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Bob is Sick

“そこからはじめよう”。その時浮かんだ言葉は、底に差し込んだ光のようだった。

SONY DSC2008年の結成以来、東海地区のギターロックシーンの新星として躍進するBob is Sick。10代の頃からヤマハ主催のコンテスト“Music Revolution”や“閃光ライオット”へ出場するなど、名古屋を中心に精力的に活動を続けている。そんな彼らが8/6に1stミニアルバム『sokokala』をリリース。作りこまれたサウンド、グッドメロディーに胸を突く言葉が乗り、放たれる彼らの音楽はリスナーを情景、感情の波で飲み込んでいく。今回は結成から6年を経て全国流通盤をリリースした彼らに、本作への赤裸々な想いを訊いた。

 

「どん底の時の自分が作った曲なので、もしかしたら一人でも多くの人が救えるかもしれないっていう気持ちがあります」

●結成したのは2008年とのことですが、メンバーはどういう繋がりだったんですか?

久世:僕と大畑と近藤の3人が一緒の小学校で、竹内が中学からの同級生なんです。最初はただコピーバンドをやっていましたね。

●初ライブはどこだったんですか?

久世:The 1st Music Revolutionっていうコンテストが初めてのライブです。その頃からライブハウスのイベントに誘われるようになりました。

近藤:当時はただ「大会に出て優勝をしたい」っていう目的のためにやっていた所があったんです。

竹内:部活ノリでしたね。ライブをするからどうしたいっていう考えはなかったです。

近藤:ライブというよりはCDを再生する、みたいな感じ(笑)。

久世:曲を演奏して終わり。みたいな。

●そういう意識が変わるきっかけがあったんですか?

近藤:“閃光ライオット”の関連イベントで初めて東京へツアーに行った時ですね。

大畑:東京に行って、当時のレーベルの人に初めて会った時に「もっと思いっきりやってみろよ!」とか、けっこう言われたんです。

久世:その帰りは寝ずにずっと「どんなライブがしたいか?」って語り合いました。

近藤:その時の意識の変化は「もう殺してやる!」くらいの感じでしたね(笑)。次の日が名古屋のライブだったんですけど、そこで一番ガツンと変わりました。疲れていて肉体的にはボロボロだったんですけど、でも気持ちは初めてライブで出せたんです。「どうしよう」って考えて「名古屋ではこうしよう!」と決めて、「この感じか!」って納得して。そこで何かひとつ答えをもらったというか。

●それほど衝撃的だったと。

久世:対バンに勝ちたいっていう気持ちがすごく強くなったんですよ。何を持って勝ち負けかわからないですけど「誰にも負けたくない!」って。自分の中でそういう気持ちが芽生えたのがその頃からなんです。今は違うんですけどね。

●そうやって活動する中で今回初の全国流通盤『sokokala』がリリースされますが、意識的な変化はありましたか?

久世:「良いものを作らないとな」っていうプレッシャーはありましたね。

大畑:でも、特に新しく何かをやろうっていう気持ちはなかったです。

●今までやってきたことを凝縮して出そうと。

大畑:そうですね。

竹内:緊張と楽しみっていう気持ちはいつもあるので。

●タイトル『sokokala』ですが、この由来はなんですか?

久世:M-6「ここからはじめよう」(リードトラック)の歌詞“そこからはじめよう”から取りました。「そこから一緒に始めよう」って思うきっかけになる作品にしたいっていうことと、「そこ」には底という意味もあって、今どん底にいる人に聴いてもらって「もう1回頑張ってみよう」って思ってもらえたらいいなと。

●「ここからはじめよう」を作ったきっかけは?

久世:実は僕、死のうとしていたくらいどん底の時期があったんですけど。当時、酔っ払って1人でベランダにいた時に、どんな音楽を聴いても響いてこなくて…。「じゃあどんな音楽だったら今の自分に響くんだろう?」と考えた時に“ここからはじめよう”っていう言葉が浮かんで、それがきっかけで作り始めた曲なんです。本当に辛い時は何を聴いても響かないし、音楽は無力だって思っちゃう気持ちも分かるけど、そういうどん底の時の自分が作った曲なので、もしかしたら一人でも多くの人が救えるかもしれないっていう気持ちがあります。だからこの曲は段違いに気持ちが入っちゃう曲なんです。

●歌詞は自分に向けている部分もある?

久世:僕は偉そうなことを言う曲がいっぱいあって、例えば“何もしない馬鹿”とか歌うんですよ。それで「じゃあお前に何ができるの?」って聞かれたら「いやぁそんなにできてないかも…」って感じで、僕もできていないんですよね。なので常に自分に対しても歌っています。“ここからはじめよう”っていう言葉も自分に向けて歌っていて、それが誰かにも響いてくれたらいいなって。

●今作のもう一つのリードトラックM-1「Di」ですが、このアルファベットの意味はなんですか?

久世:「Di」で“でいあい”と読むんですけど、歌詞にも“世界は愛にまみれて 泥団子のようだ”とあったりして、愛について歌った曲なので、最初は「漢字で“泥愛”って曲名にする? 」って話が出たんですけど「さすがに汚いね」っていうことで「Di」にしました(笑)。

●この曲の歌詞は綺麗なものに対して、汚ない表現をあえて使っているというか。

久世:そうですね。それは意図していたわけじゃなくて、自然とそういう歌詞になったんです。憎しみができるのも愛があるからだったり、例えば「好きだよ」って言ったとすると、僕は同時に泥を吐き出しているような気がして。

●この歌詞に出てくる“やあ君はもう気付いてしまったね じゃあこの歌も解ってくれるよね”というのは?

久世:「愛は綺麗だ」って言っている人に対して、この曲を聴いて気付いてくれたなら、この曲の意味も解ってくれるよね。という意味を込めました。パッと聴くとノリが良くて、POPなラブソングに聴こえるんですけど、後々聴いてみたら綺麗なラブソングじゃなかった、みたいな。そういうギャップを持たせました。

●そういう歌詞については他のメンバーと意見しあったりしますか?

久世:全くないですね。

竹内:変に介入するつもりはないんです。彼が作ったものに手を加えるっていうのは、歌っていて気持よくないんじゃないかなって。

久世:曲のアレンジも一人一人メンバーに任せています。僕が弾き語りで軽く作って、「後は任せた!」っていう感じで。

●それぞれ音楽のルーツは同じなんですか?

久世:元々はみんなBUMP OF CHICKENとかを聴いていて。そこからみんな聴くものがバラバラになっていきました。僕は最近HIP HOPとかポエトリーリーディングばかり聴いています。

●言葉の力に惹かれる?

久世:そうですね。言葉が好きなんです。最近は情景が映しだされる言葉が並ぶことがすごく好きで、何か伝えるんじゃなくて想像させたいというか、それで物語が作れたらいいなって考えていますね。今作だとM-3「malmal」とか。

●「malmal」は竹内くんが作曲でしたよね。

久世:この曲を最初に聴いた時に「夜に車で走って行く時に、街灯や光が流れていくようなイメージがあるんだけど、そんな感じ?」って竹内に聞いたら「あ、そんな感じ」って言ってくれて。

竹内:イメージとして共通したものがあったんですよね。

久世:ちゃんと伝わったんだなって。あの時は嬉しかったです。

●この曲はコンテンポラリー・ジャズのテイストがあったりして技巧的ですね。

竹内:好きなギタリストが音数多いプレイヤーばかりなので、どうしてもそういう方向に行きますね。元々Yngwie Malmsteenとかめっちゃ聴いていましたし、最近はジャズばっかり聴いています。

●曲を作るきっかけはなんだったんですか?

竹内:自分自身で曲を作れないとダメだなと思って作ってみたんです。たまたま久世がスタジオを休んだ時に「僕が作った曲をやってみようか」って始めたことがきっかけでバンドの曲として作り始めたんですけど。元々の曲の尺は倍くらいあって、Miles Davisみたいなモードジャズを意識したものだったんです。

●そもそも歌を乗せる気で作っていなかった?

竹内:そうですね。ギターのフレーズがあった状態でその上に歌のメロディを乗せられるか分からなくて。

久世:あの曲にメロディを乗せるのは不可能だと思った。「こんな曲歌えるか!」って(笑)。それを家に持ち帰って、色んなパターンを作って歌ってみても全然しっくりこなかったんです。だから「この曲はインストの方が絶対良いよ」っていう話をしていたんですけど竹内が「いや、歌を入れてみたら良いと思うんだよね」って言ってくれたので、何回も頑張って作り続けて「これなら良いんじゃないか」みたいなのがようやくできたんです。

●次の曲M-4「アル」は突き抜けた印象がありますね。

久世:この曲はバンドのために作ったんです。曲を作る時にすごく難しく考えちゃって「曲ができない…」っていう時期があって。そうじゃなくてもっと簡単に楽しくやろうって思って作りました。

●考え過ぎちゃっていた部分があるというか。

久世:最初にサビの歌詞“大切なことはいつも 簡単な事なんだ”が浮かんで作り始めたんですけど。特に“笑っていよう 遊んでいこう 生きていたいと願うため”が一番伝えたくて「もっと馬鹿になろうぜ。力を抜いていこう」みたいな。

竹内:バンドの中でグッと引っ張る人がいないんですよ。なので、それぞれで考え込んで迷っていたんですよね。

近藤:みんなそれぞれ何を考えているのかな? って。

久世:メンバー全員が良いと思ってくれる曲じゃないとライブでやりたくないし、音源にしても楽しくない。全員で気持ちよくなりたいっていうのがあるんですよね。

●“偏見のコレクションにもう用はないのだ”っていうのは何に対して言っているんですか?

久世:曲名の「アル」はアインシュタインのニックネームから取ったんですけど、彼の残した言葉で「常識とは18歳までに身に付けた偏見のコレクションのことである」というのがあって。当時のBob is Sickは偏見で凝り固まっちゃっていて「信じられないことをやろう!」みたいな気持ちが薄れてきたので、そういう気持ちを込めました。

●今までの蓄積じゃなくて、もっと違う新しいことをしていこうよ! という思いがあったと。

久世:そうですね。また面白いことを一緒にやれたら良いねって。

●なるほど。最後にこれからの展望としては何かありますか?

久世:僕は「何年後のビジョンを立てなさい」と言われてできた試しがないんですけど(笑)。漠然と「僕達には、私達にはBob is Sickがいる! だから大丈夫だ!」みたいに思われたいです。誰かの行動のきっかけになれればいいなと思っています。

●バンドのプロフィールでも「聴いた人の心を揺さぶる、アジテート(扇動)する。ただの音楽では終わらせない為の”何か”を秘めた音楽を」。と書かれていますよね。

久世:一曲聴き終わった時にひとつは言葉が残ってないと、僕的には無しなんですよね。すごいノリが良くて、楽しいだけで終わるんじゃなくて、楽しかったし格好良かった。あと「あの言葉が残った!」みたいな。そうやって何かひとつメッセージが残ってくれていたらいいなと思います。

Interview:馬渡司

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