史を刻む新たな才能と出会うべく、バンド限定オーディション“BAND ON THE RUN”を開催する。JUNGLE☆LIFEでは、過去に何度か誌面に登場していただいたGreat Hunting シニア・プロデューサー加茂 啓太郎氏を迎え、Great Huntingの歴史と音楽シーンの現状、今後求められるバンド像について訊いた。

 

第1弾 Great Hunting 15年と加茂氏の歴史を振り返る

「そのバンドが出てきた前後で景色が変わっちゃうような存在。2000年前後の日本のロックのビッグバンから15年経って、それくらいの登場感があるバンドと出会いたい」

●Great Huntingが今年15周年を迎えたということですが、そもそもGreat HuntingはEMI時代に発足した新人発掘プロジェクトですよね。

加茂:そうです。僕はもともと邦楽のディレクターをやっていて、1995〜96年くらいに当時の上司から「お前は育てるより、見つける方が向いているんじゃないか?」みたいな話をされて。自分は宣伝部にいたこともあったんですけど、「THE BLUE HEARTSっていうすごいバンドがいるよ」っていちばん最初に騒いだりとか、ORIGINAL LOVEだったりGREAT3、あるいはウルフルズ、スピッツだったりとか、面白いバンドがいると「こういうバンドがいるんですけど、どう?」みたいなことを言い出す感じのキャラクターだったんですよ。

●なるほど。

加茂:要するに学生の頃からライブハウスに行って、いいバンドがいれば「すごく良かったです!」と話しかけて(笑)、今だとライブハウスに行って、いいバンドがいれば「メジャーでやる気ない?」と話しかける(笑)。やっていることはそこが変わっただけという。

●音楽に対する想いやモチベーションは変わっていないと。

加茂:そうですね。だから新しいバンドでも見つけてきて紹介するとか、メジャーデビューさせるのがいちばん好きというか、仕事の醍醐味だと思ったのでGreat Huntingを立ち上げたんです。

●15年の歴史の中で、Great Huntingの転機になったアーティストはいますか?

加茂:やっぱりナンバーガールが大きいでしょうね。彼らは厳密に言うとGreat Huntingが始まる前にデビューしたので、向井くん(向井秀徳)は「俺はGreat Hunting出身じゃねえ」って言いますけど(笑)。

●そうなんですか(笑)。

加茂:今でこそメジャーと契約していてもマネジメントを自分たちでやるスタイルは結構増えてきていますけど、ナンバーガールは出会った頃からいわゆるローバジェットのレコーディングで「迫力があればいい」という判断で制作したり、写真撮影も「ヘアメイク、スタイリストはどうする?」と話しても「別にその辺の写真でいいんじゃないですか?」みたいな感じだったんです。そこで「予算をかけなくても良ければ良い」ということを教わりました。僕は当時メジャーで20年近くやっていて、まだ予算が使えた時期だし、アルバム1枚作るのに1千万くらい掛かるのが当たり前の時代だったんです。そこでナンバーガールに出会って、向井秀徳っていう人間に出会って、発想が変わりましたね。そういうミニマムな、言っちゃえばディレクターと僕だけの小さなチームでやったことが大きかった。

●ミニマムなチーム体制は今でこそ大手のレコード会社でも増えてきましたけど、15年前だと珍しかったんじゃないですか?

加茂:あまりないですね。それに「既存の概念に囚われてはいけない」ということも教わりました。当時はメジャーのやり方みたいなものを、どのアーティストにも当てはめるみたいな風になりがちだったんですけど、アーティストが100組いたら100通りのやり方を考えなきゃいけないっていう発想の自由さみたいなものはナンバーガールを見ていて思いました。

●他にきっかけになったアーティストはいらっしゃいます?

加茂:自分の自信になったのは、Base Ball Bear(以下BBB)ですね。彼らが高校生のときにデモが来て「あ、いいもの持っているな」と思って、そこから付き合っていってインディーズで2年くらいキャリアを積んで、その後はツアーをやるたび、アルバムを出すたびに大きくなっていったんです。2年連続武道館でやれたり。やっぱりメジャーデビューして10年やれているっていうのは、自分の目利きの自信になりました。

●BBBは育成の段階から関わったということですか?

加茂:そうですね。最初4人で制服のまま会社に来て、まだ高校3年生で。ライブも「学祭でしかやったことがないんですよ」って言うから「じゃあ下北沢GARAGEだったら出れるから紹介するよ」って紹介して、GARAGEはそれから彼らのホームになって、未だにツアーのファイナルでやったりしますからね。

●今のお話のように、新人発掘というと本当に荒削りな状態でバンドの才能を見抜かなくちゃいけないわけじゃないですか。そこで何が判断基準になっているんですか?

加茂:ひとつ分かりやすいのは声質ですよね。声がいいか。あとはどこかオリジナリティがある。

●どんなに演奏が下手でも?

加茂:どんなに下手でも、誰かの音楽をお手本にしていたとしても、それを自分なりに消化して、自分のものにしているか、そこが感じられるかどうか。これはミュージシャンによく言うんですけど…どんなに難しい料理でもレシピがあればできるじゃないですか。でもレシピを作るのがアーティストの仕事だから。それはどんなに簡単なものでもいい。例えば、いちご大福を考えた人は偉いと思うんです。でも大福の中にいちごを入れるっていうレシピは難しくない。だからそのレシピを考える力があるかどうか、そういう発想があるかどうかですよね。

●なるほど。

加茂:「これはレシピがあるな」とか「これはレシピ通りに作っているな」とか、その境目は直感でしかないですけどね。BBBとか最初のデモはSUPERCARとかナンバーガールがお手本になっていたんです。でも、それをただ好きでやっているだけじゃない何かを感じたんです。

●それがオリジナリティの発露だと。

加茂:あと、コード感が変だと引っかかります。例えばナンバーガールってコードが変なんですよね。あれが彼らのオリジナリティになるし、BBBもコード感が変なんです。

●癖みたいなものなんでしょうか?

加茂:そう。コード感って人の感情じゃないですか。BBBって“曖昧”という言葉がすごく好きなんです。歌詞でも“曖昧”がすごく出てきて、僕がやっているときなんかも「小出くんさ、“曖昧”って歌詞多すぎないか?」みたいなやりとりをしたことがあって(笑)。マイナー6thって悲しくも寂しくもない、曖昧なコードを多用するんですよね。

●中間色みたいな。

加茂:そうなんです。向井くんは「俺押さえ」っていう独特のコードを使いますよね、何か変なギトギトしたコードで、やっぱり向井秀徳が表したい何かがコード感に出てくるんですよね。コードについて亀田誠治さんに「椎名林檎ちゃんはどうですか?」と訊いたことがあったんですけど「林檎ちゃんは9thが多いね」って。9thっていうとジミ・ヘンドリックスの『パープル・ヘイズ(紫のけむり)』のあのコードですね。

●オリジナリティを紐解くと、そういうところに要素があると。

加茂:メジャーコードとマイナーコードがあれば、基本的にメロディって付くんですよね。でもそのコードじゃないといけない理由がその人にはあったりするから。

●ひとつのレコード会社で同じ仕事を15年もやり続ける人はなかなかいないと思うんです。特に加茂さんは新しい才能を見つけるポジションじゃないですか。常に感覚をアップデートしていかないと時代の流れを捉えられないような気がするんですが。

加茂:うーん、どうなんでしょうね。ロックって完成されちゃっていて、2000年代以降新しくできた音楽って初音ミクみたいなボーカロイドくらいしかないんですよね。1960年のロックと1970年のロックって全然違うけど、2000年のロックと2013年のロックってあまり変わらないんですよね。

●言われてみれば確かに。

加茂:もっと進んでいるEDMやエレクトロニカは別ですけど、ロックという、いわゆるボーカル、ギター、ベース、ドラム、キーボードでやっている音楽って、基本的にとんでもない進化はしていないんです。だからThe Beatlesから始まって2000年代のグランジの終りくらいまで知っていれば若いバンドと話していてもギャップはないですね。まあ赤い公園とか、とんでもない突然変異みたいな人もいますけど。

●あのバンドは突然変異ですか(笑)。

加茂:ですね(笑)。そういうバンドもいたりするけど、それでも理解の範疇だし。逆に僕らは昔のことを知っているわけじゃないですか。「それが好きだったら、これもきっと好きだよ」みたいな話ができるので、何か刺激を与えることはできますよね。

●あと聞きたかったんですが、加茂さんが新しい才能を見つけるにあたって常に心がけていることは何でしょうか?

加茂:僕はいつも「運と勘と行動力」と言っているんです。例えば最近だとMrs.GREEN APPLEっていうバンド。たまたま僕のTwitterをフォローしてくれていて「17歳のバンドです」と書いてあって、スケジュール見てみたらちょうどその日にライブがあって。で、たまたま夜の予定が飛んじゃったんですよね。だから普通に当日券で観に行ったら、ライブがすごくよくて。その後に契約して、来年デビューに向けて準備しているところなんです。「今日はかったるいから早く帰ろうかな」とか「飲みに行っちゃおうかな」じゃなくて、何かそういう機会があったら行ってみるとか。

●それが運と勘と行動力…確かに。

加茂:そうですね。勘は「これは面白そうだな」って思うことだし。

●なるほど。既に募集が始まっていますが、“BAND ON THE RUN”はどういうコンセプトで始まったオーディションなんですか?

加茂:僕としてはBLANKEY JET CITYがあってThee Michelle Gun Elephantがあって、くるりがあってナンバーガールがあってSUPERCARがあって、中村一義とか椎名林檎とかがあって…95〜6年から2001〜1年の間って、時代を書き換えるようなバンドが出てきて今も続いていたりとか、解散してもレジェンドになっていますよね。

●はい。確かにそうですね。ロックのシーンでいろんなものが生まれたというか。

加茂:何かそういう感じが今はあまりしないんですよね。そのバンドが出てきた前後で景色が変わっちゃうような存在。2000年前後の日本のロックのビッグバンが起きた時期から15年経って、それくらいの登場感があるバンドと出会いたいと思っているんです。某ロックフェスとか行っても毎年並びが一緒だし(笑)。去年も観たし、別に1年で変わっているわけでもないし「おもしろくないな〜」みたいな。そういったびっくりするようなバンドはあまり出て来ないから、今はアイドルの方がおもしろい。

●加茂さんは最近アイドルのこともやっていらっしゃいますよね。

加茂:かなり研究しました。寺嶋由芙ちゃん(元BiSメンバー)のディレクターもやっているんです。とりあえず僕が育成契約してシングルを1枚出して、そしたらThe SALOVERSとか赤い公園をやっている事務所が手を挙げてくれて。アイドルイベントを2年くらい前からやってみようと思って“アイドル・フィロソフィー ”というイベントを始めたのが始まりなんです。変わり種のアイドルも最近は多いじゃないですか。マインドとしてはロックなんだけど、アイドルみたいなことをやっているような。そういう人たちに出てもらったりして。そういう人たちは、スタッフも元々ロック好きな人が多いんですよね。

●確かにBiSとかもそうですよね。

加茂:BiSのマネージャーの渡辺淳之介さんもすごく音楽は詳しいですよね。そういう人がやっているからアイドルがおもしろいっていうのもあるんです。で、アイドルをひと通りやってある程度分かったので、Great Huntingは15周年だし、アイドルオーディションじゃなくて、ナンバーガールや氣志團、ART-SCHOOLとかが始まっている部署だから、そういうびっくりするようなバンドを探したいという感じで“BAND ON THE RUN”をスタートさせたんです。2000年代前後のバンドって個人的にも聴いて、すごく楽しかったしワクワクした。ロックってやっぱりリアルタイムのものだから、The BeatlesとLed ZeppelinとThe Clashだけ聴いていればいいかっていうとそういうものじゃない。リアルタイムのものって当然必要だと思うんです。だから時代を書き換えて残っていくようなバンドに出会いたいです。

ユニバーサル・ミュージック Great Hunting本部 シニア・プロデューサー 加茂 啓太郎

ユニバーサル・ミュージック
Great Hunting本部
シニア・プロデューサー
加茂 啓太郎

(9月号掲載の第2弾に続く)
Interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:馬渡司

 

【INFORMATION】

Great Hunting 15周年記念オーディション “BAND ON THE RUN”
Art-School、Base Ball Bear、フジファブリック、氣志團、相対性理論、The SALOVERS、赤い公園など多くのバンド発掘、育成したユニバーサル・ミュージックの新人発掘育成セクション Great Huntingが15周年を迎えたことを記念して開催されるバンド限定オーディション。最優秀バンドには、審査員による音源/映像/グラフィックの制作はもちろん、メジャー・デビューに向けてのプロジェクトが待っている。

【審査員&クリエイター】
亀田誠治(音楽プロデューサー)、木村豊(アート・ディレクター)、島田大介(映像ディレクター)

more info→ http://www.great-hunting.com/